お金に関するプロとして、相談者に総合的な資産設計のアドバイスを行なうことができる仕事が、ファイナンシャルプランナーです。ファイナンシャルプランナーは銀行や保険会社、不動産会社などの会社で活躍できるほか、独立して個人や法人の相談に乗ることもでき、自由度の高い職業といえます。
この記事では、ファイナンシャルプランナーの年収やおもな収入源、ファイナンシャルプランナーを目指す人におすすめの資格などを紹介します。
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ファイナンシャルプランナー(FP)の年収は働き方によって変わる
ファイナンシャルプランナー(以下、FP)とは、相談者のライフスタイルや経済環境を聞き出して収入・支出の内容や分析をし、相談者の目標に合わせて資産設計のアドバイスを行なう仕事です。
FPには「企業系」「独立系」「副業系」の3つの働き方があり、どの働き方を選ぶかによって収入は大きく変わります。なお、一般的には、金融機関などの会社に所属する「企業系」FPが多数を占めています。
ファイナンシャルプランナー全体の平均年収は773.9万円
厚生労働省では、FPを「その他の経営・金融・保険の専門的職業」に分類しており、賃金基本構造統計調査(2020年)によると、この業種の平均年収は773.9万円となっています。773.9万円という金額は該当業種すべての労働者の平均値です。そのため、実際の年収は業種や年齢によって異なることを覚えておきましょう。
参考:厚生労働省|賃金構造基本統計調査 / 令和2年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
2020年ハローワーク求人統計データによると、FPの求人賃金平均額は月27万円となっています。
参考:厚生労働省|職業情報提供サイト ファイナンシャル・プランナー
企業系ファイナンシャルプランナーの年収
企業系FPはおもに、銀行や保険会社といった金融機関に勤務し、顧客の相談に応じて資産計画のアドバイスや金融商品の販売を行なっています。不動産会社や協同組合、官公庁、自治体などで活躍する方もいます。
会社の規模や業種によって年収が異なる
企業系FPの場合、会社の大きさや種類、勤続年数、取得資格の有無によって収入が大きく異なります。
年収は450~600万円が一般的
ファイナンシャルプランナーがおもに活躍する業種の年収を紹介します。
銀行・信用金庫 | 銀行支店長:861万円 銀行・信用金庫の窓口業務:444.5万円 銀行・信用金庫の渉外担当:570.3万円 |
保険会社 | 生命・損害保険の営業員:570.3万円 |
証券会社 | 店頭係:542.8万円 |
不動産会社 | 住宅・不動産営業員:544.7万円 |
企業系ファイナンシャルプランナーの平均年収は440~860万円と、大きな差があることがわかります。とはいえ、一般的には銀行支店長の年収を除いて、450~600万円が平均的な年収といえるでしょう。
独立系ファイナンシャルプランナーの年収
会社勤めをするのではなく、独立をして収入を得るのが「独立系FP」です。
FPとして独立開業するパターンは少なく、税理士や社会保険労務士として開業している人が自分の専門知識に付加価値として、FPの知識を活用するケースが見られます。
働き方や勤続年数によって年収には大きな差がある
独立系FPのおもな収入源は、FPとしてコンサルティングを行なう際の相談料です。
相談料の設定はFP自身が決められるため、経験の長いFPや税理士や社労士などの専門資格を持っている方は、相談料を高めに設定することができます。一方、経験が浅いFPや実績が少ないFPの場合は、信頼されるまで収入が伸びず苦労する可能性もあるでしょう。
独立系FPは、知識を蓄えることでさまざまな商品を扱えるようになるので、自分の努力や営業力次第では年収を大きく増やすことも可能です。
平均年収は305万円だが勤続年数が上がると900万円以上になることも
2011年の日本FP協会「ファイナンシャル・プランナー業務調査」によると、個人のFP業務の平均年収は305.3万円となっています。
305万円と聞くと少なく感じる方も多いかもしれませんが、業務経験15年以上のFPの平均年収は902.2万円です。この結果から、実績や経験を積むことで収入が上がっていくことがわかるでしょう。
相談料の相場は1時間5,000円~1万円
日本FP協会によると、CFP(R)・AFP認定者が設定している1時間あたりの相談料は「5,000円未満~2万円まで」が相場になっています。
そのうち、「5,000円~1万円」は全体の40%以上を占めており、「5,000円未満」は25%です。
副業系ファイナンシャルプランナーの年収
本業のかたわら、副業としてFPの知識を活かして働く方法が「副業系ファイナンシャルプランナー」です。
働き方によって収入が変わる
副業系FPは独立系と同様、自分の働き方次第で年収が大きく変わるのが特徴です。副業系FPの年収の正確なデータは存在しませんが、相談料やマネーセミナーの講師業、ライター業を積極的に行なうことで収入を増やすことができるでしょう。
在宅でも仕事が可能
副業系ファイナンシャルプランナーは、在宅でFPの知識を活かして収入を得ることも可能です。オンラインでのコンサルティングやFP関連のライター業務、金融関連のサイトの監修業など、FPの知識をさまざまな方法で活用させることができます。
ファイナンシャルプランナー(FP)になりたい人におすすめの資格
FPになるために、取得しなければならない資格はありませんが、顧客の相談に応じて適切なアドバイスを行なうには、幅広く専門的な知識が必要になります。FPとして働く場合は資格を取っておくことが望ましいでしょう。FPの資格には国家資格と民間資格があります。
国家資格である「FP技能士」
FPの資格として認知度が高いのが、国家資格である「FP技能士」です。
FP技能検定には1~3級と3つのレベルがあり、すべての級で学科試験と実技試験があります。両方の試験に合格することで「FP技能士」と、名乗れるようになります。
FP技能検定を主催する団体は「日本FP協会」と「金融財政事情研究会(通称:きんざい)」の2つがあります。実技試験の科目は団体によって異なるので注意が必要です。試験対策をするときは、自分がどちらの団体の受験をするか決めたうえで勉強をするようにしましょう。
FP2級以上を目指す
FPとして活躍したい人は、2級FP技能検定以上を目指しましょう。
3級FP技能士は誰でも受けることのできる資格ですが、2級FP技能士には以下のような受験資格があります。
- 日本FP協会が認定する「AFP認定研修」の受講修了者
- 3級FP技能検定合格者
- FP業務に関して2年以上の実務経験者
- 厚生労働省認定金融渉外技能審査3級合格者
2級FP技能士を目指す人は、基本レベルである「3級FP技能士」を取ったうえで、働きながら2級合格を目指すとよいでしょう。
2級FP技能士の受験資格でもある3級FP技能士は、独学でも資格を取得することができます。多くの方が役に立ったと紹介しているテキストがこちらです。
効率よく勉強を進めて確実に合格を目指すなら、通信講座やスクールで学ぶのもよいでしょう。頻繁に行われる法改正の情報を、通信講座やスクールなら入手しやすくなります。
民間資格「AFP」「CFP(R)」
NPO法人の日本FP協会が認定する民間資格が「AFP」「CFP(R)」と呼ばれる、ファイナンシャルプランナーの資格です。
AFPは日本FP協会による民間資格
AFP資格は、FPとして十分な知識と厳しい倫理観を持ったうえで、相談者に的確なアドバイスや提案をすることができる人に与えられる資格です。
AFP資格を取得するためにはAFP認定研修を修了し、2級FP技能検定(AFP資格審査試験を兼ねる)に合格し、所定の期間内に日本FP協会に登録するのが一般的な方法です。FPとして2年以上の実務経験がある人や3級FP技能検定に合格した人は、2級FP技能検定に合格して所定の研修を修了することで、AFP認定者とされます。
CFP(R)は国際認定資格
CFP(R)資格は、世界約25ヵ国に導入されている、国際的なファイナンシャルプランナーの認定資格です。認定者には、FPのプロとしての深い知識や経験が求められます。AFPの上級資格であるCFP(R)の難易度は、1級FP技能士とほぼ同等と考えてよいでしょう。
CFP(R)認定者になるためには、AFP資格を取得したうえで以下の要件を満たす必要があります。
- CFP(R)資格審査試(6課目すべて)に合格すること
- CFP(R)エントリー研修受講を修了すること。
- 通算3年以上の実務経験があること
- FP協会に登録申請を行なうこと
CFP(R)を取得するためには、AFP資格の取得と実務経験が必要とされることを覚えておきましょう。
AFP、CFP(R)の資格には有効期限がある
AFPやCFP(R)の認定者は、資格を取得したあとも2年ごとに資格更新が必要です。また、その間にAFPは15単位、CFP(R)は30単位の継続教育単位の取得が義務付けられています。
法令や社会情勢の変化に対応しつつ、最適なサービスを提供するためにも、継続的な勉強は欠かせません。資格に有効期限があることで、AFPやCFP(R)の認定者は常に最新の知識を学ぶことができ、結果として金融機関や顧客からより信頼を得られるようになるのです。
ファイナンシャルプランナーの収入源にはどのようなものがあるか
FPの収入源は、企業で働くのか、独立して働くのかによって大きく異なります。企業で働く場合は給与がおもな収入源ですが、独立して働く場合は相談料がおもな収入源になるでしょう。
企業系ファイナンシャルプランナー(FP)の収入源
金融系の企業や、不動産会社で勤務しながらFPの知識を活かす場合の収入源は、一般的に「給与(給与+成約実績)」です。会社によっては、FPの資格手当が支給される場合もあります。給与は勤務する企業規模や業種によって大きく異なるため、注意が必要です。
企業系FPのなかには、保険会社の営業のように業務成績で収入が変化する、完全歩合制の「業務委託報酬」という形で働く人もいます。成約が多ければ収入は増えますが、解約が続いたり新規の契約がなかったりした場合には、収入が非常に少なくなることもあります。そのため、長期的に安定した収入を得るのは難しいかもしれません。
独立系・ファイナンシャルプランナー(FP)の収入源
独立系FPのおもな収入源は、カウンセリングによる「相談料」です。
相談料は1時間あたり5,000円~1万円が全体の4割を占めますが、年間契約や月額制、顧問制など、さまざまな形で収入を得ることができます。相談料以外にもコミッション(金融商品の販売手数料)やマネーセミナーなどの講習料、FPの知識を活かした記事の執筆料も、独立系FPの収入源になります。
独立系・副業系FPとして働くには、資産形成のアドバイスや不動産の活用、年金や保険の相談など、多方面でのお金の知識が必要になることを覚えておきましょう。
ファイナンシャルプランナー(FP)が収入を上げるためには?
独立系や副業系のFPのおもな収入源は相談料なので、今すぐに収入を上げたいという場合は、営業に力を入れて相談件数を増やすのが一つの手段です。相談件数を増やすと短期的に収入が増えるものの、物理的な時間が制約され、プライベートな時間や勉強時間が減るというデメリットもあります。
FPの資格はさまざまな場面で必要とされますが、FP技能士の資格だけでは収入を上げるのは難しいのが現実です。長期的に収入を上げたいという場合は、難易度の高いFPの資格を取るか、ダブルライセンスの活用を目指しましょう。
ファイナンシャルプランナー(FP)2級以上を取る
FPとして顧客から信頼してもらうためには、2級FP技能検定以上の資格を目指しましょう。2級以上の試験は受験資格が必要となるので、FP業務ができる会社で働きながら実務経験を積みつつ、資格の勉強をしていくのがおすすめです。
2級FP技能検定に合格したら、AFP認定研修を修了することでAFPの資格取得もできるので、AFPも併せて取得するようにしましょう。
すでに持っている資格と組み合わせる
独立系FPとして働く場合、FP技能士の資格を持っているだけでは、生計を立てるのは難しいのが現実です。
FPとして独立して働く人のなかには、宅地建物取引士や社会保険労務士などの難関資格と組み合わせて仕事をする方もいます。より専門的な知識を総合的に役立てることができるため、相談料や手数料といった収入が増え、収入アップにつながりやすくなります。
すでに他の資格を持っている方は、FPの資格と組み合わせられるか一度考えてみるとよいでしょう。
宅地建物取引士資格の概要や試験概要、勉強法は、こちらで紹介しています。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/1247/
信頼関係を築くことも大切
FPの仕事をするうえで、大切なのが「顧客との信頼関係」です。
収入を増やすためには営業を積極的に行ない、新しい顧客を獲得することも大切ですが、顧客に満足してもらえるサービスを与え続けることも大切なポイントです。顧客との信頼関係を築ければ、新しい顧客を紹介してもらうこともでき、収入を上げられます。そのためにも、常に新しい情報を学び続ける姿勢が欠かせません。
※価格は全て、2021年12月現在のものです。
まとめ
FPを含む「その他の経営・金融・保険の専門的職業」の平均年収は約774万円ですが、働き方や業種によって収入は大きく異なります。
FPとして働くためには絶対に必要な資格はありません。しかし、顧客のライフスタイルに応じて適切なアドバイスをするためには、FPの深い知識が必要です。FPとして働こうと考えている方は、2級FP技能検定以上の取得を目指しましょう。
資格を取るだけではなく、法令や社会情勢、税制などの新しい情報を常に学び続けることで、顧客からの信頼を得ることができるようになるでしょう。