速読とは、その名のとおり、文章を速く読むこと。単純に書物が速く読めるというだけでなく脳の活性化にも役立つとされ、日本では1980年代頃から注目されるようになりました。同時に速読術に関する研究も積極的に行われ、現在ではいくつも速読術や速読トレーニング法が開発されています。ここでは、速読の具体的な効果や広く知られている速読術、自分でできる速読トレーニング法などを紹介します。
速読とは
文章を速く読むことを指す「速読」。速読では、「速く、かつ内容をしっかり理解して読むこと」が重要とされています。そのため、全体の流れを掴むためにところどころ飛ばして読む「斜め読み」や「飛ばし読み」は、速読には含まれないというのが速読における一般的な考え方です。しかし実際には、斜め読みや飛ばし読みを技法としている速読術もあり、速読術自体に定義がありません。
日本では1984年に日本速読協会による速読普及活動が開始され速読の認知度が高まりましたが、それでも、速読術や速読トレーニングはさまざまな人が個人で独自の技法を唱えているのが現状です。そもそも、どれくらいの速さで読むのが速読なのか、という定義もありません。つまるところ、速読は、まだ定義や技法が確立されていない発展途上の分野と言えるのです。
速読術の3つのタイプ
巷でもさまざまな方法が謳われている速読術ですが、大きくは、以下の3つのタイプに分類できると言われています。
眼球の動きを鍛えて速く読めるようにする速読術
速読には眼球の動きが大きく影響するとの考えのもと取り組まれている速読術。目の動きを高めて視覚を広げ、複数の文章を一度に読むことで速く読めるというものです。速読術としては古くからあるメジャーな方法で、世界中で速読を身に付けるための目のトレーニング方法が開発されています。
読み方を工夫して速く読めるようにする速読術
前述した「斜め読み」や「飛ばし読み」もこの部類になりますが、速読としては「斜め読み」・「飛ばし読み」はあまり推奨されていません。そのほかの読み方を工夫する速読術としては、特定の言葉をペンや指で指しながら読んでいく「メタガイディング」という方法もあります。特定の言葉だけを指しながら目で追うことでムダなキーワードが省かれ、読むスピードが上がるというものです。
右脳を働かせて速く読めるようにする速読術
通常読書で使われているのは、一文字ずつ直列的に読む「左脳」といわれています。一方の右脳は、看板の文字を読むときのように、文章を視覚で捉え、イメージとして潜在意識にインプットします。この速読術では、本の1ページも写真のようにイメージで捉え、右脳に詰め込んでいきます。すると脳の中で関連し合う情報がネットワークとして形成され、内容が把握できる、という考え方です。この方法で速読を繰り返すことで脳のトレーニングにもなり、脳の活性化につながるといわれています。
参考:
一般社団法人 瞬読協会(https://syundoku.jp/speed-reading/three-effects/)
1day速読講座(https://www.sokudokukenkyukai.com/naiyou.html)
速読とは – 慶應義塾大学出版会
3つのタイプにとらわれないDaigo氏の読書術も話題
上で紹介した3つのタイプにとらわれない、独自の読書術で話題となったのが、日本のメディアでメンタリストとして活躍するDaigo氏。Daigo氏は、まず「読むべき本を選別することが重要」として、(1)読むべき本かどうか目次を見て確認する (2)知らない情報は半分くらいで重要な個所が太字になっている本を選ぶ (3)その本から得たい知識を3つ決める (3)ペースを変えて4回読む、という方法を紹介しています。「いかに文章を速く読むか」ではなく、「いかに効率的に知識を得るか」に重きを置いており、ビジネスパーソンを中心に注目を集めています。
速読の効果・メリット
速読方法はさまざまあり、自分に合う速読方法も人により異なりますが、「本を速く読める」ことで共通の効果・メリットがあります。
読書で挫折することが減る
「できるだけ多くの本を読んで知識を蓄えたい」と思う人は多いでしょう。月に●冊本を読む、という目標を立てている人もいるかもしれません。しかし、例えば1冊読むのに5時間や10時間など長い時間を費やしてしまようだと、なかなか読書を習慣にするのは難しいもの。家事や仕事でなかなか読書の時間をとることができず、目標の本数に達する前に挫折してしまうこともあるでしょう。ただ、これが1冊30分や1時間でラクに読み切れるようになれば、また違ってきます。1日1冊読むことも難しくなくなり、読書の挫折を減らせるかもしれません。
効率的に知識を増やせる
速読で短縮できた時間をさらに読書にまわせば、知識を効率的に増やすことも可能です。今まで読書にかかっていた時間を1/3に短縮できたのであれば、従来1冊の読書にかけていた時間で3冊の本を読むことができるわけですね。ビジネス書を1冊読むのと3冊読むのでは、身に付く知識の量も違うはず。インプットの量を格段に増やすことができます。
アウトプットまでの時間が早くなる
ビジネス書や自己啓発本などは、本を読むだけでなく、アウトプットすることが重要。せっかく得た知識はできるだけ早くビジネスや生活に活かしたいですよね。速読ではより短時間で本の内容を理解できるので、アウトプットまでの期間も早くなります。その分、ビジネスチャンスを掴む機会も増えるかもしれません。
速読の学習方法
速読を身に付ける学習方法としては、大きく「独学」「講座で学ぶ」のふたつがあります。それぞれの具体的な方法をご紹介します。
速読の本で学ぶ
速読が注目されるにともない、速読を学ぶための書籍も次々出版されています。そのほとんどが具体的なトレーニング方法や速読のコツを記載しているので、独学で身に付けることも十分可能。
速読に関する本の種類は、ドリル形式のものからメソッドを解説する本までさまざま。興味があり、自分にとって役立ちそうなものから手に取ってみてください。
情報のインプットだけでなくアウトプットにまで言及しているのが「頭がいい人の読書術」。1冊の本を10分でインプットし、30分でアウトプットする方法をわかりやすく紹介しています。
アプリで学ぶ
アプリなどのツールを使って学ぶのもひとつの方法です。現在、速読トレーニングに特化したアプリは多数開発されており、中には無料で使えるものも。名作小説が短く分割された文章が次々表示され、それを読み進めることで速読力がアップする「瞬間速読」や、視野拡大・短期記憶のトレーニングができる「速読いいね」などがよく知られています。
通信・通学講座で学ぶ
独自の教材を使った通信・通学講座で学ぶ方法もあります。ただ、通信・通学講座によって取り入れている速読術は異なるので、自分に合った速読術を扱っているかはホームページなどで確認したほうがよいでしょう。
例えば、通信講座の大手・ユーキャンは、クリエイト速読スクール(R)オリジナルの速読メソッド「BTRメソッド」を設けています。目と脳を鍛えるトレーニングと速読の実践トレーニングを組み合わせた学習内容になっており、38,000円(税別)で受講可能です。
また、速読に関する書籍も多数出版しているSP速読学院は、脳のワーキングメモリーを鍛えて記憶&理解スピードを高める速読術が特徴。通学式の速読教室(29,800円~198,000円/税別)やオンライン講座(43,000円~235,000円/税別)、無料体験レッスンなどコースも豊富です。
速読に関する資格
速読に関する民間資格に、一般財団法人日本能力開発推進協会が設ける速読術インストラクター資格があります。速読術だけでなくインストラクターとして指導する技能も所持していることを証明する資格となっており、取得すればセミナー講師を目指すことも可能。多くの講座を紹介するキャリカレに速読術インストラクター講座(29,000円)が設けられているので、興味がある方は検討してみてはいかがでしょうか。
また、日本速脳速読協会が設ける「速解力検定」も、速読のレベルを量る一定基準となっているようです。速解力検定は、小学生の平均的な速さである10級から、6,300文字以上を1分で読める5段まで全15段階でレベルが設けられています。自分の速読力を客観的に量りたい人は、受検してみるのもおすすめです。
(※文中の価格は2021年3月現在のものです)
まとめ
速読とひとくちに言っても、その方法はさまざま。「要点だけをすばやく掴んで速く読み切りたい」のか、「しっかり理解しながら読みつつ、できるだけ読むスピードを速めたい」のか、目的によって実践すべき速読術は変わってきます。自分にとって役立つ速読術はどのようなものなのか検討したうえでトレーニングしてみてください。