登録販売者とは?試験項目や対策法をわかりやすく解説

登録販売者とは、2009年に新設された医薬品販売の専門資格です。法改正にともない、登録販売者がいれば、薬局・薬店以外でも医薬品の販売が可能となったため、登録販売者のニーズは今後も高まると予想されます。

また、登録販売者の資格試験は、2015年度から受験要件が大きく変わり、どなたでも受験できるようになりました。

今回は、登録販売者の資格を取得するメリットと、資格取得のための方法、さらに試験項目や項目別の対策を解説します。

各項目の難易度や勉強時間の割合、効率の上がる学習方法なども併せて紹介するので、学習計画を立てる際の参考にしてください。

登録販売者とは?

最初に、登録販売者とはどのような資格なのかを理解しておきましょう。

登録販売者とは医薬品販売の専門職

登録販売者とは、2009年の薬事法改正にともない新設され、都道府県による試験に合格すると取得できる公的資格です。

登録販売者になれば、医薬品購入者への適切なアドバイスや相談対応、商品選択のサポートなど、一般用医薬品の販売に関するあらゆる業務に携わることができます。

資格手当の支給や時給の上乗せなど、登録販売者の資格があれば収入アップが見込めます。一般用医薬品は薬局やドラッグストアだけでなく、家電量販店やコンビニなど取り扱う店舗が増えているため、登録販売者の需要は拡大すると予想されています。登録販売者は、今後も求人も増え続けて、将来性のある職種ということができるでしょう。

厚生労働省「登録販売者制度」

薬剤師との違い

登録販売者が販売できる一般用医薬品は、第二類医薬品・第三類医薬品のみです。取り扱いに特に注意が必要な第一類医薬品の販売や調剤は、薬剤師でなければできません。

しかし、一般用医薬品の約9割は第二類医薬品・第三類医薬品です。したがって、登録販売者になれば一般用医薬品のほとんどを販売できます。

薬剤師の詳細は、以下の記事で紹介しています。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/7117/

生涯有効で転職・再就職にも役立つ

登録販売者の資格は、いったん取得すれば失効することがありません。そのため、子育てや介護などによるブランク後の再就職にも活かせます。

また、資格を取得すれば、より有利な条件での転職が可能です。一定の要件を満たせば、店舗管理者になる道も開けます。

将来性があり、転職や再就職にも有利、キャリアアップも目指せる登録販売者は、とても魅力的な資格といえるでしょう。

登録販売者になる方法

登録販売者になるためには、都道府県が実施する試験に合格しなければなりません。ただ、受験要件は特に設けられていないため、どなたでも受験できるのが特徴です。

登録販売者試験は誰でも受験可能

登録販売者試験は、かつては受験要件として実務経験や学歴が定められていました。しかし、2015年度試験からは受験要件が撤廃され、現在は経験や学歴に関係なくどなたでも受験できる試験となっています。もちろん、年齢・性別の制限もありません。

試験合格のために予備校などを利用する方もいるようですが、独学で合格を目指すことも可能な試験です。ライフスタイルに合わせて、無理のない方法で合格を目指しましょう。

登録販売者になるには試験合格と2年以上の実務経験が必要

直近5年以内に通算2年以上の実務経験があれば、試験合格後すぐに登録販売者として単独で医薬品販売ができます。

ただし、実務経験がない場合は、試験合格後に2年以上の実務経験を積まなければなりません。実務経験の要件を満たさない期間は「研修中」となります。

なお、実務に従事した期間は通算のため連続していなくても構いません。試験前にある程度実務経験を積んでおき、試験合格後の実務経験と合わせて2年以上の実務を経験すれば、登録販売者として就業できます。

登録販売者試験の試験項目と合格基準

登録販売者試験は、各都道府県で行なわれます。実施日や試験問題は自治体により異なりますが、試験項目は共通です。ここでは、試験の概要を見ていきましょう。

試験項目と問題数

登録販売者試験はマークシート方式で、出題数は120問です。試験時間は計240分で、午前と午後に分けて行なわれます。なお、時間割は都道府県ごとに異なるため、受験地を決めたら早めに確認しておきましょう。

試験項目と出題数、試験時間は以下のとおりです。

試験項目出題数試験時間
医薬品に共通する特性と基本的な知識20問40分
人体の働きと医薬品20問40分
主な医薬品とその作用40問80分
薬事関係法規・制度20問40分
医薬品の適正使用・安全対策20問40分
合計120問240分

引用:厚生労働省「登録販売者試験実施要領」

合格基準

登録販売者試験に合格するためには、以下の2つの条件をクリアしなければなりません。

総出題数に対して7割程度正答すること
各試験項目で3.5割以上(一部地域では4割以上)正答すること

つまり、総得点が7割を上回っていても、正答率が3.5割あるいは4割を満たさない試験項目が1つでもあれば不合格になります。

合格率

2020年度に実施された登録販売者試験の合格率は、全国平均で42.6%でした。合格率は地域によりばらつきがありますが、おおむね30~50%です。

もっとも、受験年度や受験地により難易度が著しく変わらないように、合格点にはある程度調整の余地が残されています。そのため「どこで受けるか」を悩む必要はありません。

とはいえ、都道府県により出題傾向は多少異なります。受験を決めたら、試験地の過去問を入手して、繰り返し問題演習に取り組みましょう。

登録販売者試験を受ける前に知っておくべきこと

登録販売者試験はどなたでも受験できる試験ですが、勉強を始める前に知っておくべきことがいくつかあります。合否にも影響する内容なので、必ずチェックしておいてください。

出題範囲は最新の「試験問題の作成に関する手引き」で確認

登録販売者試験の問題は、厚生労働省が定める「試験問題の作成に関する手引き」から作成されます。

手引きはたびたび改正され、最近では2018年3月に改正されました(2021年12月現在)。なお、改正箇所は厚生労働省のホームページに掲載される改正履歴入りの手引きで確認できます。

参考: 試験問題作成に関する手引き(平成30年3月)

tapiさんは、自らの経験から登録販売者試験の勉強法における「試験問題の作成に関する手引き」 の重要性を紹介しています。

ただし、最新の問題集や参考書を使って勉強すれば、手引きの内容や改正箇所は網羅できます。自分に合った勉強方法を探してください。

試験対策用テキストを購入すれば、効率的に受験勉強を進められるでしょう。多くの方が役に立ったと紹介しているテキストがこちらです。

約1か月間、受験勉強を中断せざるえなかったひろさんも、ココデルのテキストをつかって合格したそうです。

https://twitter.com/pnpnpurin7/status/1313492412770254848

足切りラインに引っかかると不合格

合格基準でも触れましたが、登録販売者試験には最低限クリアしなければならない足きりラインが設けられています。

足きりラインは各項目につき3.5割で、一部地域では4割です。総得点が合格基準を超えていても、正答率が低い項目があると不合格の可能性があるため、不得意分野を作らないようにしましょう。

登録販売者試験の出題項目別対策

ここからは、登録販売者試験の対策を出題項目別に紹介します。最後には学習を進める順番も解説しているので、早期合格を目指す方はぜひ参考にしてください。

「医薬品に共通する特性と基本的な知識」の勉強法

出題数:20問
試験時間:40分

「医薬品に共通する特性と基本的な知識」では、医薬品の基本的知識が問われます。一般的な知識で解答しても正答が得られる内容で、難度はそれほど高くありません。

ただし、「薬害の歴史」難度が少し高めです。薬害の原因薬剤や使用用途、使用対象者、問題となった副作用、被告(製薬企業・輸入販売業者など)、国の対応などを整理し、確実に得点しましょう。

満点が狙える項目のため、得点源として活用しましょう。

「人体の働きと医薬品」の勉強法

出題数:20問
試験時間:40分

「人体の働きと医薬品」は、「人体の構造と働き」「薬が働く仕組み」「症状からみた主な副作用」の3分野から出題されます。

「人体の構造と働き」では、実際の臓器を思い浮かべながら学習するのがおすすめです。文字だけでは理解しにくいため、教材の臓器のイラストを参考にしたり、自分の臓器に手を当てて、働きをイメージしたりするなどして理解を深めましょう。

また、「薬が働く仕組み」では、専門用語をきちんと理解しておいてください。

さらに、「症状からみた主な副作用」では、重篤な皮膚粘膜障害など、皮膚にあらわれる副作用がよく出題されています。

皮膚粘膜眼症候群や中毒性表皮壊死融解症は、別名や症状・発生頻度・特徴がわかるようにしておいてください。接触性皮膚炎・光線過敏症では、両症状の違いをきちんと押さえましょう。

「主な医薬品とその作用」の勉強法

出題数:40問
試験時間:80分

「主な医薬品とその作用」は最も出題範囲が広く、配点も他の項目の2倍となっています。難度もかなり高いため、学習計画をしっかり立てて取り組んでください。

カタカナの覚えにくい成分名や、読み方が難しい漢方薬もたくさんありますが、頻出語句は決まっています。

やみくもに丸暗記するのではなく、参考書などを利用してある程度的を絞り、なぜ当該成分が使われているのかという点まで掘り下げて理解しましょう。

ドラッグストアなどに勤務している方は、外箱に記載の成分をチェックして知識の定着を図るのも良い方法です。自宅にある常備薬や、家族が服用している医薬品の成分を調べてみるのもよいでしょう。利用できるものは何でも利用して、確実に知識を身につけてください。

「薬事関係法規・制度」の勉強法

出題数:20問
試験時間:40分

意外に失点が多いのが「薬事関係法規・制度」です。よく似た用語がたくさん出てくるため、整理してしっかり理解しておきましょう。

ただし、法律を丸暗記しても得点にはつながりません。問題を解きながら勉強を進めるとより理解が深まるため、繰り返し問題演習に取り組んでください。

そして、間違えた問題はしっかり復習しましょう。特に似た用語(例:「製造業者」と「製造販売業者」など)を入れ替えて正誤を問う問題は、何度も繰り返すことで知識が身につきます。

苦手意識を持たず、問題演習と復習を繰り返して得点につなげましょう。

「医薬品の適正使用・安全対策」の勉強法

出題数:20問
試験時間:40分

「医薬品の適正使用・安全対策」では、毎年よく似た問題が出題されます。高得点が狙える項目のため、うっかりミスで点数を取りこぼさないようにしましょう。他の項目と関係が深い内容も多いため、各項目の仕上げとして取り組むのにも適しています。

なお、この項目では、厚生労働省が定める「試験問題の作成に関する手引き」の別表を覚えることも重要です。特に、別表の「5-4.企業からの副作用等の報告」では、報告期限を整理してきちんと覚えてください。

勉強を進める順番

厚生労働省が定める「試験問題の作成に関する手引き」に記載されている順番で勉強するのも方法の一つですが、効率良く勉強するという点ではあまり好ましくありません。

だからといって、最も範囲が広く難度が高い「主な医薬品とその作用」にいきなり取り組むのもNGです。

早期合格を目指すなら、以下の順番で勉強を進めましょう

「人体の働きと医薬品」
「主な医薬品とその作用」
「薬事関係法規・制度」
「医薬品に共通する特性と基本的な知識」「医薬品の適正使用・安全対策」

勉強に最も時間を割かなければいけないのは、「主な医薬品とその作用」です。しかし、その前に「人体の働きと医薬品」で人体の仕組みや薬の働きを理解し、身につけた知識をベースに「主な医薬品とその作用」に取り組むほうが効率良く勉強が進みます。

次いで、繰り返しの問題演習が得点獲得のカギとなる「薬事関係法規・制度」に取り組みましょう。最後に、復習として活用できる「医薬品の適正使用・安全対策」や、勉強に時間がかからない「医薬品に共通する特性と基本的な知識」に取り組むと、無駄なく勉強できます。

なお、「医薬品に共通する特性と基本的な知識」と「薬事関係法規・制度」は、他の項目と並行して勉強を進めても大丈夫です。

スキマ時間に「医薬品に共通する特性と基本的な知識」、気分転換に「薬事関係法規・制度」に取り組めば、メリハリができてモチベーションの維持にも役立つでしょう。

特に独学で勉強する場合は、学習計画も自分で準備しなければなりません。効率良く勉強を進め、登録販売者の資格を手に入れましょう。

まとめ

登録販売者は、医薬品販売に携わる公的資格です。資格試験の受験要件は特にないため、どなたでも受験できます。いったん資格を取得すれば失効することはないため、転職や再就職の際にも活用できるのが特徴です。

登録販売者試験は独学でも合格できますが、効率良く勉強を進めるためにはポイントを押さえて計画的に学習することが必要です。

特に、範囲が広く難度が高い「主な医薬品とその作用」は、ゴールから逆算して学習計画を立て、確実に知識を身につけてください。

登録販売者試験に合格すれば、一般用医薬品の約9割を占める第二類・第三類医薬品の販売に携わることができます。次の登録販売者試験に向けて、勉強をスタートさせましょう。

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