「精神保健福祉士の仕事に興味があるけれど、どのような勉強をすれば良いのかわからない」あるいは、「国家試験に合格するためには、どのような対策をすれば良いのだろう」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では精神保健福祉士になるために必須の国家試験の概要をはじめ、国家試験の合格率や難易度、国家試験に合格するための対策について解説します。
これから勉強を進めていくうえで、国家試験合格を勝ち取るためのご参考にしてください。
精神保健福祉士の仕事内容は、こちらで紹介しています。
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精神保健福祉士国家試験は年1回
初めに、精神保健福祉士国家試験について解説します。
試験実施日
精神保健福祉士国家試験が行なわれるのは年1回、毎年2月上旬頃となっており、令和3年度の24回試験は、2022年2月5日(土)および6日(日)に行なわれます。
試験地
北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県(以上、7試験地)
試験科目
以下、全16科目群について試験が行なわれます。
- 精神疾患とその治療
- 精神保健の課題と支援
- 精神保健福祉相談援助の基盤
- 精神保健福祉の理論と相談援助の展開
- 精神保健福祉に関する制度とサービス、精神障害者の生活支援システム
- 人体の構造と機能および疾病
- 心理学理論と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 福祉行財政と福祉計画
- 社会保障
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
なお、社会福祉士の有資格者は上記6)~16)の11科目が免除されます。
受験資格
精神保健福祉士国家試験を受けるには、第1号から第11号までのルートによって受験資格をえる必要があります。
ここでは大きく4つに分けて、必要な受験資格について紹介します。
1. 指定科目を履修して受験
・福祉系大学等(4年)で指定科目を履修
・福祉系短大等(3年)で指定科目を履修し、相談援助実務経験1年
・福祉系短大(2年)で指定科目を履修し、相談援助実務経験2年
2.基礎科目を履修し、短期養成施設等で6ヵ月以上学んだうえで受験可能
・福祉系大学等(4年)で基礎科目を履修
・福祉系短大等(3年)で基礎科目を履修し、相談援助実務経験1年
・福祉系短大等(2年)で基礎科目を履修し、相談援助実務経験2年
3.一般養成施設等で1年以上学んだうえで受験可能
・一般大学等(4年)
・一般短大等(3年)を卒業し、相談援助実務経験1年
・一般短大等(2年)を卒業し、相談援助実務経験2年
・相談援助実務経験4年
4.その他
・社会福祉士登録者は短期養成施設等で6ヵ月以上学んだうえで受験可能
福祉系大学・短大を卒業していても、指定科目を履修していない場合は短期養成施設等で6ヵ月以上学ぶ必要があります。
また、一般大学・短大を卒業した場合は1年以上、一般養成施設等で1年以上学ぶ必要があります。
養成施設等では昼間コース以外に夜間コースや通信コースを設けているところもあるため、働きながら資格取得を目指すことも可能です。
受験資格があるかどうかを確認したい方は、精神保健福祉士国家試験の公式サイトをチェックしてみることをおすすめします。
参考:精神保健福祉士国家試験
精神保健福祉士国家試験の合格率と難易度
精神保健福祉士国家試験の合格率や合格基準、難易度についても気になるところです。ほかの福祉系資格と合格率の比較もしてみましょう。
合格率
直近4年間の合格率
2021年第23回 | 2020年第22回 | 2019年第21回 | 2018年第20回 | |
合格率(%) | 64.2 | 62.1 | 62.7 | 62.9 |
男女別合格者内訳
2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | |
男(%) | 32.3 | 32.4 | 32.6 | 33.8 |
女(%) | 67.7 | 67.6 | 67.4 | 66.2 |
合計 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
年齢別合格者内訳
年齢区分(歳) | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 |
~30 | 42.1 | 40.7 | 42.8 | 44.8 |
31~40 | 18.8 | 20.0 | 19.5 | 20.8 |
41~50 | 22.0 | 23.0 | 22.0 | 20.7 |
51~60 | 13.6 | 12.8 | 12.0 | 10.5 |
61~ | 3.5 | 3.5 | 3.7 | 3.2 |
計 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
受験資格別合格者内訳
2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | |
保健福祉系大学等卒業者(%) | 36.0 | 34.8 | 36.2 | 38.6 |
養成施設卒業者(%) | 64.0 | 65.2 | 63.8 | 61.4 |
計 | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
引用:「第 23 回精神保健福祉士国家試験の合格発表について」「第21回精神保健福祉士国家試験の合格発表について」
これらの結果を見ると、合格率は62%前後、合格者の男女比はおおよそ1:2であり、30歳以下が合格者の約4割を占めていることがわかります。
幅広い年齢層で合格者がいることから、年齢に関係なく合格を目指せる資格であることがわかります。働きながら合格を目指すことも十分可能だといえるでしょう。
また、養成施設卒業者が合格者の約6割を占めているため、福祉系大学等の卒業生でなくても勉強次第で合格する可能性は高いともいえます。
合格基準
精神保健福祉士国家試験の合格基準は、「総得点に対して60%程度の正答率が必要、かつ16科目群すべてに得点した場合」となっています。
つまり、1つでも得点できない科目があった場合、総得点の60%程度の正答率があっても合格できません。
また、試験科目の免除を受けた場合は、「総得点に対して60%程度の正答率が必要かつ受験した5科目群すべてに得点した場合」とされています。
ほかの福祉系資格と比較
ここでは精神保健の分野で活動する社会福祉士と臨床心理士、福祉系資格としてよく知られている介護福祉士を取り上げ、精神保健福祉士の合格率や受験者数と比較してみましょう。
受験者数(人) | 合格率(%) | 備考 | |
社会福祉士 | 35,287 | 29.3 | 2021年 |
臨床心理士 | 1,789 | 64.2 | 2020年 |
介護福祉士 | 84,483 | 71.0 | 2021年 |
精神保健福祉士 | 6,165 | 64.2 | 2021年 |
合格率だけを見ると社会福祉士以外の3つの資格は同じくらいの難易度に思えますが、「合格率が同じくらいだから」という理由だけで同じ難易度とはいえません。
実際には、受験生のバックグラウンドもそれぞれ異なるうえ、受験者数や合格者数により合格率は変動するため、指標の一つとして考えたほうがよいでしょう。
精神保健福祉士国家試験に合格するための対策
精神保健福祉士を目指すうえで最終的な目標とするのは、やはり国家試験合格です。そこで、ここからは精神保健福祉士国家試験を受ける際のポイントや、試験対策について解説します。
合格基準をしっかり把握する
試験というと、ついつい満点を目指してしまいがちです。しかし、精神保健福祉士国家試験には、合格基準があります。満点を目指すのではなく、総得点の60%をクリアすることを前提に準備を進めましょう。
精神保健福祉士の合格率は62%前後なので、しっかりと対策をすれば合格することは可能です。
また、試験対策として初めに教科書タイプのテキストを購入する方が多いと思いますが、その際は必ず最新版を用意してください。
最新の知識や情報が記載されていないテキストでは、試験対策が不利になってしまいます。
出題形式に慣れる
精神保健福祉士の国家試験は年1回しかチャンスがないため、試験の雰囲気に慣れておくことが重要です。
普段からできる対策として有効なのが、「本番の出題形式に慣れる」というものです。問題集を購入する際は、模擬問題のような試験と同じ出題形式になっているものを選ぶのがおすすめです。
4冊程度の問題集を繰り替えし解くことで合格した方もいます。出題形式に慣れるため、ぜひ、問題集も活用しましょう。
まずは一問一答形式の問題集で基礎を固め、ひととおり問題を解き終えたところで五肢択一方式になっている問題集に取りかかります。
間違った問題はテキストを読み返したり、問題集の解説を読んだりしてもう一度覚えましょう。その後、間違った問題のみ、正解するまで繰り返し解くのがポイントです。
弱点を把握するためには、実際の試験の過去問題を解くことも大切です。複数年分解けば、自信をもって本番の国家試験に臨むことができるでしょう。
精神保健福祉士国家試験の模擬試験や受験対策講座を実施している、一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟では、各種問題集を販売しています。
精神保健福祉士に関連する本を読んで教養を身に付ける
精神保健福祉士の勉強をするなかで心がけてほしいのは、テキストや問題集だけに偏らず、精神保健福祉士に関連するさまざまな本を読んで教養を身に付けるということです。
ここでは、実際に精神保健福祉士の国家試験を受けた方が、勉強中に読んで「良かった」と思った本を4冊ほど紹介します。
「はじめての社会保障 福祉を学ぶ人へ」椋野美智子・田中耕太郎/有斐閣
複雑な日本の社会保障制度をわかりやすく伝えてくれる1冊。繰り返し読むことで、より一層理解が深まります。2001年に初版が刊行されて、毎年のように改訂されています。
「社会福祉小六法」ミネルヴァ書房編集部/ミネルヴァ書房
民法、社会福祉法、障害者基本法などを押さえることで、各種制度などがわかりやすくなるため、国家試験対策として読んでおいて損はない1冊。
「改訂保健医療ソーシャルワーク実践2」社団法人日本社会福祉士会・社団法人日本医療社会事業協会/中央法規
ソーシャルワーカーの実践力・スキル向上を図るためのテキストです。医療ソーシャルワークに関わる人やソーシャルワーカーに読んでほしい1冊です。
「こんなとき私はどうしてきたか」中井久夫/医学書院
精神保健福祉に従事する人にとってバイブルとも称される1冊。精神科医としての体験からえた知見を医療従事者に伝える内容で、わかりやすく書かれています。
模擬試験を受ける
精神保健福祉士の国家試験を受ける前に、模擬試験を受ける方は多いと思います。本番を想定して試験に臨むことで、時間配分や理解が不十分だったところがわかるため、一度は受けておきたいものです。
また、正解率の高い問題をミスしていないか、自己採点で確認することも重要です。正解率の高い問題でミスしてしまうのはとてももったいないことなので、「必ず正解する」と自信が持てるまで、繰り返し復習するとよいでしょう。
精神保健福祉士の他にも、社会福祉士や介護福祉士などの資格を持つ、はっしーa.k.a邪悪ばうあーさんが、模擬試験の知られざる特典を紹介しています。
まとめ
精神保健福祉士国家試験を受けるには、受験資格をクリアする必要があります。まずは公式ホームページで、受験資格があるかどうか確認しておきましょう。
試験は年1回行なわれており、合格率は62%前後となっています。幅広い年齢層から合格者がでているため、働きながら合格を目指す方も諦めずに勉強を続けてください。
試験対策としては満点を目指すのではなく、全試験範囲の60%以上を確実に解答できるように勉強をすることがポイントです。一問一答形式の問題集を活用しながら知識の定着を図り、過去問や模擬試験などを活用し本番の試験に備えましょう。