証券アナリストの対策方法は?資格取得の流れや難易度も解説

証券アナリストは、金融・投資のプロとして一定水準に達していることを証明できる、金融機関勤務の方にとって憧れの資格。最近では、2024年からの拡充・恒久化が決まったNISAの解説でも引っ張りだこですよね。

そんな華々しい資格だけに、自分に取得できるか不安に感じて、資格取得への挑戦に二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、証券アナリストは、計画性を持ってしっかり対策すれば取得できる資格です。

この記事では、証券アナリスト資格の概要資格取得の流れや難易度を解説し、具体的な受験対策についてお伝えします。

証券アナリスト資格とは?

証券アナリスト資格は、公益社団法人日本証券アナリスト協会(以下「日本証券アナリスト協会」または「協会」)が主催する、認知度の高い民間資格です。

資格取得に至る学習過程で、証券分析、企業価値分析、ファイナンス理論、経済・市場・金融商品の仕組みなどに関して、幅広い知識を身につけていきます。

証券アナリストとして働く上で資格は必須ではありませんが、証券アナリスト資格は金融・投資の専門知識を資産運用や事業戦略などに活かせる人材であることの証。資格保有者はより社内外からの信頼を得ることができるでしょう。

証券アナリスト資格は、第1次試験と第2次試験の2段階選抜からなる証券アナリスト試験に合格し、3年間の実務経験を積むことで取得できます。

参考: 日本証券アナリスト協会

証券アナリスト資格の保有者は?

証券アナリスト協会の2022年9月末時点のデータによると、証券アナリスト資格の保有者の約7割が金融機関、投資運用会社に所属しています。

一方で、一般の事業会社などに勤務する証券アナリストも全体の16%を占めており、この資格で求められる知識が証券分析にとどまらないことがわかります。

なお、資格保有者全体に対して学生の占める割合は低く、直近5年間では第2次試験合格者のうち1.4%程度となっています。

出典:日本証券アナリスト協会「CMAとは」 日本証券アナリスト協会「試験データ」

証券アナリスト資格取得のメリット

証券アナリスト資格取得のメリットは、何といっても、体系的に身につけた知識が業務のレベルアップにつながることです。

証券分析などの知識が金融機関で役立つのはもちろんですが、事業会社においても、企業価値を向上させる業務や、投資家に向けて情報発信を行うIR活動などに知識を活用することが期待されます。

また、資格の認知度が高いことも資格取得のメリットです。資格取得によって知識が客観的に証明され、社内での評価が高まることが期待できます。資格を名刺に記載すれば、社外の方からの信頼を高めることもできるでしょう。

気になる年収は全国平均で1,000万円程度(令和3年賃金構造基本統計調査)と、かなりの高水準です。

なお、第1次試験3科目の合格者や、第2次試験の合格後に実務経験がない方も、「検定会員補」として日本証券アナリスト協会に登録することが可能です。名刺に検定会員補の称号を使用できるので、大学生は就職活動でアピールするために取得を目指すのもよいでしょう。

証券アナリスト試験とは? 難易度は高い?

ここでは、証券アナリスト資格取得に必要な、第1次試験と第2次試験の2段階選抜からなる証券アナリスト試験の概要や難易度について解説します。

試験の概要

第1次試験は例年、春と秋の年2回実施されます。同じ日に3つの科目別試験が行われ、受験の申し込みも科目別です。この試験では、マークシート式の答案用紙が使用されます。

第2次試験は年1回、例年6月上旬に実施されます。すべての学習分野が試験範囲で、大部分が記述式の応用問題です。

いずれの試験も国内9都市、海外3都市の試験会場で実施されます。

なお、日本証券アナリスト協会は、2021年に15年ぶりとなる講座・試験の見直しと変更を行いました。新プログラムによる第1次試験は2022年にスタートし、第2次試験も2023年から開始されます。

新プログラムでは、学習内容が下表のように第1次・第2次共通の6分野に再編されました。それに伴い、第1次試験の科目名が「科目Ⅰ・科目Ⅱ・科目Ⅲ」に変わっています。

プログラム改定に伴い、改定前のプログラムで行われた第1次試験(2021年秋試験まで)に合格した科目がある場合、改定後のプログラムの科目に合格したものとして扱うといった経過措置がとられています。

難易度

試験の難易度を測るには、合格率が一つの目安になります。過去5年間の証券アナリスト試験の合格率は、第1次試験、第2次試験とも50%前後です。

人気国家資格である宅地建物取引士の合格率は17.0%(2022年度)、行政書士の合格率は11.18%(2021年度)であり、これらの資格と比べると、さほど難関ではありません。

同じ金融系資格の証券外務員(一種)では、一般受験者の合格率は71.7%(2021年度)となっています。なお、証券外務員試験は○×方式および5肢選択方式ですが、証券アナリストは第2次試験が記述式です。

一般的には、証券外務員試験よりも証券アナリスト試験の方が難しいといわれています。しかし、学習内容の難しさに惑わされることなく、合格できる水準を目指すことが大切です。

金融機関で働く人にとって必須資格ともいわれている証券外務員については、こちらで紹介しています。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/7359/

証券アナリスト資格取得の流れと費用

ここからは、実際に資格を取得するまでの流れ具体的な費用について見ていきましょう。

資格取得の流れ

証券アナリスト試験の受験資格を得るためには、日本証券アナリスト協会が実施する通信講座を受けることが必須となります。講座は、第1次レベル講座と第2次レベル講座で構成されています。

第1次レベル講座

まずは、第1次レベル講座の6つの学習分野(先述の「試験の概要」参照)を一括で受講します。受講を終えたあと、受講年度の翌年以降に第1次試験の3科目が受験可能です。

受験できる期間は3年間ですが、未合格科目が残っている場合でも、第1次レベル講座を再度受ければさらに3年間未合格科目の受験ができ、合格している科目の実績も失効しません。

第2次レベル講座

第1次試験の3科目すべてに合格したら、合格年を含む3年以内第2次レベル講座の受講を開始します。受講を終えたあと、受講年度の翌年から3年間、第2次試験を受けることが可能です。

この期間内に合格できない場合、すぐに第2次レベル講座を再度受けなければなりません。再受講しなかった場合は、第1次試験の合格実績がすべて取り消され、第1次レベル講座からやり直しになります。

資格取得までにかかる費用

証券アナリストの資格取得までにかかる費用は、2022年度の税込み金額で下表のとおりです。

第2次試験合格と実務経験3年の要件を満たして協会の入会手続きを行い、入会金1万円を支払うことで、検定会員として「日本証券アナリスト協会 認定アナリスト」の資格称号を使用できるようになります。これがいわゆる「証券アナリスト資格取得」です。

その後は年会費1万8,000円を支払い、資格を維持します。なお、満65歳以上の会員は、年会費1万2,000円です。会員は、証券分析を中心とする金融・資本市場に関する幅広いテーマを紹介する月刊機関誌「証券アナリストジャーナル」を購読することができます。

※価格はすべて2022年12月時点での情報です。

証券アナリストの受験対策は?

証券アナリストを目指す際には、資格取得までのスケジュールと、第1次試験・第2次試験それぞれの特徴を考慮することが大切です。また、リニューアルされた協会の講座を上手に活用するとよいでしょう。

受験スケジュールを立てる

証券アナリスト資格は、学習開始から資格取得までが長丁場です。第2次試験合格までに必要な勉強時間は、平均で200時間程度。講座を受講をした翌年から試験の申し込みが可能になるため、資格取得までは一般的に1年半から2年ほどを要します。

効率よく資格取得を目指すなら、予備校の利用を検討するのも一つの手。いずれにせよ、自分のスケジュールに合わせて学習と受験の計画を立てましょう。

第1次試験は年2回実施されるため、一度に何科目を受験するか工夫の余地があります。ただ、3科目まとめて合格を目指したほうが、横断的に科目の理解が深まり効率的です。

なお、第1次試験では、科目Ⅰ(証券分析とポートフォリオ・マネジメント)の配点が高く、3科目合計360点のうち170点となっています。相応の準備をしてから試験に臨みましょう。

リニューアルされた協会の講座テキストと公式サイトの活用

日本証券アナリスト協会の通信講座は、基本的にテキストによる自主学習です。

リニューアルされた新プログラムは、講座テキストに沿って学習を進めていくことで、試験に合格できる知識・能力を着実に習得できるように作成されています。

また、学習の進め方などをまとめている、協会公式の解説書も見逃せません。解説書のなかでは、数理的な知識に自信がない受講者に対して、新分野「数量分析と確率・統計」を先行して学習することがポイントと掲載されています。

協会のプログラムがリニューアルされる前は、受験者は主に資格専門学校が発行するテキストと問題集で学習していました。

過去の受験者からそのような話を聞いて不安を覚える場合は、まず協会テキストで学習を進め、必要に応じて資格専門学校のテキストを検討するとよいでしょう。

そして、依然として過去問は大きな武器になります。講座の受講者は協会公式サイトのマイページから過去5年分の過去問と解答(PDF)の閲覧ができるほか、「CMA e-Learning」ボタンから過去の第1次試験問題を試験年別、科目別、分野別に検索して学習することも可能です。ぜひ活用しましょう。

第1次試験対策はテキストと過去問で

証券アナリストの第1次試験では、各科目の基礎的な内容が問われます。

講座テキストで基礎的な内容を学習して問題を解き、再度テキストに立ち返って知識を深めていく学習方法が有効です。

また、講座テキストと並行して過去問にも取り組みましょう。過去問の出題傾向から勉強すべきポイントをつかむことで、効率よく学習を進められます。

過去問を繰り返して解法を会得し、同様の問題に対する反応速度を上げておくと、試験本番における解答のスピードアップにもつながるでしょう。

第2次試験対策は理解重視で

証券アナリスト第2次試験の出題形式は、計算問題を含む記述式の応用問題です。全分野が出題対象で、採点にあたっては記述内容の論旨展開が重視されます。

対策としては、日々のニュースを教材にして、市場の変動要因について筋の通った考えを持つ訓練をしておくと役立つでしょう。過去問に取り組むときも、解説をよく読んで、解答を導く考え方を理解することが大切です。

また、「職業倫理・行為基準」では、職業倫理がプロとしての職務遂行において知識と同様に重要であるとの認識から、一定以上の点数が求められます。

基本を押さえれば満点が取れる内容で、貴重な得点源にもなるため、取りこぼさないよう学習しましょう。

持ち込む電卓の使い方に慣れておく

証券アナリストの試験では、関数電卓・金融電卓の持ち込みが可能です。

普通の電卓で解けない問題は多くありますが、解答スピードを上げるためには使用したほうがよいでしょう。

とはいえ、普段使い慣れていない電卓を試験で使用するのは難しいため、練習問題を解くときから使い込んだうえで、試験に持ち込むことをおすすめします。

まとめ

今回は、証券アナリスト資格取得の流れや試験の対策方法を紹介しました。

証券アナリストの試験は、第1次試験・第2次試験で構成され、合格率はともに50%前後です。試験を受けるには、日本証券アナリスト協会の講座を受ける必要があります。

試験合格のためには、協会の講座テキスト・過去問・公式サイトを活用したり、日頃から市場の動きを論理的に説明できるよう意識したりすることが大切です。

証券や企業の価値について分析し、投資運用に活かすことのできる人材は、今後ますます需要が高まると予想されます。証券アナリストの資格を取得することで、金融・投資のプロフェッショナルとしての新たな道が開けるでしょう。

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