過去の失敗にクヨクヨしたり、将来が心配になって悩んだり、私たちの心は常に揺れ動いています。特別なことが起こらなくても、日常的に私たちはストレスにさらされています。心が疲れてしまうことで心身に悪影響が出ることも少なくありません。
このようなメンタルヘルスの向上やストレスマネジメントのために、国内外の多くの有名企業がマインドフルネスを取り入れたことが、近年話題となりました。
この記事ではマインドフルネスの概要とプログラムや資格講座について紹介します。
マインドフルネスとは
今この瞬間に集中する状態
マインドフルネスとは、今この瞬間に集中する状態のことを指します。目の前のことだけを意識して、自分自身を客観視することで、不安や心配に支配されることなく心穏やかに過ごすことができるとされています。
日本マインドフルネス学会は、マインドフルネスを以下のように定義しています。
今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること
https://mindfulness.jp.net/
現在、広く行われているマインドフルネスは宗教色が取り除かれていますが、そもそもの由来は仏教にあります。パーリ語で仏教用語のサティ(sati、サンスクリットではsmṛti)を英訳したものがマインドフルネスです。日本語では「念」「気づき」と呼ばれています。
一般的には、マインドフルネスの状態に導く実践方法まで含めて、マインドフルネスと呼ばれています。瞑想のイメージが強いマインドフルネスですが、あくまで瞑想は実践方法の一つです。
西洋医学の治療プログラムとして活用
仏教がベースになりますが、西洋医学においてもマインドフルネスを取り入れた治療プログラムが世界各地の病院やクリニックで行われています。きっかけとなったのは、1970年代に登場したマインドフルネスストレス低減法(MBSR, Mindfulness Based Stress Reduction)です。
マインドフルネスストレス低減法は、ストレスを低減するために開発された8週間のプログラムです。アメリカのマサチューセッツ大学医学部のジョン・カバット・ジン博士によって開発され、乾癬の回復スピードが促進されるなどの効果が確認されています。
また、マインドフルネスストレス低減法をベースに誕生したマインドフルネス認知療法は、うつ病の再発予防などに用いられています。
マインドフルネスには集中力や記憶力の向上に効果が明らかになっています。さらに、感情のコントロール力の向上、痛みの緩和、脳の活性化、老化の予防なども期待されています。
企業が社員研修や福利厚生で導入
Googleの社員研修プログラムの「サーチ・インサイド・ユアセルフ」は、職務遂行能力やリーダーシップ、幸福感を高めることを目的に、科学に基づいてマインドフルネスを日々実践しやすい形にしたものです。書籍化もされています。
この他にも、福利厚生の一つとして、社内に瞑想ルームを設置する企業が数多くみられます。日本では、トヨタ自動車やヤフー等でマインドフルネスが社員研修に取り入れられています。
海外では、学校などの教育現場でもマインドフルネスのプログラムが用いられています。
マインドフルネスを始めるには
マインドフルネスは姿勢を正して呼吸を意識することをベースに、瞑想やヨガなどの実践方法を通して行われています。
マインドフルネスの実践方法
瞑想
マインドフルネスで一般的に行なわれている瞑想は、仏教のヴィパッサナー瞑想を原型としています。体と呼吸と心に集中して行うもので、マインドフルネス瞑想と呼ばれています。
NHKのEテレ「きょうの健康」でも、瞑想のやり方が紹介されました。インターネットで視聴することができます。以下のウェブサイトで紹介されいます。
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_699.html
ヨガ
ヨガの中にはフィットネス要素を重視したものもありますが、元来は心を静めるために全身を使ったポーズと呼吸、瞑想がセットになったものです。ヨガとマインドフルネスは古代インドをルーツとしていることもあり、多くの共通点があります。
マインドフルネスのトレーニングとして行われるヨガは、心を静めて自分を客観的に観察して、今この瞬間に集中するためのものです。マインドフルネスヨガと呼ばれることも多くあります。
瞑想やヨガの他にも、頭部から足裏まで順に意識を体に集中させる瞑想の一つでもあるボディスキャン、自分の思いや考えを紙に書くジャーナリングなどがあります。
マインドフルネスのデメリット、リスク
マインドフルネスは、独学で長時間行うと「禅病」のリスクが高まるとされています。禅病とは誤った坐禅修行による精神的・身体的に不安定な状態になることで、江戸時代に僧侶が禅病になった記録が残っています。
マインドフルネスのプログラムや資格講座
マインドフルネスを行うためのプログラムは対面形式だけでなく、オンラインでも行われています。体系的に学びたい場合には、世界的に有名なマインドフルネスストレス低減法や、マインドフルネスのための資格講座の受講もお勧めです。
マインドフルネスストレス低減法
マインドフルネスストレス低減法を開発したマサチューセッツ大学医学部マインドフルネスセンターによるプログラム(英語)はオンラインで行われているので、日本でも受講できます。
日本でもMBSR 研究会や東京マインドフルネスセンター、インターナショナルマインドフルネスセンターなどで受講することができます。費用は60,000~80,000万円程度が多いです。
https://www.mbsr-study-group.com/
https://tokyo-mindfulness-center.jp/program/about-program/mbsr/
https://www.mindfulness-japan.org/open/
マインドフルネススペシャリスト
日本能力開発推進協会による「マインドフルネススペシャリスト」は、マインドフルネスによって平常心を維持して、モチベーションや幸福感を高め、自己実現に必要な「心のしなやかさ」を保てるだけの知識やスキルを備えていることを証明するものです。
認定教育機関のキャリアカレッジによる通信講座のマインドフルネス実践講座を受講して、マインドフルネススペシャリスト資格試験に合格すると取得できます。講座の受講期間の目安はおよそ3か月、受講料は39,600円、マインドフルネススペシャリスト資格試験の受験料は5,600円です。
https://www.jadp-society.or.jp/course/mindfulness/
マインドフルネス講師養成講座
オーガニックコスメ、アロマやハーブ製品を販売するニールズヤードのマインドフルネス講師養成講座を受講すると、ディプロマが授与されて、20分のマインドケアセッションが行えるようになります。新たに勉強したい方はもちろん、すでに運営しているご自身のサロンや教室にマインドフルネスをメニューとして追加したい方にもお勧めです。
4回の録画講座と1回のzoom講座を受講して課題を提出します。費用は66,000円です。
https://www.nealsyard.co.jp/school/meditation/k_meditation.html
(価格は税込みで、2021年1月現在のものです)
気軽に試してみたい場合には、瞑想や睡眠などを音声ガイドでサポートするアプリを活用する方法もあります。
まとめ
コロナ禍で働き方や生活に大きな変化が起こりました。そのため、ストレスや不安が大きくなったり、心の不調を感じたりする方も少なくありません。ストレスマネジメントの重要性は、今後ますます高まるでしょう。
ストレスの軽減やストレスマネジメントにも効果が期待できるマインドフルネスを毎日の生活の中に取り入れてみませんか。