
専門的な知識やスキルが必要な診療情報管理士は、医療機関においても需要の高い職業です。
診療情報管理士の資格取得を目指し、有効な試験対策について知りたいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、診療情報管理士の仕事内容とメリット、概要や試験内容、試験対策に使える勉強法3選を紹介します。
診療情報管理士の仕事内容&メリット

まずは、診療情報管理士の仕事内容とメリットを解説します。診療情報管理士として働く魅力がわかります。
おもな仕事はカルテ情報の管理
診療情報管理士のおもな仕事は、カルテの情報を記録して、管理・運用することです。医師の診療内容、検査や看護の記録などを、国際疾病分類(ICDコーディング)にしたがって整理し、データベースへ登録します。
また、ほかの仕事には以下が挙げられます。
- がん登録
- サマリーの未記入分の作成依頼
- 診療録点検報告書の作成
- DPC (Diagnosis Procedure Combination)
がん登録では、がんに関する情報をデータベース管理することによって、医療政策の立案や評価へと役立てられます。また、サマリーとは患者に対する看護の経過や状態を記録した文書のことで、未記入のサマリーがある場合は医師へ作成を依頼する必要があります。
診療録点検報告書は、退院サマリー作成率や、診療録の点検などの統計情報をもとに作成し、院長へ提出しなければなりません。
DPCとは、包括医療費支払い制度方式のことで、従来とは異なる医療費の計算方法です。厚生労働省が定めた「傷病名」と「診療行為」の組み合わせにより、1日あたりの入院費が決定します。
診療情報管理士を目指す人にも、病院で働いている人にも、実際の仕事内容がよく分かると多くの人が紹介している本がこちらです。
将来性に期待できる
診療情報管理士には、高い将来性が期待できるというメリットがあります。近年、カルテの電子化など医療現場においてもIT化が推進されています。
DXの波は病院にも影響を与えています。前述のとおりカルテ情報がデータベース化され、その情報の利用は病院内にとどまらず、日本国内・全世界で活用されます。業務では、より専門性の高い知識とスキルが求められます。診療情報管理士は将来性が高く、継続的な求人が見込まれます。
医療機関に専任の診療情報管理者がいることで、患者1人につき診療報酬が加点される診療録管理体制加算制度があります。医療施設の経営にも関わってくるため、診療情報管理士の需要は高いといえるでしょう。
ワークライフバランスが取りやすい
診療情報管理士は一般的に夜勤がないため、プライベートの時間を確保しやすいというメリットもあります。日中をメインに働き、夜は家族との時間をゆっくり過ごすことも可能です。
仕事面においても専門性が高いため、知識やスキルを高めていくことで、仕事に対するやりがいを見出せるでしょう。
診療情報管理士のように事務業務で医療を支える仕事であるメディカルアシスタントについて、こちらで紹介しています。

診療情報管理士とは医療情報を管理する専門家
診療情報管理士の資格の概要と受験資格を解説します。
診療情報管理士は民間資格
診療情報管理士とは、医療機関のカルテを点検・管理したり、診療情報を分析したりする専門家を指します。もともとは1972年、日本病院会が診療録管理士の養成を通信講座で開始したことが起源となっています。
その後、1996年に診療情報管理士へと資格名が変更されました。
診療情報管理士は民間資格であるため、資格を有していない方でも診療情報の管理自体は可能です。しかし、有資格者であれば所持している知識やスキルを証明できるため、就職や転職で有利になるというメリットがあります。
受験資格が必要
診療情報管理士になるためには、日本病院会が実施する診療情報管理士認定試験に合格する必要があります。ただし、試験の受験資格を得るためには、次のいずれかの条件を満たさなければなりません。
まず1つ目は、日本病院会が指定する大学もしくは専門学校を卒業すること。2022年4月時点で、指定大学数は20校、専門学校数は47校あります。診療情報管理士の試験対策講座を単位に組み込んでいる大学もあるため、必要に応じて選ぶとよいでしょう。
2つ目は、大学や短期大学を卒業後、日本病院会が実施している2年制の通信講座を修了すること。
ただし、最終学歴が高卒であっても、現在病院に勤務している場合は、通信教育の受講が当分の間可能です。通信教育は、基礎課程が1年、専門課程が1年の合計2年ですが、医師や薬剤師、視能訓練士など指定の資格に該当する場合は、専門課程への編入もできます。

診療情報管理士の試験対策!試験内容と合格率は?
診療情報管理士の資格取得に向けて、試験内容と合格率について解説します。試験対策としても、しっかりとチェックしておきましょう。
試験問題は2つの分野から出題
診療情報管理士の試験問題は、基礎分野と専門分野の2つの分野から出題されます。
基礎分野では、「臨床医学総論」や「臨床医学各論Ⅰ」など臨床医学に関する科目が多く、専門分野では医療管理や診療情報管理に関する科目が多いことが特徴です。2つの分野とも、12章の設問にそれぞれ1時間の試験時間が設けられています。
出題範囲が広く専門性も高いため、事前の試験対策をしっかりと行ったうえで試験に臨む必要があります。
試験は、マークシート方式で解答し、合格基準点は各分野100点満点に対して60点以上です。ただし、医師や歯科医師、理学療法士など対象となる資格を持っている方は、申請すると基礎分野の試験を免除してもらえます。
試験会場は全国各地に設けられ、例年2月に年1回開催されています。受験料は1万円(税込)です。
※2022年8月時点の価格です。
近年の合格率は40~60%台
診療情報管理士の近年の合格率は、40~60%台です。2022年度に開催された試験の合格率も66.7%となっています。
2022年度(第15回)
- 受験者数:2,625人
- 合格者数:1,750人
- 合格率:66.7%
なお、同じ医療系の資格である理学療法士の2022年度試験は合格率が79.6%です。理学療法士に比べて診療情報管理士は少し合格率が低いことがわかります。
診療情報管理士の難易度は比較的高いといえるため、事前にしっかりと試験対策をしておきましょう。
診療情報管理士の試験対策におすすめの勉強法3選
ここからは、診療情報管理士の試験対策としておすすめの勉強法を3つ紹介します。
ポイントや図を書き込む
テキストなどを用いた学習を進める際は、重要なポイントや図、表などを書き込みながら学習するとよいでしょう。あとで見返しやすいように要点をわかりやすく整理しておけば、効率よく知識を定着させられます。
また、間違えた問題に対して目印をつけておくと、自分が苦手とする問題を重点的に復習できます。最終的にはテキストへ記載されている問題をすべて克服することで、有効な試験対策となるでしょう。
語呂合わせで覚える
語呂合わせで覚える方法を活用することで、効率的な暗記が可能です。特に、診療情報管理士の試験科目の一つである国際疾病分類は全22章と試験範囲が広いため、語呂合わせの暗記が活きてきます。
国際疾病分類(ICDコーディング)とはWHOが作成した統計分類のことで、疾患やケガの状態などが、アルファベットと数字のコードによって表されています。例えば、「Eコードは栄養のE」など語呂合わせで覚えることで、スムーズに暗記できるでしょう。
その他の暗記法としては、キーワードを関連づけながら覚える方法も試験対策としておすすめです。
試験前は模擬試験を解く
試験の1週間前を迎えたあたりから、模擬試験を解くことに専念するとよいでしょう。試験の直前に新しい学習をはじめても、焦りを招いてしまい、勉強が思うように捗らない可能性が高いためです。
模擬試験は、頻出問題や予想問題をメインに構成されているため、効率的な学習ができるというメリットもあります。しっかりと学習計画を立てて、試験の合格を目指しましょう。
まとめ
診療情報管理士の試験対策となる勉強法や、メリットを以下にまとめます。
- 試験は2つの分野から出題され、近年の合格率は40~60%台
- 試験対策には、ポイントや図を書き込んだり、語呂合わせで暗記したりする勉強法がおすすめ
- カルテ情報の管理・運用がメインとなる仕事で、ワークライフバランスも取りやすい
診療情報管理士は業務を通じて、医療からITまで幅広い知識とスキルを身につけられるため、やりがいを感じながら長く働けるでしょう。
診療情報管理士の試験合格を目指す方は、今回の試験対策もぜひ参考にしてみてください。