メンタルヘルスとは|健全な生活に大切な「こころの健康」

「メンタルヘルス」という言葉が広く知られるようになって久しく、近年は企業内で社会人のメンタルヘルスケアを重視する動きが高まり、関わる人材の需要も増加しています。そこで、ここではその意味や重要性、資格や検定などをご紹介します。

メンタルヘルスとは

「メンタルヘルス」という言葉を聞いて何を思い浮かべるでしょう。うつ病や統合失調症などのこころの病気をイメージする人も多いのではないでしょうか。

実は、誤解されやすいのですが、メンタルヘルスはこころの病気を指す言葉ではありません。メンタルヘルスが示すのは「こころの健康状態」。こころの健康が保たれていない状態=メンタルヘルスに不調をきたしている状態は、社会生活や身体の健康にも影響を及ぼします。

メンタルヘルスケアが注目される背景

平成12年、厚生労働省により、労働者のメンタルヘルスケアを推奨する「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」が発表されました。職場でのメンタルヘルス対策を積極的に行おうという取り組みです。

この指針が発表された背景には、増加する労働者の精神障がいの発症があります。長時間労働による過労や職場でのパワハラなどは精神障がい発症の要因にもなり、「感情労働」「ブラック企業」といった言葉に世の中が敏感になってきたこともあり、リスクマネジメント的な意味でもメンタルヘルス対策に取り組む企業が増えています。それにともない、メンタルヘルス関連の有資格者など、メンタルヘルスに関わる仕事ができる人材を求める声も高まっています。

メンタルヘルスに関する資格・検定

メンタルヘルスに関する資格や検定には、国家資格と民間資格(検定)があり、特に民間資格が多いのがメンタルヘルス分野の特徴。資格により果たせる役割が異なり、その分、資格や検定の数も多いのです。以下で代表的な国家資格・民間資格を紹介します。

国家資格

企業において健康管理を行う産業医や産業看護師など、医師や看護師、保健師の中にもメンタルヘルスに関わる仕事をしている人はいますが、ここでは特にメンタルヘルスに関わりが強い国家資格を紹介します。

公認心理師

日本初の心理系国家資格が公認心理師。2017年に施行された「公認心理師法」に基づいて創設された比較的新しい資格です。心理学に関する専門知識と技術をもち、こころの問題を抱える人やその周囲の人をサポートしたり、メンタルヘルスに関する情報提供や教育を施したりするのが仕事になります。資格を取得するには、受験資格は所定の科目について大学、大学院等での履修、または長期の実務経験が必要で、その後年に1回行われる国家試験への合格が必要です。

精神保健福祉士

精神に障がいをもつ人たちに社会復帰のためのサポートを施したり、助言をしたりできるのが精神保健福祉士です。社会福祉士と混同されがちですが、精神保健福祉士は精神障がい者のみに対象が絞られているのが特徴。以前は精神保健福祉士の就職先というと医療系の職場がほとんどでしたが、近年は「産業ソーシャルワーカー(働く個人が抱える問題を解決するための相談役)」として企業と契約する精神保健福祉士も増えています。精神保健福祉士も年1回の国家資格に合格することで資格所持者となります。

民間資格

民間資格は国家資格に比べハードルが低く、受験資格が設けられていないものも多くあります。メンタルヘルス領域に興味があれば、まず民間資格から挑戦してみるのもよいでしょう。

メンタルヘルス・マネジメント🄬検定

国家資格のような専門的な知識や技術ではなく、メンタルヘルスの基礎や対処法を学ぶのがメンタルヘルス・マネジメント🄬検定。大阪商工会議所、施行商工会議所が主催しています。検定は基本的に労働者を対象としており、一般社員、管理職、人事労務管理スタッフおよび経営幹部と企業での役割ごとの3つのコースが設けられています。受験資格に制限はなく、誰でも望むコースの受験が可能。「人事労務管理スタッフおよび経営幹部」向け試験が年に1回、それ以外の2つは年2回試験が実施されます。就職や転職を有利にするというよりも、メンタルヘルスを学び、セルフケアや職場でのメンタルヘルス対策に役立てたいという人が受験することが多いです。

試験学習においては、主催団体から販売されている公式テキストを使っての独学が多いようです。独学だと不安な人は、同じく主催団体で受験対策用のWEB講座(税込9,000円~13,000円)を設けているのでそちらを受講するのもおすすめ。資格の学校TACやLEC東京リーガルマインド、ユーキャンでも講座を設けています。

メンタルヘルス・マネジメント検定試験 | 働く人たちの心の健康と活力ある職場づくりのために
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ケアストレスカウンセラー

ケアストレスカウンセラーは、内閣府認可の財団法人職業技能振興会が認定する資格で、こころのケアが行える人材であることを証明するものになります。これだけで就職・転職が有利になるというものではなく、セルフケアや家族・友人など周囲の人へのケアに役立つ知識を身につけることが主な目的です。ケアストレスカウンセラーを名乗るには認定試験への合格が必要。試験は18歳以上であれば誰でも受験できます。

試験は販売されている公式テキストから出題されるので独学での合格も可能です。一方、通信講座も設けられており、ヒューマンアカデミー「たのまな」から申し込みができます。34,000円(税込)と独学よりも費用がかかりますが、講師に直接質問できるなど、独学にはないメリットがあります。

ケアストレスカウンセラー資格取得者は、その上位資格である「青少年ケアストレスカウンセラー」「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」「高齢者ケアストレスカウンセラー」の資格取得も目指せます。

https://fos.or.jp/%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC/

産業カウンセラー

一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する心理職で、職場でのメンタルヘルス対策をサポートしたり、労働者の人間関係やキャリア形成についてのカウンセリングを行ったりするのが主な職務。心理カウンセラーに比べ、活躍の場が企業内に特化しているのが特徴です。同協会が主催する産業カウンセラー試験(年1回実施)に合格し、登録することで産業カウンセラーを名乗ることができます。試験には受験資格が設けられており、同協会が行う産業カウンセラー養成講座(税込297,000円)を修了する、もしくは既定の学歴を所持していることが条件となります。

一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

産業カウンセラー養成講座を受講したm-cafeさんのブログをご紹介。講座の内容が詳しく書かれていますので参考にしてみてください。

ストレスチェックコンサルタント

一般社団法人全国心理業連合会が認定する民間資格です。2015年から、50人以上の従業員がいる事業所は年に1度のストレスチェックの実施が義務付けられました。ストレスチェックコンサルタントは、ストレスチェックについて深い知識をもち、ストレスチェックの実施や診断結果の活かし方などを支援できることを証明する資格です。同連合会が主催するストレスチェックコンサルタント資格取得講習(税別107,000円)を受講し、認定試験に合格することで取得できます。企業の人事・総務担当者やメンタルヘルス関連の職に就いている人がより活躍範囲を広げるには最適な資格です。

ストレスチェックコンサルタント|全国心理業連合会(全心連)
全心連公認ストレスチェックコンサルタントは、ストレスチェック制度を熟知し、一連の流れをサポートし、さらにこの制度が企業のメンタルヘルス対策として効果的に作用するよう、コンサルテーションできる人材です。3日間の講習(※保持資格等により、講習期間の優遇条件あり)と試験を受けていただくことにより、全心連公認ストレスチェックコ...

メンタルヘルスケアの講師を目指す講座も

NPO法人日本メンタルヘルスケアサポート協会や一般社団法人日本メンタルヘルス講師認定協会では、メンタルヘルスの講師として講習会や研修会を行えるようになるための講座を設けています。講座を受講し試験に合格すれば、協会が主催する講座や研修の講師として活躍できるものも。メンタルヘルスを学ぶだけでなくその知識を広く伝えたい、企業内でなく独立して仕事にしたいという人は最終的に講師を目指してみてもよいかもしれません。

まとめ

メンタルヘルスの問題から休職や失職に追い込まれる人も少なくない現代。メンタルヘルスを学ぶことは、自分を守ることにつながると言っても過言ではないでしょう。

メンタルヘルスの関心が高まる中で、関連した資格や講座も次々誕生しています。ただ、前述したとおり、それぞれの資格で活躍の場や役割は異なります。職場でのメンタルヘルスケアに活かしたいか、自身や周りの人に役立てたいかによっても学ぶ内容は変わってくるでしょう。資格取得・講座受講を検討する際は、「メンタルヘルスを学んでどう活かしたいか」といった、自身の目的を明確にすることが大切です。

(※文中の価格は2021年1月現在のものです。)

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