管理業務主任者とは | マンション管理の専門家

国土交通省によると、日本には築40年超のマンションが令和元年に約91.8万戸あり、マンション全体の約14%を占めます。さらに11年後の令和11年には約2.3倍の213.5万戸、 20年後の令和22年に約4.2倍の384.5万戸になると予想されています。

老朽化が進むにつれて、マンションの管理の重要性はさらに高まります。この記事では、マンション管理を担う管理業務主任者の仕事内容と、管理業務主任者試験について紹介します。

管理業務主任者とは

管理業務主任者は、マンション管理に関する国家資格です。仕事内容を紹介する前に、マンション管理がどのように行われているのか説明しましょう。

マンション管理は、マンションの所有者である区分所有者が集まって管理組合を設立して、所有者自身が管理を行ないます。マンションの管理と一口にいっても、行なうことはさまざまです。入り口など共用部の清掃、エレベーターなどの設備の保守点検や、管理員の窓口業務は日常的に行わなくてはなりません。さらに管理組合の会計処理や大規模修繕の計画のような、専門的な知識が必要とされる業務もあります。

そのため、ほとんどの管理組合では専門業者である管理会社に管理業務を委託しています。法律により管理会社には、管理する管理組合数が30につき一人以上の管理業務主任者を設置する義務が定められています。

管理業務主任者には、4つの独占業務があります。

  • 管理受託契約前の重要事項説明
  • 重要事項に関する書面への記名・押印
  • 管理受託契約にかかる契約書への記名・押印
  • 管理事務に関する報告

管理業務主任者は、これらの独占業務に加えてマンション管理のマネジメント業務全般を行なっています。

管理業務主任者と併せて取得がお勧めの資格は

マンション管理の国家資格には、管理業務主任者の他にマンション管理士があります。

マンション管理士は、管理組合のメンバーであるマンション所有者の立場に立って管理会社や管理業務主任者が適切な業務を行っているか監督や助言を行います。

管理業務主任者試験とマンション管理士試験は試験範囲の多くが重なっており、合格をサポートする講座も二つの資格をセットにしているものが多数あります。二つの資格にはそれぞれ出題免除もあり、管理業務主任者とマンション管理士の2つの資格の取得を目指す方も多いです。

しかし、マンション管理士試験は管理業務主任者よりも難易度が高いといわれています。合格に必要な勉強時間も管理業務主任者が200~300時間に対して、マンション管理士は500~600時間とされており、2つの資格の取得を目指す際には注意が必要です。

マンション管理士の他にも、宅地建物取引の際に口頭で説明を行なう役割を持つ国家資格の宅地建物取引士は管理業務主任者と試験範囲が重なる部分が多いことから、管理業務主任者と併せて取得を目指す方が多くいます。管理業務主任者と宅地建物取引士の2つの資格を持てば、建築会社、不動産管理会社、金融機関への就職・転職の際に有利になるでしょう。宅地建物取引士資格試験は、例年管理業務主任者試験の約1か月半前に実施されているので、ダブル受験で合格を目指す方も多いです。

宅地建物取引士については、こちらをご覧ください。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/1247/


管理業務主任者試験とは

管理業務主任者として仕事を行なうには、まず国家試験である管理業務主任者試験に合格しなくてはなりません。

合格後に管理業務主任者の登録を行ない、管理業務主任者証の交付を受けます。管理業務の実務経験が2年以上ない場合には、登録前に「管理業務主任者登録に係る登録実務講習」を受講します。

日時・場所・受験料

管理業務主任者の試験は年に1回、毎年12月初めに行われています。

令和2年度は、 2020年12月 6日に北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県、沖縄県の全国8か所で行われました。2020年の受験料は8,900円(非課税)です。 

受験資格・試験内容

管理業務主任者試験には受験資格はなく、年齢、学歴、実務経験などによる制限は一切ありません。

試験はマークシート形式で行われて、マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則第64条で規定されている以下の範囲から50問出題されます。

マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則第64条で規定されている項目想定される管理業務主任者試験の内容
1.管理事務の委託契約に関すること民法(「契約」及び契約の特別な類型としての「委託契約」を締結する観点から必要なもの)、マンション標準管理委託契約書等
2.管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること簿記、財務諸表論 等
3.建物及び附属設備の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること建築物の構造及び概要、建築物に使用されている主な材料の概要、建築物の部位の名称等、建築設備の概要、建築物の維持保全に関する知識及びその関係法令(建築基準法、水道法等)、建築物の劣化、修繕工事の内容及びその実施の手続きに関する事項等
4.マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関することマンションの管理の適正化の推進に関する法律、マンション管理適正化指針 等
5.上記1.から4.に掲げるもののほか管理事務の実施に関すること建物の区分所有等に関する法律(管理規約、集会に関すること等管理事務の実施を行うにつき必要なもの)等
一般社団法人マンション管理業協会「管理業務主任者試験の実施について」より

マンション管理士試験の合格者は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること」の5問が免除となり、出題数は45問となります。

合格点・合格率

合格基準点は毎年変動していて、およそ7割の得点を獲得すれば合格できるとされています。1問1点で50問出題されて、満点は50点です。令和元年度の合格基準点は34点、一部免除者は29点でした。合格率は例年20%程度です。

令和元年度は受験者数が15,591 人で合格者数が3,617人、合格率は23.2%でした。

試験の詳細は、公式サイトをご確認ください。過去の試験問題もダウンロードできます。

http://www.kanrikyo.or.jp/kanri/siken.html

管理業務主任者試験に合格するには

独学

管理業務主任者試験には受験資格はないので、独学で合格を目指すことも可能です。

宅地建物取引士とダブル合格を目指したともちゃさんが、受験勉強のコツを紹介しています。

問題を丁寧に読むことを心がけた→問われている内容がキチンと理解できた

間違えた問題は必ずテキストに戻って確認→正解がなぜ正解なのか理解できる (※この時間違えた問題には×マークをつけておく)

3周終えたら、4週目は×マークが1つでもついている問題を順に解く。5周目は×が2つ以上、6週目は×が3つ以上と問題を解く。

https://www.mtomocha33.xyz/entry/takkenn-kangyou-dokugaku

法律の改正が行われることもあるので、テキストは必ず最新版を使用しましょう。合格者の方が多くつかっているテキストはこちらです。

スクール・講座

管理業務主任者試験の合格をサポートしてくれる講座は、日建学院、ネクスタ、フォーサイト、ユーキャン、アガルートアカデミー、スタディングなどで実施されています。ほとんどの講座がマンション管理士試験対策とセットになっていて、費用は6万円~8万円のものが多いです。

これらのスクールや講座は、ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)や、教育訓練給付制度の対象になっている場合もあります。

ハロートレーニングは、就職に必要な職業スキルや知識を無料で学ぶことができる制度です(テキスト代など実費のみ自己負担)。詳細は、最寄りのハローワークへお問い合わせください。

対象になる学校がお近くにあるか、こちらで調べられます。通いたい地域を選んだら「詳しい検索条件を開く」をクリックして、フリーワードに「管理業務主任者」と入れて検索してください。

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/kensaku/GECA150010.do?action=initDisp&screenId=GECA150010

教育訓練給付制度とは、支払った費用の一部が国から支給されるお得な制度です(金額に上限あり)。教育訓練給付制度の概要や支給要件等は、こちらで紹介しています。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/841/

まとめ

マンションは若年層に人気と以前は言われていましたが、最近は庭などの手入れなどを自分で行わなくてはならない戸建てを敬遠して、管理が整っているマンションに住みたいと考える高齢者も増えています。

マンションには欠かせない管理の専門家である管理業務主任者、あなたも目指してみませんか。

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