リテールマーケティング(販売士)検定合格のための対策や注意点を解説!

IT産業の急速な発達やライフスタイルの変化により、ネット販売の台頭など流通業界や小売業界を取り巻く環境は大きく変化してきています。
多様化する消費者のニーズに対応し、喜ばれるサービスを提供する「販売員のプロ」がリテールマーケティング(販売士)です。

この記事では、リテールマーケティング(販売士)検定試験の概要や対策を解説します。

リテールマーケティング(販売士)とは?

リテールマーケティング(販売士)は、日本商工会議所が実施する「リテールマーケティング(販売士)検定試験」に合格した人のことです。

2015年度より「販売士検定試験」から「リテールマーケティング検定試験」に呼称が変更されたので、ここでは「リテールマーケティング(販売士)」と表記します。なお、従来どおり正式名称は「販売士検定試験」、合格者の称号は「販売士」のままです。

参考:浜松商工会議所「販売士検定試験の呼称が「リテールマーケティング検定」に変わります」

「リテールマーケティング(販売士)検定」に合格した販売のスペシャリスト

店舗の販売員には、商品知識や販売・接客技術が必要です。そして、売り場のマネージャーには在庫管理や売り場づくりの知識が欠かせません。

リテールマーケティング(販売士)検定試験は、こうした知識や技術だけではなくマーケティングや経営管理まで幅広い知識を身につけることのできる、流通・小売り分野で唯一の公的資格です。資格に合格することで「販売のプロ」とみなされます。

接客業を対象にした試験に、サービス接遇検定があります。サービス接遇検定は、ホテルや航空、医療、金融などさまざまな業界のサービス・接客業務に関する知識が問われる試験です。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/3424/

リテールマーケティング(販売士)が活躍するのは?

リテールマーケティング(販売士)検定を取得するメリットは、接客技術やマーケティングに関する知識などを身につけている「リテールマーケティング(販売士)」になれることです。

リテールマーケティング(販売士)はスーパー、ホームセンター、専門店、百貨店など小売業界全般でニーズがある人材です。
また、サービス業やメーカー、流通業界など幅広い業種でも、陳列や仕入、在庫管理などの商品知識、マーチャンダイジングの基礎知識を活かせるでしょう。

リテールマーケティング(販売士)検定はどんな試験?

リテールマーケティング(販売士)検定は受験資格が設けられておらず、誰でも受験することができます。販売業務に携わる様々な業種で役に立つだけではなく、会社内で社員教育や管理職の昇進条件として活用されることもある資格です。
1~3級まであり、どの級から受験しても問題ありません。ここからは各級ごとの内容を解説していきます。

リテールマーケティング(販売士)検定3級

3級では、売り場の販売員として働くうえで必要となる接客や売り場づくりのノウハウ、流通や小売業界の基礎知識が身につくことを目指します。難易度が低いため、接客・販売経験者にとっては比較的簡単に取得できるかもしれません。

試験科目・小売業の類型
・マーチャンダイジング
・ストアオペレーション
・マーケティング
・販売・経営管理
出題形式<1科目あたり>
・択一式正誤問題:小問10問
・択一式穴埋問題:小問10問
(5科目合計で100問)
試験時間60分(5科目合計)
合格基準平均の得点が70点以上かつ、1科目ごとの得点が50点以上
受験料4,400円
※事務手数料550円が別途発生します。
出典:日本商工会議所「3級」
※2024年5月時点の情報です。

合否は試験終了時に判定されます。ただし、後述する「科目免除」を利用して受験した場合には、判定までに2週間程度かかります。

合格者には後日、販売士認定証(カード)が受験申込時に登録した自宅宛てに郵送されます。

リテールマーケティング(販売士)検定2級

2級では、店舗や現場の管理者として必要な流通業界でのマーケティングや、マーチャンダイジングの高度な専門知識、現場を包括的に管理できる能力を目指します

3級レベルの販売や流通の基礎知識に加え、マネジメント能力などの専門的な知識が必要になるので、資格取得のためには計画的に勉強する必要があります。

試験科目・小売業の類型
・マーチャンダイジング
・ストアオペレーション
・マーケティング
・販売・経営管理
出題形式<1科目あたり>
・択一式正誤問題:小問10問
・択一式穴埋問題:小問10問
(5科目合計で100問)
試験時間70分(5科目合計)
合格基準平均の得点が70点以上かつ、1科目ごとの得点が50点以上
受験料6,600円
※事務手数料550円が別途発生します。
出典:日本商工会議所「2級」
※2024年5月時点の情報です。

合否は試験終了時に判定されます。ただし、後述する「科目免除」を利用して受験した場合には、判定までに2週間程度かかります。

合格者には後日、販売士認定証(カード)が受験申込時に登録した自宅宛てに郵送されます。

リテールマーケティング(販売士)検定1級

1級は、経営者やコンサルタントとして経営に関する専門的な知識を身につけ、経営管理を適切に行なうことのできる人物を目指します

経営戦略の立案やマーケティング分析による販売計画設計など、高度な知識を問われることが多いため、試験対策にはしっかりと時間をかける必要があるでしょう。

試験科目・小売業の類型
・マーチャンダイジング
・ストアオペレーション
・マーケティング
・販売・経営管理
出題形式<1科目あたり>
・記述式穴埋問題:小問10問
・択一式穴埋問題:小問10問
(5科目合計で100問)
※「記述式穴埋問題」は、問題文中の空欄に最も適当な語句・短文を入力するもの。
試験時間90分(5科目合計)
合格基準各科目70点以上
受験料8,800円
※事務手数料550円が別途発生します。
出典:日本商工会議所「1級」
※2024年5月時点の情報です。

合否は試験終了時に判定されます。ただし、後述する「科目合格」を利用して受験した場合には、判定までに2週間程度かかります。

合格者には後日、販売士認定証(カード)が受験申込時に登録した自宅宛てに郵送されます。

リテールマーケティング(販売士)検定の合格率と難易度

リテールマーケティング(販売士)検定は1~3級まであり、数が小さくなるにつれて上級の資格となり難易度が上がります。
CTB方式が導入されて以降~2023年11月現在の各級の合格率は下記の通りです。

期間1級2級3級
2023.4.1~2023.6.3020.5%54.2%63.9%
2022.4.1~2023.3.3121.1%55.4%57.1%
2021.7.28~2022.3.3117.2%55.5%63.0%
出典:商工会議所「リテールマーケティング(販売士)検定試験の受験者・合格率等データ」

3級は50%後半~60%前半、2級は約55%の合格率なので、2級と3級ではあまり難易度に差はないといえるでしょう。
しかし、1級の合格率は20%前後と低く、2級・3級と比較すると1級の難易度はかなり高いことがわかります。

リテールマーケティング(販売士)検定合格のための対策

検定に合格するためには試験内容を確認し、計画的に勉強することが大切です。受験の際には無理のない試験日を選び、計画的に学習を進めましょう。

リテールマーケティング(販売士)検定の勉強時間と対策

リテールマーケティング(販売士)検定は独学で取得可能な資格ですが、検定合格を目指すためには、適切な学習計画を立てて対策する必要があります。経験などによって個人差はありますが、リテールマーケティング(販売士)検定合格に必要な勉強時間は、3級が30時間程度、2級で60~70時間程度、1級は100時間以上といわれています。

日本商工会議所のリテールマーケティング(販売士)検定に関するページでは、学習方法として、販売士ハンドブックなどの教材や講座が紹介されています。

https://www.kentei.ne.jp/retailsales/class1/books

https://www.kentei.ne.jp/retailsales/class2/books

https://www.kentei.ne.jp/retailsales/class3/books

実際の試験問題では3級は90%以上、2級は80%以上、1級は70%以上、販売士ハンドブックから出題されます。そのため、販売士ハンドブックを中心に学習を進めるとよいでしょう。
なお、2・3級は50点未満、1級は70点未満の科目が1つでもあると不合格になるので、すべての科目をバランス良く学習することが大切です。

ハンドブックで知識を身につけたら、過去問を利用して頻出分野や出題傾向を把握し、実践力を高めましょう。

多くの方が使って合格した参考書はこちらです。

テキスト学習以外にも、通信教育講座や講習会で対策を行なうのもおすすめです。指定された講座などに参加した場合は、一部の受験科目が免除されることもあるので、自分に合った学習スタイルで合格を目指してください。

2021年度以降のネット試験CBT方式のための対策

2021年度から、すべての級がCBT方式というインターネットでの試験に変更されました。

これまでは、年2回(1級は年1回)指定の会場でペーパー形式によって実施されていた試験が、全国300ヵ所のテストセンターで随時受験が可能に。
試験科目や内容は変わりませんが、試験時間は1級が200分から90分に、2級が150分から70分に、3級が100分から60分にと、大幅に短縮されました。

CBT方式の体験版をCBTSのリテールマーケティング(販売士)検定試験から試せますので、1度体験しておきましょう。また、CBT試験方式のサンプル問題も公開されているので参考にしてください。

リテールマーケティング(販売士)検定についての注意点

ここでは、リテールマーケティング(販売士)検定試験を受ける際の注意点を紹介します。

科目免除制度・科目合格制度がある

リテールマーケティング(販売士)検定の2級と3級では一定の条件を満たした場合、受験科目の免除申請が可能です。また、1級では科目合格制度が導入されています
ここでは、それぞれの制度について詳しく解説していきます。

3級「科目免除制度」

3級の科目免除を受けるには4つの方法があります。

  1. 日本商工会議所が開催する「3級販売士養成講習会」の受講と予備試験の合格
  2. 日本商工会議所指定の通信教育機関による「3級養成通信教育講座」の修了とスクーリングを受講&修了
  3. 日本商工会議所指定の通信教育機関による「販売士3級オンライン養成教育講座」の修了と確認テスト(予備試験)に合格
  4. 公益財団法人全国商業高等学校協会(全商協会)主催の「商業経済検定試験」の所定の科目に合格

各講座や試験によって免除を受けられる3級の科目は異なるので注意が必要です。なお、受験日に有効期限を超えている場合は科目免除が適用されません

講座・試験名免除科目免除の有効期限
3級販売士養成講習会販売・経営管理受講修了日(予備試験合格日)の属する年度の翌年度末まで
3級養成通信教育講座販売・経営管理受講修了日の属する年度の翌年度末まで
販売士2級オンライン養成教育講座販売・経営管理受講修了日(確認テスト(予備試験)合格日)の属する年度の翌年度末まで
出典:商工会議所「試験科目の一部免除について」
試験名全商協会商業経済検定 合格科目免除科目有効期限
全商協会商業経済検定・ビジネス基礎・マーケティング(2科目合格)・マーケティング(1科目免除)受験日の属する年度の翌年度末まで
・ビジネス基礎・マーケティング   +(1)経済活動と法(2)ビジネス経済A(3)ビジネス経済Bの3科目のうちいずれか1科目(3科目合格)・マーケティング・販売・経営管理(2科目免除)
出典:商工会議所「試験科目の一部免除について」

科目免除された場合でも試験時間や受験料は変わりません。
また、科目免除を利用する場合には、試験申込時に各証明書が必要なので、事前に準備しておきましょう。

2級「科目免除制度」

2級の科目免除を受けるには3つの方法があります。

  1. 日本商工会議所が開催する「2級販売士養成講習会」の受講と予備試験の合格
  2. 日本商工会議所指定の通信教育機関による「2級養成通信教育講座」の修了とスクーリングを受講&修了
  3. 日本商工会議所指定の通信教育機関による「販売士2級オンライン養成教育講座」の修了と確認テスト(予備試験)に合格

どの講座を受講しても免除科目は「販売・経営管理」の1科目のみです。なお、受験日に有効期限を超えている場合は科目免除が適用されません

講座名免除科目免除の有効期限
2級販売士養成講習会販売・経営管理受講修了日(予備試験合格日)の属する年度の翌年度末まで
2級養成通信教育講座販売・経営管理受講修了日の属する年度の翌年度末まで
販売士2級オンライン養成教育講座販売・経営管理受講修了日(確認テスト(予備試験)合格日)の属する年度の翌年度末まで
出典:商工会議所「試験科目の一部免除について」

科目免除された場合でも試験時間や受験料は変わりません。
また、科目免除を利用する場合には、試験申込時に各証明書が必要なので、事前に準備しておきましょう。

1級「科目合格制度」

1級の試験が不合格だった場合でも、70点以上の科目については科目合格として、科目合格した受験日の翌年度末までは、試験でその科目が免除されます
たとえば、2023年9月に1級を受験し「マーケティング」科目を科目合格(70点以上)した場合、2025年3月末まで科目合格が適用されます。有効期限内であれば、何度受験しても「マーケティング」は科目合格となります。

科目合格を適用した場合でも試験時間や受験料は変わりません。
また、科目合格を適用した場合には、試験申込時に合格済みの科目のスコアレポートの画像を必要数すべてマイページから登録する必要があります。

リテールマーケティング(販売士)資格は更新手続きが必要

時代の変化に対応し、販売員としての能力を維持するために、販売士は5年ごとに資格を更新しなければなりません

更新手続きを行うには日本商工会議所による「資格更新通信教育講座」または「資格更新講習会」のどちらかを受講・修了する必要があります。なお、2023年度は「資格更新講習会」の開催はありません。

資格更新までの流れは下記の通りです。

  1. 講座申込をする
  2. 更新料を払う
  3. テキストが届く
  4. テキストで勉強する
  5. 確認テストに合格する

リテールマーケティング(販売士)資格の更新料(講座受講料+更新手数料)は1級が7,700円、2級が7,450円、3級が6,380円(2024年5月現在)となっています。
講座の申し込みをしただけでは受講できません。忘れずに更新料を支払いましょう。

更新料を支払うと更新講座のテキストが届きます。テキストを勉強し、確認テストに合格すると資格の更新ができます。

更新手続きを行なわなかった場合、有効期限切れ1年以内であれば「遅延更新」として資格の登録を継続が可能です。有効期限が切れてから1年を経過した場合は「遅延更新」の手続きもできず、原則として資格失効となります。

更新のために学習してテストを受験すると、最新の知識を入手することができます。実際に更新した方々も、更新によって知識を深めることができたと紹介しています。

まとめ

小売業や流通業で販売のプロとして活躍できるのが、リテールマーケティング(販売士)です。販売士の試験はすべての級で共通する5科目から出題されますが、難易度は級によって大きく異なります。
しかし、問題の多くが販売士ハンドブックから出題されるので、無理のない学習計画を立てたうえで対策を進めましょう。

2021年度からはインターネット試験(CBT試験)になり試験時間も短縮しています。過去問だけではなく、予想問題集もバランス良く取り入れて、合格を目指しましょう。

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