
クールジャパンとして海外から注目を集める日本。アニメや漫画などから日本に興味を持ち、日本語を勉強しようと考える外国の方は多く、日本語教師の需要は国内外で高まっています。
また、少子高齢化が進む現在、年々不足していく若い働き手を確保するため、外国人労働者を多く受け入れようとする動きがあります。こうした動きの中で、日本語教師の需要は今以上にさらに高まっていくことが予想されます。
この記事では、将来性の高い仕事である日本語教師のなり方や、民間資格である日本語教育能力検定試験の試験概要、取得方法等を紹介していきます。
日本語教師ってどんな仕事?
日本語教師とは、外国人に国内外の日本語学校で日本語を教える仕事です。
全て日本語で授業を行う場合もあれば、英語などの外国語を交えて授業を行う場合があります。授業スタイルは日本語学校によって異なりますが、日本国内の学校では全て日本語で授業を行う形式が主流のようです。
一見、日本語が母国語の人であれば誰でもできそうに思えますが、ただ日本語話者として生徒に接すればいいというわけではなく、文法や単語といった語学的な知識に加え、サブカルチャーを含めた日本文化の知識を通じて、日本という国のことを短い授業時間の中で生徒たちに教えていくことが求められます。
専門性が高く、やりがいのある仕事といえるでしょう。
日本語教師になるために資格は必要?
現時点では日本語教師には教員免許のような決まった資格はなく、個人やオンライン、海外で授業をする分には資格は必要ありません。
しかし、外国人留学生に大学など以外で在留資格「留学」を取得させ受け入れることができる法務省告示校の日本語学校の教員になるためには、国が定める3つの要件のいずれかを満たす必要があります。
ただ、法務省告示校以外でも国の3つの要件を求人の応募条件にしている日本語学校が多いため、実質的に無資格で日本語教師になることはかなり難しいと言えるでしょう。
法務省告示校で日本語教師になる3つのルート
①日本語教育能力検定試験に合格する
公益財団法人日本国際教育支援協会が実施する民間試験に合格するルートです。
学歴や年齢に関係なく、試験に合格すれば誰でも日本語教師になることができますが、本格的に採用を目指すなら試験とは別に実際に生徒に「教える」訓練が必須です。
3つのルートの中で、唯一学歴が関係なく、勉強の仕方によっては負担する費用を抑えることできるのが特徴です。
②大卒資格+日本語教員養成講座420時間を修了する
文部科学省届出受理講座の420時間養成講座を修了するルートです。3ヶ月~1年ほどの通学が必要で、教育機関によって費用や通学スタイルが異なります。
国が認可している日本語教員養成講座を開講している機関・団体の一覧はこちらから確認できるので、自分の家の近くに対象の機関・団体があるかチェックしてみましょう。
また、一部講座は教育訓練給付金の対象講座に指定されているため、なるべく費用を抑えたい方は対象講座かどうか調べてみてもいいでしょう。
教育訓練給付金の記事はこちら!

また、少し前までは420時間の講座を修了すれば学歴関係なく日本語教師になれたのですが、法改正により現在は大卒以上の学歴が必須となりました。
③大学や大学院で日本語教育を勉強する
4年制大学や大学院で日本語教育について専攻するルートです。通信制の大学もありますが、基本的に卒業まで4年間通う必要があります。
日本語教師養成課程が設置されている大学はこちらから確認することができます。
一発勝負の試験とは違い、確実に日本語教師を目指すことができます。3つのルートの中で、1番費用も時間も掛かるのが特徴です。
国家資格「公認日本語教師」って?
現在日本語教師になるためのルートは複数あり、学歴も教師個人によってそれぞれ異なるため、教師のレベルにかなりばらつきがあることが問題になっています。
そこで、教師のレベルを一定水準まで引き上げ、より優れた教師を養成するため、文化庁は今後日本語教師の資格を教員免許のような国家資格にする計画を審議しています。具体的には、現行の資格取得要件を変更し、「日本語教育能力を判定する試験」「教育実習の修了」「学士以上の学位」の3つの要件を満たした者を「公認日本語教師」として認定するという制度です。新制度のイメージ図はこちらから確認できます。
この制度は2020年度以降に施行される予定ですが、残念ながら2020年11月現在これといった進展はみられません。
高卒や短大卒で学士を持っていない…!という方は、早めに現行の制度で資格を取得することをおすすめします。公認日本語教師制度が施行されても、暫くは経過措置の期間が設けられるので、学士がない方は今の内に資格取得を目指しましょう。

日本語教育能力検定試験
ここからは現行の3つのルートの1つである日本語教育能力検定試験について解説します。この試験は日本語教師になるために必要な基礎知識を問う検定で、学歴や国籍による受験資格はありません。
試験概要
試験内容
試験は3科目に分かれています。
試験Ⅰ | 90分/100点 | マークシート方式 |
試験Ⅱ | 30分/40点 | 聴解問題 |
試験Ⅲ | 120分/100点 | マークシート方式+記述式 |
試験Ⅱで躓く方が多いようなので、暗記とともに聴解問題(英語のリスニングに近いです)の対策をしっかりすることが合格のポイントです。
出題範囲は以下の通りです。
- 社会・文化・地域
- 言語と社会
- 言語と心理
- 言語と教育
- 言語一般
専門的な知識が多く、単純な日本語力だけが問われるわけではありません。あくまで日本語教師としての基礎知識を問う問題が出題されます。
日程・会場
例年は年に1回10月下旬に行われます。
会場は全国の主要都市に設定されていて、令和2年度は札幌、仙台、東京、愛知、大阪、広島、福岡の7都市で行われました。東京や大阪など、1つの都市に複数の会場が設定されている都市もあります。
申し込み方法・受験料
全国の書店で販売されている願書を購入し、申し込み期間中に所定の出願書類を郵送することで受験の申し込みができます。
受験料は税込み10,800円です。
合格率・難易度
令和元年度の合格率は28%です。ここ数年は22%~28%の間で合格率が推移しているようで、4~5人に1人は合格者がいる計算になります。難易度としては妥当と言えるでしょう。
気になる合格ラインですが、こちらは公表されていません。ただ、ネット上の受験生たちの声を参考にするなら、7割がボーダーに近いようなので、ボーダーより少し上めの8割くらいの得点を目指して勉強するといいかもしれません。
学習方法は?
独学の場合
日本語教育検定試験は過去問の繰り返しがキーとなるようです。
まずはテキストが欲しい!という方はこちらはいかがでしょうか?
多くの人が難航するという聴解問題の攻略法にはこちらがおすすめ。
こちらの泰国阿房列車さんは独学での受験勉強の進め方を紹介しています。

こちらのねねきちさんは聴解問題のコツについてブログで詳しく解説しています。

他にも体験談や受験勉強レポートを上げている方はたくさんいるので、受験を迷っている方はまずネットの声を探してみてもいいかもしれません。
通信教育など
独学だとちょっと不安…という方は、通信教育がおすすめです。ユーキャンやたのまな、アルク、株式会社篠研などで検定試験対策講座が開講されています。
費用は6万円~13万円程度と幅があります。また、教育訓練給付金制度の対象講座もあるため、まずは資料請求やサイトを見て情報を集め、自分に合った講座を選んでいきましょう。

まとめ
現在、日本語教師になるためには学歴は問われませんし、資格も必要ありません。
しかし、今後は公認日本語教師として国家資格に格上げされる動きがあるため、短大卒や高卒の方で日本語教師への転就職を考えている方は、今のうちに資格を取得しておくことをおすすめします。
日本語教育能力検定試験は決して簡単ではありませんが、難しすぎるということもないため、しっかりと勉強すれば誰でも取得が可能です。
外国の方に日本語を教えてみたい!グローバルに活躍する仕事がしたい!という方は一度資格取得を検討してみてはいかがでしょうか?