潜水士とは?資格試験と活躍できる仕事を紹介

潜水士とは、文字通り「水中に潜って作業を行なう人」のことです。人気ドラマや映画の影響から、海難救助を思い出す人も少なくないでしょう。しかし、潜水士が国家資格であることや、どのような場で活躍しているかについては、あまり一般的に知られていないかもしれません。
この記事では、潜水士の仕事内容や国家資格の取り方について解説し、どのような職業に生かせるのかを紹介します。

潜水士とは?

はじめに、潜水士という仕事と国家資格について解説します。

海洋作業に必須の国家資格

潜水士とは、潜水器を使って空気圧縮機や手押しポンプ、酸素ボンベから給気しながら、水中・海中での作業を担う専門職を指します。
水中・海中作業には体に水圧がかかることから、減圧症や肺の破裂といった高気圧障害の危険が伴います。したがって、正しい知識を持って事故を防ぎ、安全に作業を行なうために、国家資格である潜水士免許を取得しなくてはなりません。

潜水士免許は、労働安全衛生法と高気圧作業安全衛生規則に基づいた国家資格(免許)です。資格試験に合格すると、都道府県労働局長から資格を付与されます。なお、更新手続きは必要なく、一度取得すれば生涯有効です。

参考:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「資格の紹介 潜水士」

潜水士資格を取るメリット

潜水士の資格試験は学歴などに制限がなく、誰でも受検が可能です。さらに、試験内容も筆記試験のみで、実際に水中に潜るなどの実技試験はありません。
あくまでも、水中・海中で安全に作業するための正しい知識があるかどうかをはかる試験なので、潜水士の資格を取得しても仕事に直結するとは限りません。
多くの場合、実際に潜水士の仕事をするには潜水士資格とは別にダイビングスクールなどで潜水の技術を学び、経験を積まなければならないので注意してください。

ダイビングライセンス(Cカード)との違い

「水に潜る」と聞くとダイビングスクールで取得できる「ダイビングライセンス(以降、Cカード)」を思い浮かべる人もいるでしょう。実は、Cカードと潜水士資格は全く違うものです。

Cカードは、レクリエーションダイビング(趣味として行なうダイビング)を楽しむ人が、ダイビングの知識や技術を、ある「特定の時期」に、ある「特定の場所」で、習得したことを証明する民間のライセンスです。そのため、将来に渡って身につけた知識や技術を保証しているものではないのです。学科講習、プール講習、海洋実習の3つを受講して認定されます。海外では、リゾート地でダイビングの道具をレンタルする場合に、Cカードの提示を求められることが多くあります。

一方、潜水士資格は先述した通り、水中・海中作業をするにあたって必要な知識を身につけていることを証明する国家資格です。潜水の仕事に就くには必要な資格ですが、個人で趣味のダイビングをする際には不要です。なお、リゾート地などでダイビングを楽しむ際に、潜水士資格だけでは通用しません。なぜなら、潜水士の資格試験は学科のみであり、ダイビングで使う機材の使い方や潜り方、水中でのバランスのとり方などの実践的な潜水技術を身につけている証明にはならないためです。

趣味としてダイビングを行ないたい(潜りたい)のであれば「Cカード」、潜水を仕事として行ないたいのであれば「潜水士資格」の取得を目指しましょう。

参考:レジャーダイビング認定カード普及協議会

潜水士の資格試験の概要

潜水士試験について、試験のスケジュールや試験内容、難易度など試験の概要を紹介します。

受験資格と受験料

先に述べたように、潜水士の受験資格は特にありません。誰でも受検可能です。ただし、18歳未満で合格した場合は18歳になってからでないと免許申請ができないので注意しましょう。
潜水士試験は、公益財団法人 安全衛生技術試験協会の主催で行なわれ、受験料として8,800円が必要になります(2024年1月時点)。

試験のスケジュール

潜水士の国家試験は、全国7か所(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州)のセンターで、年間4~6回程度行なわれます。ただし、この回数や試験の日程はセンターによって異なるため、安全衛生技術試験協会のホームページで確認してください。

受験を希望する場合は、まず受験申請書を用意しましょう。協会本部もしくは最寄りのセンターに郵送で申し込むか、センターが案内している申請書の配布先(労働基準協会など)で入手できます。郵送で請求する場合には送料を負担しなければならないので覚えておいてください。
受験料は添付されている払込書を使って納付し、申請書や本人確認書類、証明写真を、受験するセンターに郵送もしくは持参で提出します。その後は受験票の到着を待ちましょう。

試験内容と試験時間

潜水士試験の受験科目は4科目で、出題数と配点、合格ラインは以下のとおりです。

試験科目出題数(配点)合格ライン
潜水業務10問(30点)12点以上
送気、潜降及び浮上10問(25点)10点以上
高気圧障害10問(25点)10点以上
関係法令10問(20点)8点以上
合計40問(100点)60点以上
出典:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「1.試験科目・試験時間」

試験は合計40問、すべてマークシート方式で、五肢択一式。試験時間は12:30~16:30の4時間通しで行なわれます。休憩時間がない点に注意してください。
合格ラインは4科目それぞれの得点率が40%以上かつ、全体の得点率が60%以上です。各科目の合格ラインぴったりの得点では全体の得点率は60%以上にはならないので、目標点は合格ラインを大きく上回るように設定しましょう。

難易度と合格率

潜水士試験の合格に必要な勉強時間は、10~20時間が目安といわれています。最短7日で合格した人もいるので、そこまで気負わなくても大丈夫です。
合格率は例年80%前後となっており、2022年度は76.5%でした。学科試験のみなので、比較的難易度は易しい試験と言えます。とはいえ、油断せずにしっかりと試験対策を行なうようにしましょう。

勉強方法と過去問

潜水士試験の勉強は、問題集やテキスト、模擬試験などを10~20時間程度集中して取り組めば合格可能です。
「解説がわかりやすく、模擬試験が3回分付いていて便利」と受検生から高評価を受けているテキストはこちら。

出題傾向としては、毎年ほぼ同じような問題が出されるため、過去問の研究が必須です。過去問の研究は参考書でも行なえますが、安全衛生技術試験協会のホームページでも、2回分の過去問が閲覧できます。

潜水士が活躍する6つの仕事

最後に、潜水士資格を取得した人が実際にどのような現場で活躍しているかを紹介します。おもに、次の6つのジャンルが挙げられます。

海洋調査

研究機関や調査機関に勤務する潜水士が行なうのが、海洋調査です。海洋調査では、海洋生物の調査・採取、海水の流れ・成分・温度の調査、海底の地質調査などを行ないます

水中土木作業

水中・海中での作業をともなう土木作業員としても、潜水士は活動します。
とはいえ、水中工事を請け負う建設会社はあまり多くないため、自社で潜水士を雇うケースは少ないようです。そのような場合は、海洋関係の会社に外注することが少なくありません。

災害や事故の救助

災害や海難事故で活躍する潜水士といえば、海上保安庁(潜水士)や海上自衛隊(潜水員)、警察官・消防の水難救助隊をイメージする人が多いかもしれません。
海上保安庁の潜水士になるには、まず海上保安官を目指す必要があります。海上保安庁の潜水士は巡視船艇乗組員などから選抜され、厳しい研修を受けなければならないため、簡単になれるものではないといえるでしょう。

サルベージ

サルベージとは、転覆や沈没、座礁した船舶を救助することを指し、沈没船の引き上げや遭難した船舶の曳航(えいこう)、遭難した船舶の乗組員・積み荷などの救助を行ないます。
サルベージを専門に行なう会社では、船舶に関わる海難事故に備え、作業員や技師とともに、潜水士が常駐している場合があります

水族館飼育員

水族館飼育員の仕事にはエサづくりや給餌、健康管理、水槽の掃除などがあり、潜水士の資格がなくてもなれます。しかし、大型の水槽を掃除する際には潜って掃除しなければならず、潜水士の資格が必要です。一部では潜水士の資格を応募条件とする求人もあります。

ダイビングインストラクター

ダイビングインストラクターはダイビングツアーのガイドやインストラクターの指導、店舗業務など所属するダイビングショップによって様々です。インストラクターライセンスがあれば、ダイビングインストラクターになれますが、沖縄県で活動する場合は潜水士の資格が必須となります。

潜水士の年収はどのくらい?

水中での作業という仕事の難易度と危険度の高さから給料は高めに設定されていることが多く、平均年収は600~700万円と言われています。ベテラン潜水士であれば1,000万円超えも夢ではありません。
しかし、勤務する企業や仕事内容、雇用形態などで年収は大きく異なり、厚生労働省の「職業情報提供サイト」では、潜水士の全国平均年収は約461万円ともいわれています(2022年12月時点)。
フリーランスか公務員か会社員か、正社員か非正規か、仕事の難易度が高いか低いかなど、様々な要素が給料に影響してくるので、平均年収はあくまでも参考程度としてとらえておくのがよいです。

まとめ

水中・海中の作業を担う潜水士になるためには国家資格(免許)が必要です。潜水士の資格試験は誰でもチャレンジができ、合格率が例年80%前後なので、比較的合格しやすい国家資格ともいえるでしょう。
しかし、実際に潜水士の資格を活かした職業に就く場合には、資格とは別に潜水技術を学びトレーニングを積まなければなりません。
潜水士に興味がある方や、将来潜水士になりたいと考えている方は、まず国家試験に挑戦することから始めましょう。

タイトルとURLをコピーしました