未経験から経理に転職するのにおすすめの資格は?日商簿記以外にも役立つ資格を紹介!

経理として日々の取引の記帳、損益計算書やキャッシュフロー計算書の作成、固定資産や減価償却の管理、決算書の作成など、企業の経済活動を記録し、適切に管理するには会計の一定のスキルと知識が求められます。経理の仕事は資格がなくてもできますが、業務に関連する資格を取得していれば、仕訳作業や伝票作成、決算書作成などに関する能力が身についていることを客観的に証明可能です。また、転職する際には応募条件として簿記などの資格が必要な場合が多いです。
この記事では未経験から経理の仕事に転職する際におすすめの資格や、簿記以外で役立つ資格を目的別に紹介します。

未経験から経理に転職したい方

経理の求人には実務経験を求められることが多いですが、未経験から経理に転職する際には基礎知識が身についていることが証明できると好印象を与えられます。まずは基本的な資格から取得を目指しましょう。

日商簿記2級・3級

「経理の資格といえば日商簿記」と言われるほど間違いなく取得しておくべき資格。
日商簿記は日本商工会議所が実施する、簿記の知識と技能を認定する試験です。企業の経済活動を金額で記録・整理し、財務状態や経営成績を明らかにするための簿記について学べます。1~3級と簿記初級まであり、数字が小さくなるにつれて難易度が高くなります。

2級では商業簿記と工業簿記の処理方法や会計実務が問われます。財務諸表の数字から経営内容・経営状況を理解できるなど、より高度な分析力を身につけることが可能です。
3級は主に小規模な商業企業の取引を記録するための基本的な簿記理論と実務技能が問われます。
2級と3級はどちらも年3回指定日時・会場で実施されるペーパー試験だけでなく、空席があれば希望の会場・日時に受験できるネット試験(CBT方式)に対応しています。また、3級を取らずに2級からの受験や、2級と3級を同じ日に受験することもできるので、取得までのスケジュールは比較的立てやすいと言えるでしょう。

仕訳などの基礎が学べる3級を取得していれば多くの求人に応募することができます。しかし、転職活動で強くアピールしたいのであれば、2級を取得しておくべきです。

関連記事:日商簿記検定とは|経理の知識を身に着けよう

項目内容
合格に必要な勉強時間の目安2級(3級の知識がある場合):150~250時間
3級:100~120時間
受験料2級:4,720円
3級:2,850円
 ※事務手数料550円が別途発生します
受験資格なし
公式サイト2級:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2
3級:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class3

ビジネス会計検定2級

ビジネス会計検定は、ビジネスの現場で必要とされる会計知識やスキルを認定するための検定試験です。財務諸表を読み解く力や、経営の意思決定に役立つ会計情報の活用能力に重きがおかれています。1~3級まであり、数字が小さくなるにつれて難易度が高くなります。
2級では3級で問われる財務諸表に関する用語や基礎知識に加えて、連結財務諸表の読み方や、より高度な分析力が求められます。
どの級から受験してもOKなので、3級を取得せずに2級の受験が可能です。3級から受験するか2級から受験するか迷った場合は、書店で公式テキストを読んで判断してください。なお、転職で有利になるのは2級からです。

ビジネス会計検定2級は日商簿記2級と同じくらいの難易度です。日商簿記では主に仕訳について問われますが、ビジネス会計検定では財務諸表の数字から経営状態を分析する力が問われます。会計の基本である簿記を理解していないとかなり難しいと感じるでしょう。まずは、日商簿記で基本を押さえてからビジネス会計検定に挑戦するのが良さそうです。

項目内容
合格に必要な勉強時間の目安100〜150時間
受験料7,480円
受験資格なし
公式サイトhttps://www.b-accounting.jp/

電子会計実務検定3級

電子会計実務検定は、会計や経理の分野で求められる電子会計処理の知識と技能を認定するための試験です。簿記の知識はもちろん、会計システムの操作能力や、「e-Tax」などの電子申告・電子納税、「e文書法」による帳簿・証憑書類の電子保存などの知識が問われます。対応している会計ソフトは弥生会計、勘定奉行、会計王、PCA会計の4種類。1~3級まであり、数字が小さくなるにつれて難易度が高くなります。
3級は企業の経理担当者など会計実務に携わる方や、一般社会人、学生などが対象。電子会計データの流れと電子会計情報の活用について問われます。

会計処理は紙の伝票や帳簿を使う従来の方法から、コンピュータやクラウドサービスを利用した方法に変化しています。取得すれば電子会計処理に対応できる人材であることを証明できるので、転職活動時に有利になるでしょう。

関連記事:電子会計実務検定とは|実務で使える簿記と会計ソフトの知識を!

項目内容
合格に必要な勉強時間の目安
受験料4,200円
受験資格なし
公式サイトhttps://www.kentei.ne.jp/accounting

経理で年収をアップさせたい方

すでに経理職に就いている方の中には「スキルアップして年収を上げたい」と考えている方もいるのではないでしょうか?
ここでは取得すると資格手当がもらえたり、独立を目指せたりする資格を紹介します。
いずれの資格も難易度はかなり高いですが、スペシャリストを目指すなら挑戦する価値はあるでしょう。

日商簿記1級

日商簿記1級は日本商工会議所が実施する日商簿記検定試験の最上級レベルです。簿記の理論と実務に関する高度な知識と技能を有していることが証明できます。難易度がかなり高く、合格率は約10~15%です。公認会計士や税理士などの国家資格への登竜門とも言われており、合格すると税理士試験の受験資格が得られます。なお、2級・3級はネット試験が実施されていますが、1級は年2回のペーパー試験のみです。

関連記事:日商簿記検定とは|経理の知識を身に着けよう

項目内容
受験資格なし
公式サイトhttps://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class1

公認会計士

公認会計士の資格は監査業務が行える唯一の国家資格です。公認会計士は、会計、監査、財務分析などの分野における高度な専門知識と技能を持ち、企業の財務諸表の監査を独立した立場で行う専門家。企業の透明性と信頼性を保証する重要な役割を担っています。
試験は金融庁の公認会計士・監査審査会が年に1回実施しています。

関連記事:公認会計士とは|会計監査・経営のスペシャリスト

項目内容
受験資格なし
公式サイトhttps://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/index.html

税理士

税理士は、税務に関する専門知識と技能を持つ専門家で、個人や企業の税務申告、税務相談、税務計画の策定、税務調査の対応などを行います。税理士の資格は国家資格であり、税務に関する高度な専門性を有していることを証明可能です。
試験を受けるには受験資格の要件を満たしていなければなりません。細かく定められているため、気になる方は一度確認してみると良いでしょう。

関連記事:税理士とは|安定・高収入を目指せる税務のプロフェッショナル

項目内容
受験資格要件あり
公式サイトhttps://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/zeirishi.htm

経理としてグローバルに活躍したい方

経理として国際的な活躍をしたい方におすすめの資格を紹介します。
海外で働くには経理に関する知識だけでなく英語力も必要です。自信のない方はTOEICなどの試験を通じて英語力も身につけましょう。

米国公認会計士(USCPA)

米国公認会計士(USCPA)は、米国各州が認定する公認会計士資格。会計、経理、財務、税務、法務などビジネスに生かせる知識が英語で出題されます。そのため、専門知識と英語で会計実務ができるスキルの証明としても広く認知されています。
取得すれば、監査法人やコンサルティングファーム、外資系企業への転職や就職においてアピール材料となるでしょう。

項目内容
受験資格要件あり(出願先の州によって異なる)
公式サイトhttps://nasba.org/exams/cpaexam/

米国公認管理会計士 (USCMA)

米国公認管理会計士(USCMA)は、管理会計および財務管理の分野における高度な専門知識と技能を認定する国際的な資格です。会計、財務分析、予算編成、戦略的計画、リスク管理など、企業の内部経営に関連する知識が問われます。
取得すると英語のレベルが高いという証明にもなるため、外資系企業への就職や転職では英語力のアピールツールとしても活用できます。

項目内容
受験資格要件あり
公式サイトhttps://asiapac.imanet.org/IMA-Certifications/CMA-Certification

業界別の経理資格

経理の業務内容は基本的に日商簿記検定で学ぶ商業簿記や工業簿記で対応可能です。しかし、独自の帳簿のつけ方が存在する業界もあります。
ここでは銀行業・建設業・農業・社会福祉法人の経理に関する資格について解説します。

なお、公務員にも会計事務がありますが日商簿記の知識があれば対応可能です。しかし、一般企業とは異なる公会計の入札業務などを行うこともあり、就職後に勉強をしなければならない場合もあります。

銀行業務検定

銀行業務検定は一般財団法人銀行業務検定協会によって実施されている、銀行業務の知識と技術を認定するための資格試験。主に銀行・保険・証券等金融機関で働いている方を対象としています。法務、財務、税務、年金、信託・証券、マネジメント、融資・渉外、外為、金融経済、預かり資産等、相続など23系統36種目あります。

銀行簿記だけを問われる系統はありませんが、経理業務と近いのは「財務」です。仕訳のやり方自体を問う問題は少ないですが、財務諸表からどういったことが言えるかを問う問題が出題されるので、日商簿記で身につけた知識が役立ちます。
なお、金融機関によっては資格取得が昇格の条件となっている場合もあるので、条件に合わせて資格の系統と種目を選ぶのも1つの手です。

項目内容
合格に必要な勉強時間の目安系統と種目によって異なる
受験料系統と種目によって異なる
受験資格なし
公式サイトhttps://www.kenteishiken.gr.jp/

建設業経理士・建設業経理事務士

建設業経理士・建設業経理事務士は、建設業に特化した会計や経理に関する知識及び技術を認定する資格。建設業の経理処理、財務管理、コスト管理などの分野における専門性を証明するもので、一般財団法人建設業振興基金によって実施されています。
試験は1~4級までのレベルがあり、数字が小さくなるにつれて難易度が高くなります。1級と2級は「建設業経理士検定試験」として年2回、3級と4級は「建設業経理事務士検定試験」として年1回実施されています。

建設業経理士・建設業経理事務士の資格は、建設業特有の会計処理や財務分析に関する深い知識を得られるため、企業の経営改善に直接貢献できる可能性も。
また、建設業経理士1級または2級取得者が在籍している建設会社は、公共工事の入札時に行われる経営事項審査(経審)で取得者人数に応じて加点されます。そのため建設会社にとっては、建設業経理士が多ければ多いほど入札時に有利になるのです。
もし、建築業界の経理でのキャリアアップや転職を検討している方は、建築業経理士2級の資格を取得することで自分のスキルを効果的にアピールできます。 
日商簿記3級程度の知識があれば、スムーズに学習を始められます。

関連記事:建築経理を学ぶメリットは?「建設業経理士」の勉強方法と試験対策を解説

項目内容
合格に必要な勉強時間の目安1級(1科目あたり):100時間程度
2級:80~100時間
3級:50時間程度
4級:-
受験料1級(1科目):8,120円
1級(2科目同時):11,420円
1級(3科目同時):14,720円
2級:7,120円
3級:5,820円
4級:4,720円
2級・3級(同日受験):12,620円
3級・4級(同日受験):10,220円
受験資格なし
公式サイトhttps://www.keiri-kentei.jp/

農業簿記検定

農業簿記検定は、農業経営に特化した簿記の知識を認定する試験です。農業経営者や農業に関わる人々が、農業経営における財務管理や経営分析を効果的に行うための専門知識と技術を身につけることを目的としています。
試験は1~3級までのレベルがあり、数字が小さくなるにつれて難易度が高くなります。

農業は他業種と比較すると保有資産が多く、生産物の種類も多いのが特徴。また、国からの補助金や借入れなども多くあり収支形態が複雑です。資格を取得すると、農業独自の帳簿作成方法だけでなく、農業に関する知識や日本の農業が抱える課題についての知識も得られます。そのため、農業金融や農協など農業関連企業や団体への就職・転職を目指しているのであれば取得しておいて損はないでしょう。さらに、1級を取得すれば「農業経理士®」として活躍する道も開けます。

関連記事:農家の経営対策に役立つ「農業経理士(R)」!資格を取る目的や勉強方法を解説

項目内容
合格に必要な勉強時間の目安1級:-
2級:-
3級:50時間程度
受験料1級:5,280円
2級:2,750円
3級:1,980円
受験資格なし
公式サイトhttp://www.jab-kentei.or.jp/agri-boki/

社会福祉法人経営実務検定

社会福祉法人経営実務検定は、社会福祉法人の運営に関連する知識及び実務能力を測る試験です。社会福祉法人の管理職や職員、または社会福祉を学ぶ学生など、社会福祉分野での経営や管理に興味がある方を対象にしています。2022年に名称が「社会福祉会計簿記認定試験」から「社会福祉法人経営実務検定試験」に変更されました。入門・会計3級・会計2級・会計1級・経営管理に分けられています。

入門では「社会福祉とは何か」という基礎的な内容、会計3級では会計処理の基本、会計2級と1級ではより高度な会計の知識が求められます。経営管理では社会福祉法人を経営していく上で欠かせない内容を学べます。

社会福祉法人における管理職や専門職としてのキャリアアップを望むのであれば、会計2級以上の取得を目指しましょう。未経験から社会福祉法人への転職を考えている場合は、入門や会計3級を取得すると志望度が高いことをアピールできます。

項目内容
合格に必要な勉強時間の目安経営管理:-
会計1級:-
会計2級:100時間程度
会計3級:-
入門:-
受験料経営管理:9,900円
会計1級:11,000円
会計2級:8,800円
会計3級:5,500円
入門:2,200円
受験資格なし
公式サイトhttps://www.zenkei.or.jp/exam/socialWelfare

まとめ

経理職は資格なしでも就けますが基礎知識がないと苦労することは間違いありません。また、経理未経験で転職を目指す場合、資格がなければ採用される可能性は低いです。
経理業務の基礎知識を身につけるには日商簿記が最適。まずは日商簿記3級・2級の取得を目標に勉強しましょう。そして基礎を固めた後にどのようなキャリアを積んでいきたいかを考え、目的に合った資格を目指すのがおすすめです。

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