歯科衛生士は、歯科医師のサポートや予防処置、保健指導を行っている歯科医療の国家資格です。国家試験に合格するために勉強を始める時期や、学校の授業以外の勉強方法がわからない方もいるのではないでしょうか。出題範囲の広い歯科衛生士国家試験は、早期から計画的に勉強することが重要です。
この記事では、歯科衛生士国家試験に合格するための勉強方法、集中力を切らさずに勉強を継続するコツなどについて詳しく解説します。歯科衛生士国家試験の対策についてお悩みの方はぜひ参考にしてください。
歯科衛生士国家試験の対策はいつから始める?
歯科衛生士国家試験の受験資格を得るには、専門学校や短大などで3年間学ぶ必要があります。卒業や国家試験が間近になってからではなく、早くから対策を意識することが重要です。
入学直後からでも早すぎることはない
国家試験を意識するのは、入学直後の1年生からでも決して早すぎることはありません。学校の授業で習う内容は、1年生の頃のものを含め、すべてが国家試験の出題範囲であるからです。
歯科衛生士の国家試験は暗記をともなう内容が多いため、少しずつ確実に暗記しておくのが理想的です。
学校で定期的に行われるテストにも毎回真剣に取り組み、解けなかった問題は必ず復習して着実に身につけましょう。
国家試験では筆記試験のみが行われますが、実習で覚える内容も試験問題を解くために役立ちます。国家資格に関係ないと思わず、学科と同様に1年生の頃から前向きに取り組むことが大切です。
模試までに基礎学習を終えると楽
学習計画の一つの目安として、最終学年である3年生の夏頃から行われる模擬試験までに、ひと通りの基礎学習を終えておくのが理想的です。
自分なりに学習したうえで模試を受けることで、得点を取れなかった苦手分野が明らかになるでしょう。ほとんど勉強しないまま模試に臨んでしまうと、どこが苦手なのかも判断できません。
模擬試験のあとは、得点が取れなかった苦手分野を重点的に学習することで、効率の良い受験勉強ができます。その他の科目も、歯科衛生士国家試験本番までの約半年間の具体的な学習計画が立てられるでしょう。
試験本番までの最後の半年感を有意義に使うためにも、模擬試験までに基礎学習を終えることがおすすめです。
歯科衛生士国家試験に合格するための勉強方法
歯科衛生士国家試験は出題科目が多く、早期からの学習だけでなく、効率的に学習を進める必要があります。試験には直接的な影響がないと思われがちな実習も重要です。
この項では、歯科衛生士国家試験のための勉強方法について解説します。
過去問を何度も繰り返し解く
ほかの多くの試験と同様に、歯科衛生士の国家試験対策でも過去問題を繰り返し解くことが重要です。何度も反復することで、自分の苦手分野に気付けたり、出題傾向の多い頻出科目がわかるようになるでしょう。
歯科衛生士国家試験の出題科目は以下の9科目に及び、出題範囲が広いことが特徴です。
- 人体の構造と機能(歯・口腔を除く)
- 歯・口腔の構造と機能
- 疾病の成り立ち及び回復過程の促進
- 歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み
- 歯科衛生士概論
- 臨床歯科医学
- 歯科予防処置論
- 歯科保健指導論
- 歯科診療補助論
※令和4年度試験(令和5年3月実施試験)の場合 参考:歯科衛生士国家試験の施行 | 厚生労働省
すべての科目を同じように学習するのは効率がよくありません。まずは過去問題を何回も解きながら、自分にとって重点的に学習するべき科目を決めましょう。
歯科衛生士のまなさんも、過去問を解くことの大切さを紹介しています。
多くの方が役に立ったと紹介している、国家試験の過去問題集がこちらです。
また、歯科衛生士を目指す学生のための情報サイト「シカカレ」では過去問を公開しています。LINEへの問題配信サービスを利用して、日常的に問題に触れるのもよいでしょう。
https://dhgakusei.shikakara.jp/archives/category/learning/
国家試験の出題傾向は過去問題からある程度予想できるものの、年度によっては傾向が一気に変わる可能性があります。自主学習に加えて、学校で行われる試験対策講義もしっかり受けることをおすすめします。
覚えるだけでなく理解する
問題を解いて正解できなかった場合、なぜその答えになるのかを、自分なりに理解することが大切です。
理解するためには、答え合わせをするだけでなく、問題集の解説を読んだり、授業のノートを読み直したりしましょう。
それでも理解できない部分があれば、さらに自分で調べる手間も必要です。深く理解しておくことで、国家試験で応用問題が出題された際にも対応できるようになります。
注意したいのは、何度も同じ問題を解いているうちに解答自体を覚えてしまうケースです。類似問題が出題されることはあっても、まったく同じ問題が出る可能性は低いため丸暗記は避けましょう。
実習も国家試験対策として臨む
過去問題の反復や学科の復習だけでなく、実習授業や臨床実習に積極的に取り組む姿勢も国家試験合格のポイントとなります。
歯科衛生士国家試験では学科試験のみが行なわれますが、実習で得た学びが試験問題を解く手助けになることもあるためです。
例えば、学科授業の解説だけでは理解できなかったことが、臨床実習で実際の症例を目にして初めて納得できるケースもあるでしょう。
また、頭で考えたり覚えたりするよりも、実際に自分で体験することで忘れにくくなるものです。実習も国家試験の対策の一つだという意識をもって、積極的に臨むことが重要です。
試験勉強を継続するポイント
勉強期間が長期に及ぶほど、学習意欲や集中力を維持するのが難しいと感じることもあるでしょう。この項では、試験勉強を継続するためのポイントについて解説します。
目標を明確にする
試験勉強に疲れてしまったら、自分はなぜ国家試験に合格したいのか、合格してどのような歯科衛生士になりたいのか、ということをイメージしてみましょう。
多くの職業のなかから歯科衛生士を目指しているのは、それぞれ動機があるはずです。
例えば「子供の頃に優しくしてくれた歯科衛生士さんのようになりたい」「ひどいコンプレックスだった口元を治してくれた歯科医院で働いて恩返しがしたい」「結婚・出産後も復職しやすい一生ものの資格が欲しい」などです。
合格後の自分を具体的にイメージし、そのために勉強していることを意識してモチベーションを切らさないようにしましょう。
アプリを有効活用する
歯科衛生士国家試験の対策に特化したアプリでの学習を併用すると、気分が変わって飽きずに勉強を続けやすいでしょう。
アプリ学習は、スマートフォンさえあれば気軽に過去問題を解いたり、解説文を読んだりできるため、隙間時間などの有効活用にもおすすめです。
歯科衛生士国家試験の対策に活用できるアプリは、以下のようなものがあります。
グッピー(提供:株式会社グッピーズ)
歯科衛生士国家試験の過去問5年分を学習できるアプリです。正解できるまで何度も繰り返し解く「サーキット・ラーニング方式」によって、自然に反復学習ができます。
1D衛生士国試(提供:ワンディー株式会社)
歯科衛生士国家試験から抽出されたクイズを解いていくアプリです。授業動画や質問・相談ができるコミュニティ機能も充実しています。
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.oned_exam_dh&hl=ja&gl=US
クオキャリア(提供:株式会社クオキャリア)
歯科衛生士国家試験対策としてだけでなく、1年次からの授業の復習にも役立つアプリです。問題は随時更新され、ポイントを貯めてもらえるグッズも用意されています。
https://www.webqua.jp/ndh/kakomonclub
環境を変えてみる
なかなか集中できないときは、勉強する環境を変えてみると効率が上がることがあります。
勉強する時間帯を変えてみる
集中できる時間帯は人によって異なります。いろいろな時間に勉強してみて、自分が集中しやすいと感じる時間帯を見つけましょう。一度決めたら、習慣化するためにも時間帯を固定するのがおすすめです。
勉強する場所を変えてみる
自宅での学習で気が散るときは、図書館に行って勉強したり、授業がなくても学校に行ったりして場所を変えて勉強しましょう。適度に周囲の雑音が聞こえるカフェの店内などのほうが集中できるというケースも珍しくありません。
自宅の環境を整えることも効果的
場所は同じ自宅であっても、環境を整えることで勉強への集中力が上がることもあります。例えばマンガやゲームなどは視界に入らない場所に片付ける、自室ではなくあえてリビングで勉強する、などです。
国家試験直前&当日の対策
3年間の集大成ともいえる国家試験では、これまで学習してきたことを十分に発揮できるような対策が必要です。
試験直前の対策
国家試験当日が近づくと、勉強量が足りないかもしれないと不安な気持ちになる方も少なくないでしょう。しかし、直前になって試験範囲全体を復習したり、新たな知識を詰め込んだりするのは現実的ではありません。
特に力を入れてきた苦手科目や頻出科目のような、これまで覚えてきたことを確実に思い出す意識で見直しを行いましょう。
歯科衛生士国家資格は以下のように合格率の高い試験であり、これまできちんと勉強を積み重ねてくれば、ほとんどの方が合格しています。
- 第31回(令和4年3月実施):95.6%
- 第30回(令和3年3月実施):93.0%
- 第29回(令和2年3月実施):94.3%
試験直前に体調を崩し本番で力を発揮できないということのないように、体調管理を優先に過ごしましょう。
試験当日の対策
歯科衛生士国家試験は年1回、例年3月上旬の日曜日に行われます。本番は、時間配分や解答様式に注意しながら取り組むことが重要です。
時間配分
歯科衛生士国家試験は、午前と午後の2回に分けて行われます。
試験時間はそれぞれ150分間(合計300分間)で、出題数はそれぞれ110問(合計220問)です。
150分の試験時間をいっぱいに使って110問に解答する場合、1問あたりにかけられる時間は単純計算で約81秒です。
ただし、見直しのために仮に30分残しておきたい場合には、試験開始から120分までにひと通りの解答を終えることが必要なため、1問あたりにかけられる時間は約65秒となります。
自分が見直しに残しておきたい時間に合わせて、時間配分を調整しましょう。
解答様式
歯科衛生士国家試験は、すべてマークシート方式で行われます。
問題ごとに形式はさまざまです。例えば、「正しいものを選んでマークする」場合と「誤ったものを選んでマークする」場合、また「1つ選んでマークする」場合と「2つ選んでマークする場合」などがあります。試験本番はいつもより緊張していることも予想されるため、特によく問題を読むようにしましょう。
マークシートでは、難しい問題をあと回しにする際などに解答欄がズレないように注意が必要です。
歯科衛生士を目指す方には、歯科技工士とダブルライセンス取得を目標にする方も多いです。歯科技工士について、こちらで詳しく紹介しています。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/7421/
まとめ
歯科衛生士国家試験は出題科目が多く、学校の授業で習う内容もすべて試験範囲となるため、早期からの試験対策が重要です。過去問題を繰り返し解きながら、わからないことは自分でも調べ、理解を深めましょう。
筆記試験のみが行われる国家試験とは直接的な関係がないと思われがちな実習も、学科の理解を深めるためにも役立つものです。国家試験対策の一つだと意識して、積極的に取り組みましょう。
歯科衛生士国家試験は合格率の高い試験です。時間配分や解答様式に注意して試験本番に挑めば、きっと合格をつかみ取れるでしょう。