作業療法士の試験対策どうすればよい?仕事内容から試験の内容まで解説!

作業療法士は、日常動作のリハビリテーションを支援する立場として、医療業界はもちろん、介護施設リハビリテーション施設などでも活躍できる職業です。

注目が集まりつつある職業である作業療法士ですが、仕事内容が近いこともあり、理学療法士と混同されがちな部分もあります。

今回は、こうした作業療法士と理学療法士との違いや、作業療法士になるための資格仕事内容、資格取得のための試験内容試験対策方法などを紹介します。

作業療法士とは「日常生活における作業」を支援するスペシャリスト

作業療法士の「作業」とは「日常生活における作業」を指しています。つまり作業療法士は、日常生活に欠かせない動作認知、他者とのコミュニケーションなどを支援するスペシャリストです。

ここからは、作業療法士のなり方資格の有無仕事内容について解説します。

作業療法士は国家資格が必要な仕事

作業療法士になるには、作業療法士養成課程のある専門学校・大学・短期大学などで指定の科目を履修し、3年以上学んで知識・技術を身につけて、作業療法士の国家試験を受けなくてはなりません。作業療法士は「名称独占資格」の国家資格です。

この期間中には座学だけでなく、実際の医療現場などで臨床実習も行なわれ、現場の空気や流れを体感しながら、現役の作業療法士から直接指導を受けられます。

指定科目の履修と既定の就学期間を終えると、作業療法士国家試験の受験資格を得られるので、それから試験に合格することで、作業療法士として就業が可能となるのです。

仕事内容は大きく3つの改善支援

作業療法士の仕事は、大きく分けて「基本動作能力」「応用動作能力」「社会適応能力」の3つの改善支援です。

ここからは、作業療法士の仕事内容を確認していきましょう。

基本動作能力

基本動作能力とは、運動、感覚・知覚、心肺や精神、認知機能など、生きていくうえで不可欠な動作や認知などの能力のことです。これらの改善支援として、物理的感覚運動刺激(準備運動など)やトランポリン(R)・風船バレー・軽スポーツといった、さまざまな改善策を行ない、能力の改善を図ります。

応用動作能力

応用動作能力とは、家事・食事・排せつなどのように、日常生活で必要な動作の能力のことです。応用動作能力の改善支援としては、各動作のセルフケアや、家庭内にある道具を使った動作訓練、金銭管理の練習、コミュニケーションの練習などを行ないます。

社会適応能力

社会適応能力とは、社会で他者とかかわりながら生きるために、必要な適応能力のことです。社会適応能力を改善するために、地域活動への参加や、就労・就学、趣味活動などの支援、また対人技能訓練や外出訓練などを行ないます。

理学療法士と作業療法士の違い

理学療法士作業療法士は、どちらも動作に関するリハビリテーションがメインとなるなど仕事内容が近いため、混同する方も少なくありません。しかし、この2つの職業は支援する領域が異なるため、これから作業療法士を目指す方は、しっかりと違いを認識しておきましょう。

ここでは、理学療法士と作業療法士の仕事内容の違いを紹介します。

理学療法士は「運動機能の回復・維持」の専門家

理学療法士の支援領域は、歩く・起き上がる・立ち上がる・寝返るなど、日常生活の基本ともいえる動作のリハビリテーションがメインです。

また、動作機能の回復だけでなく、「健康を維持する」「悪化を予防する」なども業務範囲のため、理学療法士は「運動機能の回復・維持」の専門家であるといえます。

理学療法士が行なう運動機能の回復や維持では、治療方法としておもに「運動療法」と「物理療法」の2つを用います。

運動療法

運動療法は、歩行や立ち上がる動作など、日常生活の基本動作の訓練や、日常生活の動きを支える筋肉・関節の維持や改善を目指す訓練です。

物理療法

物理療法は、機械を用いた電機や温熱などの治療を指します。これら2つの治療方法を患者の状態に合わせて組み合わせ、運動機能の回復や維持を支援します。

理学療法士について、こちらで紹介しています。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/7105/

作業療法士は「日常生活をスムーズに送るための動作」を支援

理学療法士は、立ち上がる・歩行など基本的動作の支援を行なうのに対し、作業療法士は、手指の細かい動作など、応用的なリハビリテーションを行なうことがメインです。

つまり、理学療法士はあくまでも日常的な動作の土台となる部分を支援し、作業療法士は、日常生活をスムーズに送るための動作を支援する立場といえます。

作業療法士試験の内容

作業療法士として働くには、国家試験に合格し資格を取得する必要があります。ここからは、作業療法士国家試験の試験科目合格ボーダーライン合格率について見ていきましょう。

試験科目は8科目、筆記・実技・口述試験が必須

作業療法士国家試験の試験科目は全8科目で、試験は午前と午後にわたって行なわれます。

【一般問題】
解剖学・生理学・運動学・病理学概論・臨床心理学・リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)・臨床医学大要(人間発達学を含む)および作業療法

実地問題】
運動学・臨床心理学・リハビリテーション医学・臨床医学大要(人間発達学を含む)および作業療法

重度視力障害者には、筆記試験の実地問題に代わって口述・実技試験で、運動学・臨床心理学・リハビリテーション医学・臨床医学大要(人間発達学を含む)および作業療法が出題されます。

参考:厚生労働省「作業療法士国家試験の施行

合格ボーダーラインと合格率

作業療法士国家試験の合格ボーダーラインと、合格率について説明します。

合格ボーダーライン

作業療法士国家試験では、一般問題1問1点158点満点実地問題1問3点117点満点となっています。そのうち、総得点が275点中165点以上(正答率 60%以上)実地問題41点以上/117点(正答率 35%以上)が合格ボーダーラインです。

合格率

過去5年分の合格率は、以下のようになっています。

  • 2017年:83.7%
  • 2018年:77.6%
  • 2019年:71.3%
  • 2020年:87.3%
  • 2021年:81.3%

このように、合格率は70~80%と高めではありますが、5~6人に1人は落ちる計算です。また、試験科目や設問数が非常に多いため、合格率が高いからと油断せず、万全の対策をしておきましょう。

作業療法士の試験対策に有効な4つの勉強法

作業療法士国家試験の試験対策としては、学校での授業以外にも、自習も欠かせません。

ここからは、自習での試験対策として有効な、4つの勉強法を紹介します。

市販のテキスト・参考書を活用し、科目ごとに最適な学習方法を模索

試験勉強に取り組み始めた段階であれば、まずは市販のテキストや参考書を購入し、科目ごとに内容を理解するように勉強を進めましょう。

また、市販のテキストだけでなく、学校の授業で使用しているテキストの読み直しも有効です。

過去問を解いて出題傾向や苦手部分を探る

過去問演習も、非常に有効な試験対策です。5~10年分の過去問をひととおり解くことで、毎年の出題傾向や、自身の苦手な部分を知ることができます。

多くの方が役に立ったと紹介している問題集がこちらです。

苦手な分野・問題を繰り返し解く

過去問演習や問題演習を進めるなかで、自分の弱点がわかってきたら、その科目を重点的に勉強してみてください。この作業を繰り返すことで、徐々に苦手とする部分が少なくなるでしょう。

間違った問題があれば、解説や参考書の該当箇所を確認し、再び同じ問題を解いてください。答えを覚えるのではなく、なぜそうなるのかを理解したうえで解くことが大事です。

オンライン講座で専門家に苦手分野の解き方や勉強のコツを聞く

1人で勉強していると、どうしても解き方がわからない問題や、解説を読んでも理解できない問題などが出てくるでしょう。そのようなときは、オンライン講座を活用するのもおすすめです。

オンラインマッチングサービスなどを利用すれば、専門家によるオンライン講座を受講でき、試験対策を効率的に進められます。オンライン講座の受講には多少費用がかかりますが、新たな知識や考え方を身につけられるため、結果的には時間の節約となります。

まとめ

作業療法士は、日常生活を送るうえで欠かせない動作や、認知機能の改善・維持のスペシャリストです。

近い領域の仕事として理学療法士と混同されがちですが、理学療法士は日常生活を送るための立ち上がる・歩行といった、「動作の基礎」を支援する専門家です。そのため、家事やトイレ、入浴動作といった応用的な動作の支援がメインの作業療法士とは、仕事内容が異なります。

作業療法士として就業するには国家試験に合格し、作業療法士資格を取得しなければなりません。作業療法士国家試験の合格率は例年70~80%と高水準ですが、試験範囲が広く、出題される問題数も多いため、油断は禁物です。

学校での勉強はもちろん、過去問題や市販のテキスト・参考書などでの自習も積極的に行ない、万全の対策をして試験に臨みましょう。

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