看護師国家試験はどう対策する?出題傾向から受験勉強方法のポイントを解説

看護師を目指す人が避けて通れないのは、看護師国家試験です。合格して憧れの看護師免許を取得するには、国家試験に向けてどのような対策をすればよいでしょうか?

この記事では、看護師国家資格の科目問題の種類、合格基準などの概要をお伝えしたうえで、試験対策の解説をします。

また、看護師試験に落ちてしまいがちな勉強方法を紹介するので、看護師国家試験対策で気を付けたいポイントを押さえておきましょう。

看護師国家試験の概要

はじめに、看護師国家試験の内容を、要点を絞って解説します。

試験のスケジュール

看護師国家試験は年1回2月中旬に行なわれ、合格発表は3月下旬に行なわれます。

試験は1日で終了しますが、午前・午後合計5時間20分、計240問を解くというハードスケジュールです。単純計算で1問に充てられる時間は1分少々となり、出題傾向や形式に慣れるためには、十分な準備が必要でしょう。

なお、看護師国家試験は4~5年に一度の頻度で、出題基準が見直されます。次の改定は2023年の試験に行なわれる可能性があるので、受験を考えている方は看護師国家試験に関する情報に注意してください。

受験資格

看護師国家試験を受けるには、指定の教育機関に通わなくてはならず、大きく分けると次のような3種類のルートがあります。

  1. 高校卒業後に、看護大学・看護短期大学・看護専門学校に進学し、3~4年の専門課程を修め、国家試験を受ける
  2. 高校衛生看護科(3年)もしくは准看護師学校(2年)を卒業後、都道府県知事試験を受けて准看護師の資格を取得する。その後、厚生労働省指定の看護系養成校(短期大学や専門学校)に進学して2年課程を修め、国家試験を受ける
  3. 中学卒業後、看護師養成課程のある学校(5年)で専門課程を修め、国家試験を受ける

上記のルートに沿って考えると、一度社会人になってから看護師を志す場合は、看護専門学校などで専門課程を修める方法が現実的でしょう。夜間の看護専門学校を利用すれば、働きながら看護師を目指すことも可能です。

問題の種類・配点

看護師国家試験の問題は3種類に大きく分けられ、それぞれの問題数と配点は次のようになっています。

必修問題50問各1点看護の社会的・倫理的側面に関する問題など、4つの目標ごとに出題範囲が設定されている基礎問題。80%の正答率が合格には必須。
一般問題130問各1点出題基準で指定されている11科目から1問1答形式で出題。知識問題や事例問題も含む。
状況設定問題60問各2点出題基準で指定されている7科目から出題。ある状況下での判断力や理解力が問われる。1つの状況につき2~3問が出される。

試験科目

一般問題・状況設定問題は、出題基準で指定された次の11科目から出題されます。

  1. 基礎看護学
  2. 成人看護学
  3. 老年看護学
  4. 小児看護学
  5. 母性看護学
  6. 精神看護学
  7. 在宅看護論
  8. 看護の統合と実践
  9. 健康支援と社会保障制度
  10. 人体の構造と機能
  11. 疾病の成り立ちと回復の促進

なお、科目ごとの詳細な項目については、厚生労働省が公開している「看護師国家試験出題基準」で確認できます。受験を考えている方は、こちらもご覧ください。

参考:厚生労働省「看護師国家試験出題基準」

合格基準・合格率

看護師国家試験の合格基準点は、先ほど触れたとおり必修問題の正答率80%以上です。必修問題は50点満点なので、40点以上取らなくてはいけません。

また、一般問題と状況設定問題の合格基準点は、2つの合計点数をもとに考えます。毎年変動しますが、正答率70%程度とされているため、250点満点中160~170点程度と考えるとよいでしょう。

なお、2022年2月に行なわれた第112回看護師国家試験では、167点以上が合格基準・ボーダーラインとされました。

また、看護師試験の合格率は高く、過去5年の結果を見ると90%前後となっています。

参考:厚生労働省「第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表」

看護師国家試験の4つの対策とは?

それでは、最近の看護師国家試験の傾向を踏まえつつ、試験対策の方法4つを紹介します。

「人体の構造と機能」は徹底理解を

出題基準で指定された11科目のうち、看護師国家試験の土台になる重要科目から基礎固めを行ないましょう。

特に「人体の構造と機能」は「人の正常な体の状態」について理解を深める、重要科目といえます。

「成人看護学」や「基礎看護学」ほどの出題数はないので後回しにしがちですが、この科目を理解することが、その他科目や必修問題のスムーズな理解につながるでしょう。そのため、できるだけ早くから取り組むことをおすすめします。

また、「疾病の成り立ちと回復の促進」も「人体の構造と機能」に並ぶ重要基礎科目なので、同じく早い時期からの対策が必要です。

必修問題はバランス良く学習する

必修問題は大きく分けて3分野の問題が出され、それぞれ次のような配点比率になっています。

分野配点比率
社保統計(社会保障関係の統計など)30%
病態40%
看護技術30%

このうち「病態」は学校で熱心に勉強することが多いようですが、必修問題は正答率80%以上が必要なため、「病態」だけ完璧にしても合格ラインには届きません。

一般問題や状況設定問題が仮に満点でも、必修問題が40点を取れない場合は不合格になってしまいます。

「社保統計」と「看護技術」は膨大な量の暗記が必要な分野ですが、暗記科目だからとつい後回しにする人は少なくないでしょう。できるだけ早くから「社保統計」と「看護技術」の学習にも取り組みましょう。

写真(視覚素材)を使った出題に注意

近年増えているのが、写真などの視覚素材を使った問題です。医療機器や器具の使用方法、病気の症状や検査所見を、写真などの資料を見ながら解答する問題です。

対策として、日頃から教科書の写真資料などに目を通すことをおすすめします。写真を使った問題は多くありませんが、写真資料に慣れておき、確実に得点できるようにしておきましょう。

「看護の統合と実践」など看護アセスメントの基礎が重視

近年の出題傾向に見られるのが、看護アセスメントに関する問題の増加です。背景としては、2012年の101回試験から「看護の統合と実践」が新しく科目に追加されたことが挙げられるでしょう。

この科目は、次の10項目のうち複数を含む事象があった際に、看護の知識をどう活かせるか、判断力を測るものです。

  1. 基礎看護学
  2. 成人看護学
  3. 老年看護学
  4. 小児看護学
  5. 母性看護学
  6. 精神看護学
  7. 在宅看護論
  8. 看護におけるマネジメントの基本
  9. 災害と看護
  10. 国際化と看護

試験全体で「複数分野の知識を統合して生かす能力」を重視する流れがあります。「なぜこのケアをするのか」「この症状の根拠はなにか」という基礎を押さえつつ、実践的な評価能力を測る問題は、今後さらに増加するでしょう。

この対策としては、日頃の実習などからの学びを大切にしつつ、単純な暗記問題にとどまらないようにすることが挙げられます。

例えば、「病態」に関する問題は状況設定問題に多く出されるため、状況設定問題を過去問などで繰り返し演習して基本を押さえる方法などが考えられるでしょう。

また、一般問題と状況設定問題を交互に学習することは、病態の基本と看護アセスメントを結び付けるトレーニングとして有効です。

看護師国家試験に落ちてしまう5つのパターン

看護師国家試験の合格率は高いとはいえ、落ちてしまう方もいます。

最後に、試験に落ちてしまう人にありがちなパターンを紹介するので、同じパターンに陥らないよう注意してください。

そもそも対策を始める時期が遅い

看護師国家試験に落ちる人は、試験対策を始める時期が遅い傾向があります。試験直前の12月まで勉強していなかったという人もいますが、勉強開始から1~2ヵ月で膨大な量を学習するのは、かなり厳しいでしょう。

不合格になった人のなかには、看護師国家試験の合格率が90%と高いことから「誰でも合格できる」と楽観的に考える人もいるようです。このように、ノープランで国家試験に臨んでも、合格への道は険しいといえます。

では、具体的にはいつ頃から試験対策を始めれば良いかというと、それは科目によるでしょう。例えば「人体の構造と機能」は、早く始めるに越したことはないので、1年次から取り組んでも問題ありません。

そして、必修問題の対策は受験前の夏休みには完了するようにし、実習を終えたら、冬休みまでは過去問演習に取り組むとよいでしょう。

必修問題対策が十分できていない

先に述べたように、必修問題は正答率80%が合格ラインとなります。一般問題など他で満点を取ったとしても、必修問題を落とせば合格できません。

しかし、必修科目が重要とわかっているほど罠にはまり、不合格になることもあるようです。

必修問題は、過去問と同じ問題や類似した問題は、50問中半分程度しか出されていません。つまり、必修問題の過去問ばかりに力を入れてしまうと、出題範囲を半分外してしまう可能性が出てくるのです。

必修問題を対策する際は、出題基準と照らし合わせ、必修問題に関連した一般問題や状況設定問題をきちんと勉強することが大切です。そして、「病態」「社保統計」「看護技術」の3分野をバランス良く仕上げましょう。

暗記物に偏っている

看護師国家試験は暗記すべき内容が多くありますが、暗記ばかりしていると、応用力などが必要な問題の対策を十分にできないことがあります。

暗記物はたしかに重要ですが、それと並行して読解問題などにも積極的に取り組むようにしましょう。

過去問研究が不十分

必修問題も一般問題・状況設定問題も、半分程度は過去問と「ほぼ同じ問題」か「類似した問題」が出されます。

過去問研究では、まず正答率70%以上の問題を優先して取り組みましょう。正答率の高い問題は基本的な内容のため、確実に身につけられるようにするのがポイントです。正答率30%以下のような難度の高い問題は、基礎的な問題を解けるようになってから、取り組んでください。

過去問研究は、入学時から取り組む学校もあります。早くから、学校のカリキュラムと並行して進めるのもおすすめです。

多くの人が役に立ったと紹介している過去問問題集がこちらです。

当日の時間配分、体調管理も重要!

看護師国家試験は1日で終わるものの、試験時間が午前と午後で合計5時間20分と長丁場です。

問題数も合計240問と多く、1問当たり1分少々の解答時間になるため、時間配分を考え、テンポ良く解答しなくてはいけません。

試験に落ちてしまう人のなかには、解答スピードや時間配分が身につかず、問題が解き切れなかったという人や、わからない問題にこだわり、時間を費やしてしまったという人がいます。

試験中の時間配分や解答の進め方は、過去問演習などでイメージトレーニングしておきましょう。

また、看護師国家試験は2月中旬に行なわれます。体調万全の状態で本番に臨めるよう、体調管理もしっかりと行なってください。

まとめ

看護師国家試験は合格率が約90%と高い数値になっていますが、試験科目や問題数が多く、幅広い知識を問われます。

受験を考えている方は、やみくもに勉強するのではなく、最近の出題傾向を押さえながら効果的に試験勉強に取り組みましょう。試験に落ちてしまう人の傾向をしっかり把握して、ぜひ合格を勝ち取ってください。

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