グローバル化が進んだ昨今では、日本企業の海外進出や日本を訪れる外国人観光客が増加の一途をたどり、国内でも幅広い業種で英語力の必要性が高まっています。
また大学入試においても、2020年現在、大学入学共通テストへの英語4技能検定試験の導入は先送りされているとはいえ、これまでも外部検定試験は私立大学を中心に入試で利用されており、今後、その傾向は加速するとみられています。
近年、増えている英語で授業を行う大学・学部はもちろん、海外留学を目指す場合も英語力は必須です。
こうした状況に伴い、英語資格の重要度は年々高まり続けています。ここでは数ある英語資格の中から、仕事・学業に役立つ代表的な資格の種類や取得方法などをご紹介します。
英語の資格とは
日本で英語資格といえば実用英語技能検定(英検)とTOEIC®が有名ですが、このほかにも目的別にさまざまな資格があります。
問われる技能も、英語の4技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)すべてをはかるもののほか、ライティング技能に特化したもの、和訳のスキルを必要とされるものなど、資格によって異なります。また、日常英会話レベルの資格から、国際会議で活躍できるレベルの資格まで、難易度もさまざまです。
前述のように、近年は国内でも英語を使う仕事が増えています。外資系企業のように高い英語力が求められるものばかりでなく、観光や外食、小売などのサービス業のように日常英会話程度の英語力で務まるものもあります。
自分の目指す仕事や求められる技能・レベルに合った資格を取得することは、使える英語を身につけた即戦力となる人材であることの証明になり、就職・転職時のアピールやキャリアアップに役立てることができるでしょう。
また、大学入試や海外の大学への進学・留学において、英語の技能は高いほど有利に働きますが、日本の大学入試に強い資格もあれば、海外の大学で広く通用する資格もあります。目的に合った資格の取得を通して必要な英語力を伸ばし、評価の獲得を目指しましょう。
3大英語資格試験
実用英語技能検定(英検)
https://www.eiken.or.jp/eiken/
英語4技能の総合的な能力を問う、幅広い年齢層を対象とした英語検定試験。50年の歴史と文部科学省の後援により、高い知名度と信頼性を誇ります。
5級〜1級の7等級に分かれており、5級は中学初級レベル、最上級の1級は大学上級レベルとなっています。試験はマークシート方式または記述式(3級以上)のリーディングとリスニングを基本に、3級以上は面接形式、4〜5級はウェブ受験によるスピーキングテストが課されます。
入試優遇や単位認定、留学時の語学力証明など、主に学業分野で強みを発揮しますが、英検を英語資格として認める海外の大学は多くはないため、留学を考えるなら海外で認知度の高いTOEFL®やIELTSといったテストの受験も検討しましょう。
就職や転職でのアピールに役立てるのであれば、2級以上の合格が必要です。準1級以上は合格率20%と難易度が高いため、さらに高い評価が得られるでしょう。
TOEIC®
https://www.iibc-global.org/toeic/test/lr/guide01.html
「国際コミュニケーション英語能力テスト(Test of English for International Communication)」の略で、日常生活やビジネスにおける英語でのコミュニケーション能力をはかる試験。
5種類の試験がありますが、最も一般的なのはリスニングとリーディングの技能を問うTOEIC®Listening & Reading Testです。多くの日本企業が採用基準として取り入れているため認知度と社会的評価が高く、社会人と大学生を中心に人気を集めています。
試験はマークシート方式で、10~990点まで5点刻みのスコアで評価されます。社会人が履歴書に記入する目安は600点以上(英検2級〜準1級)で、外資系企業や国際的な部署では700〜800点以上(同準1級〜1級)が必要。大学入試では500点以上(同準2級〜2級)取っていると有利に働くとされています。
全国通訳案内士試験
https://www.jnto.go.jp/jpn/projects/visitor_support/interpreter_guide_exams/about.html
外国人観光客に有償で英語でのガイドやサポートを行う全国通訳案内士の国家試験。全国通訳案内士を名乗るには、この試験に合格し、都道府県知事の登録を受けることが必須です。語学関連では唯一の国家資格で、就職や転職でのアピールにもつながることから、近年は全国通訳案内士の志望者に限らず人気が高まっています。
試験は筆記試験(マークシート方式。言語により記述式有)と口述試験(面接形式)に分かれており、語学力(英語、中国語など10言語から選択可)に加えて、日本の地理、歴史、文化、政治、経済などについての知識や一般常識も問われます。
難易度は英語科目は英検1級と同程度、国家試験としては中程度とされています。英語を選択した場合の近年の合格率は平均で約18%ですが、2017年度からは低下傾向にあり、2019年度は10%を切っています。合否のカギを握る筆記試験のしっかりとした対策が求められるでしょう。
英検1級に合格するか、TOEIC® Listening & Reading Testで900点以上を取得している場合などには英語科目の筆記試験が免除されるので、これを活用するのもひとつの手です。
その他の人気英語資格試験
日商ビジネス英語検定
ビジネスで使う英語のライティング技能をはかる検定試験。3等級に分かれており、企画書、契約書、メールなどを英語で作成する能力や、海外取引に関する知識が問われます。知名度はあまり高くはないものの、2級以上に合格すると商社や貿易関連企業へ就職・転職する際には大きな強みとなります。
国際連合公用語英語検定試験(国連英検)
外務省後援・日本国際連合協会主催の、国際的に活躍できる英語力を証明する試験。国際公務員や国際機関への就職を目指す人には必須の試験で、警察官採用試験では成績の一部として扱われ、推薦入試などでの評価や単位認定の基準として採用している大学もあります。英語力に加えて国際教養が求められるため、全体的に難易度が高く、6等級のうち最上級の特A級は日本で受けられる英語資格の最高峰といわれています。
ビジネス通訳検定(TOBIS)
外資系企業などでの通訳業務に必要な英語力を判定する検定試験。ビジネス・経営をテーマにした逐次通訳試験と同時通訳試験の2つの試験があり、成績に応じて1〜4級の等級や不合格の判定が下されます。合格率は2~4級は15~25%ほどですが、1級は2%前後という超難関試験となっています。
JTFほんやく検定
契約書やニュースなどを翻訳する産業翻訳のスキルをはかる検定試験。読解力や表現力などの基礎知識に加えて、政治、科学技術、医学など幅広い分野に関する知識や、短時間での翻訳能力が求められます。難易度は5級と4級が基礎レベル、3級~1級が実用レベルで、履歴書に記入するなら2級以上の合格を目指しましょう。
技術英語能力検定(旧・工業英語能力検定試験)
工業技術に特化した英語力を判定する文部科学省後援の資格検定。科学技術に関する海外の論文や専門書レベルの文章を正しく読み書きする能力を問う筆記試験が課されます。3級〜プロフェッショナルの4等級からなり、1級の合格率は5〜6%程度という難易度の高さで知られていますが、海外からのスタッフの増加により技術者・研究者を中心に人気が高まっています。
試験概要
試験の詳細は各サイトに記載されていますが、資格によっては併願制度もあるため、一気に取得を目指すのも一計です。また、国内での就職や転職、キャリアアップを考えているのであれば、認知度の高い英検とTOEIC®のいずれかは取得しておきたいところです。そのうえで、専門分野の資格の取得を検討するとよいでしょう。
とはいえ、試験の実施回数は英検やTOEIC®のように年に複数回あるものから年1回のものまでさまざまなので、しっかりとスケジュールを組んで対策を進めていくことが必要です。
また、費用も2,000~25,000円とばらつきがあるため、事前にチェックして見積もりを立てておきましょう。
学習方法
独学
筆記試験のリーディング・ライティング対策については、各資格の公式テキストや市販の対策本、単語集、問題集などでの学習が基本です。リスニング対策は過去問のCDや音声アプリを繰り返し聞くなどして、文字と音声が正しく一致するよう心がけましょう。
面接試験などのスピーキング対策には、DVD付きの問題集などで面接の傾向を把握し、対策するのが有効です。YouTubeなどの動画サイトに投稿されている対策動画や、英語学習アプリを活用するのもよいでしょう。
一般常識や専門知識が必要な場合は、ニュースや専門書などを通じて身につけておくことも必要です。
スクール・講座
難易度の高い資格や等級に挑戦する人や、短期間で効率よく合格を目指したいという人は、通信・通学講座やスクールを利用するのもよいでしょう。
英会話や英語資格対策の講座・スクールは数え切れないほどあり、費用もさまざまです。例えば、ユーキャンの英会話やTOEIC®対策講座は十数回で30,000〜35,000円ほどとなっていますが、長期的に英会話スクールに通うのであればそれなりの費用を用意する必要があります。よく検討して自分に合ったものを選びましょう。
まとめ
英語力を身につけるには日々の努力と時間が必要ですが、資格の取得を通してスキルアップすれば、それに見合ったリターンを得られるのが魅力です。
「いつかは」を「今日から」に変えて、英語資格の取得にチャレンジしてみませんか?