診療放射線技師とは?資格取得後の仕事内容や年収を解説

診療放射線技師

放射線治療や画像診断検査において欠かせない存在である「診療放射線技師」は、今後の医療分野に大きく貢献すると考えられる国家資格です。

勤務先や業務内容は多岐にわたり、支給される給料や手当なども異なります。そのため、資格取得後の就職先を決めかねる方もいるでしょう。

この記事では、診療放射線技師の仕事内容年収、活躍できる場所などを解説します。診療放射線技師を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

参考:厚生労働省「診療放射線技師国家試験の施行

診療放射線技師の仕事内容は?将来性はあるの?

診療放射線技師は、医療機関などで医師の指示の下、放射線による治療画像診断などを行なうのがおもな仕事内容です。

ここでは、具体的な仕事内容や、今後の医療における診療放射線技師の需要、将来性について解説します。

おもな仕事は「画像診断」「放射線治療」「機器管理」

診療放射線技師が携わる業務は多岐にわたり、画像診断検査放射線治療をはじめ、業務の安全を確保するための機器管理放射線の被ばく線量管理なども行ないます。

放射線を使用する業務に挙げられるのは、画像診断検査や放射線治療です。医師の指示の下、病気の診断に必要な画像を撮影したり、高エネルギーの放射線をがん細胞に照射して治療を行なったりします。

ドラマ化・映画化された人気マンガ「ラジエーションハウス」では、患者の治療のために診療放射線技師と放射線科医がともに活躍する姿が描かれています。

また、放射線治療を安全に行なうための放射線機器管理や、患者が浴びる放射線の管理・記録なども重要な仕事です。特に、放射線による影響が生じないようにするために画像診断検査での放射線量を最小限に抑えるなど、放射線量の適切な管理が求められます。

なお、人体への放射線照射は、診療放射線技師・医師・歯科医師のみが認められている行為です。

放射線の専門家として需要は高まっている

日本の高齢化は年々進み、早期治療や予防医療の重要性が高まっています。そのため、診療放射線技師は、健康診断や検査などに携わる機会が多くなるでしょう。

予防治療や早期治療、早期発見などが重要視される傾向にあることから、医療や放射線技術の専門性も高まり、より高度化することは想像に難くありません。

また、ピンクリボン運動の普及により、マンモグラフィーを行なう人が増加し、男性だけでなく女性の診療放射線技師の需要も高まっています。

診療放射線技師は、資格を持っていれば全国の医療機関で仕事ができる資格です。専門性が高く、経験豊富な技師の需要も多いことから、長期的に活躍できる将来性の高い仕事と考えられるでしょう。

診療放射線技師の年収はどれくらい?

ここでは、厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」を参考に、企業規模別の平均年齢や勤続年数、年収などを紹介します。

企業規模10人以上
平均年齢:41.4歳
平均勤続年数:13年
平均年収:548万7,100円

企業規模10~99人
平均年齢:45.6歳
平均勤続年数:10.3年
平均年収:538万4,300円

企業規模100~999人
平均年齢:41.8歳
平均勤続年数:13.2年
平均年収:523万1,900円

企業規模1,000人以上
平均年齢:39.5歳
平均勤続年数:13.8年
平均年収:583万1,000円

参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査に関する統計表

※平均年収計算方法:「きまって支給する現金給与額」×12ヵ月+「年間賞与その他特別給与額」

上記のとおり、企業規模によって平均年収にバラつきがあることから、勤務先によって年収が変わることがわかります。これは、施設ごとの夜勤の有無や、残業時間の違いが理由の一つだと考えられます。

そのため、年収だけに注目して就職先を決めるのではなく、どの程度の残業や夜勤が可能かを考慮する必要があるでしょう。

なお、国立病院に勤務する場合は公務員の扱いとなり、民間の施設と比べて福利厚生やボーナス面などが優遇されているため、希望者が多い傾向です。

勤務する施設によっては資格手当や夜勤手当、通勤手当などが支給されますが、診療放射線技師には基本的に「放射線作業手当」が支給されます。

医療機器メーカーに勤務する診療放射線技師は出張や残業が多い傾向にあるため、手当の支給により年収が高くなるケースが多いと考えられるでしょう。

診療放射線技師になるには試験がある!出題科目や合格率を解説

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診療放射線技師の資格を取得するには、受験資格を得て国家試験を受ける必要があります。ここでは、受験資格の取得方法や試験の出題科目、合格率などを解説するので、受験前の対策に役立ててください。

診療放射線技師は国家資格

診療放射線技師は国家資格であり、診療放射線技師国家試験に合格することで資格を取得できます。試験を受けるには受験資格が必要です。

受験資格を得るには、文部科学大臣が指定する大学短期大学、あるいは都道府県知事が指定する専門学校で必要な課程を修了する必要があります。

なお、これらの養成校で学ぶ場合は通常、養成校が実施している卒業試験に合格しなければ国家試験を受験できません。

具体的な出題科目や合格率

診療放射線技師国家試験の試験科目は、以下のように多岐にわたります。

  • 基礎医学大要
  • 放射線生物学(放射線衛生学も含む)
  • 放射線物理学
  • 放射化学
  • 医用工学
  • 診療画像機器学
  • エックス線撮影技術学
  • 診療画像検査学
  • 画像工学
  • 医用画像情報学
  • 核医学検査技術学
  • 放射線計測学
  • 放射線安全管理学
  • 放射線治療技術学

参考:厚生労働省「診療放射線技師国家試験の施行

試験問題は全200問で、1問1点の配点です。合格ラインは正答率60%のため、120点前後と考えられます。

なお、この合格ラインは毎年変動しており、厚生労働省が毎年公表している「診療放射線技師国家試験の合格発表」によると、過去5年は合格率75%~85%で推移している模様です。

また、新卒者と既卒者の合格率を比べると、毎年新卒者のほうがはるかに高い合格率を出す傾向にあります。例えば、2021年2月の試験を見ると、新卒者の合格率83%に対し、既卒者は20%という結果になっています。

受験資格があれば新卒でなくても受験可能ですが、これほど合格率に差が生じることを考えると、一発合格に向けた計画的な学習を行なうほうがよいでしょう。

受験勉強には欠かせない過去問対策に多くの方がつかっている問題集が、こちらです。

参考:厚生労働省「第73回診療放射線技師国家試験の正答・合格発表の訂正とお詫び

診療放射線技師はどのような場面で活躍するの?

診療放射線技師2

診療放射線技師の資格を取得した人は、医療機関放射線を扱う企業医療機器関連の企業などに勤めるのが一般的です。どのような業務を担っているのかを解説するので、就職先を考える際の参考にしてください。

医療機関

医療機関とはいっても、規模の違いなどにより勤め方などが異なります。例えば、規模の大きな病院に勤務した場合、多くの症例を経験し、幅広い知識や技能の習得が可能です。

また、最新技術に触れられるというメリットもあります。ただし、オンコール(緊急時に備え待機すること)当直がある点に留意しましょう。

一方、規模の小さめなクリニックなどでは、CT検査胸部エックス線撮影、MRI検査などのほか、事務的な業務も任されます。当直や残業が少ないため、比較的働きやすい環境といえるでしょう。

また、保健所や健診センターなどの検査施設に勤務する場合は、CT検査や胸部エックス線撮影、MRI検査などの検査をメインで行ないます。検査の場は施設内にとどまらず、健診車で学校・企業に出向くこともあります。

放射線を扱う企業や団体

診療放射線技師のなかには、放射線に関する知識を活かし。大学の研究室原子力関連の企業、電力会社など、医療と関連のない企業や団体に勤める人もいます。

また、放射線で非破壊検査を行なう企業も活躍の場の一つです。非破壊検査とは、建造物や機械部品などに付いた傷を、対象物を壊すことなく検出する技術を指します。

このように、放射線を扱う仕事は医療機関以外にも多く存在するため、長期的に活躍できる可能性は高い傾向といえるでしょう。

医療機器関連の企業

診療放射線技師は医療機関ではなく、医療機器などを扱う企業に勤めることもあります。こういった企業でおもに行なう業務は、診療放射線技師が扱う機器類の開発業務や販売業務です。

開発業務では、医療機関に勤務する医師や診療放射線技師との共同研究、質問への回答などを行ないます。必要に応じて、医療機関とのやり取りを担当することもあるでしょう。

販売業務では、診療放射線機器を導入した医療機関に対し、商品説明などの導入支援を行ないます。

まとめ

診療放射線技師は非常に専門性が高く、高度医療を支える重要な役割を担っています。今後も医療分野は進化し、さらなる高度化が予想されるでしょう。

診療放射線技師の資格を取得すれば、年齢や場所を問わず仕事をすることが可能です。活躍できる場所も幅広いことから、将来性が期待される仕事といえるでしょう。

勤務先によって、残業や夜勤の有無や業務内容、年収に違いが見受けられるため、診療放射線技師として勤務する際には、自身に適した勤務先を考慮することが重要です。

担っている役割や業務への理解を深め、ぜひ診療放射線技師としての活躍を目指してください。

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