行政書士は、個人や企業に代わり行政手続きを行う「法律の専門家」です。専門性の高い業務であることから需要が高く、独立や法人設立を目指すことも可能な職種です。資格取得試験は、年齢や学歴、経験関係なく誰でも受験することが可能なので、別の職種からキャリア転向したい人やブランクから社会復帰したい人が行政書士資格を取得し、新たな道を踏み出すケースも多く見られます。
ここでは、行政書士の詳しい業務内容や試験概要、難易度、勉強方法などを紹介します。
行政書士とは
行政書士は、1951年に定められた「行政書士法」に基づき、制定された国家資格です。主に官公署に提出する書類の作成や申請手続きを依頼者に代わって行うのが仕事です。
行政書士が手掛けることができる業務は、個人から依頼されるレベルもの(遺言書、示談書、日本国籍取得など)からビジネスに関わるもの(会社設立、建設業許可、風俗営業許可など)まで多種多様。依頼者から依頼された書類を法律に基づき作成・申請し、ときには書類作成に関わる相談業務も請け負います。市民の生活に密接した法律を扱うことから、「身近な街の法律家」ともいわれています。
行政書士資格を取得するメリット
法律のスペシャリストとして幅広い知識をもつ行政書士。行政書士資格を得ることで以下のようなメリットが考えられます。
「国家資格」は就職・転職の大きなアピールポイントになる
国が認める国家資格は、わかりやすい実力の証明になります。就職・転職では、採用側にとって大きな評価ポイントになるでしょう。
独立開業を目指せる
官公署に提出する書類は種類も内容も複雑なものが多く、書類作成を専門とする行政書士は多くの市民から求められています。需要が高く顧客を獲得しやすいため、独立開業も目指しやすいと言えるでしょう。
※独立する場合に限らず、行政書士と名乗って仕事をするには、試験合格後、行政書士登録及び行政書士会への入会が必要になります。登録・入会せずに行政書士として仕事を受けることはできないので注意しましょう。
次のキャリアにつながりやすい
法律の知識が身につくため、同じく法律・行政に関わる司法書士や宅建士の資格試験でも高得点を狙える可能性大。他の資格を取得し、よりキャリアを広げる行政書士も多いようです。
行政書士の試験概要
受験資格
行政書士試験には受験資格は設けられていません。年齢・性別・国籍・学歴問わず誰でも試験を受けることができます。実務経験も不問なので、まったく別の職種から行政書士への転職を目指すことも可能です。
試験日程・会場
試験は年に1回、11月の第二日曜日に実施されます。会場は全国42都道府県に設けられるので、居住地の都道府県で受験が可能です。また、居住地に関係なく希望の試験場で受験することも認められています。受講には7,000円の手数料がかかります。
試験内容
試験は筆記によって行われ、選択式と記述式の組み合わせとなっています。
試験の項目は「法令」と「一般知識」の大きくふたつの分野に分けられ、「法令」で5科目、「一般知識」で3科目となります。
・行政書士の業務に関し必要な法令等(5科目)
憲法/行政法/民法/商法/基礎法学
・行政書士の業務に関連する一般知識等(3科目)
政治・経済・社会/情報通信・個人情報保護/文章理解
上記の計8科目から、60題の問題が出されます。その内訳は、「法令」から46題、「一般知識」から14題。このうち、「法令」で50%以上、「一般知識」で40%以上、全体で60%以上の得点を得ることで合格となります。
試験の難易度・合格率
合格基準の点数を満たした受験者はすべて合格する制度になっているため、合格率はその年によって大きく差があります。近年で見てみると、平成29年度が15.72%、平成30年度が12.70%、令和元年度が11.50%。同じ法律を扱う国家資格である司法書士では合格率3%程度とされているので、司法書士に比べると難易度は高くないと言えますが、それでも合格率は10~15%の推移ですから、決して簡単に取れる資格とは言えないでしょう。
行政書士試験に合格するには
独学
司法書士よりも合格率が高いとはいえ、行政書士の試験は試験範囲も広く、わずかな時間の勉強で合格できるものではありません。記述式の問題もあるため法律の内容をしっかり理解しておく必要もあり、独学の場合、800~1,000時間は学習時間が必要と言われています。
仮に学習時間を800時間とすると、1年間勉強期間がとれたとしても毎日2時間以上の学習が必要となります。仕事・育児をしながら試験合格を目指す人の場合、毎日この学習時間を確保するのが難しいケースもあるでしょう。限られた時間の中でしっかり知識を身につけ学習するためにも、独学の場合は、より効率的に学べるテキスト選びが重要になります。
初学の人でも学びやすいと評価が高いテキストがこちら。見やすくレイアウトもされています。
法律の受験指導塾の大手・伊藤塾より出版されている問題集です。試験について研究されたもと、出題されやすい問題が掲載されています。
通信・通学講座
学習時間を短縮し、より効率的に勉強を進めるためには、通信講座やスクールを利用するのも手です。大手通信講座のユーキャンを始め、フォーサイト、LEC、クレアールなどが講座を開設しています。初心者向け講座や集中対策講座など複数の講座を用意しているところもあり、通信講座の費用は6万~10万前後、通学講座では20万前後が相場となっているようです。
独学と比べ費用はかかりますが、試験の出題傾向を押さえた学習方法や計画的な学習スケジュールで学ぶことができるので、学習効率もアップするでしょう。講義が行われるオンライン講座や通学講座では、強制的に学習時間が確保できるというメリットも。独学だとついなまけてしまいそう…という人は、通学講座を利用すると安心かもしれません。受講費用の20%が補助される、教育訓練給付金が利用できる講座もありますので、受講する際にはご確認を。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/792/
行政書士試験に合格した人たちの勉強法
誰でも受験できる行政書士資格は初学で受験する人も多数。そんな人たちに向け、多くの行政書士資格所持者、受験経験者が自身の薦める勉強法や勉強のコツを発信しています。行政書士試験に合格した人たちはどのような勉強法で合格を勝ち取ったのでしょう。彼らの声をピックアップします。
通学講座のメリットを活用して
アメブロで行政書士試験の学習状況をアップしているdebu82さんは、通学講座に通いながら自宅でも過去問題などを使い学習に取り組んでいるよう。講師に直接疑問点を聞いたりアドバイスをもらったりできるのも通学講座のメリットですね。
到達度確認模試の二回目を自宅受験して
答案提出しました。昨日、自己採点したの
ですが勘違いしてるとこがたくさんあって
講師にも見てもらい、アドバイスをいただいた。
https://ameblo.jp/debu82/entry-12619640244.html
繰り返し視聴でしっかり学習
資格取得・通信講座の大手「LEC」。LECの受講生である「はりもぐら@2020行政書士試験に向かって全力疾走」さんのツイートをご紹介。オンライン講座は何度も繰り返し視聴できるので復習にも役立ちそうです。
まとめ
行政書士は、受験資格が設けられていないこともあり、学生やキャリアアップを目指す社会人、ブランクから再就職したい主婦、定年後再就職を目指すシニア層などさまざまな人たちが試験に挑戦しています。人気の高い資格ですが、基準点をクリアしたすべての人が合格できるので、しっかりコツを抑えた勉強をすれば資格取得が可能です。新たなキャリアが広がる行政書士、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/1309/
社会保険労務士の資格についてはこちら↑