電気通信主任技術者とは?資格証取得のメリットや難易度を解説

電気通信ネットワークを支えている仕事の一つ、「電気通信主任技術者」をご存じでしょうか?

国家試験合格後に資格証が交付される国家資格で、取得すると電気通信業界で長く安定して働くことや昇給・キャリアアップが見込めます。通信ネットワークに関わる仕事は拡大を続けているため、将来性も十分といえるでしょう。

この記事では、電気通信主任技術者の仕事内容や役割を解説しつつ、国家資格取得のための試験内容や、試験勉強に役立つ情報を紹介します。電気通信主任技術者に興味のある方は、ぜひご覧ください。

電気通信主任技術者とは

初めに、電気通信主任技術者の役割と資格、将来性について解説しましょう。

電気通信主任技術者はICTの国家資格

電気通信主任技術者は、1985年に施行された電気通信事業法により制度化した国家資格で、電気通信技術(ICT)のプロであることを証明するものです。

ある程度の規模を持つ電気通信事業者は、設備管理ごとに電気通信主任技術者を選任し、配置しなければなりません。

これは総務省令で定められた技術基準を維持するために、電気通信事業法第45条で定められており、電気通信主任技術者は「資格者証」を持つ人のなかから選任されます。

どのような仕事を行うのか?

先ほども述べたように、電気通信主任技術者は担当設備が総務省令で定めた技術基準を自主的に維持できるよう、事業用電気通信設備の工事や維持・運用の際の監督責任者として配置されます。

電気通信主任技術者は、ネットワークを構成する設備の種類により、次のような資格に分かれており、監督する設備範囲が異なります。

参考:一般財団法人 日本データ通信協会「電気通信主任技術者とは」

なお、「電気通信主任技術者資格者証」は、国家試験を受けて資格を取得したあとに、交付申請が必要です。合格者は忘れずに申請してください。

電気通信主任技術者は将来性のある仕事?メリットはある?

電気通信主任技術者は設備管理を監督する仕事なので、作業員ほど人数が必要ではありません。

ただし、資格保有者の配置は事業所や都道府県ごとに義務付けられており、5G回線の普及やIoTの進展などで通信ネットワークに関わる仕事が拡大していくことを考えると、将来性は見込めるでしょう。

今後はAIを使ったネットワーク構築やロボット化も進む見通しで、電気通信主任技術者にはより高度な知識が求められる可能性がありますが、それこそが価値ある資格である証拠。

電気通信に関連する職種・業種への就職・転職で有利に働くだけでなく、昇給キャリアアップ長く安定して働くことにもつながると期待されます。

電気通信主任技術者資格証を取得する方法

電気通信主任技術者として働くには、電気通信主任技術者資格証を取得する必要があります。

資格証を取得するには、以下2つの方法が挙げられます。

  1. 国家試験を受験し、合格する
  2. 総務大臣指定の養成課程校を修了し、国家試験を受ける

https://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/com/jigyo/shunin/index.html

2. の方法では、養成課程校である大学の工学部など(総務省「認定学校等一覧(電気通信主任技術者資格)」参照)で必要な養成課程を修めることで、国家試験の一部の科目が免除されます。

資格取得により電気通信関連の企業では昇給やキャリアアップが見込めるため、同業界への就職を考えているのであれば、大学在学中から勉強をスタートしておくのも一つの手です。

電気通信主任技術者の国家資格試験の概要

ここからは、電気通信主任技術者の国家試験の受験資格試験科目科目免除などの概要を解説します。

受験資格

電気通信主任技術者には、特に受験資格がありません。年齢・学歴に関わらず、どなたでも受験できます。

試験日程

例年、7月中旬頃と1月下旬頃の年2回、実施されています。

試験会場

全国15地区(札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟、金沢、長野、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、熊本および那覇 ※近郊都市を含む)に試験会場が設けられます。

試験会場は、試験の2週間前までに受験票で伝えられます。受験票は試験申請(後述)時に設定するマイページに掲載されるので、チェックしておきましょう。

試験科目

試験科目は3科目ですが、電気通信主任技術者の資格種別によって異なります。

伝送交換主任技術者の試験科目

参考:一般財団法人 日本データ通信協会「電気通信主任技術者試験  受験の手引き 21.試験科目と出題範囲」

線路主任技術者の試験科目

参考:一般財団法人 日本データ通信協会「電気通信主任技術者試験  受験の手引き 21.試験科目と出題範囲」

試験申請(受験申込)と試験当日の流れ

試験申請(受験申込)はインターネット申請のみ。

試験手数料(受験料)は、3科目受験が1万8,700円、2科目受験が1万8,000円、1科目受験が1万7,300円、全科目免除が9,500円(いずれも非課税。2023年12月時点の価格)です。

試験(筆記)は一日で行われ、午前は「伝送交換設備(又は線路設備)及び設備管理」(試験時間150分)を、午後は「法規」と「電気通信システム」(試験時間各80分)を受験します。

科目免除とは?

電気通信主任技術者の試験は、保有資格や学歴、実務経験、認定校での取得単位により、試験科目が一部またはすべて免除される場合があります。科目免除は受験申込時に、経歴証明書などの必要書類をアップロードのうえ手続きを行なってください。

対象となる免除科目と要件は、日本データ通信協会ホームページの免除科目一覧表に詳しく掲載されています。試験科目が免除になれば、勉強時間も短縮することができます。受験を考える方は、必ず確認しましょう。

合格基準と難易度

試験の合格基準は、「法規」「システム」は100点満点で60点以上、「設備」は150点満点で90点以上となっています。

近年の合格率は、2021年度第1回の50.9%を除いて20~35%程度となっており、難易度は比較的高いといえるでしょう。

資格証の交付申請

合格後の資格証取得は、試験結果通知書もしくは試験免除通知書に同封されている「資格者証交付申請のご案内」に記載の、総務省地方総合通信局か沖縄総合通信事務所へ、交付申請してください。資格証の交付には期限があるので、注意しましょう。

電気通信主任技術者の試験に合格する勉強方法

最後に、電気通信主任技術者の試験勉強に役立つ情報をお伝えします。

試験センターのホームページで過去問を入手する

資格試験の対策といえば、まず過去問研究と考える人は多いでしょう。

日本データ通信協会のホームページでは、過去2〜3年分(4回分)の過去問が公開されています。

この過去問は、電気通信主任技術者試験の対策に使用する場合は、許可や使用料は必要ありません。自由に印刷・ダウンロードして使えるので、十分に活用しましょう。

ただし、著作権は放棄されていないので、取り扱いには注意してください。

科目別対策には参考書を活用する

電気通信主任技術者試験には、対策問題集や参考書が多数販売されています。

特に「伝送交換設備(又は線路設備)及び設備管理」対策や「法規」対策などのように、試験科目別の参考書があるので、自分の苦手分野対策などに活用しましょう。

多くの方が役に立ったと紹介している参考書がこちらです。

なお、対策本は最新の出題傾向に対応して随時改訂されます。特に電気通信事業法や電波法などの関連法について問われる「法規」対策には、最新の法改正を反映しているものを選びましょう。

まとめ

電気通信主任技術者は国家試験を受けたあと、資格証を取得して実務につくことができる、電気通信技術(ICT)を支える国家資格です。事業所や都道府県単位に、大手電機通信事業者からの選任を受けて配置されます。

通信ネットワークに関わる職種であることを考えると、将来性や安定性が期待できる資格といえるでしょう。

試験は比較的難しいものですが、ICTに関わる仕事をしたいと考える方や、資格を取得してステップアップを図りたい方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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