教育訓練給付制度とは|お得に資格取得できる制度の概要と条件を解説!

AI等を活用した技術革新が労働環境を劇的に変化させ、今までの知識やスキルでは仕事に就くことや職場での生き残りは難しい時代が来ています。とはいえ、自身のスキルを向上させるには費用と時間がかかるもの。
そんな時は、教育訓練に掛かった費用の一部が支給される「教育訓練給付制度」を利用すればお得に学ぶことができます。 
この記事では、雇用保険の被保険者なら知らないと損する、教育訓練給付制度の概要、支給要件、対象講座や受給方法等について紹介します。

雇用保険の被保険者でない方向けの職業訓練受講給付金についてはこちらから!

https://college.coeteco.jp/blog/archives/779/

教育訓練給付制度とは

教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講し修了すると、負担した受講料など費用の一部が支給される雇用保険の給付制度です。

引用:厚生労働省「教育訓練給付制度」

雇用保険の加入期間など一定の要件を満たしていれば、求職中の方だけでなく働きながらでも受給可能。パート・アルバイトや派遣労働者の方も対象です。なお、公務員は雇用保険の適用の対象外なので、たとえ在職中であっても制度の対象外となります。

教育訓練給付金は何度も受給することができますが、2回目以降の場合は、前回の受給から3年以上経過していなければなりません。

教育訓練給付制度の種類

教育訓練給付制度の対象となる教育訓練は、内容やレベルなどに応じて以下の3つに分けられており、それぞれ給付率が異なります。

  • 一般教育訓練給付金
  • 特定一般教育訓練給付金
  • 専門実践教育訓練給付金

2023年10月時点で、資格取得や検定、デジタル技術の知識およびスキル向上に役立つ講座が約15,000もあり、教育訓練給付制度検索システムを通じて見つけることができます。オンラインで参加できる講座や、夜間・土日に開講される講座もあるので、求職中の方だけでなく、在職中の方でも無理なく受講可能です。

一般教育訓練給付金

一般教育訓練給付金制度とは、

働く人の主体的な能力開発の取組を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする雇用保険の給付制度です。

引用:一般教育訓練の教育訓練給付金の支給申請手続きについて

簿記、ITパスポート、FPなどの資格試験対策講座が主な対象講座です。通学講座だけでなく、通信講座やeラーニングも対象なので、給付金が新しいジャンルに挑戦するきっかけにもなるでしょう。
ここでは、一般教育訓練給付金支給の条件や給付額などを詳しく説明していきます。

参考:一般教育訓練の教育訓練給付金の支給申請手続きについて
雇用保険に関する業務取扱要領(令和6年2月1日以降)目次・一般教育訓練給付金

対象者・条件

  • 雇用保険の被保険者である在職者:訓練を開始した日(受講開始日)に支給要件期間が3年以上ある方
  • 離職等で被保険者資格を失ってから1年以内の方:支給要件期間が3年以上ある方
  • 前回の教育訓練給付金受給日から今回の受講開始日前までに3年以上経過している方

なお、初めて教育訓練給付金を受けようとする方は支給要件期間が1年以上あればOKです。
また、妊娠、出産、育児、疾病等で適用期間が延長された場合は、最大20年以内であれば対象となります。

支給額

一般教育訓練給付金の支給額は「教育訓練施設に支払った費用の20%に相当する額」です。
20%に相当する額が4,000円を超える場合は支給されます。また、20%に相当する額の上限は10万円となっています。
割引や還付金を受ける場合は、それらの額を引いた後の金額×20%が支給されます。

受講するための入学金や登録料、受講料(最大1年分)など教育訓練施設が証明する費用は支払った費用に含まれますが、パソコン購入費や受講に必要でないテキスト、検定試験の受験料、支給申請時点でまだ払っていない費用は含まれませんので注意しましょう。
また、受講開始日の1年以内にキャリアコンサルティングを受けた場合、2万円まで費用に加えることができます。

講座の内容

  • 資格の取得を目標とする講座
  • 大学院などの課程

指定講座には英語をはじめとする語学やMOS等のIT、簿記に関する資格といった、幅広いジャンルがあり、1日~3ヵ月程度で修了する比較的短期の講座が指定されています。
指定講座がとにかく多いため、もし取得を考えている資格があるなら、給付金の対象かどうか調べてみてもいいかもしれません。在宅で受けられる通信講座などであれば自分のペースで進められます。

受給の流れ

事前の提出書類はなく、指定講座の受講を修了した日の翌日から1ヵ月以内に支給申請手続きをすればOKです。基本的には期限内に本人がハローワークに行き、給付金の支給申請書や教育訓練の修了証明書、領収書等の書類提出が必要です。
2024年2月1日から電子申請が認められているので、ハローワークに行くのが難しい場合は利用してみるのも良いでしょう。

特定一般教育訓練給付金

特定一般教育訓練給付金とは、

速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練を受けた場合に、その受講のために支払った費用のの一部に相当する額を支給するもの

引用:特定一般教育訓練の「教育訓練給付金」に関する支給申請手続きのご案内

特定一般教育訓練給付金は、一般教育訓練給付金と設定されている講座の種類は似ていますが、よりレベルの高い講座が対象です。また、費用の支給率や手続き方法が違います。

参考:特定一般教育訓練の「教育訓練給付金」に関する支給申請手続きのご案内
雇用保険に関する業務取扱要領(令和6年2月1日以降)特定一般教育訓練給付金

対象者・条件

  • 雇用保険の被保険者である在職者:訓練を開始した日(受講開始日)に支給要件期間が3年以上ある方
  • 離職等で被保険者資格を失ってから1年以内の方:支給要件期間が3年以上ある方
  • 前回の教育訓練給付金受給日から今回の受講開始日前までに3年以上経過している方

なお、初めて教育訓練給付金を受けようとする方は支給要件期間が1年以上あればOKです。
また、妊娠、出産、育児、疾病等で適用期間が延長された場合は、最大20年以内であれば対象となります。

支給額

特定一般教育訓練給付金の支給額は「教育訓練施設に支払った費用の40%に相当する額」です。40%に相当する額が4,000円を超える場合は支給されます。また、40%に相当する額の上限は20万円となっています。
割引や還付金を受ける場合は、それらの額を引いた後の金額×40%が支給されます。

受講するための入学金や登録料、受講料など教育訓練施設が証明する費用は教育訓練施設に支払った費用に含まれますが、パソコン購入費や受講に必要でないテキスト、検定試験の受験料、支給申請時点でまだ払っていない費用は含まれませんので注意しましょう。

講座の内容

特定一般教育訓練の指定講座は、以下の3つのカテゴリーに分類されています。

  1. 業務独占資格、名称独占資格、必置資格に関する養成課程、またはこれらの資格取得を訓練目標とする課程
  2. 情報通信技術に関する資格のうちITSSレベル2以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程(120時間未満のITSSレベル3を含む)
  3. 短時間のキャリア形成促進プログラムおよび職業実践力育成プログラム

速やかな再就職や早期のキャリア形成を目的とした教育訓練であるため、具体的には、介護初任者研修や税理士、登録販売者、宅地建物取引士といった仕事に直結しやすい資格の取得を目指す講座や、各種自動車免許、基本情報技術者等のIT資格の取得目標講座があります。

受給の流れ

一般教育訓練給付金とは異なり、訓練開始日の1ヶ月前までにハローワークでキャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受け、職歴などを記録するジョブカードを作成する必要があります。同時に、教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票の提出も必要です。

受給が認められ、実際に給付金を受け取るためには支給申請をしなければなりません。指定講座の受講を修了した日の翌日から1ヵ月以内が支給申請手続き期間です。基本的には期限内に本人がハローワークに行き、給付金の支給申請書や教育訓練の修了証明書、領収書等の書類提出が必要です。
こちらも2024年2月1日から電子申請が認められているので、ハローワークに行くのが難しい場合は利用してみるのも良いでしょう。

専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金とは、

働く人の主体的で、中長期的なキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする雇用保険の給付制度です。

引用:専門実践教育訓練の給付金のご案内

一般教育訓練や特定一般教育訓練より1ヵ月~2年程度と受講期間が長く、専門的な内容の講座などが対象となっています。条件は一般教育訓練給付金や特定一般教育訓練給付金とあまり変わらず、そこまで厳しくないでしょう。

ただし、受給するには特定一般教育訓練給付金と同様に、訓練開始日の1ヶ月前までにハローワークで訓練前キャリアコンサルティングを受けなければなりません。

参考:専門実践教育訓練の給付金のご案内
雇用保険に関する業務取扱要領(令和6年2月1日以降)専門実践教育訓練給付金

対象者・条件

  • 雇用保険の被保険者である在職者:訓練を開始した日(受講開始日)に支給要件期間が3年以上ある方
  • 離職等で被保険者資格を失ってから1年以内の方:支給要件期間が3年以上ある方
  • 前回の教育訓練給付金受給日から今回の受講開始日前までに3年以上経過している方

なお、初めて教育訓練給付金を受けようとする方は支給要件期間が2年以上あればOKです。
また、妊娠、出産、育児、疾病等で適用期間が延長された場合は、最大20年以内であれば対象となります。

支給額

支給額は専門実践教育訓練の受講中と修了後で異なります。

専門実践教育訓練の受講中

教育訓練施設に支払った費用の50%に相当する額が支給されます。
50%に相当する額が4,000円を超える場合は支給されます。
また、50%に相当する額の上限は職業訓練が1年の場合40万円、2年の場合80万円、3年の場合120万円です。なお、専門実践教育訓練の訓練期間は最大で3年です。

専門実践教育訓練の修了後

資格等を取得し、訓練修了日の翌日から1年以内に被保険者として雇用または、既に雇用されている場合、教育訓練施設に支払った費用の70%に相当する額が支給されます。
なお「70%に相当する額」と書いていますが、実際には、受講中に受け取った50%分との差額である20%分が追加で支給される形です。費用の50%分に加えて70%分が支給されるわけではないので注意しましょう。

70%に相当する額が4,000円を超える場合は支給されます。
また、70%に相当する額の上限は職業訓練が1年の場合56万円、2年の場合112万円、3年の場合168万円です。

講座の内容

専門実践教育訓練の指定講座は、以下の7つのカテゴリーに分類されています。

  1. 業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程
  2. 専門学校の職業実践専門課程およびキャリア形成促進プログラム
  3. 専門職大学院
  4. 職業実践力育成プログラム
  5. 一定レベル以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程
  6. 第四次産業革命スキル習得講座
  7. 専門職大学・専門職短期大学・専門職学科の課程

上記の分類のように、看護師や介護福祉士、栄養士といった専門性の高い資格の取得を目指すプログラムから、ブライダル系や美容系の専門学校、法曹やMBA取得を目指した大学院等のアカデミックなものまで、講座は多岐に渡ります。

受給の流れ

訓練開始日の1ヶ月前までにハローワークでキャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、職歴などを記録するジョブカードを作成する必要があります。同時期に、教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票の提出も必要です。

給付金の受給が認められ、実際に給付金を受け取るためには支給申請をしなければなりません。
受講中は基本的には受講開始日から6ヵ月ごとの期間(支給単位期間)の末日の翌日から起算して1ヵ月以内が支給申請期間となります。
受講修了後に追加給付を受ける場合は、基本的には雇用日の翌日から起算して1ヵ月以内に支給申請をしなければなりません。
支給申請時には給付金の受給資格者証や訓練の受講証明書などの書類の提出が必要です。

教育訓練支援給付金

専門実践教育訓練を受講している人のうち、一定の条件を満たした方に雇用保険の基本手当の日額の80%に相当する額が支給されます。主に失業中の方が対象なので、生活費に困ることなく訓練に集中できます。
2022年3月31日までの時限措置が2025年3月31日まで延長されています。自分が対象となるかどうかをチェックし、利用を検討してみましょう。

参考:専門実践教育訓練の給付金のご案内
雇用保険に関する業務取扱要領(令和6年2月1日以降)教育訓練支援給付金

対象者

主な条件は下記の通りです。

  • 専門実践教育訓練給付金の受給資格があること
  • 専門実践教育訓練を修了する見込みがあること
  • 専門実践教育訓練受講開始時に45歳未満であること
  • 受給資格確認時に短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者ではないこと
  • 受給資格確認時に一般被保険者ではないこと
  • 受講開始日前に教育訓練給付金を受けたことがない方(平成26年10月1日前に給付金の支給を受けた方は例外あり)
  • 受講する専門実践教育訓練が通信制または夜間制ではないこと
  • 専門実践教育訓練受講開始日が令和7年3月31日以前であること

さらに細かい条件がありますが、条件を全て満たしている場合、教育訓練支援給付金の受給対象者となります。
専門実践教育訓練給付金に加えて受給できるので、「再就職に向けて資格は取りたいけれど、訓練中の生活費が不安」という方には嬉しい制度です。

支給期間と支給額

  • 専門実践教育訓練を適切に受講している期間のうち、失業している期間分(失業手当給付がない期間分)支給される
  • 基本手当の日額の80%相当の額に、2ヶ月ごとに失業の認定を受けた日数を乗じて得た額

基本的には専門実践教育訓練給付金の申請時に教育訓練支援給付金も受給したい旨をハローワークで伝えると、同時に受給可能かを確認してもらえます。
不明点はハローワークで職員に尋ね、給付金の内容を理解した上で受給申請をしましょう。

教育訓練給付金の電子申請が誰でも可能に

これまではやむを得ない理由がある場合のみ教育訓練給付金の「支給申請」と「受給資格確認」の電子申請等が認められていましたが、2024年2月1日以降から誰でも電子申請・郵送・代理人による申請が可能になりました

従来では「支給申請」と「受給資格確認」はハローワークの窓口で手続きをしなければなりませんでした。しかし、今回の電子申請等が可能になったことによりハローワークの窓口に行かなくても申請が可能に。訓練の受講を休めない時に、ハローワークに行く時間を確保するのはなかなか難しいのでありがたいですね。
なお、教育訓練支援給付金も受給したい場合は窓口での手続きが必要になるので、電子申請等はできません。

まとめ

雇用保険の給付といえば、失業時に支給される基本手当が有名ですが、在職中でも受けられる教育訓練給付制度もまた知っておくべき雇用保険給付の一つです。
給付制度には3つの種類があり、それぞれで受給できる金額や対象者が異なります。制度を活用し、自分のキャリアプランに沿った資格を取得していくことで、理想のキャリアの実現へ大きな弾みをつけることができるでしょう。
今後、キャリアアップやキャリアチェンジを目指す方は、支援を受けながら資格取得や能力開発ができる、教育訓練給付制度の利用を一度検討してみてはいかがでしょうか。

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