傾聴力とは|コミュニケーションに欠かせない「聴く力」

社会生活で最も大切なのは、人間関係を円滑にするコミュニケーションスキル。コミュニケーションスキルというと「うまく話ができる」ことと思われがちですが、実は相手の話を聴く「傾聴力」も重要なコミュニケーションスキルのひとつといわれています。特にビジネスにおいては、傾聴力でその成功が左右されることも。社会人にはなぜ傾聴力が重要なのか、傾聴力を身に付けるメリットやトレーニング法についても解説します。

「傾聴力」とは

傾聴力とは、その名のとおり、「人の話にじっくり耳を傾けて聴く力」のこと。もともとはコーチングやカウンセリングの手法で重視されてきたコミュニケーションスキルです。コミュニケーションには相手を納得させる、楽しませるといった話す技術も重要ですが、意思疎通をとるという意味では、相手の話をきちんと聴き理解する傾聴力が欠かせません。

傾聴力の重要なポイントは、「ただ聴くだけでなく、相手に寄り添う」こと。相手を観察しながら心情を読み取り、上手に相手の話を引き出していくことが大切です。相手に「話しやすい」「この人ともっと話がしたい」と思ってもらえれば信頼関係も構築され、その後のコミュニケーションも円滑に進みやすくなるというわけです。

傾聴力を身につけるメリット

信頼関係を築くうえで重要な傾聴力。プライベートでも活かせるスキルですが、ビジネスシーンにおいてはどのようなメリットがあるのでしょうか。

クライアントの信頼を得られる

営業では欠かせないクライアントとのやりとり。成果を出すには、クライアントが求めているものを把握し、ニーズに沿った提案をしなければなりません。そのためにも、クライアントが何を求めているのか、何を重視しているのか、相手の思いを聞き出す傾聴力が重要です。クライアントの思いを理解しそれを示すことができれば、「この人はわかってくれる」という信頼を得ることができます。クライアントとの信頼関係は今後の発注や案件の継続にもつながります。

同僚や部下と良い関係を築ける

同じ現場で仕事をしている際には、ときに意見がぶつかることもあるもの。そんなとき、人の話に耳を貸さず一方的に意見を述べる人には、誰もがやりにくさを感じるでしょう。相手のパフォーマンスを引き出すうえでも、まずはこちらが聴く姿勢を示すことが大切。相手の意見を聞き、内容を理解したうえで、自分の見解を述べることが大事です。相手の話をきちんと聞く姿勢をとることで、お互い納得して、よりよい結果を得ることができるはずです。

社内ディスカッションやグループワークに活かせる

1対1で会話する場だけでなく、複数の人と話し合うディスカッションやグループワークでも、傾聴力は活かすことができます。話をしている人に対してうなずいたり相槌をうつなどしたり反応を見せることで、相手も「きちんと聞いてくれている」と認識し、安心して自分の考えを話すことができます。複数人のディスカッションではこの安心できる雰囲気が実に重要。「ほかの人と違う意見でも聞いてもらえる」という安心感は、参加者たちの発言を引き出すでしょう。ディスカッションというととにかく発言することが大事と思ってしまいがちですが、そのときどきで聞き役にまわることも大切です。

傾聴力は自分が話し手になるときも活かせる

傾聴力は相手の話を聞くときだけでなく、自分のことを伝えたり自分が話す側にまわるときにも活かせます。

例えば、面接。面接は、基本的に面接官からの質問に回答する形で進みます。このときにも重要となるのが、「相手の質問をきちんと聞き、求められている回答を返す」こと。傾聴力がない人は、自分の想定していなかった質問をされた際に質問の意図が読み取れず、論点のずれた回答をしてしまいがち。不意の質問でもその内容をかみ砕き、適切な回答ができれば、「理解が早い」と印象も良くなるでしょう。

同じく会話をするときも、相手の話にしっかり耳を傾けることで、相手がどのような話題に興味があるか、どのような情報を欲しがっているかを察知でき、会話の盛り上げにつなげることができます。

傾聴力を高めるコツ

傾聴力を高めるには、普段の日常会話、ビジネスでの会話の中で、以下のことを意識的に行ってください。これは、傾聴力を高めるコツでもあり、継続することで傾聴力を磨くトレーニングにもなります。

適度に相槌したりうなずいたりする

適度な相槌やうなずきは、態度で聞く姿勢を示す基本の行動。これだけでも、「あなたの話をきちんと聞いています」という意思を示すことができます。また、相手の会話の内容に沿った質問をすれば、より理解しながら聞いていることを示せるでしょう。より会話を掘り下げたいときや、本題からずれてしまった会話の軌道修正をしたいときにも、質問は有効です。

相手の話は最後まで聞く

相手の話を聞いている際に腑に落ちないことがあると、すぐに話を遮り自分の意見を述べ始める人がいます。とにかく早く話を進めたいがゆえかもしれませんが、これは「あなたの話はこれ以上聞く必要ない」と言っているようなもの。話を止められた方としては「またこの人と話したい」と思うはずもありません。相手の意見に納得できないときも、まずは最後まで話を聞くことを心がけましょう

バックトラッキングを取り入れる

バックトラッキングとは、いわゆる「オウム返し」のこと。相手の発言をこちらも繰り返すことで、相手に「きちんと聞いてくれている」と認識させるテクニックで、子育てコーチングや高齢者とのコミュニケーションでも有効とされています。

ポイントは、相手の発言の要点を抜粋して返すこと。相手の発言をそのまままるごと繰り返すのは不自然ですし、不信感を与えてしまいます。「今、○○会社と揉めていて大変なんだ」という発言であれば「それは大変ですね。〇〇会社は難しいところですよね」と返すなど、相手の気持ちに寄り添い、相手が話したいことを聞き出しましょう。

ミラーリングを取り入れる

相手が心地よく話せる雰囲気をつくるのがミラーリングというテクニックです。

ミラーリングとは、相手の動きを鏡のように真似ることを言います。これは、人間は自分と言動が似ている人に好意を示すという心理のもとに取り入れられている方法。相手が楽しそうに笑顔で話していればこちらも笑顔で聞く、相手が会話の中で笑ったらこちらも同じタイミングで笑うなど、相手に同調しながら話を聞くことで安心感・親密感を抱かせることができます。

傾聴力を学ぶ通信講座、セミナー

傾聴力をより効率的に身に付けたいときは、通信講座やセミナー、教室などで学ぶ手段もあります。

多彩な通信講座を扱うNHK学園では、初級者向けの「傾聴入門」講座を開設。受講期間6カ月で受講料は28,800円(税込)。テキストとDVDでじっくり傾聴スキルを学ぶことができます。

https://www.n-gaku.jp/life/course/3862

また、マネジメントの人材育成や指導に取り組む一般社団法人日本能率協会でも、定期的に傾聴力強化セミナー(68,200円/税抜)を開催しています。会場は東京と大阪ですが、Zoomを使ったオンライン参加型のセミナーも不定期で開催しているので、遠方の人でも参加可能です。

https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=151362

こちらの日本能率協会では、漫画で傾聴を学べる「マンガでやさしくわかる傾聴」も発行しています。タイトルのとおり漫画でわかりやすく解説されており、視覚的にインプットできます。難しいテキストや講義が苦手な人、マイペースに学びたいという人は、こちらの書籍で学んでみるのもよいかもしれません。

傾聴力に関する資格

傾聴力に関する資格を取得して、それを職業に活かすことも可能です。

傾聴力の資格のひとつ、傾聴療法士はNPO法人日本精神療法学会が認定する民間資格。脳科学・心理学に基づいた傾聴療法を身に付けられます。協会が開催する講座を受講し、定められた単位を取得すれば、テストなしに誰でも資格取得可能(費用は要確認)です。

http://toumei.org/category/license/keicho/

また、一般社団法人日本傾聴開発能力協会では、傾聴サポーター®資格を取得できる養成講座(201,000円/税込)を開催しており、こちらも全過程終了することで資格取得できます。こちらの講座は初心者向けですが、日本傾聴開発能力協会ではこのほかに、カウンセラーやセラピスト向けの資格として、傾聴心理士養成講座(475,000円)なども開催しています。

https://jkda.or.jp/

※表示金額は2022年5月28日時点の定価。割引価格など詳細は公式サイトでご確認ください。

まとめ

相手の話を聴くことは、コミュニケーションの第一歩。周囲と良好な関係を築くうえでも、情報の伝達を正しく行ううえでも、傾聴力は重要です。傾聴力を発揮し相手と信頼関係ができれば、よりコミュニケーションもとりやすくなります。ビジネスパーソンとしては大きな強みとなるでしょう。

今回ご紹介したトレーニング法をぜひビジネスの場に取り入れて、ビジネスチャンスを広げてください。ビジネスでのコミュニケーションが苦手という人は、まず家族や友人など身近な人との会話からトレーニングしていくこともおすすめです。

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