(取材)オンライン講座のメリットと成功のポイント | リトミック・ピアノ講師に聞く

音楽教室とレンタルスペースを兼ね備えた「Solana(ソラーナ)」(千葉県船橋市)を2021年5月に構えた、越尾ひろみ先生。

対面で向き合える場を大切にしつつ、2020年の全国一斉休校の要請3日後からオンライン開催で通常レッスンを継続したように、オンラインレッスンにも積極的に取り組んでいます。

この記事では、対面・オンライン開催どちらも活用している越尾先生から、オンライン開催のメリット飽きさせないコツを、リトミックやピアノを指導する際のコツとともに紹介します。

リトミック・ピアノ講師になったきっかけ

コエテコ編集部(以下、編集部)リトミックやピアノの講師を始めたきっかけを教えてください。

越尾ひろみ(敬称略 以下、越尾) 出産を機にそれまでの仕事を辞め子育てに専念していたときに、親子向けコンサートを開催したことが始まりです。

私自身が親子で音楽を楽しめる場が少ないと感じていたら、「親子で音楽を聴きたいよね、たまにはコンサートに行きたいよね」とママ友と話す機会があり、それなら私が開催しようと考えました。

編集部 自ら開催するとは、とってもアクティブですね。

越尾 音楽大学を卒業後、ずっと音楽を仕事にしていたからもしれません。大手音楽教室の講師や、パソコンを用いて音楽データや音源を作る音楽データ制作など、仕事はいつも音楽でした。

わらべ歌や手あそび歌は音程が二つだけのものもありシンプルな構成ですが、子どもの発達や成長に欠かせない音楽で、「音楽の良さとは難易度芸術性だけではない」と、コンサートや子育てを通して気がつきました。

赤ちゃんがハイハイやつかまり立ちをせずに突然立つことがないように、音楽にもたどるべき過程があると実感しました。乳幼児期に目指すべきことは難易度の高い曲を与えることではなく、発達段階に合わせた音楽に親しむことだと思います。

編集部 コンサートから、保育園などに出張しての音楽教室に広がっていくんですよね。

越尾 コンサートへの参加者だった保育関係者から「うちの施設でも、やってくれないか」と声をかけられて、保育園で音楽教室を開催し始めます。その後、リトミックの講師資格も取得して、保育園など依頼先や、私自身が主催する教室で教えました。

オンラインと対面をつかいわけるコツと工夫、オンラインのメリットと新サービスとは

休校発表3日後から、オンライン開催で教室を継続

編集部 教室が順調に増えていった頃の2020年2月27日(金)の夜に、当時の安倍晋三首相が新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために、全国の学校に休校を要請しましたね。その3日後の3月1日(月)からオンラインで教室を開催したときのことを教えてください。(2020年2月はうるう年のため、29日までありました)

越尾 コロナ禍以前に私自身が音楽以外のオンライン講座を受講した経験から、「私の教室も、オンライン開催できる」と実感していました。

一斉休校要請の約1週間前に、近隣エリアが休校になります。休校を目の当たりにして、「近々、対面での開催ができなくなるかも」と感じました。備えておこうと、zoomなどの設定や機材を見直したり、ピアノを弾く際にどう活用するか考えたりしていたら、金曜日の夜に安倍首相による休校要請が報じられます。

すぐに生徒と保護者へ連絡して、要請後の翌日・翌々日にあたる土曜日・日曜日にzoomの接続確認を行います。3日後の月曜日からオンラインをつかって教室を継続することができました。

編集部 コロナ禍前からオンライン講座を意識されていたのが功を奏しましたね。

越尾 一斉休校後もオンラインで教室を継続できたことは、保護者にも良い効果があったのかなと感じています。

一斉休校後の2020年の春はステイホームが呼びかけられて、児童館のような親子で外出する施設も利用できなくなりました。親子で家に閉じこもる時間が増えて、ママたちも気持ちがくじけそうになっていたように感じます。オンラインで教室を開催できたことで、ママたちが家族以外の人と会話する機会をつくれたことはよかったと思います。

参加していると参加者自身が実感して、参加者の気持ちを把握するための工夫

編集部 オンライン教室のために工夫していることを教えてください。

越尾 私のリトミックやピアノ教室に来るのは、未就園児、幼児、小学生です。子どもたちには、画面からの声や音を30~40分座って聞くことはむずかしいことです。子どもたちはいつも楽しいことを求めています。そんな子どもたちのためのオンライン教室は、普段の対面レッスンとは別ものと考えることにしました。

オンラインレッスンの様子

動画写真PowerPointもつかって、視覚で楽しめるようにしています。画面共有をすれば、参加者全員が同じものを見ながらアクションできますね。子どもたちも臨場感を感じて、自分が教室に参加していると実感できるでしょう。

対面開催なら、子どもたちの意思や感情をしぐさや雰囲気で感じ取ることができます。しかし、オンラインでは「分かった?」と問いかけても、子どもたちは「はい」「分かった」となんとなく返事をすることがあります。そのため、オンラインでは参加者の本当の気持ちを把握しづらいことが多いのではないでしょうか。

オンライン教室の画面上で意思表示をしてもらうために、手づくりの札をご家庭で用意してもらいました。クイズ番組でつかわれるような、紙に持ち手の棒がついているイメージのものです。その札をつかって、子どもたちが参加できるようにしました。

オンライン開催のクリスマス会でも「手づくりの札」が大活躍

編集部 生徒の意思表示や積極的な参加方法の工夫は、大人に応用できそうですね。

オンラインなら自分の姿をチェックしやすい、予期せぬトラブルにも対応できる

編集部 オンライン講座だからできることがあれば、教えてください。

越尾 オンライン開催のピアノ教室は、子ども本人がひじの角度手の形などを確認しやすくなるメリットがあります。

オンラインレッスンで実際に生徒に見せた画像

対面開催でも生徒の弾く姿を写真で見せることは可能です。オンラインの画面なら、より客観的に自分の姿を確認できます。レッスン開始時と終了時でどのように変化したか、BeforeとAfterの写真を見せています。

編集部 これなら子どもにも分かりやすいですね。

越尾 予期せぬトラブルに対応しやすいのも、オンラインのメリットです。

小学校が学級・学年・学校閉鎖になると、自宅待機の必要から対面レッスンには出席できません。しかし、体調に問題がなければ、オンラインで通常通りにレッスンができます。

先日、生徒さんが教室へ向かう途中に、渋滞に巻き込まれて開催時間に間に合わないときも、オンラインでレッスンしたんですよ。

運転中のママが車を停めて、スマホでzoomにつないだら、子どもにチェンジしてレッスンをしました。まずは「歌を歌う」「リズム打ち」など車中でもできることを行い、教室に着いたらピアノの演奏に切り替えて、レッスンが予定されていた全ての時間でレッスンを行うことができました。

編集部 車中でもレッスンできるとは、びっくりです。

オンラインで新サービス開始!! 「自宅での練習を見守りサポート」

越尾 ピアノ教室では、自宅での練習を見守りサポートを始めました。

編集部 子どもに自宅で練習をさせることは親には困難なので、そのサービスはとても嬉しいです。

越尾 学習塾の自習室を、オンラインでピアノでもできたらと考えました。

スタートは、コロナ禍の最初の夏である2020年の夏期講習でした。まずは朝練と名付けて子どもたちに参加を呼びかけました。

編集部 朝決まった時間に起きて活動してくれるだけでも、保護者は大助かりですね。

越尾 自分以外の生徒が頑張っている姿を見ることは、子どものモチベーションを高める効果があります。

現在ピアノ教室でおこなっている見守りサポートは、自由参加方式で、開催時間に参加できる子がzoomにつなぎます。

冒頭にミニ音楽レッスンをして、その後はミュートで各自が練習します。

編集部 ミュートで練習!! それなら全員が一斉に練習することができますね。

オンラインでも対面と同様のクオリティを提供できる

越尾 新年度からはオンラインでできること、オンラインならではの効率化をもっと進めていきたいと計画中です。

対面でもオンラインでも、そのときに合わせたより良いものをつかっていければと思います。対面ならではの良さはもちろんありますが、オンラインでも工夫をすればレッスンの質は下がらない、オンラインでも対面と同じクオリティのレッスンを提供できるでしょう。

編集部 越尾先生のオンラインの今後の展開が楽しみです。
通常のレッスンの他にも、オンラインで開催しているものはありますか。

越尾 発表会スタイルのおさらい会も、オンラインで開催しました。事前に教室で生徒の演奏を撮影した後に私が編集して、皆で視聴します。

編集部 生徒がそれぞれ自宅で撮影するわけではないんですね。

越尾 聞きやすくするための音の処理もあるので、教室で撮影します。

演奏を見た後には感想や意見を言い合うようにしています。おさらい会のような目標があれば、子どもたちはそれを目指して頑張ることができます。他の子どもの姿をみることは、よい刺激になってその後の練習に生かされています。

演奏の発表・視聴が終わったら、クイズのようなイベントを楽しむなど、オンラインでも楽しく参加できる工夫をしています。

オンラインを使いこなしながら、拠点となる教室「Solana」をオープン

コロナ禍でも拠点を構えた理由 

リトミックの2歳児クラス

編集部 オンラインを使いこなしていても、コロナ禍の最中に拠点を構えた理由を教えてください。

越尾 確かに、全国一斉休校後すぐにオンラインで教室を継続することができました。しかし、オンライン開催を始めてから半年ほど経ったときに、対面開催できる自前の場所が欲しいと実感したんです。

子どもにとっての半年は、私たち大人にとってのものとは大きく違います。特に0歳から1歳になるまでの期間は、人生で最も劇的な変化があるといってもよいでしょう。

オンライン開催から半年程経ったあるときに、リトミックの0歳児クラスの子どもたちの動きや様子が大きく変わったことに気がついたんです。

オンライン開催を行う前の実際に会って対面開催をしていたときは、子どもたちはいわゆる「ねんね」期でした。その子どもたちが半年後のレッスン中には、画面から消えて見えなくなるほど動き回っていました。その光景を見た時に「リアルで開催しないと!」と使命感を感じて、強く決意したんです。

編集部 ねんねの赤ちゃんがハイハイで動き回るのは、確かに劇的な変化ですね。

越尾 赤ちゃんがことばを取得する時は、大人の口の動きを真似して発声して、周囲の反応をみるなどの体験が大切です。

子どもが言葉を獲得するために、温度やにおい、感触など全ての感覚を総動員します。例えば日差しが暖かい日に「暖かいね」とピンポイントで子どもに言葉をかけることで、子どもは言葉を獲得します。

赤ちゃんは生まれてすぐの頃は、目の前の数十センチの世界が全てです。においなど五感で感じることが大切です。

子育てはオンラインの画面越しではできないですね。大人なら言葉だけでもコミュニケーションが可能かもしれませんが、子どもには実体験が必要です。

当時はコロナ禍の真っただ中でしたが、生徒と一緒にいられる空間が必要だと考えました。

編集部 リトミックや音楽、教育も、子育ての一部といえますね。

これからの成長を見越しながら、音楽の本筋を教えたい

壁をつかってリズム打ちを行うことも

編集部 拠点となる物件を以前から探していたんですか。

越尾 コロナ禍になる前も物件探しをしたり事業計画を準備したりしていました。

以前は、保育園などから依頼された教室と、自分で場所を借りて主催する教室に移動して教えていました。教室から教室へ移動する出張スタイルだと、どの教室にも期限があるので長期間子どもに教え続けることがむずかしいです。

編集部 子どもたちと長く向き合いたいんですね。

越尾 保育園での教室の場合は、保育園を卒業してしまうとお別れになってしまいます。

場所を借りて私が主催する教室でも、成長すると通い続けられなくなることがあるんです。

教室は、子ども年齢や月例、成長段階に合わせて設定します。平日午前中のリトミックに通ってくれた未就園児の子どもたちが幼稚園・保育園に通うようになると、通える時間が変わります。入園後は平日午後や土日なら通えるのですが、その時間に同じ場所を借りられないことが多いです。

今この瞬間を大切にすることはもちろんですが、これからの成長を見越しながら、音楽との付き合い方を教えたいと思っています。しかし、出張スタイルで教えていると、入園・入学などが期限となって、音楽の本筋にたどり着く前に子どもたちとお別れすることになります。

子どもたちの成長を切れ目なく見守り、長い目で先を見越して教えたいと思うと、出張スタイルではむずかしいと痛感しました。

編集部 拠点の準備は、順調に進みましたか。

越尾 地域の窓口へ相談に行くと「自宅ではなく、物件を借りて音楽教室を開くなんて事例は数十年ない。防音の問題もあり、音楽教室で場所を借りることは簡単ではない」と驚かれました。

編集部 確かに、個人のピアノ教室の大半が先生のご自宅ですね。

越尾 コロナ禍になって、公民館のような行政の施設も民間のレンタルスペースも、利用に制限が加わることが多くありました。コロナ禍だからこそ一緒にいられる空間を自前で用意すべきと思ったことも、拠点を構えた理由の一つです。

オリジナルプログラムの提供や、レンタルスペース機能も

編集部 Solanaの特色を教えてください。

越尾 リトミックは単なる音楽教育ではなく、さまざまな効果がある人間教育だともいわれています。社会性や協調性、自主性を高めたり、人との距離感や空間認識能力を養ったりなど、リトミック教育には子どもの成長にさまざまなアプローチがあります。

Solanaでは私が資格を取得したリトミック研究センター認定教室プログラムのクラスを1歳から5歳まで設置しています。また、オリジナルプログラムの開発・提供にも力を入れています。

編集部 Solanaには越尾先生の他にも、サポート講師の方々が参加しているんですね。

越尾 0歳児クラスには、モンテッソーリ教育の国際免許(AMI)を持つ講師も参加しています。モンテッソーリ教育とリトミックは親和性や共通性があるのではと感じていたので、以前から企画していました。

サポート講師にはモンテッソーリ教育の他に、オンラインでの見守りサポートと、リトミック教室のアシストをお願いしています。

編集部 Solanaは越尾先生が教える教室以外の顔もあります。レンタルスペースとして場所貸しもされていますね。

越尾 さまざまな幼児向け教室や大人向けのエクササイズなど、すでにご利用いただいています。これからもっと広く稼働していければと考えています。

単なる場所貸しではなく、借り手の方と私が一緒にコンテンツを考えたいです。一過性ではなく持続可能な学びの場所を目指しています。開催が継続できて、私も一緒に成長できたらいいですね。

打ち上げ花火のようなスポット的な利用にとどまらずに、日常の中で無理なく繰り返し続けていける場をつくりあげていけたらと考えています。

生徒の興味をひくためには、専門分野以外の知識も大切

編集部 リトミック、ピアノなど音楽教室として、これから目指していることを教えてください。

越尾 プロとして音楽に向き合う生徒が出てきたらうれしいなと思いますが、目指すことはそれだけではありません。

音楽との付き合い方は、新たな興味が出てきたり、学校が忙しくなったり、それぞれのライフステージや事情で変化します。

その中で、「読譜」と「表現・自分自身で解釈して感情を表現すること」をできるようになってほしいです。講師の指示に従うだけでなく、自分で考えられるようになることが大切です。子ども自身で考えられる「音楽的自立」を目指しています。これらのことは、小学生の間に可能だと思います。

編集部 これから講師業にチャレンジしたい方、新たにオンライン講座を開催したい方に向けて、アドバイスをお願いします。

越尾 ご自身の専門分野を深めることはもちろん大切ですが、受け手である生徒から興味や理解を獲得できるように、さまざまな角度からアプローチができる土台をつくるとよいと思います。

私は音楽が専門ですが、ICTやパソコン、日々のニュースなどにアンテナを張って、いろいろなアプローチができるように準備しています。

編集部 一斉休校要請から3日後にオンライン開催を始めたひろみ先生が言うと、説得力がありますね。

越尾 講師は良いコンテンツをつくることが第一ですが、そのコンテンツを発信することも同様に大切ではないでしょうか。

現代は、個人もSNSをつかえば広く発信できます。コンテンツの発信は、受け手がいてこそ成立しますから、発信するときは、常に受け手を意識して欲しいと考えます。伝えたい相手にコンテンツを届けるためには、どのメディアをつかうべきか吟味して欲しいとお伝えしたいです。

越尾 ひろみ 

洗足学園音楽大学音楽学部卒業 
リトミック研究センターディプロマA認定講師

音楽教室で講師として勤務した後、大手カラオケ・ゲーム会社で携帯音楽データ・カラオケデータのアレンジや制作ディレクター、CD制作などを務める。そのかたわらコンサートの企画(サントリーホール他)・運営や、webサイト作成にも携わる。

出産を機に幼児期の音楽教育の大切さを実感し、親子カフェや幼児施設にて、ピアノ演奏やイベント企画、リトミック等の開催や、保育園やリトミックサークルにて講師活動を行う。

現在は、ダルクローズメソッドやモンテッソーリ教育の理論を取り入れているリトミック研究センターのプログラムと、ベビーマッサージやわらべうたなども取り入れた0歳からでも音楽・リトミックを体験できるオリジナルレッスンを並行して展開。自身の生徒を、ピアノ開始1年で音楽コンクール全国大会幼児部門1位にするなど、リトミックを併用しながらのピアノ指導を行う事で、幼児期の基礎力アップの指導に力を注いでいる。

音楽シェア空間 Solana(ソラーナ)
リトミック・ピアノ教室 レンタルスペース
ウェブサイト Instagram Fadebook

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