(取材)早稲田大学「スマートエスイー」がサステナブルにアップデート!|DX人材を育成する産学連携リカレント教育プログラム

早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 情報理工学科 教授 鷲崎 弘宜 氏

「スマートエスイー」は、早稲田大学を中心に取り組む学び直しプログラム。産学から集まった第一線の教育者・研究者・実務家が、AIやIoTなどの先端技術を駆使してビジネスを変革していくDX(デジタルトランスフォーメーション)人材を育成するもので、スキルアップやキャリアアップ、キャリアチェンジを目指す社会人、社員の人材育成を目的とする企業から高い評価を得ています。

そのスマートエスイーが、文部科学省「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」の採択を受け、 企業と社会の持続可能性を両立させる「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」をキーワードにプログラムをアップデート。2023年度の「スマートエスイー DXコース」は、サステナビリティの視点を組み入れ、内容を拡充して実施されます。

スマートエスイーの責任者を務める早稲田大学理工学術院教授の鷲崎弘宜氏に、プログラムの特長やアップデートの内容、受講のメリットについてお話を伺いました。

11月新規開講
9月1日より5科目のオープン科目の受講を募集開始(先着順)

スマートエスイーのエッセンスを誰でも、1科目から受講可能です
〇IoTビジネス・AI基礎
〇サステナビリティ・DX入門
〇RPA・ノーコード入門(無料)
〇機械学習工学(MLマネジメント・グリーンAI入門)
〇強化学習・制御入門 (DeepRacer実習)

https://www.waseda.jp/inst/smartse/curriculum_open

DX人材を育成する社会人学び直しプログラム「スマートエスイー」

コエテコカレッジ編集部(以下、編集部) 「スマートエスイー」開設の趣旨と経緯をお聞かせください。

鷲崎弘宜氏(敬称略 以下、鷲崎) 私は長くソフトウェアやAIを基盤とした研究に産学連携で取り組む中で、先端技術研究の成果を社会展開するには、企業での人材育成が重要だと痛感していました。すると、2017年に文部科学省が「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)」(以下、enPiT-Pro )という、産学協働の実践教育ネットワークを形成して高度IT人材の育成を目指す助成事業の公募を開始しました。本学はそれに代表校として応募し採択され、2018年にスマートエスイーを開講しました。

編集部 2022年のenPiT-Pro終了後は、早稲田大学のリカレント教育の1つとして事業を継続されています。既存の「スマートエスイー IoT/AIコース(旧・正規履修、以下、 IoT/AIコース)」に加えて「スマートエスイー DXコース(以下、 DXコース)」を新設されたのはなぜですか?

鷲崎 当初はAIやIoTに代表される、いわゆるスマートなシステムを扱う人材が圧倒的に不足してるという危機感のもとでプログラムを立ち上げました。通信・物理から情報処理、アプリケーションまでの幅広い領域を扱い、それらの技術をいかにビジネスに応用するかという視点も含めた教育を行ってきました。

ところが、その間にコロナ禍があり、我が国はデジタル技術でビジネスを変革していくことにおいて、諸外国より圧倒的に遅れていることがあらわになりました。 それはなぜかというと、技術からビジネスへの応用を考えていたからです。そうではなく、ビジネスから必要な技術を考えることーーつまり、「組織が抱える問題はこれで、それはこのデジタル技術でこう解決できる」ということを、経営についても一通り理解した上で展開できるような、DXを推進できる人材の育成もまた必要であるということに思い至ったのです。

そこで、文部科学省が2022年度に実施した「DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業」の委託を受けて、デジタル技術を理解したDX人材の育成を目指す「DXコース」を新設しました。それに伴い、既存コースの名称を「IoT/AIコース」と改め、現在に至っています。

早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 情報理工学科 教授 鷲崎 弘宜 氏

編集部 産学協働の実践教育ネットワークが出発点ということで、企業だけでなく、他大学との連携も幅広く行われているのですね。

鷲崎 はい。本学は総合大学としてICT教育を広く扱っていますが、すべてが得意分野とはいきません。そこで、志を一緒にできるところで、他の大学の強みを活かしていただこうと、多くの大学にお声がけし、全国規模の連携体制を整えています。

例えばIoT/AIコースであれば、クラウドサービスの講座には茨城大学から、IoTイノベーションの講座には北陸先端科学技術大学院大学から教員を招くといったように、各大学の得意分野を活かして講義を一部受け持っていただいています。IoT/AIコースでは修了制作のマンツーマン指導もご担当いただきますが、受講生たちの多様な研究テーマやニーズに応える上でも、他大学との連携体制が活かされています。

また、大学は理論に基づいた体系的な教育を得意とする一方、企業は実践的な学びを得意としています。その両面を活かす意味で、本プログラムでは、ほぼすべての講座に産学の講師がペアで入っています。例えば、深層学習には本学教員とグーグルの実務家教員、機械学習には本学教員とNTTテクノクロスの実務家教員といった具合です。

編集部 大学のリカレント教育プログラムの一部を実務家教員が担うケースはよくありますが、大学同士が連携して講義を受け持つというのは、まだまだ珍しいのではないでしょうか。

鷲崎 結果として、スマートエスイーはその先駆けになっていると感じます。本学でも単独でクローズドに教育プログラムを提供してきましたが、もはやそれでは立ち行かないということは、プログラムを提供する側、受講する側の双方が感じているのではないでしょうか。特にDXにおいては、組織の中に閉じこもるのではなくオープンに他とつながっていくことが大切ですから、それぞれの大学の強さ、それぞれの企業の得意分野を持ち寄って人材育成に取り組んでいくことが必要です。ICTの分野は進展や広がりが速いので、この先はスマートエスイーをさらにオープンにして、内容を充実させていきたいと考えています。

「スマートエスイー」の2つのコース

エンジニア視点の「IoT/AIコース」とマネージャー視点の「DXコース」

編集部 IoT/AIコースとDXコースには、それぞれどのような特長がありますか? 

鷲崎 IoT/AIコースは、ICTの基礎を身につけた方を対象に、IoT に代表される最先端の情報通信技術で日本の産業界をリードできる人材の育成を目指すものです。一方のDXコースは、ビジネスの実務経験のある方を対象に、DXをリードできる人材の育成に重点を置いています。

DXと言うと「D(デジタル技術)」に目が行きがちですが、それはあくまでも手段であって、本来の目的は「X(変革)」にあります。そのため、DXコースでは抽象化・構想力を養うビジネス領域の科目を手厚くして、「問題の本質は何なのか」という X の部分を徹底して扱い、それに対するD の部分の裏付けをアプリケーション領域や情報処理領域の科目で行っていきます。

ビジネスの場でXをリードする方は、必ずしもICTの専門家ではありません。専門的なデジタル技術については組織内外のエキスパートの力を借りればよいですが、DXの推進を担うマネージャーも、その勘どころがわからないと、ビジネスに適用して変革が可能かどうかの判断が難しい。そこで、例えばアプリケーション領域にある機械学習工学という科目は、機械学習のシステムを作り込むのではなく、機械学習の留意点ややりくりを学ぶ内容となっています。

コース比較:領域・学びの体系(科目は2023年度のもの)

編集部 修了制作では、どのようなことをされるのですか?

鷲崎 IoT/AIコースでは、現在あるいは近い未来の自分の課題に技術を適用し、技術の裏付けの上でビジネスのモデルを考えたり、ビジネスの視点を備えた上で技術を深めたりします。本プログラムは非常に広い領域をカバーしており、受講生が持ち込む課題もさまざまですから、基本的に講師は1対1で伴走します。

通常の教育プログラムでは、学んだことを修了後に職場のプロジェクトで初めて適用しますが、スマートエスイーではそれを期間内に行います。講義や演習で学んでいる間は「こういう技術があるんだ」「他社の事例ではそうなのか」と、どこか他人事ですが、自ら適用してみると「こんなはずじゃない」「ここが難しいんだ」と自分事として捉えられるようになるからです。

一方、DXコースではビジネスの課題をどう捉えて、それをどう変革していくのかを考えます。組織や業界の枠を超えたところに変革のヒントがありますから、マンツーマン指導に加えて、組織も業界も異なる受講生同士で意見を出し合いながら進めていくゼミ形式を採用しています。この場合、1人の講師が受講生3〜4人の指導にあたります。

社会人が学びやすいプログラム設計

編集部 どちらのコースも平日夜・土日開講、Zoomによるリアルタイム配信式講義が基本となっていますが、一部の講義はハイブリッド型で実施されているのですね。

鷲崎 はい。両コースともオンラインだけで修了できるようにして、場所を選ばない学びを提供しつつ、グループ演習中心の一部の科目についてはハイブリッド型で実施し、対面での受講も可能としています。

志を同じくし、抱えている課題を業界や組織を越えて共有できる仲間とのつながりは、普段、組織の中にいるとなかなか作ることができません。いわばスマートエスイーが異業種交流の場になっており、実際に受講生同士の交流がそこかしこで生まれています。そういう対面のよさというものは維持していきたいと考えています。

一方、オンラインのよさも発揮されていて、当初は首都圏が中心でしたが、今は地方から受講される方も増えています。

編集部 両コースとも文部科学省「職業実践力育成プログラム(BP)」の認定講座で、IoT/AIコースは教育訓練給付の支給が受けられるのも大きなメリットだと思います。

鷲崎 IoT/AIコースは専門実践教育訓練の指定講座となっており、DXコースも2023年10月より特定一般教育訓練の指定対象講座となるよう厚生労働省に申請中です。ぜひこういった制度を活用して、経済的にも無理なく学んでいただきたいと思います。

多様な受講生と企業からの高い評価

編集部 スマートエスイーの公式サイトで公開されている受講生のデータを見ると、DXコースは40代の方、IoT/AIコースは30代の方が比較的多く、DXコースはより幅広い業種の方が受講されている印象でした。

鷲崎 そうですね。DXコースは会社を経営されている方もいらっしゃいますし、業種もさまざまです。一方、IoT/AIコースは、ソフトウェア・ITのメーカーやソリューションベンダーの方が多いです。また、現在の産業構造におけるジェンダーバランスも反映してか、女性の割合はIoT/AIコースは2割弱、DXコースは2割程度となっています。

編集部 修了生からはどのような声が寄せられていますか?

鷲崎 IoT/AIコースは2023年度で5年目となり、修了生からの声も多く寄せられています。修了制作で取り組んだ内容で特許を出願し、会社を立ち上げたという方は、その最たる例ですが、「IoTやAI関連の話はまず自分のところに来るようになって大変です」という嬉しい悲鳴もよく耳にします。

単に技術を身につけるだけでなく、修了制作で問題を捉えてプロトタイピングやアウトプットをする取り組みや、ビジネスから通信まで視野が広がるという点が評価され、キヤノンを筆頭とする企業から、今後の組織を担う人材の育成の場としても利用いただいています。

編集部 修了生の追跡調査はされているのですか?

鷲崎 基本的に1年後のフォローアップ調査を行っています。アンケート調査だけでなく、一部の修了生にはインタビューも行って教育の改革につなげています。その中では7〜8割ぐらいの方から、新規事業の構想や展開に非常に役立ったとの感想をいただいています。

スマートエスイーのサステナビリティ・トランスフォーメーション

編集部 「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」をキーワードに行うスマートエスイー事業全体のアップデートについて、その趣旨をお聞かせください。

鷲崎 SDGsに代表されるように、環境だけでなく経済、技術などさまざまな面において持続的な社会というものを、企業、大学などあらゆる組織が考えていくことが求められています。そこで、学習内容としてサステナビリティを扱うことと、自らサステナビリティに取り組むこと、その両面からアップデートを図ろうと考えました。

これからの企業は、自社の利益や存続を考える一方で、社会にどう貢献するのか、社会的な課題をどう扱うのか、というSX の視点を持っていなくてはいけません。2022年度にDXコースを初めて実施し、ご好評をいただいたものの、そうした社会的な課題や価値を扱うところが少し弱かったとの思いから、そこを強化することで、持続性のあるイノベーションをリードできる人材を育成していこうと考えています。

また、サステナブルな社会を描きながら、自分たちは長時間勤務でエネルギーを過剰に消費していては説得力がありません。そこで、スマートエスイーの取り組み自体を持続性のあるものにするために、人材育成エコシステムの構築にも取り組みます。

編集部 学習内容としてサステナビリティをどう扱っていくのでしょうか?

鷲崎 2023年度はDXコースにおいて、半数を超える既存科目にサステナビリティの考え方を組み入れる改変を行います。特にビジネス領域のビジネスモデル仮説検証などの科目において、社会の持続性にどう貢献するか、課題をどう扱うのかという考え方を、一部の講義やチーム演習などに組み入れていきます。

とはいえ、DXコースの科目をあまり膨らませても受講生は学びきれません。そこで、サステナビリティの基礎を学ぶサステナビリティ・DX入門などの専門科目は、新たに設ける「オープン科目(※)」で扱うこととしています。

2024年度以降はIoT/AIコースにも一部サステナビリティの要素を組み入れる予定で、このオープン科目がIoT/AIコースとDXコースをつなぐハブとなります。オープン科目はコース受講者以外の方にも広く提供し、将来的にはここで学んでからIoT/AIコースやDXコースへ進むことも可能にしたいと考えています。そこで、オープン科目では機械学習工学などDXコースの関連する一部の科目を共有して講義を実施します。機械学習工学ではサステナビリティを技術的にどう扱うかを学びますが、例えばその中で取り上げるグリーンAIには、AIそのものを省電力化して環境負荷を抑えることと、AIを活用して環境問題に貢献することの両面があります。

(※)オープン科目は2023年内に順次立ち上げ予定。詳細や募集方法は決まり次第スマートエスイー公式サイトで案内されます。

編集部 人材育成エコシステムとは、どのようなものなのでしょう?

鷲崎 スマートエスイーの修了者が教える側に立つ循環のことです。積極的に手を上げてくださり、すでに昨年度のDXコースや、今年度のIoT/AIコースにティーチングアシスタントとして入り、修了生だからわかる学びのポイントを伝えたり、メンターのように助言を行ったりしていただいています。受講生からも好評で、ゆくゆくは講師として1本立ちしていただくことも構想しています。そうなると系統立てて教えるスキルが必要になりますから、コンテンツを用意して教え方を学んでもらい、学んだ人が教える側に立つことを繰り返すシステムを作っていきたいと考えています。

このほかに、先ほどお話ししたオープン科目でのコース科目の共有や、IoT/AIコース・DXコースで共通するコンテンツの流用も進め、講師や事務局を含めた持続的な運営体制を作っていきます。

編集部 アップデートしたスマートエスイーを、どんな風に活用してもらいたいですか?

鷲崎 これからはエンジニアもビジネスの企画の方も、直近の利益だけでなく、自分の携わる事業活動が社会の課題にどう関係しているのかという視点を持つことが必要な時代です。サステナビリティの考え方を取り入れたDXコースやオープン科目が、その一助になればと思います。

スマートエスイー DXコース 概要
開講期間2023年10月7日(土)~2024年3月9日(土)
※基本的に土曜日に開講
受講方法基本的にZoomによるリアルタイム配信式講義
一部の演習科目はハイブリッド式講義
(早稲田大学西早稲田キャンパスでの対面式講義 + リアルタイム配信式講義)
開講科目12科目
修了
要件
必修2単位を含む5単位以上の取得
受講要件大学入学資格を有すること
ビジネスの実務経験を有すること
選考提出書類および面接による選考(面接は選考の過程で必要と判断した方のみが対象)
申込期間
・定員
1次募集期間:2023年7月13日(木) ~ 8月3日(木) [合格通知: 8月9日(水)]
2次募集期間:2023年8月21日(月) ~ 8月28日(月) [合格通知: 8月30日(水)]
※1次募集で定員(30名)に達した場合、2次募集は実施なし
受講料495,000円(税込)
備考・文部科学省「職業実践力育成プログラム(BP)」認定
・早稲田大学の履修証明書を発行(履歴書記載可)
・早稲田大学のオープンバッジを授与
・厚生労働省「特定一般教育訓練」指定対象講座に申請中

常に新しくオープンな学びの場であり続けたい

編集部 スマートエスイーの今後の展望をお聞かせください。

鷲崎 1つは、変革し続けていくということ。今話題のChatGPTにしても去年は誰も知らず、来年どうなっているかもわからない、そんな不確実性の高い時代ですから、常にアップデートし続けることが大事です。普遍的な考え方や理論は大事にしつつ、受講生の声や企業の声をすくい上げ、随時、科目などの見直しを行っていきます。SXをキーワードにした今回のアップデートは、その最たるものといえるでしょう。

もう1つは、オープンであること。我々は、NTTドコモグループのMOOC講座「gacco(ガッコ)」などに一部の座学講座を無償で提供しています。「スマートエスイーだけ受講すればよい」「スマートエスイーに送り込めば大丈夫」というのではなく、「ここを補うために、スマートエスイーのこの科目と自社の研修プログラムを組み合わせよう」というように、多様な選択肢の中から必要なものを選び、必要な時に必要なだけ学んでキャリアアップやキャリアチェンジをしていく。これからはそういう時代になっていくと思いますし、我々はそのための学びの場の1つであり続けたいと思います。

編集部 それは学び直しをする個人にとっても、人材を育成する企業にとっても、理想的な学びの形ではないでしょうか。

鷲崎 その分、プログラムを提供する側には、常にアップデートしなければいけないという危機感はあります。そこで、我々はすべての科目を参照モデルに照らし、それを公表して、身につけられる知識・技術を明確にすることを意識しています。例えば日本国内の参照モデルには、情報システムに携わる人材に求められるタスクとスキルを体系化した「コンピテンシ ディクショナリ(iCD)」、ビジネスパーソンがDXに関する基礎的な知識やスキル・マインドを身につけるための「DXリテラシー標準」、グローバルな参照モデルには、IT人材のスキル標準体系であるイギリスの「SFIAフレームワーク」などがあります。

そうしたオープン化を意識した取り組みが、教育プログラムを提供する側に広がっていくことを期待しています。そうすれば、それを受講する人や人材を送り出す企業側が、いろいろなプログラムを必要に応じて組み合わせることができるようになるでしょう。

編集部 日本で学び直しが進まない要因はいろいろあると思いますが、1つにはプログラムが使いにくかったというのもあるのかもしれませんね。

鷲崎 何を学んで、それがどう活きるのかがイメージしにくかったのかもしれません。欧米では自分のスキルを把握し、そのスキルに合ったジョブに取り組むことが一般的です。日本でもジョブ型雇用が広がってきてはいますが、残念ながら自分のスキルを把握できていない人が多いという調査結果もあります。身につくスキルを見える化していくことで、雇用も変化していくのではないでしょうか。

編集部 学び直しを考えている社会人の方に向けてアドバイスやメッセージをお願いします。

鷲崎 まずは、自分にはどういうスキルがあり、どういうジョブを扱っていて、それにどの程度応えられているのかを、改めて見つめ直すことが必要でしょう。その上で、社会の課題にどう向き合っていくかを考え、ギャップがあれば、いろいろな教育プログラムを組み合わせて使っていくとよいのではないでしょうか。

あとは、「とりあえずやってみる」ということ。今風に言うなら「フェイルファスト」ですね。80%くらいの確かさがあれば、とりあえずやってみて、うまくいかないところは軌道修正していく。現在のスマートエスイーがあるのも、その精神で粘り強く続けた結果だと思っています。

鷲崎 弘宜(わしざき ひろのり)

早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所所長、早稲田大学理工学術院基幹理工学部情報理工学科教授、国立情報学研究所客員教授、株式会社システム情報 取締役(監査等委員)、株式会社エクスモーション 社外取締役

1976年生まれ。99年早稲田大学理工学部情報学科卒業、2001年同大学院理工学研究科情報科学専攻修士前期課程修了、03年博士後期課程修了、博士(情報科学)。02年同大学助手、04年国立情報学研究所助手。05年総合研究大学院大学助手。07年同研究所助教、および、同大学助教。08年早稲田大学理工学術院准教授、および、国立情報学研究所客員准教授。15年Ecole Polytechnique de Montreal客員滞在。16年早稲田大学教授、国立情報学研究所客員教授。再利用と品質保証を中心としたソフトウェア工学の研究と教育に従事。

https://www.waseda.jp/inst/smartse/

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