長寿化やデジタル化の進展により、私たちの働き方や、社会・企業で求められるスキルは大きく変化しています。そこで注目を集めているのが、社会人が必要なタイミングで学び直すリカレント・リスキリング教育です。
ブランクからの再就職や復職、仕事と育児の両立を求めた転職、職場でのキャリアアップなど、働くことをめぐる女性の目指すところはさまざまですが、今後の人生に向けて「学び直しをしたい」と考えている方は多いのではないでしょうか。
昨今では、そんな女性のためのリカレント・リスキリング教育に取り組む大学が増え、学び直しのみならず、再就職まで支援するプログラムも登場しています。
その中でも、2007年にいち早くリカレント専門の教育機関として開設されたのが、女子教育のパイオニアである日本女子大学のリカレント教育課程。女性の活躍を後押ししてきた実績により、内閣府男女共同参画局「女性のチャレンジ支援賞」や「東京都女性活躍推進大賞」など数多くの賞を受賞しています。
2024年度、日本女子大学リカレント教育課程は以下の3つのコースを開講します。
再就職のためのキャリアアップコース
社会人女性の「新たな学び」と「再就職支援」の2つを軸としたリカレント教育プログラム。実践的なカリキュラムとビジネス性に特化した科目群を特長とし、授業はオンラインと対面の混合型で実施。1年をかけて、キャリア形成とビジネススキルアップの両輪で再就職を目指します。
・開講期間:2024年4月より1年間(授業期間:4月~8月上旬、9月~1月下旬)
働く女性のためのライフロングキャリアコース
就業中の社会人女性が全国どこからでもオンラインで学べるリカレント教育プログラム。ライフロングキャリアデザインの構築とともに、リーダーシップ能力の育成や管理職としての活躍を後押しする科目を取りそろえており、受講生自身のキャリアアップに応じた選択が可能です。
・開講期間:2024年5月より8カ月(授業期間:5月25日~1月31日)
次世代リーダーを目指す女性のためのDX人材育成コース
キャリアアップを目指す社会人女性を対象とした、DX推進に必要な技術やマネジメントが学べるリスキリングプログラム。DX推進に欠かせないマネジメントスキルから、DXの運用段階で求められるデータ処理系のスキルまで網羅したカリキュラムが特長。授業は平日夜と土曜日の午前中にオンライン形式(Zoom、オンデマンド)で行われます。
・開講期間:2024年9月より6カ月
・出願期間:2024年6月1日(土)~ 6月21日(金)必着
※3コースいずれも「入学キャリア説明会」の参加が出願の必須条件です。募集要項や説明会の日程など、詳しくは公式サイトでご確認ください。
同課程の取り組みや受講のメリットについて、日本女子大学生涯学習センター所長の髙梨博子氏、同課程主任の石黒亮輔氏、担当課長の茂木知子氏(2023年取材当時)にお話をうかがいました。
(インタビュー内容は2023年取材当時のものです)
すべての女性に開かれた学び直しの場
コエテコカレッジ編集部(以下、編集部) 他大学に先駆けてリカレント専門の教育機関を開設されたきっかけをお聞かせください。
髙梨博子氏(敬称略 以下、髙梨) 本学創立者の成瀬仁蔵は、1901年の創立当初から、生涯にわたって学び続け、成長し続けることの大切さを説いていました。その教育理念が源となり、2007年に、当時、英文学科の教授だったソーントン不破直子名誉教授がリカレント教育課程を創設しました。
具体的には、同年9月に文部科学省「社会人の学び直しニーズ対応教育事業委託」に採択され、「キャリアブレーク中の女子大学卒業生のためのリカレント教育・再就職あっせんシステム」として開講、2008年4月より履修証明プログラムとして本学の課程に設置され、日本の大学では初のリカレント教育課程となりました。文部科学省の委託期間が終了した2010年3月からは、本学が独自に運営しています。
当初は本学の卒業生のみを対象としていましたが、「すべての女性にとって人生航路の必要な時に立ち寄り、休息し、糧食を得て、次の航海に再出発できる港になりたい」という理念のもと、第2回生からは対象を広げています。
編集部 その後、就業経験のある女性に向けた既存のプログラムに加えて、就労中の社会人女性を対象とした「働く女性のためのライフロングキャリアコース」を開設されています。何がきっかけだったのでしょうか?
髙梨 特に2016年に女性活躍推進法が成立して以降、女性の生き方が多様化し、学び直しへのニーズが変化していると感じたことがきっかけです。そこで2018年8月、文部科学省「平成30年度 男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業における実証事業」の受託を機に、社会人女性や企業を対象とした学び直しに関するニーズ調査を行いました。
すると、社会人女性には、英語、ITスキル、 プレゼンテーションスキル、仕事術などを身につけたいといった要望の多いことが明らかになりました。
一方、企業はというと、当時はまだリカレント教育が広く認知されていなかったこともあり、「どんな女性を採用したいか」という質問への回答として最も多かったのは「特に何も問わない」というものでした。しかし、その中でもコミュニケーション能力を求める企業が突出して多いことがわかりました。また、「リカレント教育をどのような時間に行うことを希望するか」という質問に対しては、「勤務時間外」という声が最も多かったものの、「勤務時間内(研修を含む)」や「休暇制度を活用」という回答も見られました。
この調査結果をもとにプログラムを設計し、2021年に開始したのが「働く女性のためのライフロングキャリアコース(略称:働く女性コース)」です。同年には既存プログラムの名称を「再就職のためのキャリアアップコース(略称:再就職コース)」と改め、現在はこの2コース(※)を実施しています。
※2023年度より「次世代リーダーを目指す女性のためのDX人材育成コース」(後述)が加わりました。
再就職のためのキャリアアップコース | 働く女性のためのライフロングキャリアコース | |
応募 資格 | 4年制大学または短期大学を卒業し、就業経験のある女性 ただし、卒業後3年以内(*)の方は対象ではございません *入学(2024年4月1日)時点 | 高等学校卒以上(短期大学・大学・大学院) または、大学受験資格を有する就労中・就労経験のある社会人女性 |
定員 | 30名 | 30名 |
受講期間 | 1年(2024年4月〜2025年3月) | 8カ月(2024年5月〜2025年1月) |
修了 要件 | 28単位(280時間) *授業9カ月間、再就職活動3カ月間 *授業日数の2/3、授業時間の2/3出席 *通信障害による遅刻・欠席対応あり | 6.5単位(63時間) *授業日数の2/3、授業時間の2/3出席 *仕事・通信障害による遅刻・欠席対応あり |
授業 形式 | オンライン授業と対面授業の「混合型」 オンライン授業:週3日 対面授業:週3日 *学内LMS使用 | オンライン授業(Zoom、オンデマンド)のみ 開講日:平日夜2日、土曜日より選択 *科目により開講期間が異なる(時間割参照) *学内LMS使用 |
受講料 | 入学金:33,000円 受講料:300,000円 | 入学金:33,000円 受講料:135,000円 |
備考 | ① 再就職支援あり(無料の職業紹介、カウンセリング、企業説明会等) ② 入学選考(書類、英語・PCテスト、面接)実施 ③ 開講式(4月) 修了式(3月、3コース合同) ④ 受講ガイダンス、修了生との交流会 開催 ⑤ 文部科学省「職業実践力育成プログラム(BP)」認定 ⑥ 厚生労働省「専門実践教育訓練給付金」指定講座 ⑦ 学内施設利用可(図書館、食堂、託児施設ほか) | ① 再就職支援なし ② 入学選考(書類、オンライン面接)実施 ③ 開講式(5月中旬、遠隔開催) 修了式(3月、3コース合同、遠隔・対面) ④ 受講ガイダンス、修了生との交流会 開催 ⑤ 文部科学省「職業実践力育成プログラム(BP)」認定 ⑥ 厚生労働省「特定一般教育訓練給付金」指定講座 ⑦ 学内施設利用可(図書館、食堂ほか) ⑧東京商工会議所「研修講座」特別価格で受講可(対象外の講座有) ⑨日本女子大学生涯学習センター「公開講座」学生価格で受講可 |
「次世代リーダーを目指す女性のためのDX人材育成コース」
「次世代リーダーを目指す女性のためのDX人材育成コース」は、キャリアアップを目指す社会人女性を対象とした、DX推進に必要な技術やマネジメントが学べるリスキリングプログラム。2023年度に新設され、文部科学省「成⾧分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」の採択を受けて開講されました。
本コースの目的は、あらゆる業界、職種、役職においてDXを推進し、リーダーシップを発揮できる女性人材を育成すること。科目は選択必修と自由選択で構成され、「ビジネスデータをどう扱うか」を主軸に、DX推進に不可欠なマネジメントスキルから、DXの運用段階で求められるデータ処理系のスキルまでを幅広くカバーしています。同学理学部の協力の下に編成されたものだけに、理学部専任教員の担当する科目や現場のDX推進に直結する企業連携科目もあり、充実した内容となっています。
次世代リーダーを目指す女性のためのDX人材育成コース | |
応募資格 | 高等学校卒以上(短期大学・大学・大学院) または、大学受験資格を有する 就労中・就労経験のある社会人女性 |
定員 | 25名 |
受講期間 | 2024年9月〜2025年2月末(6カ月) |
出願期間 | 2024年6月1日(土)~ 6月21日(金)必着 |
修了要件 | 6.5単位(65時間) *仕事・通信障害による遅刻・欠席対応あり |
授業形式 | オンライン授業(Zoom、オンデマンド)のみ 開講日:平日夜、土曜日 *科目により開講期間が異なる(時間割参照) *学内LMS使用 |
受講料 | 入学金:4万1千円 受講料:8万5千円(6.5単位分) *追加受講の場合は追加受講料が別途必要 |
備考 | ① 再就職支援なし ② 入学選考(書類、オンライン面接)実施 ③ 開講式(9月上旬、遠隔開催) 修了式(3月、3コース合同、遠隔・対面) ④ 受講ガイダンス、修了生との交流会 開催 ⑤ 厚生労働省「一般教育訓練給付金」指定講座(2024年4月〜) ⑥ 学内施設利用可(図書館、食堂ほか) ⑦ 視聴科目オンデマンドコンテンツ(単位外)受講可 ⑧ 東京商工会議所「研修講座」特別価格で受講可(対象外の講座有) ⑨ 日本女子大学生涯学習センター「公開講座」学生価格で受講可 |
就業経験のある女性に向けた「再就職のためのキャリアアップコース」
授業はオンラインと対面の混合型で実施
編集部 再就職コースの受講生についてお聞かせください。
髙梨 4年制大学を卒業し、就業経験のある女性を対象としています。受講生の出身大学はさまざまで、受講開始時の年齢は平均40.7歳。受講直前の属性としては、いったん就職した後に離職してブランクがあるがまた社会に出て働きたいと考えている主婦の方や、正規社員での就職を目指す非正規社員の方が多いです。女性活躍推進法の成立以降は、非正規社員の方の比率が高くなってきており、正規社員の方と合わせると受講直前まで働いていた方が6割以上を占めています。
編集部 授業はオンラインと対面の混合型で実施されていますが、これは今後も継続されるのでしょうか。
髙梨 はい。オンライン授業はコロナ禍をきっかけに導入しましたが、自宅からでも学べるオンラインの利便性も活かして、混合型での実施を続けていきたいと考えています。
茂木知子氏(敬称略 以下、茂木) 通信障害による遅刻・欠席対応も行っています。フォローを通信障害時に限っているのは、本課程での1年間は仕事をする環境を整えるための準備期間でもあるからです。自分が再び社会に出たときに、毎日家を空けても家庭が問題なく回っていくかどうか、図書館やコンピュータ演習室も学部生と一緒に利用できますので、そうした学内施設も活用しながら、ご家族も含めてシミュレーションする期間にしてほしいと考えています。
キャリア形成とビジネススキルアップの両輪で再就職を目指す
編集部 再就職コースのカリキュラムにはどのような特徴がありますか?
髙梨 必修科目、選択必修科目、選択科目に分かれています。必修科目には英語、ITリテラシー、日本語コミュニケーション論、キャリアマネジメントを設けました。中でもキャリアマネジメントは要となっており、再就職という目標に向けて、自身のキャリアの棚卸しや将来のビジョンの明確化を行い、最後には面接の練習も実施します。1年を通してキャリア形成への意識を深め、責任感やコミュニケーション能力など、組織において必要とされる総合的な能力を養うことに力を入れている点が特徴です。
選択必修科目には、企業会計・簿記のほか、貿易実務、記録情報管理士、社会保険労務士などの資格準備講座、プレゼンテーションといった実務的な科目をそろえました。特にプレゼンテーションは例年、ほぼ全員が履修する人気科目となっています。
選択科目では、本学の学部生向けの科目や通信教育課程の科目の一部も履修することができます。さらに、本課程の連携企業である大同生命保険株式会社のご寄付によるオンデマンドコンテンツの受講も可能です。
茂木 選択必修科目は前期・後期でそれぞれ選択することができます。同じ科目でも、前期は基礎的な内容、後期はよりレベルの高い内容となっているので、前期は興味や必要に応じて科目を多めに選択し、授業を通して適性などを推し量って、後期は自身のキャリア志向に合わせて選択する受講生が多いです。
編集部 文部科学省の「職業実践力育成プログラム(BP)」に認定されているだけに、とても実践的なカリキュラムになっているのですね。
髙梨 はい。課題発見・解決型学修、ワークショップなどの双方向型のカリキュラムを通して、受講生が主体的に学ぶ姿勢を養っています。
茂木 実務家の教員による、より実践的でビジネス性の高い科目を中心にしながら、学部の教員が教える科目ならではのアカデミックな学びも大事にすることで、受講生からも高い満足度を得ています。
編集部 そうした充実したプログラム内容ゆえに、厚生労働省「専門実践教育訓練給付金」の指定講座となっており、費用の一部が支給される点も魅力ですね。そこで気になるのが入学試験ですが、英語テストとPCテストの難易度はどれくらいなのでしょうか?
髙梨 入学後に授業についていけるだけの基礎的な学力があるかを確認するためのテストですので、難易度はさほど高くはありません。
コロナ禍以降、ITスキルを求める企業が増え、求められる能力も高くなっているため、本コースは修了時にMOSのエキスパート(上級)レベルの実力を身につけられるように設計しています。その達成を考えると、スタート時からある程度のPCスキルが必要となるのです。これまでPCをほとんど触ってこなかったという方は、事前に初歩的なスキルを学んだ上でテストに臨まれるようです。
手厚い再就職支援で高い就職率を実現
編集部 再就職コースでは、どういった再就職支援が受けられるのでしょうか。
髙梨 必修のキャリアマネジメントの授業で、1年を通して再就職に向けた準備を進めると同時に、スタッフによるサポートもあり、後期にはキャリアカウンセラーによる相談も受けられます。
茂木 本課程独自の求人Webサイトを運営しており、受講生は自宅から求人票を閲覧したり、応募したりすることも可能です。
コロナ禍を経て、フレックスタイム制や時短勤務、在宅勤務を採用する企業が増え、リカレント生が応募しやすい環境に変わってきています。おかげさまで、2022年度は受講生の数よりはるかに多い求人をいただきました。
在宅勤務では、PC・通信トラブルなどにも1人で対処できるだけのITスキルが求められますが、そこに本課程でのオンライン授業の経験が活かされます。本課程の2コースでは、本学のLMS(学習管理システム)を使ってレポート提出、テスト・アンケートの回答、資料の閲覧、チャットなどを行い、Microsoft TeamsやOffice365も利用できます。そうしたビジネス系のITツールに日常的に触れることができる環境も、ITスキルを高めることにつながっています。
編集部 修了生の就職率はいかがですか?
髙梨 コロナ禍を経ても、これまでの平均で98%の就職率となっています。ほぼ正規雇用で、被社会保険者数の割合も平均9割弱と非常に高いのも特徴です。
編集部 どのような業種や職種に再就職される方が多いのでしょうか?
茂木 業種は情報通信、教育・学習支援、職種は事務、総合職が多いです。40代での事務系職種での再就職は非常にハードルが高いのですが、就職を希望する修了生の100%近くが採用されています。
働きながら学べる「働く女性のためのライフロングキャリアコース」
全国どこからでもオンラインで学べるプログラム
編集部 働く女性コースのプログラムの特徴をお聞かせください。
石黒亮輔氏(敬称略 以下、石黒) 高等学校卒業以上の、就労中または就労経験のある女性を対象としています。期間は8カ月間で、働いている方が学びやすいように、平日の夜間と土曜日に開講しています。授業はすべてオンラインで実施し、ディスカッションを多く取り入れた双方向型の授業が特徴です。全面オンラインということで、全国の幅広い地域から受講されています。
受講生の年齢層は20代から50代まで幅広く、平均で42.7歳。7割が正規社員で、現職で管理職を目指す若い方も多いです。経営者や管理職の方も2割強おり、面接でうかがった話では、「管理職になったものの周りにロールモデルがおらず、不安や悩みを抱えている」という方が少なくないようです。中には定年退職後の第2の人生を見据えて、何をすべきか考え直したいという方もおられます。
編集部 そうした多様な女性の要望に応えるカリキュラムの内容は、どのようなものなのでしょう?
髙梨 選択必修科目と選択科目で構成しています。開設当初は必修科目を設けていましたが、仕事が忙しい受講生も多いため、2023年度から必修科目は設けないことにしました。
石黒 選択必修科目には、キャリア形成とマネジメントや人材育成の基本について学ぶ「ライフロング・キャリア・デザイン」、ストレスに気づいて対処する方法を身につける「メンタルヘルス・マネジメント(セルフケア)」、自己成長や部下育成に役立つ「人材育成の導入理論」などがあります。メンタルヘルス・マネジメントは部下のマネジメントにも応用できそうだということで、選択する方が多いです。
茂木 人材育成の導入理論は、大手飲料メーカーで人材開発やマーケティングを担当し、人気商品の開発リーダーも務めた方を講師として招いています。同社で自身が携わった人材育成について、成功体験だけでなくご苦労された経験も語ってくださるので、受講生からも好評を得ています。
また、ライフロング・キャリア・デザインは人気科目で、多くの受講生が履修しています。再就職コースと同じく、本コースもキャリア形成とビジネススキルの両方を学べることが特徴です。
髙梨 選択科目に英語、ITスキル、プレゼンテーションをそろえているのも人気の一つです。このほか、マーケティングマネジメントや管理会計の基礎なども用意しています。
大手企業ではeラーニングによる研修を充実させている所も多いですが、「自分で選んで学びたい」「1人で学ぶeラーニングは寂しい」という方が少なくないようです。特にプレゼンテーションは、他者の前で発表するスキルを磨くためにも、受講生の皆さんにとって履修すべき科目の1つなのではないかと思います。
茂木 プレゼンテーションの授業では会議の取りまとめや運営の仕方も学べるので、学んだことを実際に職場で活かし、それが科目担当の教員にフィードバックされ、翌週に報告があるという、よい循環が生まれています。
編集部 この働く女性コースもBPに認定され、厚生労働省「特定一般教育訓練給付金」の指定講座になっているのですね。
茂木 はい。これまでは「一般教育訓練給付金」の指定講座として受講料の20%が支給されていましたが、2023年度からは「特定一般教育訓練給付金」に指定されたことで40%に引き上げられ、より費用の負担を軽減できるようになりました。
多様な受講生との交流も魅力
編集部 働く女性コースは入学試験はなく、面接のみの実施となっています。選考基準は何ですか?
髙梨 面接では意欲や志望動機を確認しますが、最も重視するのは主体的な学びの姿勢です。本学の生涯教育の理念や、本課程の学びの内容を理解した上で、「ここで学びたい」という熱意をもって入ってきていただきたいとの思いから、働く女性コースも再就職コースも、応募前に説明会への参加を必須としています。また、オンライン授業を受ける環境を確認するために、オンライン面接を実施しています。
編集部 とはいえ、意欲があっても働きながら学ぶのは大変です。途中で脱落されてしまう方もいらっしゃるのでは?
石黒 働く女性コースでは、通信障害だけでなく仕事による欠席・遅刻にも対応しており、授業動画を1週間閲覧できるようにしています。各科目2/3以上の出席回数が必要なのですが、このフォロー体制もあって、初年度は転職を理由に修了しなかった方が1名いたのみ、2022年度は全員が修了しています。
編集部 修了生からはどんな声が寄せられていますか?
石黒 学んですぐに仕事に生かせる内容の科目が多く、スキルアップが実感できたり、現在の仕事に役立っていることを実感したりという声があります。まだ開講して2年ですので、それほど多くのキャリアアップ事例があるわけではありませんが、「講義で学んだことを実務に活かして結果を出し、査定で高評価を得た」という話も聞いています。
茂木 プレゼンテーションなどの「スキルが上がった」という声もよく聞きます。先ほどの話にあった、不安や悩みを抱えている管理職の方からは「自信がついた」という声も寄せられ、仕事で悩んだ際に授業での資料を振り返る方も多いです。
髙梨 さまざまな業種・職種や年代の異なる受講生との交流からも、多くの学びや発見を得ているようです。職場では言えない悩みを相談してアドバイスをもらったり、意見交換をしたりと、オンライン授業であっても受講生同士の交流は活発で、修了後もよき仲間として関係が続いていく、そういった点も魅力だと思います。
「学び直し」で、より充実した人生を
編集部 今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか?
髙梨 コロナ禍を機にデジタルスキルの必要性が高まりましたが、この先も女性の生き方の変化に伴い、学び直しへのニーズは多様化していくと考えられます。そうしたニーズに対応できるより特化したコースを立ち上げることも視野に入れております。
編集部 学び直しを考えている女性に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。
髙梨 少しでもキャリアについて悩んだり、学び直したいと考えたりしているのであれば、まず1歩を踏み出して学んでください。本課程には2つのコースがあり、これから新しいコースも考えていきたいと思っておりますので、ぜひ門戸を叩いて、私たちと一緒に学んでほしいと思います。
人生100年時代を迎えるにあたり、やりたいことはいろいろあるはずです。それを実現するためにも、学び直して、より充実した人生を歩んでいっていただけたらうれしいです。
石黒 理系業界では女性の割合の少ないことが積年の課題となっていますが、たまたま触れる機会がないから選ばなかったけれども、潜在的に適性のあるという女性も多いのではないでしょうか。本学は日本で初めての女子総合大学であり、私立女子大学で唯一、理学部を設けているという経緯から、リカレント教育課程でもITスキルの習得に力を入れています。本課程で学ぶことで、新しい世界が広がるのではないかと思います。
日本女子大学リカレント教育課程HP
https://www5.jwu.ac.jp/gp/recurrent/
・髙梨 博子(たかなし・ひろこ)
2004年、カリフォルニア大学サンタバーバラ校 言語学科(博士課程)、博士号取得(Ph.D. in Linguistics)。2004~2005年、カリフォルニア大学デービス校 人類学科 客員研究員(ポスドク)、2005~2007年、イーロン大学 外国語学科 アシスタント・プロフェッサー。2009年、日本女子大学 文学部 英文学科 准教授。2016~2017年、カリフォルニア大学サンタバーバラ校 言語学科 客員研究員。2020年、日本女子大学 文学部 英文学科 教授。2022年、日本女子大学 生涯学習センター所長に就任。
・石黒 亮輔(いしぐろ・りょうすけ)
2003年、京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士課程修了、博士(理学)。2003~2006年、パリ高等師範学校統計物理学研究所研究員(2004~2006年 日本学術振興会海外特別研究員)。2006~2008年、大阪市立大学理学研究科博士研究員。2008~2013年、東京理科大学理学部応用物理学科嘱託助教。2013~2015年、理化学研究所創発物性科学研究センター協力研究員。2015年~日本女子大学理学部数物情報科学科准教授。2023年リカレント教育課程主任。2024年~日本女子大学理学部数物情報科学科教授。
・茂木 知子(もぎ・さとこ)
日本女子大学文学部卒、民間企業を経て日本女子大学に入職、学生生活・就職支援部署を経て、2023年度11月までリカレント教育課程担当課長。公益社団法人 私立大学情報教育協会 大学職員情報化研究講習会運営委員。