美容師になるには、国家試験に合格し、美容師免許を取得しなければなりません。美容師試験に挑戦したいけれど、合格のためにどのような対策をとるべきかわからず、悩んでいる方も多いかもしれません。
美容師試験で合格するには、筆記試験と実技試験の両方で合格基準を満たす必要があります。それぞれに効果的な対策をとれば合格に近づけるでしょう。
この記事では、美容師試験の筆記・実技それぞれの対策方法や、試験概要、合格率について解説します。美容師国家試験の受験を考えている方はぜひ参考にしてください。
美容師試験の試験概要は?
まず、美容師試験の試験概要について解説します。
美容師試験には受験資格が必要
美容師試験を受けるには、厚生労働大臣が指定した美容師養成施設(美容師専門学校)に通い、規定の過程を修了しなければなりません。そのため、完全な独学では美容師試験の受験は不可能です。
受験資格を得られるまでの年数はコースによって異なります。昼間・夜間過程であれば2年以上、通信過程であれば3年以上学び、卒業資格を得られれば美容師試験の受験が可能です。受験時には卒業見込証明書、もしくは卒業証明書が必要になります。
美容師と同じくヘアカットを行う理容師は、シェービング(顔そり・ヒゲそり)もできる国家資格です。2017年の理容師法と美容師法の改正により、理容師と美容師の両方の免許を同時に取得しやすくなりました。美容師養成施設を選ぶ際には、ダブルライセンス取得も検討しましょう。
理容師試験対策について、こちらで紹介しています。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/7200/
美容師試験の概要・合格基準
美容師試験の試験内容は「筆記試験」と「実技試験」に分かれており、どちらの試験も合格基準に満たなければ合格できません。試験は春期と秋期の毎年2回実施されます。日程は春期は実技試験が1月下旬~2月上旬頃で筆記試験が3月上旬頃、秋期は実技試験が7月下旬~8月上旬頃で筆記試験が9月上旬頃です。
筆記試験は、55問中正答率60%以上であることが合格基準です。筆記試験は以下の7科目から出題されますが、このなかで無得点の課目があった場合、全体で60%以上の正答率であっても不合格になるため注意しましょう。
- 関係法規・制度
- 衛生管理
- 保健
- 香粧品化学
- 文化論
- 美容技術理論
- 運営管理
社会人であり大学生でもあるぽえんさんが、筆記試験の大変さを紹介しています。
実技試験には「衛生上の取扱試験」と「基礎的技術試験」の2種類があり、筆記試験同様、どちらか片方でも落とせば不合格になります。
衛生上の取扱試験では、衣類や爪の長さなどの身だしなみや消毒状況、用具の使用方法など、さまざまな点が見られます。ここでは減点が20点以下であれば合格ラインです。
基礎的技術試験では2種類の課題があります。第1課題はカッティング、第2課題はオールウェーブセッティング、もしくはワインディングのどちらかとなり、いずれも減点が30点以下であれば合格ラインです。
美容師試験の合格率
美容師試験の合格率は受験時期によって異なりますが、60~80%程度と国家試験のなかでは高い部類に入るといえるでしょう。令和2年度の秋期の合格率は61.7%(合格者数2,993人/受験者数4,853人)、同年度の春期では85.6%(合格者数1万5,502人/受験者数1万8,107人)となっています。
秋期より春期のほうが受験者数が多く、合格率も高いのは、2年制専門学校の卒業時期が近いためで、試験内容に差はありません。
美容師筆記試験対策!おすすめの勉強方法3選
美容師国家試験は、筆記試験と実技試験の両方が基準点に到達して、初めて合格できます。しかし、なかには実技試験の練習ばかり行ない、筆記試験対策を怠る人も少なくありません。
筆記試験の結果が基準に満たず、不合格ということにならないよう、しっかり対策を行ないましょう。ここからは、美容師国家試験の筆記試験に特化した対策方法を、3つ紹介します。
得意科目から進める
美容師専門学校では実技を学ぶ時間のほうが多く、座学が経験不足になる傾向にあります。そのため、まずは座学そのものに慣れることが大切です。
苦手科目から取り組み始めると、勉強が進まないだけでなく、取り組みそのものが嫌になりやすいため、得意科目や好きな科目から進めていきましょう。勉強することに慣れてから苦手科目に取り組むと、スムーズに勉強を進められます。
美容師試験対策アプリを使う
美容師試験対策用のアプリを利用すると、無理なく勉強する習慣を身につけられます。
ほとんどが一問一答方式のため、座学が苦手な人でもゲーム感覚で取り組めるでしょう。移動時間や休み時間などを活用でき、勉強効率も上げられます。
アプリは、美容師国家試験の過去問題を解けるものや、アプリだけで出題範囲の勉強を網羅できるもの、自分でオリジナルの問題を作れるものなどがあります。
なかには正答率が低い問題を抽出し、苦手範囲だけ取り組めるものもあるので、ぜひ自分に合うものを選んでみてください。
過去問で出題傾向を把握する
筆記試験対策で効果的なのは、過去問を解くことです。美容師国家試験では過去問と似た問題が多く出題されています。過去問を解いていくうちに出題傾向を把握できるため、対策範囲を絞りやすくなるでしょう。
ただし、過去問を丸暗記しないように気を付けてください。実際の試験では、似たような問題ではあっても、たいていは単語の表現や数字の単位など、一部が変えられた形で出題されます。
そのため、過去問をなぞっただけでは変化球に対応できません。教科書や参考書などで、より深く理解を進めることが必要になるでしょう。
過去問は「公益財団法人理容師美容師試験研修センター」のホームページに公開されています。ぜひ活用してみてください。
https://www.rbc.or.jp/exam/past_question/
過去問とともに、直前対策向けの問題と詳しい解答解説がまとめた問題集がこちらです。
美容師実技対策に効果的な5つのポイント
実技試験で合格するには、ポイントを押さえた練習を繰り返すことが大切です。ここからは美容師国家試験の実技試験に特化した対策方法を、5つ紹介します。
自分の立ち位置や目線の位置を意識する
実際にカットするときは、切る場所やお客さまの座高に合わせて、自分の目線、立ち位置を調整する必要があります。
とはいえ、最初はどのような目線や立ち位置に変えるのがベストかわからない人も多いでしょう。そのような場合、自分の立ち位置や目線を動かさずにカットしてみるのがおすすめです。
自由に動けないためやりづらいと感じますが、その分「切りやすい立ち位置・目線の高さ」もわかるようになってきます。
ベストの姿勢については正解がなく、美容師が切りやすいと感じる形が良いと考えられているので、本番までにベストポジションを見つけておきましょう。
鏡を見ながら左右対称になるようにする
試験では、サイドやバックサイドが左右対称にカットされているかどうかも見られます。そのため、鏡を見ながら左右の長さが同じであるか、確認しながら練習するとよいでしょう。
最初のうちは自分の目線だけでカットしがちですが、これでは全体のバランスがつかみづらくなります。鏡を見ながらカットする癖をつけ、仕上がりが左右対称になるよう練習を重ねてみてください。
時間を計りながら練習を繰り返す
実技試験には時間制限があるため、タイムを計りながら練習しましょう。練習の段階から時間を意識しておかないと本番で焦ってしまい、いつもの力を発揮できなくなってしまいます。
また、繰り返し練習を重ねていても、試験本番では緊張してしまい、いつもどおりのハサミ捌きができないことも考えられます。
そのため、制限時間よりも少し早めに終了できるよう、練習しておくことが大事です。
切り絵でハサミの扱いに慣れる
カットモデルやマネキンを利用した練習が望ましいですが、モデル探しが大変だったり、マネキンの購入資金を捻出するのが難しかったりする人もいるでしょう。
そんなときは、切り絵やカットアーティングの利用がおすすめです。少しでもハサミを扱う時間を増やせば、カット時の緊張を減らせます。
切り絵などでハサミの扱いを練習するときは、ヘアカット用のもので行なってください。ハサミの扱いに慣れることが目的のため、一般的なハサミを使っては意味がないからです。
ヘアカット用のハサミを繰り返し使えば、徐々にハンドルの感覚に慣れるので、ハサミの扱いもスムーズになるでしょう。
衛生面に気を配る
実技試験では、衣類の衛生状態や用具の取り扱い方も審査対象に含まれます。本番だけ整えようとせず、普段から衛生面には気を配りましょう。特に用具の扱いについては癖が出やすいため、丁寧に扱うことを心がけてください。
また、ビニール袋や救急ばんそうこうなどの数量が不足していないか、用具はすべて清潔か、日頃からチェックするよう心がけましょう。普段から確認しておくと、本番で「数量が足りない」「用具が汚れている」といったトラブルを避けられます。
まとめ
美容師国家試験で合格するには、筆記試験・実技試験のそれぞれでしっかりと対策を行なうことが大切です。どちらも合格基準を満たさなければ合格できないので、バランス良く勉強する必要があるでしょう。
筆記試験対策では、勉強に慣れるところから始めてみてください。スマートフォンアプリなら効率的に勉強できるうえ、過去問対策にもなるためおすすめです。
実技試験対策では、カットの技術を上げること以外にも、制限時間を意識したり、普段から衛生面に気を配ったりすることが大切です。
闇雲に勉強したり練習したりするのではなく、ポイントを押さえた対策をとることで合格に近づけます。この記事の内容を参考に、合格に向けてぜひ取り組んでみてください。