薬剤師とは?受験資格や試験合格に欠かせない対策を解説

薬剤師は、医薬品に関する幅広い知識で人々の健康を支える薬の専門家です。薬剤師になるには薬剤師国家試験に合格しなければなりませんが、受験資格を手に入れるためにはいくつかの条件をクリアする必要があります。

この記事では、薬剤師国家試験の受験資格を得る方法のほか、試験科目合格基準、そして試験合格のためにやっておくべき対策を解説します。

薬剤師とは?だれでも薬剤師になれるの?

最初に、薬剤師国家試験の受験資格を得る方法を知っておきましょう。2006年の法改正により受験資格の要件が大きく変わったため、変更内容を知らない場合は要チェックです。

薬剤師とは国家資格を有する薬の専門家

「薬剤師」は、医師・歯科医師と同じ医療系国家資格の一つです。

調剤薬局ドラッグストア病院などで活躍しているイメージが強いかもしれませんが、医薬品メーカー医薬品卸研究機関など就職先は多岐にわたります。

また、公務員として自治体の保健所職員麻薬取締官などになる選択肢もありますが、公務員薬剤師になるためには国家試験合格が条件であることが一般的です。

医薬品業界は今後も安定した需要があると見込まれており、薬剤師は人気が高い職種といえるでしょう。薬剤師の平均年収は、565.1万円です(令和2年賃金構造基本統計調査より)。

薬剤師のような薬に関わる資格には、医薬品販売の専門資格である登録販売者があります。詳しくはこちらで紹介しています。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/7234/

6年制薬学部を卒業すれば受験可能

薬剤師になるには、国家試験に合格しなくてはなりません。

受験資格は薬剤師法に定められています。2006年に法改正があり、受験資格が付与されるのは「6年制薬学部を卒業した人・卒業見込みの人」のみとなりました。ただし経過措置があり、2017年度までの入学者は4年制薬学部を卒業後、大学院に進学して不足単位を取得すれば、受験資格が与えられます。

2018年度以降の入学者は経過措置の対象外になるため、4年制薬学部に進学した場合は受験資格を得られません。これから大学に進学して薬剤師を目指す方は、4年制薬学部ではなく6年制薬学部に進んでください。

「薬剤師」として働けるのは薬剤師名簿登録後

薬剤師国家試験に合格しても、まだ「薬剤師」ではありません。薬剤師として業務を行なうためには、厚生労働省申請し、薬剤師名簿に登録されることが必須です。

申請書類を提出して名簿に登録されるまでには、およそ2ヵ月かかります。薬剤師免許証が届くのは名簿登録からさらに数ヵ月後なので、試験に合格したらできるだけ早く申請しましょう。

薬剤師国家試験の試験科目と合格基準

次は、薬剤師国家試験の概要です。意外に知られていない大学を選ぶ際のポイントも紹介するので、参考にしてください。

試験科目

試験科目は「物理・化学・生物」「衛生」「薬理」「薬剤」「病態・薬物治療」「法規・制度・倫理」「実務」の7科目。それぞれ必須問題薬学理論問題薬学実践問題があります。配点は1問2点で、解答はすべてマークシート方式です。

科目必須問題一般問題
(薬学理論問題)
一般問題
(薬学実践問題)
出題数計
物理・化学・生物15問30問15問 (複合問題)60問
衛生10問20問10問 (複合問題)40問
薬理15問15問10問 (複合問題)40問
薬剤15問15問10問 (複合問題)40問
病態・薬物治療15問15問10問 (複合問題)40問
法規・制度・倫理10問10問10問 (複合問題)30問
実務10問20問 + 65問 (複合問題)95問
出題数計90問105問150問345問

引用:厚生労働省 薬剤師国家試験

なお、薬学実践問題は「実務」が20問、そして各科目と実務を関連させた複合問題130問が出題されます。

試験日程・試験時間

試験が実施されるのは、例年2月中旬です。2021年に行なわれた第106回薬剤師国家試験は、以下の日程と試験時間で9都道府県の会場で実施されました。

1日目(2021年2月20日土曜日)

時間問題区分および科目問題数
9:30~11:00 (90分)必須問題試験 物理・化学・生物/衛生/薬理/薬剤/病態・薬物治療/法規・制度・倫理/実務90問
12:30~15:00 (150分)一般問題試験(薬学理論問題) 物理・化学・生物/衛生/法規・制度・倫理60問
15:50~17:45 (115分)一般問題試験(薬学理論問題) 薬理/薬剤/病態・薬物治療45問

2日目(2021年2月21日日曜日)

時間問題区分および科目問題数
9:30~11:35 (125分)一般問題試験(薬学実践問題) 物理・化学・生物/衛生/実務(複合問題)※全問中25問50問
13:00~14:40 (100分)一般問題試験(薬学実践問題) 薬理/薬剤/実務(複合問題)※全問中20問40問
15:30~18:00 (150分)一般問題試験(薬学実践問題) 病態・薬物治療/法規・制度・倫理/実務/実務(複合問題)※全問中20問60問

引用:厚生労働省 第106回薬剤師国家試験問題及び解答(令和3年2月20日、2月21日実施)

合格基準

合格点は、平均点標準偏差を用いた相対基準で定まるため毎年変わりますが、ここ数年は正答率63%前後で推移しています。

ただし、総得点が合格点を上回っていても、必須問題の得点が低いと合格できません。必須問題全体で70%以上、かつ各科目30%以上得点することが合格の条件のため、確実に得点できるようにしておきましょう。

なお、2018年度実施の第104回試験から禁忌肢が設けられていますが、合否にはほとんど影響していないようです。

合格率

合格率は全体で70%前後です。薬剤師国家試験の合格率は、既卒者より新卒者の合格率が高いこと、また大学ごとの差が大きいことが特徴です。

各大学の合格率は、厚生労働省の薬剤師国家試験のページから「過去の薬剤師国家試験の結果」を調べられますが、なかには50%を下回っている大学もあります。

また、現役生の合格率が高い大学でも、入学者数と比較すると著しく合格者数が少ない場合もあるため、「見た目の合格率」を鵜呑みにすべきではありません。

薬剤師になるために大学の薬学部へ行くのであれば、現役合格率だけではなく入学者数に対する合格者数までしっかりチェックしましょう。

薬剤師国家試験合格に向けた対策

薬剤師国家試験の出題範囲は、どこから手をつけるべきか迷うほど広範囲です。実際、過去問を1年分解くだけでも最低2日はかかるでしょう。長期的な計画を立て、合格に手が届く勉強をすることが大事です。

過去問は必ず解く

まず、過去問は必ず解いてください。過去問を解くことは、出題傾向や得点しにくい分野を知るためにも欠かせません。

大学によっては、6年生になると卒業試験でとても忙しくなりますが、卒業試験の問題は国家試験の過去問がベースになっていることが多いようです。卒業試験の勉強と併せて、過去問にもしっかり取り組みましょう。

また、薬剤師国家試験では、過去に出題された試験問題が20%程度出題されます。選択肢の変更などはありますが、過去問をマスターしておけば2割程度は得点可能です。

最低でも5年分、余裕がある場合は、6年制薬学部卒業生の受験が始まった第97回以降の過去問を解くようにしましょう。

なお、薬剤師国家試験の過去問と解答は、厚生労働省のホームページに掲載されています。

ゴールから逆算して学習計画を立てる

薬剤師国家試験は、過去問を解くだけでも大変な時間がかかります。それに加え、間違えた問題の復習・不足している知識の補充なども必須です。

そのため、試験当日を万全な状態で迎えるためには、ゴールから逆算して学習計画を立てなければなりません。

しかも現役生の場合、国家試験の勉強をする時期が、就職活動大学院入試の時期とも重なります。特に、調剤薬局や病院など、資格取得が採用条件となっている職場に就職したい場合は、合格を目指して早めに勉強に着手しなければなりません。

できれば、大学6年生の4月には過去問を入手して勉強をスタートし、就職活動が終わる頃には必須問題の合格条件をクリアできるくらいまでに仕上げておきましょう。

そして、秋・冬は国家試験対策に集中してください。夜型の人は生活パターンを切り替えて朝型にシフトし、試験本番に備えることも大事です。

苦手科目を作らない

薬剤師国家試験は、どの科目からもまんべんなく出題されます。実務の薬学実践問題が多いように感じますが、他の科目との複合問題がほとんどなので、特別に出題数が多いわけではありません。

このようなことから、合格を目指すならば苦手科目を作らないことがとても重要です。特に、必須問題はすべての科目で足きりラインが設定されているため、苦手科目があると合格に手が届きにくくなります。

もっとも、必須問題は345問中90問にすぎません。各科目で3割以上得点して必須問題全体で63問正解すれば、合格が見えてきます。

必須問題以外は足きりラインがなく、いずれの問題も2点ずつの配点なので、点数の取りやすい科目や得意科目でフォローするのも戦略の一つかもしれません。

確実に合格点に近づけるよう、繰り返し過去問や問題演習に取り組みましょう。

まとめ

薬剤師は、医薬品の専門知識を持つ人に与えられる国家資格です。

薬剤師になるためには、6年制薬学部に進学して薬剤師国家試験に合格しなければなりませんが、免許を取得すれば生涯薬剤師として働けます。

医療現場はもとより、製薬企業や公務員など薬と健康に関わるさまざまな場面で活躍する薬剤師。あなたも、薬剤師を目指してみませんか。

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