国際会計の検定対策で有効な方法は?試験情報や日本会計との違いも解説

日本の総人口は減少傾向にあり、高齢化と市場規模の縮小により、農林漁業、製造業、飲食業などあらゆる分野の産業は、海外進出にその活路を見出そうとしています。海外でのグローバルな事業展開には、会計基準として現在注目を集めている「国際会計」の導入は非常に重要です。

この記事では、会計基準「国際会計」の概要日本会計との違い、国際会計の検定概要や有効な試験対策方法などを紹介します。

世界共通の会計基準「国際会計」とは

国際会計基準とは、世界共通の会計基準を指したものです。国境を超えて行なわれる企業活動に関連する会計を国際会計といい、国際会計の世界基準を国際会計基準(IFRS)と呼びます。

国際会計基準は、グローバルに事業展開する企業において、会計を各国の基準ではなく、世界共通の会計基準にすることを目的として作られました。拠点をロンドンに構える独立民間非営利の基準設定機関、国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board)によって定められ、現在は100ヵ国以上の国で、上場企業に対して適用されています。

日本でも2021年4月から始まる会計年度から大企業や上場企業では新しく設けられた新収益認識基準が強制適用になるなど、国際会計基準に近づけようとする動きがあります

2020年7月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」では、IFRSへの移行を容易にするための取り組みをさらに進めて、IFRSの任意適用企業の拡大を促進すると定められました。2020年8月の金融庁による金融行政方針に沿ってIFRS適用企業の負担を軽減するなどの取り組みが進められています。また、IFRSに関して国際的な場で意見発信ができ、IFRSに基づく会計監査の実務を担える人材を育成して、個人のキャリア形成をサポートするために、国際会計人材ネットワークが誕生しました。

IFRS適用済・適用決定企業は2022年3月末では252社です。2021年6月末時点でのIFRS適用済・適用決定企業の時価総額(約327兆円が)は、東証上場会社の時価総額(742兆円)の44%に達するなど、日本経済におけるIFRSの存在感は高まっています。

国際会計は外資系企業やグローバル企業だけでなく、国内企業でも今後さらに需要が高まると見込まれます。国際会計の知識やスキルを身につければ、社内でのキャリアアップや、国際会計事務所への就職や転職にも役立つでしょう。

国際会計基準と日本会計基準の違い

国際会計基準は、どのような点が日本の会計基準と異なるのでしょうか。ここからは、国際会計と日本会計の違いを紹介します。

原則主義と細則主義

国際会計基準と日本会計基準は、ベースの考え方が異なります。

国際会計基準は原理・原則を重視する「原則主義」であり、運用企業の判断一任するという考え方です。一方、日本会計は「細則主義」で、詳細で具体的な規定数値基準を設けています。

いずれも一長一短ではありますが、原則主義は自由度が高く幅広いケースに対応できるため、国際的な会計基準として採用しやすいという面があります。

純資産重視と純利益重視

重視する項目も、国際会計基準と日本会計基準では違いがあります。国際会計基準は純資産を重視しており、財政状態計算書に計上されている財産価値に重きを置いています。一方、日本会計基準は純利益重視で、企業の収益力を重視しています。

最近では、日本会計基準で重視される単年の「純利益重視」ではなく、長期的な成長力持続力が注目されるため、日本でも財産価値を重視する傾向が強いようです。

公正価値評価と取得原価評価

国際会計基準では、資産の価値を「時価」で評価する「公正価値」による評価が重要とされています。一方、日本会計基準は取得原価評価で、資産の価値を「資産を取得した原価」で評価する方法を採っています。

「公正価値評価」は評価をした時点での経済的事態を把握しやすいのですが、資産価値を客観的に決めづらいことがデメリットです。「取得原価評価」は資産の客観性は保てますが、物価変動時に、実際の価値と大きく乖離してしまうケースもあります。

国際会計の能力を示す資格

国際会計の資格を取得すれば、国際会計の能力を保持している示すことができるでしょう。また、資格を取得するために受験勉強することは、国際会計の知識とスキルを学ぶ方法としても有効です。

こちらでは、国際会計の資格として、IFRS検定(国際会計基準検定)試験BATIC(国際会計検定)を紹介します。

IFRS検定(国際会計基準検定)試験

IFRS(国際会計基準検定)検定は、国際会計基準の広範な知識と理解力を測ることを目的に、ICAEW* が主催する検定試験です。日本語試験は、2009年12月から始まりました。

*The Institute of Chartered Accountants in England and Wales/イングランド・ウェールズ勅許会計士協会

試験内容

試験はマークシート形式60問出題され、試験時間は120分です。正答率60%以上で合格すると、合格証(Certificate)が授与されます。出題範囲は、『国際財務報告基準』(中央経済社)の最新版に基づき、発効日(effective date)から6ケ月を経たものです。

2022年2月に実施された第45回の合格率は、54.8%でした。

受験方法と試験日程

試験は毎年2月、6月、11月に年3回実施されます。

受験申し込みは、IFRS検定の公式サイトより新規ID登録して行います。受験資格は特にありません。試験料 は47,300円です。先着30名には早期割引価格が適応されて、40,700円になります。

https://www.ifrs-kentei.com/index.php

BATIC(国際会計検定)

BATIC(国際会計検定)東京商工会議所による英語力国際会計スキルを同時に測る検定試験です。

※BATICは2022年11月実施予定の第44回をもって、終了となります。

試験内容

試験問題は多肢選択式および記述問題の2部構成で、制限時間は70分です。試験の出題はすべて英語で行われます。

国際会計検定は400点満点スコア制で、受験者全員に点数の認定を行ないます。試験結果は合格・不合格ではなく、得点に応じて称号を付与されます。

  • 得点率50% Entry(初級レベル)
  • 得点率80% Middle(中級レベル)
  • 得点率90% Advanced(上級レベル)

受験方法と試験日程

受験方法は、インターネットを通じてご自身のパソコンで試験を受けるIBT(Internet Based Testing)方式と、テストセンターのパソコンで受験するCBT(Computer Based Testing)方式の2種類があります。

試験は年2回行なわれています。2022年度は6月と11月に実施予定です。約3週間程度の試験期間中であれば、どの日程であっても受験が可能です。試験開始時間は1日のなかで複数あります。

受験申し込みは、国際会計検定の公式サイトから行います。受験資格は特になく、試験当日に日本に居住していれば受験可能です。受験料は5,500円です。

https://kentei.tokyo-cci.or.jp/batic/

国際会計を学ぶには

ここからは、国際会計基準を学ぶ3つの方法について、IFRS検定試験とBATICの試験対策方法と合わせて紹介します。

テキスト・問題集での独学

独学は自分のペースで勉強できるうえ、費用も抑えられますが、苦手分野に出会ったときにすぐ解決できない点がデメリットといえます。

多くの人が役に立ったと紹介している企業会計の入門書の人気シリーズの最新版では、最新のIFRS動向も紹介されています。

BATICでは、英文簿記に関する基本的な内容を学べる公式テキスト公式問題集が用意されています。簿記の手順に従って仕訳から財務諸表作成まで学習できて、さらに財務諸表分析や現金管理など実務的な知識も紹介されています。

資格予備校に通う

資格予備校であれば、プロが講師を務めているため、勉強のコツなどを教えてもらいやすいでしょう。仲間がいることで、お互いに励みになる点も大きなメリットといえます。予備校によっては、独自のテキストや問題集、模擬試験などが用意されていることもあります。

このように、メリットの多い予備校ですが、通学の手間や費用がやや高めな点はデメリットです。

オンライン講座の受講

マッチングサイトなどで開講されているオンライン講座や資格予備校が開講しているオンライン講座でも、プロ講師の教えを受けることができます。

オンライン講座なので通学の手間がなく、また講師と直接やりとりすることも可能なので、疑問点も聞きやすい点が大きなメリットといえるでしょう。資格予備校に通うより費用も比較的抑えられます。

オンライン講座を受講する際のポイントは、独学でのテキスト・問題集学習と併用すること。独学で学びつつ、理解できないことがあればオンライン講座で講師にすぐ聞けますから、勉強の能率が上がるでしょう。

アビタスでは、IFRSを体系的に学んで合格を目指すIFRS検定対策講座が開講されています。コースは通学コース、eラーニング/ 通学併用コース、eラーニング限定コースの3種類あるので、スケジュールや都合に合わせて学びかたを選ぶことができます。

※価格は全て2021年12月時点のものです。

まとめ

国際会計基準は、世界共通の会計基準として定められたもので、日本会計基準とは多くの異なる点があります。特に大きな違いには、「原則主義と細則主義」「純資産重視と純利益重視」「公正価値評価と取得原価評価」が挙げられます。

日本でも、国際会計を取り入れる企業はさらに増えるでしょう。社会のニーズに合わせるために、自身の仕事の幅を広げるために、あなたも国際会計を学んでみませんか。

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