自動車運送事業者は、トラック、バス、タクシーなどを安全に運行するために、一定の車両数に応じた運行管理者を配置することが義務となっています。
しかし、運行管理者の資格保持者はいつも不足しており、事務系の職種に関わらず、非常に就職しやすくなっています。
ここでは主に需要の増えている物流を担う貨物の運行管理者についてご紹介します。
運行管理者とは
運行管理者の業務は、ドライバーの休憩や睡眠施設等の保守管理、指導や監督、健康状態や安全な運行ができる計画の作成などが主なものです。
旅客と貨物の2種類があり、国土交通大臣の認定を受けた機関である公益財団法人運行管理者試験センターが試験を実施している国家資格です。
実際は、配送に関係する仕事を受けたりお願いしたりというのは、運行管理者でなくても配車係でも行うことができます。しかし、運行計画の作成等は運行管理者の業務。また後のキャリア形成にも大きく影響してきますので、持っていれば有利な資格と言えるでしょう。
なお、実務経験が5年以上あるドライバーは5回の講習(内1回は基礎講習)のみで無試験で資格が取得できます。
業務の内容
事業所では、運用管理者を営業所ごとに専任で選定し、運輸支局等に届出をすることが法律により定められています。
人数については、1990年(平成2年)12月以降の配置基準では、保有車両29両までで1名、以降30両ごとに1名追加と定められています。また、複数の運行管理者がいる場合には統括運行管理者の届出も必要となります。
事業所における運行管理者の役割は、「安全管理」です。
- 出発前のドライバーに対する健康チェック・アルコール検査等の点呼業務
- ドライバーへの連絡・指示
- 各ドライバーの勤務時間の管理
- 配車予定の作成
- ドライバーの睡眠・休憩時間、場所の予定作成
- 帰社後の当日の運行結果の報告
管理業務は、自動車運送事業や道路交通に関する法令の基準に即して行われなければなりません。そのため、法律の知識が必要とされるのです。
資格のメリット
社内でドライバーから管理職等へのステップアップを目指すなら、運行管理者の資格を取ることが一番の近道になります。また、この資格をもっていることによって、より良い条件の会社へ転職できる可能性が増えることになります。
業務時間はドライバーが稼働している間で、時間帯が不規則になる可能性はありますが、基本的には内勤の仕事となります。そのため運送会社の事務系の女性や、体力的な問題でドライバーからの異動をめざす方も受験されているようです。
高額な報酬とは言えませんが、物流業界で安定した仕事をと考えるなら、この資格を取得することには大きなメリットがあると思われます。
受験資格
公式サイトでは以下のようになっています。
・実務経験1年以上の方
以下のどちらかの運⾏管理に関して、試験⽇の前⽇までに、1年以上の実務経験を有する⽅ー中略ー・基礎講習修了または修了予定の方
公益財団法人 運行管理者試験センター
国⼟交通⼤⾂が認定する講習実施機関において、平成7年4⽉1⽇以降の貨物、旅客の試験に応じた基礎講習を修了した⽅、または試験⽇の2週間前までに修了予定の⽅。講習の種類と試験の種類が同じでなければなりません。
https://www.unkan.or.jp/outline/new.html#online
上記の基礎講習は、自動車事故対策機構(NASVA)のような独立行政法人や、運送会社のグループ会社、教習所などでも行われています。実務経験がなく資格を取りたいという場合は、まずこちらを受講します。時間は16時間(3日)で、手数料はNASVAでは8,900円となっています。
なお、この基礎講習を受けた場合、運行管理者の補助者の資格要件をクリアすることができます。
試験について
試験は例年、8月(第1回)と3月(第2回)の年2回実施されています。
試験方法は、2021年度(令和3年度)試験より従来の筆記試験に代わり、各地のテストセンターでパソコンを使用して行うCBT試験が採用されています。
内容は、貨物自動車運送事業法、道路運送車両法、道路交通法、労働基準法、運行管理者の業務上必要な知識・能力に関するものが出題されます。
法律に関する問題で、なじみがないことから、ハードルは高いかもしれませんが、きちんと勉強して臨めば、ほかの国家試験に比べると、難易度は低いのではないでしょうか。
<後編>試験の内容や勉強方法などはこちら↓
https://college.coeteco.jp/blog/archives/547/
まとめ
物流の需要は、どんどん高まっています。しかも、人手不足もあいまって、効率的に、しかも安全に輸送を行うことは急務となっています。
そのため運行管理者の役割は、「単に法律で決まっているから」を超えて、さらに重要になってくると思われます。
運行管理者は今後も「消滅しない仕事」の資格です。将来のために挑戦してみるのはいかがでしょうか。