副業や在宅ワークを始めたら知りたい!! 開業届の基本知識

教室を開く、休日に1dayカフェを始める、マルシェで自作の小物を販売するなど、自分で仕事を始めて収入があったときに気になるものが開業届です。

この記事は、開業届を出していない方へ向けた

  • 開業届はいつどこへ提出すればいいのか、
  • 開業届はどんな時に提出しなくてはいけないのか、
  • 開業届を出して変わること・変わらないこと、
  • 開業届を出さなくても大切なこと

など、「確定申告ってやったことない、所得と収入ってどう違うの?」レベルの新米ライターが体当たりで調べた、開業届で知っておきたいあれこれです。

開業届とは

開業届とは、個人事業を始めたときに提出するものです。事業を開始してから1か月以内に提出すると定められていますが、罰則は特にありません。

そもそも事業とは、何を指すのでしょうか。デジタル大辞泉では、以下のように定義づけられています。

事業
1 生産・営利などの一定の目的を持って継続的に、組織・会社・商店などを経営する仕事。「事業に手を出す」
2 大きく社会に貢献するような仕事。「宇宙開発事業」「慈善事業」

デジタル大辞泉

一般的に事業とは、生計を立てるために相応の投資をして継続的に行う仕事であるといわれています。逆を言えば、継続的ではなく一時的な仕事であれば事業にみなされません。そのため、会社員の副業や主婦のお小遣い稼ぎは、ほとんどの場合が事業にはあてはまらないとされます。

しかし、「この事業に、一生をかけている」などの熱意を、事業規模や金額の大小で判断するのはとても難しいことです。例えば、画家を生涯の仕事と考えて創作活動しているが絵はなかなか売れずに、生活費はアルバイトで稼いでいる場合、税務上の職業は「アルバイト」と判断されるでしょう。この場合と同じく、作家、写真家、芸人、俳優の多くの方の場合、事業と判断するかどうか判断が分かれるかもしれません。

開業届を提出すると、のちほど説明する税務上のメリットのほかに、屋号での銀行口座や、クレジットカードの作成がしやすくなるなどの利点があります。さらに、開業届が補助金助成金の申請の条件になっている場合や、就業の証明になることから保育園への入園に有利に働くこともあります。

本業として継続的に行う場合には、開業届の提出を検討してください。

開業届提出に関わらず、確定申告が必要な場合も

確定申告に必要な所得と、収入の違い

確定申告は、開業届を提出したら毎年必ず行います。しかし、開業届を出さない場合にはどうしたらいいのでしょうか。

開業届を出していなくても、確定申告が求められることがあります。どんなときに確定申告が必要なのか説明する前に、まずは確定申告について確認しましょう。

確定申告とは簡単に説明すると、1年間の所得から納めるべき所得税計算して申告し、納税することです。

所得税は、その名の通り所得にかかる税金です。会社員やアルバイト、パートの方が勤め先の他から所得を得ていない場合には、勤め先が年末調整を行うので確定申告の必要はありません。

所得と似た言葉に収入があります。所得と収入の違いが分かりますか? 恥ずかしながら私は申告を行うまで、理解していませんでした。

所得=収入-経費

所得とは、収入から経費を引いたものを指します。会社員、アルバイト、パートとして働いて得た給与や、事業を行って得た売り上げは、収入といいます。収入を得るためにかかった金額が経費です。

仕事で得た所得は事業所得、給与所得、雑所得に分類される

所得の中で、開業届を提出して事業から生じたものを事業所得、会社員やアルバイト、パートが勤め先から受け取るものを給与所得といいます。

給与所得は、決められた式により収入から所得が計算されます。給与所得の経費にあてはまるものを給与所得控除といい、これを収入から引いて所得が決定します。会社がこの計算をしてくれるので、給与を得ている方は、普段あまり意識していないかもしれませんね。

事業所得、給与所得のほかにも、不動産所得や譲渡所得などさまざまなものがあります。仕事を行って得た所得のうち、事業所得と給与所得に当てはまらないものは雑所得になります。

雑所得になるものは、会社員の本業と異なるテーマでの記事の執筆や、主婦が講師となって子育て講座を開講、ネットオークション、フリマでの利益などです。副業や、仮想通貨やFXで得る、アンケート回答する、覆面調査員を務めるなどして得た所得も雑所得です。

「雑」という字の印象に戸惑う方も多いのではないでしょうか。実は私も「仕事をしたのに、本当に雑所得でいいのかしら」と悩み、誤って事業所得と申告した経験があります。後日、確認したら多額ではないこともあり、問題ないとは言われてほっとしました。

確定申告はいくらから必要なの?

それでは、開業届を出していない場合には、いくらから確定申告が必要なのでしょうか。

先ほどご説明した通り、所得税のもととなる所得とは、売り上げなどの収入から仕事を行うために必要な経費を引いたものです。所得を把握するためには収入だけでなく、経費が必要となります。事業所得でも雑所得でも、領収書の保管や、かかった費用の帳簿はつけておきましょう。

雑所得は48万円を越えない場合には、所得税はかかりません。事業所得も同じく、48万円を超えなければ所得税はかかりません。この48万円は、他の所得を得ていない場合の金額です。会社員が副業で稼いだ雑所得だと、20万円を超えたら申告が必要となります。

※住民税は各市町村、都道府県によって非課税になる条件が異なります。

納税は国民の義務!!  正しく理解して無申告を防ごう

自分で仕事を始める際に、確定申告の理解不足のために発生するトラブルで多いのが、フリマアプリで稼いでいるのに無申告だったケースです。

趣味で始めた小物づくりが楽しくなって、数年前からフリマアプリで売っていたけど確定申告を行っていなかった場合には、所得税だけでなく、延滞税重加算税無申告加算税などが課されることがあります。国税庁は、預金口座を調べることもできますし、宣伝のため更新したSNSから売り上げ金額を調査しているともいわれています。

フリマアプリ以外でも、オンライン講座を開催する講師の方なら、参加者を集めるためにSNSを駆使しているのではないでしょうか。募集告知記事に参加費を明記して、開催報告記事やその写真で何人参加しているか確認できれば、国税庁がその講師の収入を把握することは簡単にできます。

納税は国民の義務です。知らなかったでは許されませんので、注意しましょう。

開業届を出したら変わること・変わらないこと

開業届を出したら変更があるのではと心配なことに、税金確定申告扶養が挙げられます。

確定申告の方法と、税金

確定申告には、白色申告青色申告の2種類があります。開業届を出して、青色申告か白色申告を選びます(白色申告の場合は、開業届を提出しなくても確定申告時に収支内訳書で経費を申告できます)。

白色申告は領収書や請求書の提出は必要なく、準備する書類も少ないので、税務や経理に詳しくなくても抵抗なく始めやすいでしょう。

ただし、白色申告でも平成26年から記帳や帳簿書類の保管一律義務化されました。また、会計ソフトの改良が進んでいて、スマートフォンで青色申告のための帳簿の作成ができるようになるなど、青色申告のハードルも年々下がっています。このため、青色申告と白色申告の手間は以前ほどの差はないという意見もあります。

さらに青色申告には、最高65万円までの青色申告特別控除など税務上のメリットがあります。控除とは、必要経費として算入できる金額のことです(高額なものは、減価償却資産となる場合がありますので、確認が必要です)。青色申告特別控除の他にも、赤字だと所得税と住民税が免除されたり、最長3年間赤字を繰り越せたりなどのメリットがあります。

個人事業主にかかる税金には、個人事業税消費税もあります。個人事業税は事業所得が290万円以下だとかからず、消費税は個人事業主の場合は課税売上高が1,000万円以下だと免税事業者となります。

青色申告を行うには開業届と青色申告承認申請書の提出が必要です。本格的に事業を始める時には、開業届と青色申告を是非検討してみてください。

ただし、開業届を提出した際に経費として認められるものは、開業届に記載する開業日以降のものとなりますので、注意が必要です(開業日前に支払ったものでも、開業費として認められる場合があります)。青色申告とは違って、白色申告の経費は年度内なら全て認められます。

開業届を出しても、扶養家族のままでいられる?

主婦(夫)だと、開業届を出したら扶養から外れることになるのではと心配な方も多いと思います。

開業届と扶養には関連がないので、扶養に入ったままで開業届を出すことは可能です。

ただし、配偶者が開業届を出した時点で扶養から外れると規定している会社もあるようです。扶養を外れる影響は所得税や住民税の負担よりも、会社から支給される扶養手当がなくなることのほうが大きい場合があります。扶養を外れたくない場合には、まず配偶者の会社の規定などをご確認ください。

開業届と確定申告の方法

開業届は、管轄の税務署に持参または郵送で提出します。国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。

A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

確定申告書の受け付け期間は、例年2月15日から3月15日です。持参、郵送、国税電子申告・納税システムであるe-Taxで行います。

開業届、確定申告どちらにも使える会計ソフト

開業届の提出や、青色申告・白色申告どちらの確定申告をサポートしてくれる便利な会計ソフトは、無料のサービスやクラウドで使えるものなど、さまざまな種類があります。

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開業届や確定申告に関する相談・確認したい時は

税務に詳しかったり経理の経験があったりした方でなければ、開業届や確定申告についてどんなに読みやすい文章でも、理解できないことや自信がないことが多いと思われます。

しかし、「税務署を訪ねる時間がない」「こんな簡単なことを聞いてもいいのかな」「いつも忙しそうな税務署に電話するのは、ためらいを感じる」など心配はありませんか。私も、税務署に電話して聞く勇気がなかなか出せませんでした。

実は、管轄の税務署に電話して、自動音声案内に従い「1」を押すと、国税局電話相談センターにつながって相談することができます。分からない点があれば、電話してみましょう。

国税に関するご相談について|国税庁

税務署で直接相談したい場合には電話予約が必要です。

まとめ

働き方の多様化や副業の奨励など、セカンドライフやキャリアチェンジを見据えて、本業のほかに仕事を持つことはますます増えていくかと思われます。

会社にすべてお任せという時代から、税金、保険料、年金など、人生100年の今後については、自分で考えなくてはいけない時代になっています。

この記事が副業や在宅の収入をうまく生かすためのお役に立てば幸いです。

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