社会人の学び直しを国がサポート!|お得に学べるリカレント教育・リスキリング支援制度

人生100年時代に向けて、働く期間の長期化とともに、副業、転職など働き方の多様化が進んでいます。他方では、AIなどによる技術革新に伴い、多くの企業がDX推進を担うデジタル人材の育成・確保に力を入れています。

長く社会で活躍し、より人生を充実させるためには、リカレント教育やリスキリングといった学び直しによって知識・スキルをアップデートし続けることが必要です。

とはいえ、学び直しの意欲はあっても学費の負担がネックとなり、一歩を踏み出せないでいる方も少なくありません。

そこで今回ご紹介するのは、国が社会人の学び直しを後押しする、代表的な3つの支援制度。教育訓練の費用の一部が支給される「教育訓練給付制度」、無料で職業訓練が受けられる「ハロートレーニング(公的職業訓練)」、給付金を受けながら再就職・転職を目指せる「求職者支援制度」についてまとめました。これらの制度の申請窓口となるハローワークについても解説します。

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ハローワークとは

ハローワークとは、国が全国500カ所以上に設けている総合的な雇用サービス機関である公共職業安定所の愛称。

地域の求職者に対して、求人情報の検索・閲覧、職業紹介、職業相談、雇用保険(失業保険)の手続き、職業訓練の相談・申し込み、職業訓練受講給付金や教育訓練給付金の支給申請、就職セミナーの開催といったサービスを無償で提供しています。就職に関する相談だけでなく、応募書類の作成や面接対策についてもアドバイスをもらえるので、久々に就職活動をされる方も安心です。

ハローワークの中には、子育て中の女性・男性に対する就職支援の専門コーナー「マザーズコーナー」や付属施設「マザーズハローワーク」を設けているところも。同様に、学生・既卒者、正社員を希望する35歳未満のフリーター、就職氷河期世代の不安定就労者、高齢の求職者、地方での就職希望者などに向けた専門支援窓口を設置しているところも多く、自分の状況にあわせて相談できます。

また、自宅のPCやスマホで全国のハローワークで受理された求人情報の検索・閲覧応募ができるハローワークインターネットサービスも開設され、利便性の向上が図られています。

参考:厚生労働省 あなたの就職を全力でサポートします!

参考:厚生労働省 ハローワークのオンラインサービスのご案内

教育訓練給付制度

教育訓練給付制度は、厚生労働大臣が指定する教育訓練の受講費用の一部が教育訓練給付金として支給される制度です。雇用保険の加入期間が1年以上、離職してから1年以内など一定の要件を満たしていれば、パート・アルバイトや派遣労働者の方も給付を受けることができます。

対象となる教育訓練は、資格・検定の取得を目指す講座やデジタル分野の専門知識・能力の向上に役立つ講座など約16,000講座(2024年4月時点)にも及び、教育訓練給付制度検索システムでチェックできます。オンライン受講が可能な講座や、夜間・土日開講の講座など、働きながら受講しやすい講座があるのもうれしいポイントです。

なお、教育訓練給付の講座指定の対象となる主な資格・試験などは以下のようになっています。例えば、需要が高まっているIT系の講座はITパスポート試験対策講座から第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)まで充実したラインナップで、レベルや必要に応じて選ぶことが可能です。

出典:厚生労働省ホームページ

教育訓練給付制度は、教育訓練の内容やレベルなどに応じて、以下の3つに分けられます。

なお、制度の改正により、2024年10月1日以降に特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の受講を始めた方については、給付金の給付率の引き上げが行われています。

参考:厚生労働省ホームページ「令和6年10月から教育訓練給付金を拡充します」

一般教育訓練給付金

資格取得(簿記検定やTOEIC等)を目的とする講座、学位の取得を目標とする大学院の課程などが対象。教育訓練終了後、受講費用の20%(年間上限10万円)を支給

特定一般教育訓練給付金

業務独占資格(介護職員初任者研修、税理士等)などの取得を目的とする講座、情報通信資格の取得(ITスキル標準〔ITSS〕レベル2相当以上)を目指す講座などが対象。

教育訓練終了後、受講費用の40%(年間上限20万円)が支給されます。2024年10月1日以降に受講を開始した方は、資格取得や就職をした場合、さらに受講費用の10%(年間上限5万円)の追加支給が受けられます。

専門実践教育訓練給付金

業務独占資格(介護福祉士、看護師等)などの取得を目標とする講座、情報通信資格の取得(ITスキル標準〔ITSS〕レベル3相当以上)などを目指すデジタル関係の講座、大学院・大学・短期大学・高等専門学校の課程(文部科学大臣認定の職業実践力育成プログラム等)などが対象。訓練受講中6カ月ごとに受講費用の50%(年間上限40万円)を支給。さらに、資格取得や就職をした場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)の追加支給を受けることも可能

これに加えて、2024年10月1日以降に受講を開始した方に限り、訓練修了後の賃金が受講開始前より5%以上上昇した場合は、教育訓練経費の10%(年間上限8万円)が追加で支給されます。

このほかに2027年3月31日までの時限措置として、失業状態にある方が一定の要件を満たした場合、別途、教育訓練支援給付金の支給が受けられる場合もあります。

教育訓練給付金の支給申請は、お住まいの地域を管轄するハローワークで受け付けています。制度の詳細は厚生労働省のホームページで確認できますが、自分が給付金を受けられるかどうか、事前にハローワークで支給要件を確認しておくことをおすすめします。

なお、支給申請と受給資格確認は、これまで本人が病気で来所できない場合などに限って電子申請が認められていましたが、2024年2月1日以降、いつでも電子申請ができるようになりました。電子申請はe-Gov電子申請から可能です。

参考:教育訓練給付制度

関連記事:教育訓練給付制度とは|お得に資格取得できる制度の概要と条件を解説!

ハロートレーニング(公的職業訓練)

ハロートレーニングとは求職者を対象とした公的職業訓練の愛称で、キャリアアップや希望する就職を実現するために必要な知識・スキルを習得できる制度です。雇用保険の受給の有無によって、「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」のいずれかを受講できます。

公共職業訓練

公共職業訓練は、退社して求職中の方など雇用保険を受給している求職者が主な対象ですが、在職者などを対象とした訓練も実施しています。雇用保険を受給しながら訓練を受講できます。

求職者向け訓練の実施機関は、国(ポリテクセンター)、都道府県(職業能力開発校)、都道府県から委託を受けた民間の教育訓練機関など。訓練期間は3カ月~2年程度で、受講費用は無料(テキスト代等は実費負担)。受講期間中は交通費などの各種手当が支給されます。

在職者向け訓練の実施機関は、国(ポリテクセンター・ポリテクカレッジ)と都道府県(職業能力開発校)。訓練期間は2~5日程度で、受講は有料となっています。

ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)の全体像」(厚生労働省)を加工して作成

求職者支援訓練

求職者支援訓練は、フリーランスや自営業、主婦の方など、雇用保険を受給できない求職者が主な対象

訓練の実施機関は、主に民間の教育訓練機関(訓練コースごとに厚生労働大臣が認定)。訓練期間は2~6カ月程度で、受講費用は無料(テキスト代等は実費負担)です。

一定の要件を満たせば、訓練受講中の生活費などが支給される求職者支援制度(後述)を利用することもできます。

ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)の全体像」(厚生労働省)を加工して作成

ハロートレーニングの訓練分野は、特に人材ニーズの高いIT、介護・福祉をはじめ、営業・販売・事務、建設、製造、サービス、デザイン、理美容と幅広く網羅されており、ハローワークインターネットサービスの職業訓練検索ページで訓練コースを検索できます。受けたい分野の訓練について、申し込み期間や実施期間、実施施設などを確認しておきましょう。

ハロートレーニングに関する手続きは、基本的にはハローワークで行います。制度の詳細を厚生労働省のホームページで確認のうえ、最寄りのハローワークに相談しましょう。

参考:厚生労働省 ハロートレーニング

関連記事:無料で職業訓練が受けられるハロートレーニングとは

求職者支援制度

求職者支援制度は、再就職や転職、スキルアップを目指す方が無料の職業訓練を受講でき、要件を満たせば月10万円の職業訓練受講給付金も受けられる制度。先述の求職者支援訓練のほか、訓練期間がより長い公共職業訓練の受講も可能です。

学び直しの際の経済的な負担を軽減できるだけでなく、訓練開始前から終了後までハローワークの求職支援を受けられるのも大きな魅力です。

なお、職業訓練受講給付金は職業訓練受講手当(月額10万円)、通所手当(上限42,500円)、寄宿手当(月額10,700円/該当者のみ)の3つからなり、職業訓練を受講している2~6カ月程度の間支給されます。

制度の対象となるのは雇用保険を受けられない方(受給が終わった方を含む)で、具体的には以下のような方が該当します。

給付金を受けて無料の職業訓練を受講できる無料の職業訓練のみ受講できる
・雇用保険に加入していなかった離職者の方
・雇用保険の受給が終了した方
・フリーランス・自営業を廃業した方
・親や配偶者と同居していて一定の世帯収入がある離職者や学卒未就職者の方
・収入が一定額以下の在職者の方
(パートタイムで働きながら正社員への転職を目指す方など)
・働いていて一定の収入のある方
(フリーランスで働きながら正社員への転職を目指す方など)

上記に加えて、訓練の受講や給付金の受給には一定の要件を満たす必要があります。例えば、訓練の受講には「ハローワークに求職の申込みをしていること」「職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと」など、給付金の受給には「本人収入が月8万円以下」「世帯全体の収入が月30万円以下」「訓練実施日全てに出席する」などの要件が定められています。

思いのほか要件が厳しいと思われるかもしれませんが、2023年4月1日から求職者支援制度はより利用しやすいものへと変化を遂げています。例えば、給付金の要件が緩和されて親や配偶者と同居している方などが受給しやすくなったほか、これまで給付金の支給が受けられる方のみを対象としていた訓練施設への交通費(通所手当)の支給対象が拡大され、働きながら訓練を受講しやすくなっています。

以前は要件を満たさなかった方も、もしかしたら対象になっているかもしれません。制度活用の詳しい要件を厚生労働省のホームページで確認するか、求職者支援制度の申し込みを受け付けている最寄りのハローワークに問い合わせてみましょう。

参考:厚生労働省 求職者支援制度のご案内

関連記事:職業訓練受講給付金とは?もらえる条件と取れる資格・スキルを確認しよう!

まとめ

ご紹介した3つの制度すべての窓口となっているハローワークでは、今後、キャリアコンサルタントの常駐などによるリスキリング相談支援体制の拡充が計画されています。

さらに、ハローワークの窓口業務のオンライン化も進められる予定で、ゆくゆくは職業相談・紹介業務や離島などの雇用保険の認定業務のほか、教育訓練給付の受給手続なども来所せずに行えるようになるのだそう。待ち遠しいですね。

ハローワークは敷居が高いというイメージを持たれがちですが、多くの人が利用しやすい身近な存在へと変化を続けています。何より、お得に学び直しができる国の制度を活用しないのはもったいない!

自分の利用できる制度がないかチェックして、スキルアップやキャリアアップ、キャリアチェンジに役立ててみてはいかがでしょうか。