(取材)女性の「キャリア自律」と「他者支援」をサポート|筑波大学リカレント教育 「即戦力人材」育成のための心理学プログラム

「女性の生き方が変わる」キャリアカウンセリング | 筑波大学リカレント教育 DX人材育成のための就職・転職支援
左から廣田奈穂美氏、岡田昌毅氏、中村准子氏(筑波大学東京キャンパスにて)

筑波大学(東京キャンパス)では、文部科学省によるリカレント教育推進事業の受託事業として、2021年度、2022年度とリカレント教育プログラムを開発・提供してきました。2023年度は「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」で採択された「ライフキャリア構築を目指す女性のための心理学プログラム -生涯発達的視点からのキャリア自律と他者支援への展開―」を社会人向け夜間大学院である筑波大学東京キャンパスで開催します。同プログラムは、単なる職業訓練を超えた心理学的アプローチからキャリアデザインを重視する内容となっています。

この記事では、本プログラムの概要に加えて、プログラムを提供する「働く人への心理支援開発研究センター」長、筑波大学教授の岡田昌毅氏と、 同センター研究員の廣田奈穂美氏、中村准子氏にお聞きした、これまでのプログラムの内容と特徴もまとめました。 2022年度の最終講義を取材した際の、受講生のリアルな声もお伝えします。

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日本初の社会人向け大学院と、働く人への心理支援開発研究センター

筑波大学大学院東京キャンパスは、日本初の社会人向け大学院として平成元年1989年に開校しました。まずは、人間総合科学学術院内の「大学院(カウンセリング学位プログラム)」と「働く人への心理支援開発研究センター」について解説していただきました。

長い歴史と多くの修了生を誇る、カウンセリング学位プログラム

コエテコカレッジ編集部(以下、編集部) 大学院の概要を教えてください。

岡田昌毅(敬称略 以下、岡田) 入学した社会人学生は仕事と両立しながら、心理学の領域を幅広く学びます。1学年の定員23名のうち半数程度が一般企業に勤務し、家族・福祉、学校・教育、産業・社会など研究領域は多岐に渡ります。

前身の筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻カウンセリングコースに始まり、今年2022年に創立34年目を迎え、700名以上の修了生が活躍しています。

働く人への心理支援開発研究センター長 筑波大学 人間系教授 岡田昌毅氏

「人は、生涯、発達する」働く人への心理支援開発研究センターの設立

編集部 働く人への心理支援開発研究センター(以下、センター)の概要と、設立に至る経緯を教えていただけますか。

岡田 修了生たちのさらなる活躍と研究成果に基づいた最先端かつ幅広い知見で働く人を支援しようと、令和元年(平成31年)4月にセンターが設置されました。

「人は、生涯、発達する」をセンターの理念としています。企業や団体など外部へ提供する研究や学術指導、エクステンションプログラム、ライフキャリア相談室などにより運営され、大学から運営資金の提供を受けないことも、センターの特徴の一つでしょう。

働く人への心理支援開発研究センターは「筑波(Tsukuba)大学の知恵を結集し、ワン(One)チームとなって、ワン(One)ストップのサービスを提供」を目指すことから、「T-One ラボ」と呼ばれています。上記の図のように5つのユニットから構成されています。

リサーチユニット

現在取り組んでいるプロジェクトは「職場における孤独・孤立化過程の分析―総合的予防プログラムの開発に向けて―」で、約30名のメンバーにより研究が続けられています。2020年度に取り組んだ、コロナ禍の働く人への影響を研究した「テレワークによる社内コミュニケーションの変化」の研究成果は、メディアにも紹介されました。

コンサルティングユニット

企業や団体が現場で抱える働く人の様々な問題・課題の解決のために、大手電機メーカーや人材開発企業など20社以上の企業・団体との共同研究、学術指導の実績があります。

このほかにも、一般の方へのカウンセリングを行う「ライフキャリア相談室」を開催するカウンセリングユニット、キャリア・プロフェッショナル養成講座などを実施する教育・研修ユニット、当センターの事業戦略の企画、推進を担当する事業戦略ユニット(企画・広報戦略ユニットから名称変更)があります。

2023年度「ライフキャリア構築を目指す女性のための心理学プログラム」

2023年度に実施される「ライフキャリア構築を目指す女性のための心理学プログラム -生涯発達的視点からのキャリア自律と他者支援への展開―」は、IT人材の育成に特化した2021年度プログラム、DX人材の育成に特化した2022年度プログラムに続くもので、他者をマネジメント・サポートする“支援者”としての女性即戦力人材の育成を目指しています。

具体的には、管理職、人事・教育担当者、職場メンタルヘルス担当者、営業等の総合職、キャリアコンサルタントなどの、人の支援に関わる仕事をしている女性を対象としています。

受講方法・オンデマンド講義
・対面講義
開催日時1.平日クラス(木曜日):2023年10月5日〜2023年12月21日
2.土曜クラス:2023年10月7日〜2023年12月23日
申込期間2023年7月20日~2023年8月31日
受講時間数オンデマンド講義:47時間
対面講義:40時間
対面講義会場筑波大学(東京キャンパス)
東京メトロ丸の内線「茗荷谷」駅 徒歩3分
受講料120,000円(税込)
対象者管理職、人事・教育担当者、職場メンタルヘルス担当者、総合職(営業職等)、人の支援に関わる者(キャリアコンサルタント等)
※それ以外の方でも応募可能
事前の説明会WEB説明会あり
7月22日(土)13:30〜15:00(予定)
※7月22日以降はオンデマンドにて配信予定
※7月22日のWEB説明会は事前申込が必要
募集要項

大きな特徴は、これまでのプログラムに引き続き、心理学とキャリア形成を並行して学ぶこと。30年以上の歴史をもつ筑波大学社会人大学院の心理学の知見をもとに、講義と演習を通して「自己理解」「他者理解」「キャリア自律」の知識・スキルを習得します。

さらに、同学が独自に開発した就職・転職希望者の総合的なサポート体制「寄り合いサポート」(後述)を体感・実習することが可能。これにより、実践的な“支援者”としてのスキルを身につけることができます。

講義科目(講義名や内容・日時は変更の可能性あり)

なお、受講方法は対面講義とオンデマンド講義を組み合わせた形式となっていますが、プログラムの半数以上はオンデマンドで行うため、お好きなタイミングで学習することができます。遠方の方や対面講義に参加できない方向けにオンデマンド講義のみ受講できるコースも用意されています。

プログラムの詳しい内容を知りたい方は、2023年7月22日(土)に開催されるWEB説明会への参加がおすすめ。申し込みフォームから受付が可能です。オンデマンド説明会も配信予定。

2022年度実施「女性のためのオフィスワークDX推進プログラム【DX(ビジュアライゼーション)×女性活躍】」

「女性のためのオフィスワークDX推進プログラム【DX(ビジュアライゼーション)×女性活躍」(以下、2022年度プログラム)は、修了率100%を達成した2021年度のプログラムをバージョンアップしたものです。企画の経緯キャリア心理学キャリアデザインなど2022年度プログラムの特徴概要を紹介します。

プログラム内容と企画の経緯


2022年度実施「女性のためのオフィスワークDX推進プログラム【DX(ビジュアライゼーション)×女性活躍」の講義内容

廣田奈穂美(敬称略 以下、廣田 2022年度プログラムは、「バックオフィス・DX推進プログラム」「バックオフィス・スキルUPプログラム」「女性のためのライフキャリア心理学プログラム」「女性のための就職支援プログラム」で構成されます。東京キャンパスでは「バックオフィス・DX推進プログラム」以外の3つのプログラムとキャリアカウンセリングを実施しました。

編集部 受講生を女性に限定した理由を教えてください。

廣田 コロナ禍で女性の就業が大きな打撃を受けました。令和3年度労働経済白書によると医療分野などで女性の正規雇用が増加する一方で、宿泊業や飲食サービス業では女性の非正規雇用の労働者が大幅に減少しています。これは、男性の失業者が増加したリーマンショックとは逆の状況です。

私たちは2021年度プログラムで就職活動の困難さを目の当たりにし、女性には出産や結婚など自分のライフスタイルに合わせた働き方と継続したスキルアップが必要だと考えました。ニーズ調査の結果、企業はIT化を推進し自律的に働ける事務スタッフを求めており、女性の求人を検索すると一般事務職が最も多くヒットします。このほかにも、文部科学省の「DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業」が、重点分野の一つとして「女性活躍」を挙げていたことや、2021年度プログラムの受講生の大半が女性だったことも、理由に挙げられます。

オフィスワークにおいて高いITスキルを持つ女性の需要が大きいことから、DX女性活躍の2つの視点を掛け合わせて企業のバックオフィスのDX化を支える女性人材を育成しようと2022年度プログラムを企画しました。

編集部 プログラム名の「ビジュアライゼーション」とは、どのような意味でしょうか。

廣田 ここでいうビジュアライゼーションとは、DXの推進や社会での女性の活躍など、実際に見て確認しにくいことをIT化による業務改善と効率UPで、分かりやすく見える化することを指します。さらに、女性が自分の未来をデザインして社会で活躍することや自分らしく働くことや生きることを表現すること、という意味でのビジュアライゼーションでもあります。

働く人への心理支援開発研究センター 研究員 廣田奈穂美氏

修了率100%の2021年度開催「ITスキルを身につけたい人のためのライフキャリア醸成・就職支援プログラム」

編集部 2021年度のプログラムについて教えてください。

岡田 文部科学省「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業(就職・転職支援のためのリカレント教育プログラムの開発・実施)」の受託事業として実施しました。

「今、必要とされているリカレント教育」はということで、コロナ禍で苦しみ困っている方へ、当学の経験を生かし、就職を実現して人生を歩んでいただくことを、大学院生以外の一般の方にも提供することを目的としたものです。プログラムの受講生30名の修了率100%でした。

プログラム内容には、ニーズが高いITの技術やスキルがまず挙がります。しかし、就職した職場で継続して働くこと、さらに自分自身の人生や職業キャリアを考えるような長期的な視点を学ばなくては、離職することになりかねません。就職後のキャリアプランニングが私たちの最も得意とする領域であり、リカレント教育で重要なことだと考え、心理学とキャリアを学ぶこととIT教育とを合体させたプログラムが誕生しました。詳しくは後程ご説明しますが、キャリアコンサルタントの力を結集した筑波大学独自の取り組みである「寄り添いサポート」は、2022年度プログラムでも継続して実施しました。

廣田 女性の働き方は、出産や育児など家族の状況に大きく影響を受けがちです。つまずきそうな方がいたり、予想外の出来事があったりしましたが、受講を継続できるように柔軟に対応しました。寄り添いサポートを含めて、スタッフ全員で受講生を支えたことも修了率や就職率の高さにつながったと思います。

修了後3ヶ月時点での就職率は、83%でした。2021年度の受講生はほとんどが女性でしたが、「人生かけてきました」と宣言する50代男性もいました。どの受験生も真剣で強い気持ちで学んでいたことも、修了率100%を達成した理由の一つでしょう。

「人生が変わる」キャリア心理学とキャリアデザインを学ぶ意義とは

編集部 2022年度プログラムは、DX推進、バックオフィス・スキルUP、女性のためのライフキャリア心理学や女性のための就職支援と内容が多岐に渡ります。受講すると身につく12の力を教えていただけますか。

中村准子(敬称略 以下、中村) 円形の図の右上はITの技術、右下が論理的な思考やチームで働く心理に関わる力です。離職している期間が長くなると、組織の中で働くことに難しさを感じる方が多いようです。「他者と一緒に働く」「自分の気持ちを他者に伝える」「他者の考えの聞き方」を学ぶことは、ITの技術やスキルと同様にとても大事なことでしょう。

円形の図の左上にある水色の部分は、自分にふさわしい職業を見つけて就職するための力です。また、就職も非常に大事ですが、継続して働き続けることを重視しています。

この12の力には、受講生に自分らしいキャリアを順調に歩み続けて欲しいという思いが込められています。

働く人への心理支援開発研究センター 研究員 中村准子氏

ライフキャリア心理学とは

編集部 図の左側の内容は、ほかのリカレント教育ではあまり見かけないように感じます。詳しく教えていただけますか。

中村 私はキャリアをどう捉えるかというキャリア心理学、組織心理学をこの東京キャンパスで学びました。

人が生涯、発達をしていく過程で何が起きるのかを知ることは、自分のキャリアを考えるためにとても大事なことです。本プログラムは、受講生自身がキャリアの課題を乗り越えて発達できると理解し、今は立ち止まっていてもこの先は前に進める、そのための力を身につけるために学んでいることが感じられることを目指しています。

2022年度プログラムでは、グループワークや個人ワークなどのワークショップを実施しました。同世代の人が自分とは全く違う考えを持つことに気づいたり、多様なバックグラウンドを持っている方々との交流で「自分の考え方は狭いかもしれない」「自分はもっとできるかもしれない」と気持ちを切り替えられることが多くあるからです。

2021年度プログラムの修了後のアンケートでは、キャリア心理学のプログラムを通じて「人生観が変わった」「自分も歩んでいけそうだ」など、気持ちが前向きに変化したとのコメントが多くありました。

編集部 2021年度プログラムの受講生へのアンケートでは、ほかにどんな成果がありましたか。

中村 受講後には、自己肯定感、問題に直面しても耐えられる力を指すレジリエンス、社会人として必要な考える力や働きかける力、皆で働く協同意識などが向上しました。これらの要因には授業内容だけでなく、後ほど説明する寄り添いサポートも大きく影響しているのではと考えます。

アンケートのコメントには「学ぶことの大切さを知った」「学び続けることの大切さを知り、身につき、習慣になりそうだ」といった内容も多かったです。アンケート結果から、受講生が学び続ける意識を持って今後のキャリアを歩もうとしていると分かりました。

キャリアデザインとは

編集部 12の力にある「未来を描くカ(キャリアプランニング)」や、女性のための就職支援プログラムにある「自己理解・キャリアデザイン」について、解説していただけますか。

岡田 キャリアデザインの理解が、本プログラムにおいて重要なことと考えます。

キャリアには、さまざまな意味があります。人生全体を指した広いもの、職業に限定したもの、さらにもっと狭いものではキャリア組のように出世や昇進に関連したものがあります。2022年度プログラムは、どんな資格を取るのか、どんな仕事をするのか、自分はいつマネージャーになるのかなど短期的で外形的なキャリアも重視しますが、それだけにとどまりません。

職業や人生についての重要な学術的な知見を取り入れて、キャリアに関する心理の理論を噛み砕いて説明します。受講生には、講義、グループワーク、個人ワーク、実際の就職活動での実践や、寄り添いサポーターとの対話や助言を通して、以下のようなことを考えてもらいました。

  • 自分の適性を、どのように考えればいいのか
  • キャリアに関する意思決定は、どのようにすればいいのか
  • 環境やキャリアに適応するための力は、どのようなものか
  • 年齢に応じた発達段階とは、どのようなものか
  • 転機にはどんなことを考え、どう対処すればいいのか

人はトランジションとも呼ばれる転機に直面すると、誰もが苦しく感じます。その苦しさはあなただけでないと知ることは、キャリアデザインを考える上で大切なことです。

2022年度プログラムでは、先ほどご説明した12の力のような外側で見えやすいものを習得すると同時に、受講生自身が持っている「人間力」や「自分自身で道を考え選ぶ」などキャリアの根本的な考え方を整理しました。人の内面の部分にしっかりとフォーカスを当てて、受講後も自分のキャリアを考え続ける必要があると実感し、その重要性が腑に落ちるようなカリキュラムを提供しました。

編集部 お話を伺っていると、もしかするとこのプログラムを受講したら、「人生変わるかも」と感じました。

廣田 まさに、私も入学前のオープンキャンパスで先生から「人生変わりますよ」と言われ、大学院に入学しました。学び直しによって、私自身のキャリアも本当に大きく変わりました。岡田が説明した通り、人間は生きていく上で様々なライブイベントがあり、特に女性はその影響を大きく受けがちです。また困難な出来事があったときなど、キャリア心理学を学んでいたからこそ「自分の生き方は自分で決める」ということを実感することができました。

2023年度プログラムでも、受講生30名全員で一緒にチームとなって、未来のキャリアを創っていけたらと思います。人生を変えたい方、変わりたいと本当に願っている方、自分の生き方や働き方を真剣に見つめたい方にぜひとも受講して欲しいです。

編集部 2022年度プログラムのほかにはない素晴らしさは、単なるITの知識と技術を習得することにとどまらず、ライフステージの変化と働き方を考えることの大切さを学べることと感じました。

廣田 その通りです。DXに関連した内容が注目されがちで、キャリアデザインやキャリア心理学に関わるプログラムは裏メニューと思われるかもしれませんが、実は裏メニューこそが2022年度プログラムの表メニューともいえるでしょう。

岡田 私たちのベースには大学院があり、社会人学生が現場に根差した研究をしています。頭だけで考えたものではなく研究と実践によって長年蓄積された知見は、本当に膨大なものです。この知見が本プログラムに反映されているからこそ、外形的なキャリアの先の深い部分、人の内面的なものに対して心理的な側面にアプローチできると思います。

中村 私たち3名は、働きながらこの東京キャンパスで学んだ体験を通して、リカレント教育の必要性や経験がもたらすものを考えています。以前の私が体験したように、自らのキャリアを深く考えて、この先も自分らしく生きていきたい・働いていきたいとの思いを強めていく学生の姿を、今もここで目の当たりにしています。    

2021年度プログラムの受講生は、プログラム名にITスキルとあるのにキャリア心理学もどうして学ぶのか分からず、キャリア心理学の最初の授業で岡田が丁寧に必要性をお話ししても、もしかしたらピンと来ていなかったかもしれません。しかし、修了後には「こういうことだったんだ!」と納得していたように感じました。

廣田 2021年度プログラムでは、「本当に人生が変わりました」と多くの受講生が語ってくれました。

最後まで強力に受講生を支える「寄り添いサポート」

廣田 寄り添いサポートは、3つの方法で受講生を支えます。

まずは、キャリアコンサルタントの面談によるキャリアコンサルティングです。2022年度プログラムのために集まった6名のキャリアコンサルタントが受講生5人ずつを受け持ちました。

受講生は月2回の土曜日に、担当のキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けました。2022年度プログラムでは3カ月の受講期間中に6回、その後にフォローアップとして希望すればプラス4回、合計で10回のキャリアコンサルティングを受けることができました。昨年度も同様に実施して、受講スタート時は「わざわざ土曜日にキャンパスへ来るのは大変」と言う方もいました。しかし、修了時にはほとんどの方がフォローアップ期間を含めて全ての回のキャリアコンサルティングを受けました。当初はオンラインの希望もありましたが、対面が相談しやすいとほぼ全員が対面を希望しました。

二つ目は、授業の受講に関するサポートです。2021年度プログラムでは、内容の理解や動機付け、補講の必要性まで目を配りました。さらに、キャリアコンサルティングだけでは解決が難しく、さらなるメンタルの支援が必要な場合のサポートも充実。筑波大学の教員や公認心理師、臨床心理士、産業医と連携して、受講生をサポートしました。

毎月2回のキャリアコンサルティングを実施した後には、キャリアコンサルタント全員とプログラム担当者が集まり、「寄り添いミーティング」と名付けた報告会を開催しました。2021年度プログラムでは守秘義務を守りつつ課題や問題点を議論したり、メンタルの問題には臨床心理士など専門家がアドバイスしたりして、時には約3時間かかることもありました。

寄り添いサポートとは、1人の受講生を1人のキャリアコンサルタントが受け持つというよりは、全てのキャリアコンサルタントと関係者がチームになって、寄り添いミーティングも含めて受講生をサポートするシステムと考えています。

【2022年度プログラムの講義を取材!】それぞれのキャリアデザインを発表

2022年12月21日「就職支援プログラム総合演習 『私のキャリアデザイン-別れの花束-』」を取材しました。

受講生は、専業主婦・現在アルバイト中の方や、子育てやキャリアの見直しでの退職者など、年齢も経歴もバラエティに富んだ方々です。この講義では、ほぼ全ての受講生がプログラムから得た気づき、「未来の自分宣言」と題してこれからの希望や展望を発表しました

キャリア心理学、キャリアデザインを学んで得たものとは

取材した講義では、受講生によるPowerPointを使用したプレゼンテーションが行われました。

多くの方が、学んだ知識を踏まえて、自分の今までの人生を振り返り分析、これからの方向性や就きたい職業が明確になったことを語られました。自己肯定感が強くなり、新たな仕事に就くための資格取得や、今の仕事をこれからも続けようと決意した方も。心理学のスキルや知識を今後に生かすだけでなく、より深く学ぼうと筑波大学大学院東京キャンパスへの進学を宣言する方もいらっしゃいました。

多様な価値観を持つ受講生が集まり、大きな刺激を受ける

ほとんどの受講生にとって、キャリア心理学やキャリアデザインを学ぶことは初めてのこと。

講義では、受講生を5人ずつ6グループにして、グループワークや演習を行いました。受講生は女性限定ですが、年齢も属性もさまざま。クラスメイトたちの多様な価値観を知ることは、独学にはないメリットでしょう。

「何かを学びたい」同じ目的を持ったクラスメイトは、今まで接してきた人たちとはまるで違うと感じる存在で、大きな刺激を受けたそうです。心理学の視点から、自分の課題を分析し、ディスカッションの中で励ましあい、解決の糸口を自分で発見していくという新しい体験を経て、これからもお互いにつながっていたいと発言した方は少なくありません。

未来の自分宣言

発表の最後の項目は、「未来の自分宣言」です。

「自分の人生は自分で決めていく」「今後も学んで成長していきたい」「私のように悩んでいる人の役に立ちたい」「今をみつめて現在を生きていこう」「自分に起きたことで無駄なことはない」「まだ先は見えていないが、今後も考えていきたい」・・

など受講後の人生、働き方やキャリアに主体的に向き合い、学んだことを活かして他の人にも広げていきたい、学ぶことを続けていきたい、ということをそれぞれの言葉ではっきりと宣言されていました。

まとめ

私たちを取り巻く労働環境は刻々と変化し、スキルアップしながら働き続けることがますます求められています。時代に合った働き方や技術・スキルの習得とその中でも自分らしい生き方を実現するために、リカレント教育の機会が与えられている今こそ積極的に学び続けることが必要なのかもしれません。

岡田 昌毅(おかだ まさき)

国立大学法人 筑波大学 人間系教授

人間総合科学学術院 カウンセリング科学学位プログラム リーダー

働く人への心理支援開発研究センター長

博士(心理学)

1級キャリアコンサルティング技能士

公認心理師

廣田 奈穂美(ひろた なおみ)

働く人への心理支援開発研究センター 研究員

修士(カウンセリング) 

1級キャリアコンサルティング技能士

カウンセリング心理士

中村 准子(なかむら じゅんこ)

働く人への心理支援開発研究センター 研究員

博士(生涯発達科学)

国家資格キャリアコンサルタント

ファイナンシャルプランナー

【関連リンク】

ライフキャリア構築を目指す女性のための心理学プログラム -生涯発達的視点からのキャリア自律と他者支援への展開―

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筑波大学大学院 人間総合科学学術院 人間総合科学研究群
・カウンセリング学位プログラム(博士前期課程)
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筑波大学東京キャンパス社会人向け大学院(夜間)

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