リスキリングとは|DX時代を生き抜くために職場で求められる能力

リスキリングとは、DX時代に必要とされる人材としての新しいスキルを学ぶことです。 これからの職場では、今までとは異なったスキルが必要とされるため、新しい人材を雇用するほかに、既存の就業者のキャリアアップを進めることも必要な取り組みの1つとなっています。

また、経済産業省、文部省などによる企業や大学に対する補助金や、厚生省による個人への教育訓練給付金のなど国によるリスキリングへの支援も積極的におこなわれています。

今回は、話題のリスキリングについて具体的にどういうものなのか、何を学んだら良いかなどを調べてみました。

リスキリングがなぜ今必要なのか?

現代社会において、技術やビジネス環境は急速に変化しています。この変化のスピードは非常に速く、これまで成功していた職業やビジネスモデルも失われる可能性があります。この変化の中で、リスキリングは生産性の向上や経済発展などに対して重要な役割を果たします。

以下に、リスキリングが重要な理由をいくつか挙げます。

1)技術の進化
技術の進化によって、新しいスキルが必要になります。 例えば、AIなどの人工知能やブロックチェーン技術など、新しい技術が次々と登場しています。 これによって、過去に成功していた職業でも、新しいスキルが必要になっている場合があります。

2)デジタル化の進展
デジタル化の進展によって、多くの職業が変化しています。実際オンラインでの業務やビジネスは増えており、これによって社会人に必要なスキルも変化しています。

3)人材不足の解消
人材不足が懸念されている業界、特にIT分野においては今働いている従業員に対するリスキリングが人材不足を解消する鍵となります。

4)業務の多様化
業務の多様化によって、新しい職業が生まれています。 例えば、データサイエンティストやUXデザイナーなど、過去には存在しなかった職業が増えています。

以上のような理由から将来を見据えた人材育成が必要となり、リスキリングは企業や国の経済成長において緊急な課題となっています。

リスキリングとリカレント教育・生涯教育・OJTの違い

リカレント教育

リカレント教育も「社会人の学び直し」という点ではリスキリングと同じですが、学ぶ目的と学び方が異なります。

リスキリングの目的は、DX化が進むにつれて急速に変化する技術に対応できるようなスキルを持つ人材を育成することであり、主に企業側が主体となって従業員にスキルを身につけてもらうよう働きかけます。学び方は、就労しながらスキルを習得していきます。

リカレント教育とは、個人のキャリアアップを目的とし、仕事上必要な知識やスキルを学ぶために大学やビジネススクールなどで学ぶことです。その後知識やスキルを活かして就職し…と学びと就労を繰り返します。リカレント教育は、海外では長期間の休暇や退職など一旦職場を離れて学ぶスタイルが一般的のようですが、日本では離職や休業せずに学び直すスタイルも含まれます。

よってリスキリングは企業側の働きかけが大きいのが特徴ですが、リカレント教育は新しい雇用に挑戦したいなど個人の意思で学び直すチャンスを得るのが特徴です。

令和4年度は、政府の取り組みとして、リスキリングは経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」、リカレント教育では文部科学省「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」が公募されています。

「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」ほか令和4年の文部省の取り組みについてお話をお聞きした記事はこちら↓

https://college.coeteco.jp/blog/archives/14854/

生涯教育

生涯教育とは、個人が生涯を通じて学習を続けることであり、将来に備えた新しいスキルだけでなく色々な分野を学んでいくことです。

生涯教育は、リスキリングと違ってあくまでスキルアップを目的とするものだけでなく、個人の興味や関心に基づく趣味の学習や文化活動なども含まれます。

OJT

OJT:On-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)は、従来おこなわれてきた社内での人材育成を目的とした実務研修のことです。新入社員や未経験者が、職場の実務を通して必要なスキルや知識を身につけるために、現場での実践的な指導や指導者との密接な連携によるトレーニングで、学ぶ側だけでなく教える側のスキルアップにもつながります。

しかしながらリスキリングと違って既存の業務を教える場合に用いられ、これから必要になる新しいスキルに関してはOJTで学ぶことはできません。

リスキリングの導入事例

NHKが2022年12月23日から2023年1月13日にかけて国内の主な企業に対しておこなったアンケートでは、リスキリングについて

・導入した:72社
・導入する予定:9社
上記あわせて全体の8割を超えていました。

参照:リスキリング 導入事例は? スキルの再習得 支援や機会確保どうする

国内企業での具体的な導入事例としては、

  • 株式会社日立製作所:グループ全体で「学習体験プラットフォーム(LXP)」を導入し、さまざまな学習プログラムを社員に提供
  • キヤノン株式会社:自社の研修施設「CIST(Canon Institute ofSoftware Technology)」を設立し、研修型キャリアマッチング制度の導入
  • 富士通:国内グループの全社員(8万人)に対して教育投資を4割増やし研修を拡大、必要なスキルを社員が自ら選択できるように

などが挙げられます。

リスキリングで何を学ぶか

将来役立ちそうな知識やスキルで、何を学んだら良いのかおすすめをいくつかご紹介させていただきます。

第四次産業革命スキル習得講座 (Re スキル講座)

第四次産業革命スキル習得講座 (Re スキル講座)とは、主にIT分野において高度なレベルの教育訓練講座で経済産業省が認定した講座のことです。この講座のうち、厚生労働大臣から指定を受けた講座は「教育訓練給付制度(専門実践教育訓練)」の対象となり、受講者側に費用の最大70%支給されるか、もしくは企業が受ける「人材開発支援助成金」の対象となり、企業側に費用の最大60%が支払われます。

認定対象の分野は、AI、IoT、クラウド、データサイエンス、高度なセキュリティ・ネットワーク、IT利活用で、目標レベルはITSS レベル4相当(基礎・初級を除くレベル)です。

(参考:第四次産業革命スキル習得講座 (Re スキル講座)

どのような講座があるかは、経済産業省のHPを参照ください。

第四次産業革命スキル習得講座認定制度(METI/経済産業省)

また個人で受けられるものでは、経済産業省の審査基準を満たしたDXに関する講座をまとめたサイト「マナビDX(デラックス)」があります。掲載されている講座の中には受講費用の補助が受けられる講座もあり、これまでデジタルスキルを学ぶ機会がなかった方にも誰もが学べるような学習コンテンツがあります。

マナビDX - マナビDXはすべての人に学びの場を提供します
「マナビDX」は、デジタルに関する知識・能力を身につけることができる講座を紹介するポータルサイトです。

経済産業省のご担当者にデジタル標準、マナビDXについてお話をお聞きした記事はこちら↓

https://college.coeteco.jp/blog/archives/14726/

プログラミングやデータ分析、情報セキュリティなどのIT系

今人気が高いのが、プログラミングやデータ分析、情報セキュリティなどのIT系の分野です。上記のRe スキル講座に認定されていなくても、さまざまな講座や資格があります。

IT系の国家資格として、
・ITパスポート
・基本情報技術者
・ITサービスマネージャ

などもあり、受験者数は年々伸びています。

ITパスポートの受験を考えている方におすすめの記事はこちら

https://coeteco.jp/articles/12837

webマーケティング系

近年、SNSなどを使ったWeb広告運用など、Webマーケティング戦略に力を入れる企業が増えており、注目が集まっている分野です。

webマーケティングに関する資格として、
・ウェブ解析士検定
・IMA検定
・Webアナリスト検定

などがあります。

webデザイン、動画編集などWeb制作系

HPやECサイトの作成は、外部委託して制作する会社も多いのですが、制作や管理を内製化してコストを下げたいという企業も増えています。商品の発売に合わせて専用ページを作成したり、HPを大きく変更したり、さらにメンテナンスも必ず必要になるので、きめ細かい対応が求められます。

また、最近では商品の使い方を動画で紹介したり、広告を動画で作ったり、動画編集のスキルも求められています。

Webデザイン系の資格として
・Webクリエイター能力認定試験
・ウェブデザイン技能検定

などがあります。

動画編集に関しては認定資格のようなものはないようですが、民間講座は多数あるので自分に合った講座を探してみましょう。

語学やコミュニケーションスキル

グローバル化が進む中、リスキリングに英語などの語学を学ぶケースも増えています。海外進出や海外との取引が増え、英語や複数の言語が話せる人材が求められる企業も少なくありません。

英語に関しては、
・TOEIC
・実用英語技能検定(英検)
・IELTS

資格・検定が有名です。

またプレゼン能力の向上や会話による職場でのコミュニケーションスキルの向上を目的として、コミュニケーションについて学ぶ方も増えています。

検定や講座には、
コミュニケーション検定、コミュニケーション能力認定講座

などがあります。

マネジメントスキル

管理職やチームをまとめるためのマネジメントスキルを学ぶ研修や講座をリスキリングとして取り入れる企業も増えています。マネジメントスキルはチームで働くあらゆる場面に必要とされるスキルで多くの分野で応用が効くので、今後も重要視されるスキルでしょう。

また、プロジェクトをどう計画を立てて成功させるか管理するプロジェクトマネジメントも今注目されています。

資格や研修として、ビジネスマネージャー試験プロジェクトマネジメント研修などがあります。

リスキリングを支援する取り組み

リスキリングを支援するために、国や自治体の補助金・助成金制度があります。

東京都のDXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)

対象は、中小企業または個人事業主です。業務分類によって出資金額や常時従業員数の要件が異なりますが、その他都内に本社又は事業所の登記があることなど定められた要件を満たせば、かかった経費の2/3(64万円上限)が助成金として支払われます。受けられるのは、1事業者1回のみです。

今までは東京都が実施していましたが、令和5年4月1日から(公財)東京しごと財団が実施するそうです。

DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業) | 人材育成の支援 | TOKYOはたらくネット

厚生労働省の人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」

厚生労働省の人材開発支援助成金は、職能開発に関して計画を立て、計画に従って研修などの職業訓練をおこなっている事業者を支援する助成金です。そこに、事業展開等リスキリング支援コースが令和4年12月に新設されました。

事業展開等リスキリング支援コースは、

新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成

引用:厚生労働省 人材開発支援助成金ページ

このようなコースです。

要件を満たせば、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成金として支給されます。

企業規模と学習時間によって一人当たりの支給額が異なりますので、詳しくは厚生労働省の人材開発支援助成金に関するページでご確認ください。

個人で申請できる「教育訓練給付制度」

上記2つは企業側が受ける助成金ですが、教育訓練給付金制度は学ぶ側の個人が申請して受け取る給付金です。

教育訓練給付制度とは、

働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。

引用:厚生労働省 教育訓練給付制度

厚生労働大臣の指定を受けた講座などの教育訓練を受けて修了し、要件を満たしている方は費用の一部が給付されます。

詳しい要件などについては、厚生労働省の教育訓練給付金制度のページを参照してください。

まとめ

リスキリングは今後も重要性が高まることが予想されます。リスキリングで成功するための必要なスキルを身につけることができれば、昇進や収入が増えるなどの可能性もあります。

企業にとってもリスキリングによる人材育成は生産性の向上や事業発展に繋がり、競争力を高めるためにも非常に重要です。

学ぶ場所も企業によるリスキル講座だけでなく、一般の大学や放送大学などオンラインでも対面でも受講できる各種講座が国のバックアップを受けて数多く設定されています。

時間や費用の捻出が課題とはなりますが、この記事を参考に、社会人として活躍し続けるための「学び直し」をぜひ検討してみてください。

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