「証券外務員」は、株式や投資信託など、損失のリスクがある商品を販売するための資格です。取得しておけば金融機関の面接に有利に働くため、受験を考えている大学生や社会人の方も多いでしょう。
この記事では、証券外務員試験の受験資格や出題範囲といった概要のほか、合格に必要な勉強時間や対策についてわかりやすく解説します。
証券外務員とは?
まずは、証券外務員とはどのような資格なのか確認しましょう。
証券会社などで金融商品を販売するための資格
証券外務員とは、正確には外務員と呼ばれる資格で、金融商品取引法において金融商品の勧誘などの行為を許された人を指します。外務員以外によるこれらの行為は禁止されているため、金融機関で働く場合はほぼ必須の資格といえるでしょう。
【金融商品取引法第7節外務員 64条「外務員の登録」(一部抜粋】】金融商品取引業者等は、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず……内閣府令で定める場所に備える外務員登録原簿……に登録を受けなければならない。金融商品取引業者等は、前項の規定により当該金融商品取引業者等が登録を受けた者以外の者に外務員の職務……を行わせてはならない。 |
ただし、経理部門など、金融商品の販売に関わらない場合は外務員資格を持っていなくても問題ありません。
一種外務員資格と二種外務員資格の違い
外務員には大きく分けて、正式名称には「一種外務員資格(以下、一種)」と「二種外務員資格(以下、二種)」があり、それぞれ取り扱える金融商品の種類が異なります。
【取り扱える商品の違い】
二種:株式や投資信託などのスタンダードな商品
一種:二種に加え、信用取引や先物などの商品
株式や投資信託のように、自己資金の範囲内で取引する商品は二種でも取り扱えます。ただし、信用取引や先物のように、自己資金の範囲を超えて取引可能な商品の取り扱いには、一種が必要です。
2つの特別会員
証券外務員には、上記の一種・二種以外にも、「特別会員一種外務員資格」・「特別会員二種外務員資格」という資格もあります。
2つの特別会員資格は、銀行や保険会社に勤める人のみが受験可能な資格であり、一般には解放されていないものです。また、特別会員資格は、証券会社で働く際の資格としては認められません。
金融・投資の専門知識を持ち、資産運用や事業戦略などに活かすスキルがあることを証明する資格に、証券アナリストがあります。詳しくは、こちらで紹介しています。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/7381/
証券外務員の試験概要
証券外務員試験の概要を押さえるため、以下4点について確認しましょう。
- 受験資格
- 試験の方法
- 合格ライン
- 受験料
受験資格は設けていないため誰でも受験できる
証券外務員の試験に受験資格は設けられていないため、誰でも受けられます。二種を受けず、直接一種を受けることも可能です。
選択問題だけのコンピューター試験
証券外務員の資格試験は、選択問題(〇×、または五肢選択)のみで構成されています。正解がわからなくても選択肢から回答を選べるため、少なくとも回答欄を埋めることはできるでしょう。
試験は、コンピューター受験システム(CBT:Computer Based Testing)を利用して受けます。試験はほぼ毎日行なわれているため、都合の良い日を選ぶことが可能です。
7割の得点で合格
合格ラインは7割です。問題数が一種・二種で異なりますが、いずれも70%以上得点できれば、証券外務員資格を取得できます。
受験料は約1万円
受験料は一種、二種ともに1万323円*です。クレジットカードや、コンビニエンスストア払いなどで支払えます。。
*価格は2021年12月現在のもの
証券外務員の合格率は6~7割
証券外務員の合格率はおおむね6~7割です。試験内容は難しいものですが、受験者の多くが合格していることから、難関資格というわけではありません。独学でも十分合格を狙えるでしょう。
ちなみに、証券会社に所属する外務員7万4,257人(2021年6月末現在)のうち、そのほとんどを占めるのは一種外務員です。証券会社への就職を考えている場合、一種を取得したほうがよいでしょう。
【証券会社の外務員の数*】
一種:7万2,957人
二種:1,263人
*2021年6月末
証券外務員に独学で合格するための勉強時間は?
証券外務員資格の取得に要する勉強時間は、一般的に二種で50~80時間、一種で80~100時間程度といわれています。
1日2時間の勉強で、二種は約1ヵ月、一種で約1ヵ月半かかる計算です。
もちろん、上記はあくまでも目安で、合格に必要な勉強時間は人によって異なります。証券外務員試験では、経済や金融商品に関する知識が問われるため、これらが苦手な方ほど多くの勉強時間が必要でしょう。また、出題範囲の違いから、一種のほうが勉強時間を要する傾向にあります。
証券外務員の出題範囲
証券外務員試験の出題範囲は広く、大まかに整理すると以下3分野に分かれます。それぞれについて、見ていきましょう。
- 法令や諸規則
- 経済・金融・会計・税務
- 各商品の知識
法令や諸規則
証券外務員試験では、証券会社の業務に関する法令の知識が問われます。「インサイダー取引」などの違法行為を定めた「金融商品取引法」を中心に、以下のようにさまざまな法令に関して出題されます。
証券会社の業務に関連するおもな法令
- 金融商品取引法
- 金融商品販売法
- 消費者契約法
- 個人情報保護法
- マイナンバー法
- 犯罪収益移転防止法
出典:日本証券業協会 シラバス(外務員に求めるべき知識を明確化した文書)
経済・金融・会計・税務
証券外務員試験では経済や金融、また会計や税務の基本的な知識が問われます。財務諸表や証券投資にまつわる税金など、金融のプロとして幅広い知識が求められるでしょう。
経済に関する知識の例
- 「国内総生産(GDP)」
- 消費関連統計、住宅関連統計など
- 世界経済と貿易・資本
各商品の知識
株式や債券、投資信託などの仕組みについての知識も問われます。特に一種の場合、信用取引や先物取引、オプション取引に代表されるデリバティブ取引について把握しておかなければいけません。
株式に関する知識の例
- 株式の上場における証券会社の役割
- 「株価収益率(PER)」や「株価純資産倍率(PBR)」などの株価指標の計算方法
- 取引所売買のほか、店頭取引や累積投資などにおける取引の仕組み
一種に求められるデリバティブ取引に関する知識の例*
- 信用取引における保証金の維持率のルール
- 「国債先物取引」などの特徴と商品性、また決済方法
- オプション取引における「感応度」や「バーティカルベア(ブル)スプレッド」などの基本的なオプション取引戦略
*二種においても一部出題される
証券外務員試験はどう対策する?
上述のとおり、証券外務員は独学で合格を目指せますが、せっかく取り組むならできるだけ効率的に勉強を進めたところです。
ここでは、証券外務員試験に合格するための対策や勉強方法について確認しましょう。
学習計画を立てる
基本的なことですが、まずは学習計画を立てることが大切です。試験はほぼ毎日行なわれているため任意に定め、試験日から学習に充てられる時間を逆算しましょう。
一種・二種ともに7割以上の得点で合格できるため、満点を取る必要はありません。配点が高い科目から取りかかると、効率的です。
過去問題集の反復が効果的
証券外務員試験では、法令や取引ルールなど暗記系の分野が多く出題されます。問題集を活用し、インプット・アウトプットを繰り返して定着を図りましょう。
なお、公式の問題集や過去問題集は販売されていないので、市販のもので対応しましょう。
多くの方が役に立ったと紹介しているテキスト・問題集はこちらです。
一種は信用取引・デリバティブ取引の理解が必要
一種の場合、信用取引やデリバティブ取引に関する出題が多い傾向にあります。専門用語も頻出するほか、数値を変えた計算問題も出るため、仕組みを理解していなければ対応できません。
しかし、信用取引やデリバティブに関しては、取引経験者でもない限りどうしても理解が難しい部分があると思います。独学でも十分合格可能ではありますが、いざというときには、誰かに質問できる環境が望ましいでしょう。すでに証券外務員の資格を取得した方や、経済や金融に精通した方がいれば、積極的に相談することをお勧めします。証券外務員試験の合格をサポートする通信講座を利用することも検討しましょう。
まとめ
証券外務員は、金融商品を取り扱う仕事に欠かせない資格です。この資格がないとリスクのある株式などを販売できません。
証券外務員は、取り扱いが可能な範囲によって一種外務員資格・二種外務員資格と分かれており、外務員の多くが取得している一種の取得を目指すべきでしょう。
証券外務員試験はそう難しくないため、独学で合格を十分狙えます。ただし、難解な範囲もあるため、できれば質問できる環境を用意したいところです。