消防設備士試験に向けた対策とは?勉強時間を効率的に使う方法を解説

国家資格である消防設備士の業務は、建物内に設置されている消防設備に対し、点検から整備まで行なえる「独占業務資格」です。マンションや病院、大型の商業施設などは、消防法によって規模に応じた消防設備の設置が義務付けられています。消防設備を設置した建物がある限り、今後も一定のニーズがあるでしょう。

消防設備士の資格は種類が多く、受験資格が設けられた資格もあります。資格によって難易度も異なるため、それぞれに適した学習計画で試験合格を目指しましょう。

この記事では、消防設備士試験概要や必要な勉強時間勉強方法などについて解説します。資格の取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

消防設備士試験はどのような内容?受験資格や試験科目を解説

消防設備士試験の合格を目指すためには、試験の概要を理解し、適切な対策を講じる必要があります。受験資格試験内容合格率などを解説しますので、試験対策の一つとして参考にしてください。

消防設備士の資格は甲種と乙種に分類されている

消防設備士は甲種乙種に分類されており、それぞれ行なえる業務が異なります。

乙種の資格では、消防設備の点検や整備のみと、行なえる業務内容が限定的です。

甲種の資格を持っている場合は、特殊消防設備である加圧防煙システムの点検や新設工事、改修工事など、消防設備全般の業務を行なえます。

消防設備士の資格は乙種や甲種に分類されているだけでなく、免状の種類によってさらに細分されています。消防設備士の免状は甲種1~5類甲種特類乙種1~7類と、全部で13種類に分類されており、資格の種類によって扱える消防設備の対象は異なります。

そのため、どれか1種類の資格を取得したとしても、すべての業務に携われるわけではありません。自身が担う業務に適した資格を、一つひとつ取得していくとよいでしょう。

消防設備士と同様に火災の予防に関わる国家資格には、防火管理者があります。詳しくはこちらで紹介しています。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/7186/

甲種には受験資格がある

消防設備士試験の乙種には受験資格がなく、学歴や年齢を問わず誰でも受験が可能です。しかし、甲種には受験資格があり、要件を満たしていなければ受験資格を得られません。

甲種1~5類の受験資格は、以下のいずれかに該当すれば受験資格を取得できます。

  • 大学や専門学校、短大の機械や電気などに関連する学科を卒業している
  • 実務経験を有している
  • 電気主任技術者や電気工事士など、特定の国家資格の免状を受けている

甲種特類は、以下のいずれかを満たしている場合は受験資格の取得が可能です。

  • 甲種1~3類のいずれか1つと甲種4類、甲種5類を取得済み
  • 甲種1~3類のいずれか2つと甲種4類、甲種5類を取得済み
  • 甲種全類を取得済み

試験に出題される内容

消防設備士試験は、鑑別や製図を行なう実技試験と、マークシート式4択問題の学科試験で構成されています。実技試験の内容は、写真による消防器具の鑑別や、配線の書き込みなどを行なう内容であり、実際の工事で行なうような作業はありません。

乙種の試験内容は、筆記問題の「消防関係法令」「基礎的知識」「構造・機能・整備」に関する内容と、実技問題の「鑑別」です。

甲種の筆記試験では、「消防関係法令」「基礎的知識」「消防用設備等の構造・機能・工事・整備」が出題され、実技問題では「鑑別」だけでなく「製図」も出題されます。

甲種特類では実技試験はなく、筆記問題で出題されるのは「工事設備対象設備等の構造・機能・工事・設備」「火災及び防火」「消防関係法令」です。

合格基準点や合格率から想定される難易度

消防設備士試験では、乙種と甲種に共通の合格基準が設けられています。

筆記試験の場合は、各科目の正解率が40%以上かつ全体で60%以上実技試験の場合は正解率が60%以上で合格です。

甲種特類は実技試験がないため、筆記試験の各科目で40%以上全体で60%以上の正解率で合格です。

消防設備士試験には「足きり点」が設けられています。全体の正解率が60%を超えていても、40%に達していない科目があれば不合格とみなされるため注意しましょう。

甲種における合格率約30%乙種約36%と、数字のみを見た限りでは低く感じます。しかし、さまざまな資格試験の難易度をランキングした調査によると、消防設備士は偏差値は約45~50程度とされています。しっかりと学習を行なえば合格できる難易度といえるでしょう。

甲種特類においては消防設備のあらゆる分野を網羅する必要があり、合格率は20%台前半と低めですので、注意ください。

資格取得後の講習受講は義務

消防設備は時代の変化にともない日々進化していて、最新の設備に対応できるよう、技能や知識をアップデートする必要があります。消防法施行規則第33条の17の定めに従い、消防設備士の資格を取得したあとも定期的講習を受講しなければなりません。

最初に受講するタイミングは、消防設備士の免状交付を受けた日以降の最初の4月1日から2年以内です。2回目の受講は、初回の受講日以降に迎える最初の4月1日から5年以内で、初回以降は5年ごとに講習を受講する決まりになっています。

消防設備士試験の合格に必要な勉強時間は?

甲種と乙種に分類される消防設備士試験は、試験合格までに要する勉強時間が異なるため、難易度に応じた学習計画が必要です。

ここでは、甲種・乙種の試験合格に必要な勉強時間について解説するので、確保すべき勉強時間を把握し、十分な試験対策を行ないましょう。

甲種の受験勉強には最低でも3ヵ月確保しよう

消防設備士甲種の試験合格に必要な勉強時間は、一般的に120時間程度といわれています。一日に確保できる勉強時間を考慮した場合、約3ヵ月は必要といえるでしょう。

受験者それぞれのライフスタイルや学力は異なるため、実際に要する勉強時間は想定以上になる可能性があることに注意が必要です。勉強時間には限りがあることを考えれば、計画的な学習方法を実践する必要があります。得意分野と苦手分野を理解し、出題傾向と照らし合わせた学習を行なうことによって、効率的な学習が可能です。

受験資格からも読み取れるように、甲種を取得するにはある程度の予備知識が求められるため、まず問題集を解いて自分の知識レベルを確認してみましょう。

乙種の試験は2ヵ月前から準備が必要

乙種の試験勉強に要する時間は、一般的に60~70時間程度といわれており、一日に確保できる勉強時間を考慮した場合、約2ヵ月は必要と考えてよいでしょう。

資格の種類によって難易度や合格率は異なるため、必要な勉強時間にも違いがあります。例えば、比較的需要が高い乙種4類の合格率は32.4%(平成30年度)、必要な勉強時間は初めて学ぶ人で80時間程度といわれています。需要の高さで並ぶ乙種6類の合格率は約38%、必要といわれている勉強時間は初めて学ぶ人で70時間程度です。

受験資格が必要な甲種とは異なり、乙種を取得する場合は初めて学ぶ人もいるでしょう。取得する資格の難易度や合格率を事前に確認し、余裕を持った学習計画を立てる必要があります。

消防設備士試験に向けた勉強方法とは?

消防設備士試験に合格するには、計画的な学習計画だけでなく、自身のライフスタイルに適した勉強方法が効果的です。利用する可能性が高い勉強方法として、独学専門学校eラーニングなどの動画教材が挙げられます。

それぞれのメリットやデメリットに理解を深め、自身に適した勉強方法は何なのかを見出しましょう。

参考書を活用した独学

参考書を活用して勉強をする場合、自身の学習レベルに適したテキストを選ぶことができるため、学習コストの大幅な削減が可能です。自宅で学習できることから、環境に左右されず、自身のライフスタイルに合わせた学習が可能になることもメリットでしょう。

試験までのスケジューリングが難しく、効率的な学習計画を立てるのが困難な点はデメリットです。わからない項目があったとしても、講師などの助言を受けられません。疑問点を早い段階で解消できず、想定以上の時間を費やしてしまう危険性があることに注意してください。

専門学校で集中的に学習

専門学校の特徴は、すでに学習の組立が仕上がっており、合格にフォーカスした学習を行なえることです。仕事との両立で学習計画を立てるのが難しい人でも、効率的な試験対策を行なえるのがメリットといえるでしょう。

専門学校のなかには、通信教育を行なっている学校もあるため、ライフスタイルに合わせた勉強方法を選べます。講師がいることで、わからないことを放置せず、着実な知識の定着にも期待できるでしょう。

一方で、独学よりも費用がかかるというデメリットがあります。また、資料請求や教材の試し読みで全容を把握するのは難しく、受講しなければサポート内容や教材を実際に確認することができません。受講先を決める際は、できる限り多くの情報を収集するとよいでしょう。

eラーニングなどで隙間時間を有効活用

eラーニングのような動画教材は、インターネット環境が整っていればいつでも利用できるため、移動中や仕事の合間を利用して学習できるメリットがあります。教材によってはDVDに対応している講座もあり、通信環境に左右されず安定的な学習が可能です。

隙間時間による継続的な勉強が習慣化すれば、無理のないインプットが実現するでしょう。コンテンツを簡単に再確認できるため、十分に理解を深めつつ、自身のタイミングで次の段階へ進めることが可能です。

他の受講生との交流が少なく、モチベーションの維持や向上が難しい可能性もあります。質問回数に制限が設けられている講座が多いため、専門学校のような手厚いサポートは期待できません。視聴計画を自身で組むことを理解し、納得したうえで受講する必要があるでしょう。

消防設備士試験合格に向けた対策を実践!

前項では勉強方法について理解を深めましたが、ここではさらに具体的な試験対策について解説します。実際に出題される試験科目を参考に、段階的な学習計画を解説しますので、試験対策の一つとしてぜひ参考にしてください。

乙種の試験対策は筆記試験を中心に

乙種の学習は、まず「消防関係法令」に必要な専門用語を覚えるのが効果的です。先に専門用語を習得すれば、他科目の勉強もスムーズに進められるため、効率的な試験対策につながります。

専門用語を覚えたあとは、法則や公式など「基礎的知識」における重要な要素を強化し、そのあとに「構造・機能・整備」の対策を行なうのが定番です。消防設備士の試験では、非常によく似た専門用語が出現しますが、それぞれの意味は異なります。しっかりと区別できるように対策しておきましょう。

「製図」対策に力を入れたい甲種試験

甲種に関しても、乙種と同様に「消防関係法令」の分野から対策を行ない、次に「基礎的知識」「構造・機能・整備・工事」を強化するのが効果的です。消防関係法令は、得点しやすい分野といわれているため、知識を確実に定着させる対策を行ない試験に臨みましょう。

甲種の試験には「製図」があり、乙種よりも難易度が高くなります。製図では解答用紙に配線を書き込む作業などがあり、知識を暗記する以外の対策が必要です。現場で使用されているような設計図面を完成させなければならず、理解を深めるまでに時間を要します。製図には最低でも1~2ヵ月以上の勉強時間を確保し、余裕を持った試験対策を行ないましょう。

消防設備士の対策講習を活用する

消防設備士試験の合格率は平均して約35%であり、資格取得が簡単でないことは想像に難くありません。このような結果を改善すべく、消防設備に関連する団体などでは、受験者を対象とした対策講習会を実施しています。

甲種のみを対象とした講習会や、類別に設けられた共通科目を強化する講習会など、講習内容はさまざまです。受講料や使用するテキスト代、定員数においても講習会によって異なるため、事前にしっかり確認しましょう。

講習会自体の受講資格などは特段定められておらず、消防設備士試験の受験資格を満たしている必要もありません。しかし、初めて消防設備関係の学習を行なう人に対しては、事前に最低限の学習を推奨している場合もあるため、申し込みの際はしっかり確認しておきましょう。

対策講習に参加することで、自身の苦手分野や強化すべき対策に理解を深められる場合があります。受講は義務ではありませんが、合格する可能性を高めるためにも、参加を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

消防設備士試験の合格を目指すためには、甲種乙種それぞれに必要な勉強時間を考慮し、効率的な学習計画を立てる必要があります。資格の種類によって扱える対象設備は異なるため、自身の業務に適した資格に理解を深めることも重要といえるでしょう。

資格取得後においては、消防設備の進化にともない、技能や知識のアップデートが必要です。資格取得後の講習が義務化されていることから、非常に重要な役割を担う資格であることがわかります。資格取得がゴールではなく、常に最新の設備に対応できる消防設備のスペシャリストとして、日々技術や知識に磨きをかけてください。

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