社内ミーティング、取引先との商談、プレゼンテーションなど、仕事のあらゆる場面で、内容がしっかりと伝わる上手な話し方・伝え方が求められます。
- 「企画をより良くするために正論を伝えたら、チーム内がぎくしゃくしてしまった。」
- 「質問に丁寧に答えたかったのに、結論に至る前に会話が終了してしまった。」
- 「同じ内容を話しているはずなのに、先輩のほうが聞きやすいのはなぜだろう。」
このような話し方・伝え方の悩みや疑問はありませんか。
この記事では、自分の主張や意見を正確に伝えるための話す内容を組み立てる方法や技術、話すトーンや聞き方をよくするためのコツ、話し方を学ぶための講座などについて紹介します。
話す内容の組み立て方
話す内容を組み立てる方法を、スピーチやプレゼンテーション、企画会議、商談の3つの場面に分けて、例文とともに紹介します。
スピーチやプレゼンテーション
仕事ができる人を「論機的な思考ができる」「あの人の話し方は論理的だね」などと評することがよくありますが、スピーチやプレゼンテーションなど、大きな会場で大人数を相手にした場合は、論理的に話すことが強く求められます。
論理的に話すためによく用いられるのが、ピラミッドストラクチャーです。ピラミッドストラクチャーとは、アメリカのコンサルティング会社である、マッキンゼー・アンド・カンパニーで活用されている有名なチャートです。3つの階層で構成され、頂点にあたるのが「結論・主張」で、その下に「理由・根拠」、「詳細・事実」と続きます。
ピラミッドストラクチャーを使うと、伝えたい内容が明確化して説得力が増し、相手により強く訴えることができるといわれています。
ビジネスチャットのAをわが社に導入すべきと提案します。(結論・主張)
第一に、Aは他のサービスに比べて使いやすいです。(理由・根拠①)
なぜなら、チャンネルの設定がしやすく、プロジェクトごとに連絡を取りやすいからです。(詳細・事実①-1)
さらに、充実した検索機能で、過去のプロジェクトを参考にしやすいからです。(詳細・事実①-2)
第二に、Aは費用を安く抑えることができます。(理由・根拠②)
なぜなら、使用人数が増えるほど一人当たりの料金が安くなる仕組みのため、社内外のメンバーが全員使用すれば、結果として出費を抑えられます。(詳細・事実②-1)
また他と違い、事務手数料のような使用料金以外の料金が一切かかりません。(詳細・事実②-2)
企画会議
チームメンバーで開催する企画会議では、自分より立場が上である上司や先輩の意見に反対しなくてはならないこともあります。より良い企画を立てるためには、正しいと思うことを伝えることが必要です。しかし、良好な人間関係を維持するためには、正論であっても細やかな配慮をしながら伝えることが大切になります。
このようなときに役に立つのが、CER話法です。CER話法とは、箱田忠昭氏がその著書で提唱した、上司のように反対意見や反論を伝えにくい立場の人に対しても、関係を悪くすることなく意見や主張を伝える方法です。
CER話法は、以下の3つの単語の頭文字から名づけられました。
「C」Cushion
相手が自分に対して持つ反対の意見を受け止めて、和らげる。
「E」Example
自分の意見に合った、具体例や成功事例などの事実を伝える。
「R」Reason
相手が自分の意見を聞く姿勢になったことが確認できたら、相手のニーズを意識しながら、自分の意見の理由を伝える。
- C 「Bのほうが費用がかからないのではと思われるのも、当然だと思います。」
- E 「しかし、Aは使用人数が増えるほど、一人当たりの料金が安くなる仕組みです。」
- R 「社内外のメンバーが全員がAを使用すれば、結果として出費を抑えられます。」
商談
商談ではこちらから伝える内容だけでなく、相手の反応への答え方も重要です。
商談でよく用いられる応酬話法とは、顧客に対する効果的な切り返しや答え方をまとめたものです。セールストーク、営業トーク、販売トークなどともよばれています。
応酬話法の中でも、特に有名な5つを紹介します。
ブーメラン法
マイナスをプラスに、ネガティブをポジティブに、デメリットをメリットに変換してアピールします。
- 相手 「ビジネスチャットはスマホでやりとりするから、年長者は面倒がって連絡しないよ」
- 自分 「スマホだからこそ、いつでもメッセージを読んだり、一言だけすぐに答えたりできます」
YES BUT法、YES AND法
どちらも、こちらへの反対意見を相手が言ったら、それをまずは受け止めます。
YES BUT法は、受け止めたのちに、反論してこちらの意見を伝える方法です。YES AND法では、否定せずにこちらの意見をつなげながら、話を進めます。
YES AND法は、YES BUT法よりも柔らかく前向きな印象を相手に伝えることができますが、より強く意見をアピールするにはYES BUT法のほうが向いているでしょう。
YES BUT法
- 相手 「同じビジネスチャットのBの方が、見積金額が安いんだよね」
- 自分 「確かに、社内だけならBの方が費用を抑えられるかもしれません。
- しかしAは、使用人数が増えるほど、一人当たりの料金が安くなる仕組みで、社内外のメンバーが全員使用すれば総額を抑えることができます。」
YES AND法
- 相手 「同じビジネスチャットのBの方が、見積金額が安いんだよね」
- 自分 「確かに、社内だけならBの方が費用を抑えられるかもしれません。
- 一方で、Bの料金体系では社内外のメンバーも使用した場合には、Aより高くなることが予想されます」
質問法
こちらから質問をして、相手の答えから要望やニーズを探り出して提案に活用する方法です。
- 自分 「どうしてビジネスチャットに消極的な方が多いのでしょうか」
- 相手 「役員や幹部など年長者にスマホを使いこなせと言ったら、反対するに決まってるよ」
- 「今使っているチャットは無料だし、特に問題があるとは思えないんだよ」
例話法
例え話をすることで、商品やサービスを使用するイメージを相手に想像させる方法です。
- 自分
「ビジネスチャットのAを導入すれば、今より業務がスムーズになり、残業代削減が期待できます。さらに、仕事の質を向上させることで取引先からの評判が高くなり、新たな受注を獲得して売り上げの向上も可能になるでしょう。」
声やトーン
近年、ビジネスシーンで声やトーンが注目を集めています。
コミュニケーションをとるときは、言語で伝わるものが最も重要視されると思いがちですが、実は非言語の情報も大きな影響を与えています。
アメリカの心理学者であるメラビアンが実験をして導き出したメラビアンの法則によると、相手から矛盾した情報を得たとき、最も優先される情報が表情や視線、しぐさなどの「視覚」で55%、次が声の大きさ、スピード、口調など「聴覚」で38%、最も影響が小さいのが「言語」で7%とされています。この法則により、言語コミュニケーションよりも、視覚と聴覚による非言語コミュニケーションが優先されるといわれています。
自分のメッセージを正しく伝えるためには、言語コミュニケーションと見た目や声のトーンなど非言語コミュニケーションを一致させることが大切です。
ボイストレーニングというと、プロの歌手が上手に歌うために専門講師に指導を受けるイメージが強いですが、話す力の向上のためにボイストレーニングに挑戦する人も増えています。
採用業務を担当して6年目のレイチェルさんが、プレゼンテーションにおけるボイストレーニングの重要性を教えてくれています。
話す力、伝える力をアップさせるためのボイストレーニングの教室は対面だけでなく、オンラインでも開催されています。
書籍でも、魅力的な話し方を身につけるための声の使いかたを学ぶことができます。こちらの本では、自分本来の声の良さを生かした自然な話し方を、元NHKアナウンサーが教えてくれます。
相手の話の聞き方
昔から「話し上手は聞き上手」と広くいわれています。会話を弾ませるためには、まず相手の話をよく聞くことが大切という点に異論はないでしょう。相手に気持ちよく話してもらうためには、より良い聞き方を工夫する必要があります。
視線・姿勢
話を聞くときには相手と目を合わせることが大切です。しかし、ずっと相手の目を見続けなくても大丈夫です。相手の目以外に、眉間、まゆ下やまぶたのあたり、鼻先や首元などを見ましょう。
自分の体の向きを、話している相手の方向にしっかりと向けます。腕組み、ほおづえ、貧乏ゆすりなどは絶対にやめましょう。
表情・態度
話す相手に共感していることが表情から読みとれれば、相手は安心できるでしょう。無理に表情をつくるのも不自然になりますが、難しい表情を続けていると相手はリラックスして話せなくなるかもしれません。表情を緩めることにも気を配りましょう。
うなずいたり、あいづちを入れたりする場合は、相手の立場や年齢を考慮して、失礼な印象を与えないように注意しましょう。「なるほど!!」「そうですねー」といった表現を好まない人も少なくありません。
メモをとることは、相手の話を真剣に聞いているアピールにもなります。
質問をする
質問は、クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンの2つに分けられます。場面に応じて使い分けることができれば、話をより深められるでしょう。
クローズドクエスチョン
はい・いいえで回答できる質問です。
仕事を進める上で確認が必要な事柄は、クローズドクエスチョンをつかいましょう。話を長引かせたくないときには有効ですが、会話を広げるには向いていません。
オープンクエスチョン
答えが一つに限定されていない、自由に回答できる質問です。
相手の考えを聞き出すことができます。相手の回答が予想できる場合でも、相手に話しやすい雰囲気をつくったり、会話の幅を広げたりする効果があります。お互いの理解を深めて、より良い関係を構築するために活用しましょう。
人の話にじっくり耳を傾けて聴く力のことである傾聴力については、こちらで紹介しています。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/4615/
話し方を学ぶには
話すスキルや能力のための講座や検定を利用すれば、ビジネスに生かせる話し方・伝え方を効率的に学ぶことができます。
日本語話し方検定
話し方の技能を高めて、ビジネスやプライベートに役立てたい方のための検定です。レベルは4級から1級までに分かれています。1級に合格して規定のカリキュラムを修了すると、「日本語話し方インストラクター」として話し方スクールを開校することができます。受験料は4級が5,000円、3級が7,700円、2級が10,000円、1級が15,000円です。
話力検定
学生、社会人や日本で働く外国人を対象に、その場にふさわしい適切な言葉を選択するスキルと、的確な話し方ができるスキルがあることを証明する検定です。レベルは3級、2級、1級に分かれています。検定に先駆けて、検定説明会とプチ検定対策講座を実施しています。受験料は3級が7,700円、2級が9,900円、1級が15,400円です。
http://waryokukentei.jp/
話し方・伝え方スペシャリスト
コミュニケーションを円滑に行うための、話すことや伝えることの知識やスキルがあることを証明する資格です。認定講座であるキャリカレの「伝わる! 話し方・伝え方実践講座」で学習したのちに受験して合格すると、話し方・伝え方スペシャリスト資格が得られます。受験料は5,600円、認定講座の学習期間の目安は3か月間で料金は39,600円です。
https://www.jadp-society.or.jp/course/communicate/
https://www.c-c-j.com/course/status/speaking/
まとめ
社会の変化にともなって、私たちが仕事を行う環境は今後も大きく変わり続けると思われます。また、対面だけでなく、オンライン上でのコミュニケーションも増えて、会話をする環境も変化しています。
働く環境、仕事の内容や話す場面が変化しても、より良い仕事をおこなうための話し方・伝え方が重要であることは今後も変わることはないでしょう。よりスムーズに仕事を進めるために、あなたも話し方・伝え方を学んでみませんか。