日本庭園の美しさは世界各地で知られています。きれいに整えられた庭園を見ていると、心が和みますね。そんな、美しい庭を生み出すプロフェッショナルが造園技能士です。ここでは、造園技能士の仕事内容や資格試験の概要、難易度、勉強方法などを紹介していきます。
造園技能士とは
日本庭園を始め、公共施設や一般住宅など、日本には至るところに庭が存在します。このような庭を造るには高度な技術が必要。そんな造園に対して一定の技術をもつことを証明する資格のひとつが「造園技能士」です。造園技能士は技能検定であり、現在、造園技能士として活躍する人は全国で12万人ほどいるとされています。
造園技能士の仕事
造園技能士の多くは造園会社に勤務し仕事をしています。造園というと狭いフィールドのように感じられるかもしれませんが、造園技能士の仕事は多岐にわたります。一般家庭の庭の手入れや造園を始め、公共施設の緑化整備、公園や街路樹の管理、商業施設の緑化整備なども造園技能士の仕事。美しい景観を保つためには、5年後、10年後の樹木の成長を加味しながら手入れを行わなければならず、その的確な判断や技術をもった技術者が必要とされているのです。
また、技術だけでなく、体力も求められるのが造園の仕事。樹木を運んだり植えたりもするので力仕事も多く、外にいることが好きな人や体を動かすことが好きな人には向いている仕事と言えるでしょう。
ポートランドやポーランド、アルゼンチンなど、海外にも以前から日本庭園は存在し、人気の観光施設となっています。日本国内はもちろん、海外でも日本風の庭園を造園する施設の需要はあるかと思われます。造園技能士の活躍の場は海外にも広まっていくかもしれません。
造園技能士と造園施行管理技士の違い
造園に関わる資格には、造園技能士のほかに「造園施行管理技士」があります。造園技能士が実際の造園に関する技術レベルを証明する資格であるのに対し、造園施行管理士は、造園に関する設計や施行計画、資材の調達、品質管理など、いわゆる監督者としての技能を証明する資格となっています。造園に関わる資格ということで混同されがちですが、造園技能士は技術者、造園施行管理士は監督者と、職業上での役割は明確に分けられています。
造園技能士検定試験の詳細
造園技能士は、各都道府県知事によって実施される技能検定試験に合格することで名乗ることができます。試験問題の作成は、厚生労働省が定めた計画に基づき、中央職業能力開発協会によって行われます。
造園技能士の検定試験には3級、2級、1級があり、2級と1級はすでに造園業に携わっている人を主な対象としています。一方、3級は、造園について初学で学ぶ人や、造園について学んではいるけれども造園業に就いたことはないという人の受験が多く見られます。ここでは、造園技能士3級を中心に、試験の概要を解説します。
受験資格
造園技能士試験の1級、2級は受験資格として実務経験が必須(1級は7年以上、2級は2年以上)となっていますが、3級は実務経験不問。そのため、まったく造園に携わったことがないという初学者は3級からの受験となります。
実は3級も、もともとは6か月以上の実務経験が設けられていました。そのため、造園技能士は造園業に携わる人が技術の証明のために取る資格とされていましたが、2013年4月より、6か月の実務経験がなくても受験可能となり、現在は、農業大学や工業大学、専門学校などで造園を学ぶ学生が主に3級受験者となっています。
試験日程・試験会場
試験は年に2回実施され、それぞれ「前期試験」「後期試験」と呼ばれます。各試験でさらに「実技試験」と「学科試験」で日程が分かれます。
<前期試験>
・実技試験…例年6月~9月頃
・学科試験…例年7月~9月頃
<後期試験>
・実技試験…例年12月~2月頃
・学科試験…例年1月~2月頃
日程はおおむね上記のとおりですが、細かい日程や申し込み期間、そのほか最新の情報は厚生労働省や中央職業能力開発協会の公式ページに掲載されるので必ず確認しましょう。
https://waza.mhlw.go.jp/shikennittei-naiyou/nittei.html
https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/giken_nittei.html
会場は各都道府県の職業能力開発協会等になりますので、受験可能か確かめておきましょう。
https://www.javada.or.jp/kyoukai/itiran.html
試験内容
上記で解説したとおり、試験には実技試験と学科試験があります。ここでは、3級の試験内容について詳しく紹介します。
<実技試験>
・造園工事作業(地割り、庭木等の選定、造園工事の施工、玉掛け)
<学科試験>
- 庭園及び公園(庭園及び公園の種類・構成及び特徴、庭園及び公園の主要施設の種類及び特徴)
- 施工法(造園工事に使用する機械及び器工具の種類及び使用方法、造園の工法、庭園及び公園の管理方法、玉掛けの方法、造園工事の附帯工事の種類及び施工方法)
- 材料(造園工事に使用する材料の種類・性質及び用途)
- 設計図書(造園の設計図の種類)
- 関係法規(都市公園法関係法令・自然公園法関係法令及び建設業法関係法令のうち、造園工事に関する部分)
- 安全衛生(安全衛生に係わる詳細な知識)
学科は真偽法及び四肢択一法のマークシート方式となります。
2級、1級も大枠の科目は3級と同様ですが、学科試験では、2級と1級のみ、上記科目に加え「測量」の科目が追加されています。
合格基準は、実技・学科ともに100点満点中60点以上(2級、1級の学科は65点以上)。実技・学科ともに合格基準を満たさなければ合格できません。ただ、実技のみ、もしくは学科のみ合格といった場合は、合格した日から5年間、合格した科目の試験が免除になる免除制度を利用することができます。
試験の難易度・合格率
造園技能士試験3級の合格率は70%程度。技能検定試験の中でも難易度は低めと言えるでしょう。造園を学ぶ学生ではほとんどが合格しているとの情報もあります。とはいえ、学科試験と実技試験の両方に合格する必要がありますから、暗記すれば合格できる試験ではないということも心得ておく必要があります。
試験合格後の進路
難易度の項でも解説したとおり、造園技能士3級は難易度が低め。そのため、3級に合格したからといって造園技能士へのキャリア形成が有利になるとは限りません。3級は、造園会社への就職や2級、1級と進むための足掛かりとして受験する人がほとんどでしょう。
造園技能士としてキャリアを積みたいのであれば、3級合格後、造園の実務経験を積み、2級、1級と上位級を取得していくのがおすすめです。2級は合格率40%程度、1級では25%程度と少し難しくなります。1級所持者ともなれば対外的にも認められ、独立も可能になります。
造園技能士試験に合格するには
資格試験の学習方法は、大きく「独学」と「学校・講座での学習」に分けられます。造園技能士試験では、どのような勉強方法が合格への近道となるのでしょうか。
独学
前述したとおり、造園技能士3級の受験者は造園を学ぶ学生が主となっており、造園初学者が独学でチャレンジするケースは比較的少ないようです。実際に、販売されている3級のテキストは少なく、また、学習時間の目安もはっきりとした情報はありません。
ただ、中央職業能力開発協会から過去の問題集も販売されています。過去問を利用ししっかり対策を行えば、独学での合格も不可能ではないでしょう。また、各地方の造園協会などでは実技を学べる講習会を設けているところもあります。お住まいの地域の造園協会に問い合わせてみてもよいでしょう。
中央職業能力開発協会で販売する問題集はこちらから購入できます。
http://excell001.shop23.makeshop.jp/shopbrand/ct5/
通信・通学講座・学校
もともと造園を学んでいる学生が受験することが多いということもあってか、造園技能士3級の通信講座や通学講座は、大手のユーキャンやLECなどでも設けられていないようです。
独学でなく、講座や学校で学んで受験したい場合は、造園・園芸関連の専攻がある大学や専門学校で学ぶ形になりますが、各地方の職業能力開発センターで造園技能士の資格取得を目指せるコースを設けているところもあります。一定期間の職業訓練を受ければ、実務経験なしで2級から受験することも可能となり、就職への近道となります。
まとめ
造園技能士3級はまだ駆け出しといったところですが、2級、1級と難易度の高い上位級に進んでいけば、造園業において大きな実力の証明となります。最終的には、いわゆる庭師として独立することも可能。造園業での高いキャリアを目指して、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。