大学生に聞いた就職人気企業ランキングでは多くの総合商社が上位にランキングされ、貿易に関わる仕事は根強い人気があります。また、貿易事務も事務職の中では人気が高い仕事です。
そんな、貿易の仕事につきたい方にお勧めしたいのが、貿易実務検定®です。この記事では貿易実務検定®の内容と、合格するための勉強法を紹介します。
貿易実務検定®とは
貿易実務検定®は、貿易実務の能力・知識を客観的に測ることができる検定です。貿易の自由化が進み、貿易実務のエキスパートが必要とされたことを背景に、貿易実務を体系的に理解している証明として1998年に誕生しました。
貿易実務には、輸出業務と輸入業務の2つがあります。特有の専門用語、貿易関連の法律や輸出入取引の流れに関する知識が必要です。インボイスやパッキングリストなど専用書類の作成スキルも必須となりますが、これらの書類はほとんどが英語によるものです。コレポン業務と呼ばれる電話やメールによる海外とのやり取りも英語の場合が多いので、高い英語力が求められます。
貿易実務の主な仕事には、貿易書類の作成、出荷・輸送・通関等の手配、出荷・納入管理などがあります。貿易実務が行われているメーカー、商社、船会社・航空貨物代理店、フォワーダー(通関業者・海貨業者)の中には、社員の能力のレベルアップのために貿易実務検定®の合格を昇給や昇格のための条件にしたり、受験料を補助したりする企業もあります。
貿易実務検定®に合格すれば貿易実務の専門能力と知識があることの証となるので、貿易業界への就職や転職に役立ちます。さらに未経験から貿易事務の仕事に挑戦したい場合には、貿易実務検定®の合格は大きな武器になるでしょう。
また、貿易について学ぶ大学や短大、専門学校でも貿易実務検定®の受験を勧めています。そのため貿易実務検定®の受験生には実際に貿易実務に携わる人に加えて、多くの学生も受験しています。
通関士との違い
貿易に関わる資格には、通関士が有名です。
通関士は貿易に関する唯一の国家資格です。通関士は貿易の中でも最も複雑な業務とされている通関業務の専門家であり、「通関書類の審査」「通関書類への記名・捺印」の2つの独占業務もあります。これに対して貿易実務検定®は日本貿易実務検定協会®による民間資格で、貿易実務全般を対象としていますので、通関業務も勉強します。
通関士試験は貿易実務検定®よりも難易度が高いので、貿易の資格に挑戦するなら貿易実務検定®から始めることをお勧めします。貿易実務検定®で学んだことは、通関士試験の受験勉強にも役立ちます。
貿易業界の中でも、特に通関業務で働きたい場合には通関士の資格を取得しましょう。また、通関業務を目指す場合ではなくても、貿易実務検定®と合わせて通関士試験に合格すればより高いスキルをアピールすることができます。
検定内容
受験資格とレベル
貿易実務検定®には、年齢、学歴、実務経験などによる受験資格の制限は一切ありません。
レベルはA級、B級、C級の3つに分かれています。
A級は、3~4年以上の実務経験があり、貿易実務において判断業務を行なえる方を想定しています。合格すれば貿易実務に関するアドバイスや指導も自信をもっておこなうことができるでしょう。
B級とC級は1~3年以上の実務経験のある方を対象にしています。貿易実務を学ぶ学生や働き始めたばかりの方は、基礎固めとしてC級から挑戦しましょう。B級は貿易実務をおこなう中堅層向けです。
受験料は2024年5月現在でA級・12,760円、B級・7,480円、C級・6,270円です(全て税込み)。A級とB級、B級とC級を併願することもできます。
日時・場所
A級は年に1回、B級は年3回、C級は年に5回実施されています。
試験会場は東京、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡、沖縄の9か所でしたが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響により、現在はWeb試験が行われています。
Web試験はインターネットに接続できれば全国どこからでも、自分の用意したディバイスを使って受験できる試験です。
試験内容
科目は大きく分けて「貿易実務」「貿易マーケティング」「貿易実務英語」の3つに分かれています。
貿易実務
- 貿易と環境
- 貿易経済知識
- 貿易の流れ
- 貿易金融
- 貿易書類
- 貿易法務(A級のみ)
- 貿易税務
- 通関知識
- 貿易保険
- 外国為替
- 航空貨物
- クレーム(A級・B級のみ)
- マーケティング知識(C級のみ)
貿易マーケティング(A級・B級のみ)
貿易実務英語
- 商業英単語
- 英文解釈
- 英作文(A級のみ)
A級は選択式と記述式、B級とC級は選択式で出題されます。
以下のサイトでは、各級の出題例と回答が紹介されています。
https://www.boujitsu.com/introduction/questionstrend
また、2024年12月以降のA級・B級の試験範囲に「B級のEPAに関する実務知識・事例」が加わります。具体的出題範囲については今後発表される予定なので、必ず確認しましょう。
合格基準と合格率
合格点は各科目の合計した総得点で設定されています。B級はおよそ70%、C級はおよそ80%の得点が必要です。
合格率はA級は30~40%程度、B級は60%程度、C級は70%程度です。
貿易実務検定®の詳細は、こちらでご確認ください。
貿易実務検定®に合格するには
独学
貿易実務検定®の合格を目指す受験勉強は、独学でも可能です。
A級に合格したガンベンさんが、貿易実務検定®の難しさの理由を教えてくれています。
貿易実務検定A級の勉強が何が難しいかと言うと、とても幅が広いことだと思います。
https://ameblo.jp/gangbenzhouye/entry-12633779163.html
貿易の知識で言うと、輸出入の法令及び実務、貨物の取り扱い、IATA、コンテナ、貨物海上保険、L/C、等々、覚えることが多いです。
A級は最も科目が多いですが、B級、C級も科目数は大きくは変わりません。貿易実務検定®の試験範囲の広いので、もれなく全ての科目を勉強できるように計画的に受験勉強を進めましょう。
特に貿易実務は過去問と同じパターンの問題が多く出題されるので、過去問を繰り返し丁寧に解くことが大切です。過去問を何度も解くと、正解できるコツのようなものがつかめるでしょう。
過去問の問題集は、貿易実務検定®を主催する日本貿易実務検定協会®から販売されています。テキスト・問題集の販売の他に、通信講座も行われています。
試験対策 (日本貿易実務検定協会)
スクール・通信講座
貿易実務検定®の受験勉強をサポートしてくれるスクールや通信講座は、たのまな、TAC、クレアールなどがあります。受験する級により異なりますが、期間は3か月程度で、費用は約25,000円~60,000円のものが多いです。
ハロートレーニングの公共職業訓練の対象になっているスクールで、貿易実務検定®について学べる場合があります。ハロートレーニングの公共職業訓練とは、学費が無料で学ぶことができる制度です(テキスト代など実費のみ自己負担)。詳細は、最寄りのハローワークへお問い合わせください。
対象になる学校がお近くにあるかは、ハローワークインターネットサービスで調べられます。通いたい地域を選んだら「詳しい検索条件を開く」をクリックして、フリーワードに貿易実務検定と入れて検索してください。
まとめ
日本の貿易は今までもリーマンショックなど国内外の動向によりダメージを受けることはありましたが、日本の輸出入の貿易総額は年々増えて、約40年間でおよそ4.4倍になりました。日本の貿易構造や貿易相手国は変化を続けており、それに合わせて貿易実務にもより高い専門知識とスキルが求められると考えられます。
貿易を担うエキスパートを目指して、貿易実務検定®に挑戦してみませんか。