就職・転職活動をする場合、資格やスキルを持っていることは大きなポイントになります。「資格を取って就職活動をしたい」「未経験の分野の仕事に挑戦してみたい」と思う方におすすめなのが、知識や実践的なスキルを身につけられる「ハロートレーニング」。
ハロートレーニングは公的職業訓練の愛称で、離職者訓練・求職者訓練の場合は受講料無料で受けられます。さらに、条件を満たせば給付金を受給しながら訓練を受けられるので、求職中の方は知らないと損する施策と言えるでしょう。
この記事ではハロートレーニングの概要と、離職者訓練・求職者訓練について解説します。
ハロートレーニングとは
ハロートレーニングとは、厚生労働省が行っている公的職業訓練の愛称で、希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを習得することができる公的制度です。
ハロートレーニングは、主に雇用保険受給者を対象とする「公共職業訓練」と、主に雇用保険を受給できない方を対象とする「求職者支援訓練」に大きく分かれます。
さらに、公共職業訓練は4種類の訓練に分かれており、対象者や受講料、受講期間が異なります。
この記事では離職者訓練と求職者訓練について詳しく説明していきます。
ハロートレーニング(離職者訓練・求職者訓練)の特徴
身につけられる知識やスキルが豊富
職業訓練では、下記のような知識やスキルを身につけることが可能です。
- 基礎:ビジネスマナー、Word、Excel、PowerPointなど
- IT:プログラミング、コーディングスキル、アプリケーション開発技術
- 営業・販売・事務:簿記、登録販売者、宅地建物取引者
- 医療事務:医療・介護事務、調剤事務
- 介護福祉:介護職員初任者研修、介護職員実務者研修
- デザイン:Illustrator、Photoshop、建築デザイン、空間デザイン、塗装
- 電気設備技術:第二種電気工事士、第一種電気工事士、消防設備士
非正規雇用から正社員を目指す方、子育てが一段落し正社員を目指す方には、希望する業界・業種の知識とスキルが必要。
自分に合った訓練を選ぶためには、それぞれの内容をしっかりと吟味することが大切です。
訓練は年に何度か募集期間が設定されており、ラインナップが変わります。訓練内容は最寄りのハローワークにあるチラシや、ホームページ、ハローワークのインターネットサービスで確認しましょう。
託児サービス付きの訓練がある
託児が無料で利用できる託児サービス付きの訓練もあります。「小さい子どもがいて預け先がないから職業訓練は無理」という方でも、託児サービス付きの訓練であれば問題ありません。出産や育児を理由にスキルアップや希望業界・職種への就職を諦めていた方にもぜひ利用していただきたいサービスです。
ただし、託児サービスを利用するには訓練ごとに要件があるので、ハローワークの窓口職員に確認をしてください。
就職率が高い
訓練終了後の3ヵ月後の就職率は高く、約50~85%で推移しています。
<離職者訓練>
施設内 | 委託 | |||||
合計 | 機構 | 都道府県 | 合計 | 機構 | 都道府県 | |
令和元年度 | 84.2% | 85.5% | 80.5% | 72.3% | – | 72.3% |
令和2年度 | 83.7% | 84.7% | 80.8% | 71.3% | – | 71.3% |
令和3年度 | 86.1% | 87.4% | 82.5% | 73.0% | 47.9% | 73.1% |
令和4年度 | 86.7% | 87.9% | 83.2% | 74.6% | 44.9% | 74.6% |
出典:離職者訓練の就職率実績推移
<求職者支援訓練>
基礎コース | 実践コース | |
令和元年度 | 56.5% | 62.4% |
令和2年度 | 52.5% | 60.0% |
令和3年度 | 53.9% | 60.0% |
令和4年度 | 57.1% | 59.0% |
訓練を受講したからといって、確実に就職できるわけではありません。しかし、就職するという目標を掲げている方にとっては「職業訓練を受ければ自分も就職できるかも」という希望になるでしょう。熱心に訓練に取り組めば、早期就職も不可能ではありません。
離職者訓練
離職者訓練は主に雇用保険を受給できる求職者の方向けの、テキスト代以外無料で受講できる職業訓練です。
参考:厚生労働省 ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)
ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)の全体像
厚生労働省 雇用保険に関する業務取扱要領(令和6年2月1日以降)
要件と対象者
- ハローワークに求職の申込みをしていること
- 雇用保険受給資格者であること
- 労働の意思と能力があること
具体的には、会社を辞めて求職中の方などが対象となります。
ただし、2回目以降の職業訓練を受けるには、前回の訓練修了日または退校日から1年以上経過している必要があります。
給付金
離職者訓練の受講中、それぞれの支給要件を満たせば、雇用保険失業等給付のうち4つの手当を受給できます。
- 基本手当:離職前の賃金に応じて支給額が異なります
- 受講手当:日額500円(上限2万円)
- 通所手当:上限42,500円
- 寄宿手当:月額10,700円(該当者のみ)
訓練受講中に基本手当、いわゆる失業保険や失業手当が終了してしまう場合、訓練終了までの間の失業している日まで最長2年間延長されます(訓練延長給付)。たとえば、基本手当が90日支給される人が、30日分の基本手当を受給したあとに、90日の職業訓練を受講したとします。本来であれば残りの60日分しか受け取れない基本手当が、訓練が終了するまでの30日分追加で受け取れるということです。もちろん、訓練受講中に就職が決まった場合などは基本手当の支給が終了となり、延長給付も適用外となります。
ただし、訓練延長給付を受けるには条件があり、おおよそ1/3程度の給付期間が残っている必要があります。つまり、基本手当が終了間際になり、まだ受給したいがために職業訓練を受講しても、給付は延長されないということです。詳しくは窓口の職員に確認しましょう。
訓練種類と期間
離職者訓練では、現場系の技術を習得するコースや事務職向けのコースなど種類が豊富です。
- 工場管理技術科
- 生産設備メンテナンス科
- 電気設備技術科
- 自動車整備科
- ICT エンジニア科
- 介護サービス科
- OA 事務科 など
訓練期間は主に3ヵ月程度のものが多いですが、なかには2年のものも。
訓練は国のポリテクセンターや都道府県の職業能力開発校、民間の教育訓練機関等で行われます。
座学だけでなく実際の企業での実習がある訓練もあり、訓練期間が「実務経験」とみなされることがあります。そのため、企業への応募条件として「○○の実務経験1年以上」というような実務経験が必須の求人でも応募できる可能性があります。
具体的な職業訓練の内容はハローワークのインターネットサービスで確認しましょう。
求職者支援訓練
求職者支援訓練は主に雇用保険を受給できない求職者の方向けの、テキスト代以外無料で受講できる職業訓練です。
参考:厚生労働省 ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)
ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)の全体像
厚生労働省 雇用保険に関する業務取扱要領(令和6年2月1日以降)
要件と対象者
- ハローワークに求職の申込みをしていること
- 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
- 労働の意思と能力があること
- 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めた場合
2回目以降の職業訓練を受けるには、前回の訓練修了日または退校日から1年以上経過している必要があります。
なお、ハローワークが必要性を認め、「基礎コースから実践コース」または「基礎コースから公共職業訓練」の組み合わせであれば連続受講が可能です。
具体的には、
- 雇用保険の適用がなかった離職者の方
- 雇用保険の受給が終了した方
- フリーランスの方
- 自営業の方
- 主婦の方
- 就職が決まらないまま学校を卒業した方
- これまで仕事をされていなかった方
などのうち、ハローワークに認められた就職を希望する方です。
現在働いているかどうかは問われません。たとえば、フリーランスで働きながら、正社員への転職を目指す方でも訓練は受講可能です。
給付金
求職者支援訓練を受講している方のうち、支給要件を満たすと受給できる職業訓練受講給付金があります。給付金は下記の3種類の手当の総称です。
- 職業訓練受講手当:月額10万円
- 通所手当:上限42,500円
- 寄宿手当:月額10,700円(該当者のみ)
支給要件を満たしていれば月10万円を受け取りながら訓練を受講できるので、生活費や就職活動費の心配をせずに集中してスキルや知識を身につけられます。
月10万円の手当の支給要件を収入面で満たせない方でも、通所手当のみ受給できる可能性があるので、関係ないと思わずに条件を確認してみましょう。
職業訓練受講給付金について詳しく知りたい方はこちら
https://college.coeteco.jp/blog/archives/779/
訓練の種類と期間
訓練のレベルに応じて大きく2種類のコースに分けられています。
- 基礎コース:社会人としての基礎的能力を習得したり、短期間で習得できる職業スキルを学んだりする訓練。主にビジネスで使うパソコン技術習得(Word・Excel・PowerPointなど)簿記、ビジネスマナーの講座です。
- 実践コース:基礎的な職業スキルに加えて、就職希望職種の実践的能力まで一括して習得する訓練。介護福祉サービス、ソフトウェアプログラマー養成、医療・調剤事務など様々な講座があります。
どちらのコースも訓練期間は2~6ヵ月です。
あくまでも就職を目的とした訓練なので資格の受験は任意になりますが、資格関連知識を訓練で習得できます。就職活動のアピールもしやすくなるので、資格を取得しておいて損はないでしょう。
ハロートレーニング(離職者訓練・求職者訓練)を受講するまでの流れ
- ハローワークで求職の申し込みと職業相談を行う
- 訓練の受講申し込みをする
- 面接や筆記試験等を受験する
- 合格後、受講のあっせんを受ける
- 受講開始
- 月1回の指定日にハローワークに行き、職業相談と給付金の申請を行う
求職の申し込みや職業相談、訓練の申し込みなどの手続きは、原則として住所を管轄するハローワークで行います。募集枠に対して応募が多いものは選考もあり、それなりに準備とやる気が必要です。
求職者支援訓練では、原則、訓練のない日に指定来所日が設定されます。しかし、公共職業訓練では、指定来所日が訓練日にあたる場合もあります。この場合はハローワークへの来所が優先され、訓練はやむを得ない理由として欠席が認められます。
まとめ
誰にでもすぐにできる仕事であれば、非正規雇用ですぐに収入を得ることが可能です。しかし、少し立ち止まって資格やスキルを身につけておけば、収入のアップや正社員雇用が見込めるなど、より大きな財産になるかもしれません。
ハロートレーニングは将来に向けて新しいスキルを身に着けたい人にとっては、非常にメリットの大きい施策と言えるでしょう。就職したい業界や職種がある方は、どんな職業訓練が行われているのか検索してみてはいかがでしょうか?