「キャリアコンサルタント」や「キャリアカウンセラー」という職業を、最近ではハローワークや企業での採用相談窓口、大学のリカレント教育など様々な場面で耳にするようになりました。
キャリア相談自体は資格がなくても行うことが可能ですが、国家資格の「キャリアコンサルタント」や民間資格もあり、受験資格に必要な要件等が異なります。
そこでこの記事では、キャリア相談とは何なのかという基本的な解説をはじめ、キャリア相談に関する代表的な資格として、キャリアコンサルタントやCDA認定、GCDF資格について解説します。
また、キャリア相談の有資格者がどのようなフィールドで活躍できるかについても紹介しますので、キャリア相談関連の資格取得に興味のある方は、ぜひご参考にしてください。
キャリア相談とは?
就職や転職など仕事に関する話題の中では、「キャリア」という言葉をよく耳にするでしょう。一般的には経験や経歴のことを指しますが、厚生労働省では次のように定義しています。
「キャリア」とは、過去から将来の長期にわたる職務経験やこれにともなう計画的な能力開発の連鎖を指すものです。「職業生涯」や「職務経歴」などと訳されます。
引用:キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント|厚生労働省
こうした前提のもと、働く人一人ひとりが職業能力を形成していくことが「キャリア形成」であり、それを支援するのが「キャリア相談」です。
キャリア相談とは、就職や転職などを考えている相談者から悩みを聞いたうえで、相談者一人ひとりがうまくキャリア形成できるようにサポートすることを目的としています。
では、キャリア相談ではどのような相談が多いのか、以下に例を挙げましょう。
- 自分にはどのような仕事が向いているかわからない
- 今の仕事は自分にあっているのだろうか
- 転職するには何から始めれば良いのか教えてほしい
- 希望する仕事に就くにはどのようなスキルが必要なのか知りたい
- 出産や育児でキャリアにブランクができるのが不安
- 仕事を続けながら介護や育児の両立ができるか不安
こうした相談者をサポートするのが、キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーなどと呼ばれる方たちです。
また、キャリア相談の場面では、厚生労働省が様式を定め普及を進めている「ジョブ・カード」というものが活用されています。
ジョブ・カードを活用することで、相談者の経歴や価値観、強みなどの情報を共有できるため、キャリア支援に役立つと考えられています。
国家資格キャリアコンサルタントとはどのような資格?
キャリア相談に関連する資格のなかで、国家資格であるのが「キャリアコンサルタント」です。ここでは、キャリアコンサルタントがどのような資格なのか、国家試験の概要と併せて解説します。
キャリアコンサルタントとは
キャリアコンサルタントとは、職業能力開発促進法に基づき2016年4月より国家資格と定められています。
登録制の名称独占資格となっているため、キャリアコンサルタントでない人が「キャリアコンサルタント」と名乗ったり、それと紛らわしい名称を名乗ったりすることはできません。
キャリアコンサルタントの役割は、職業の選択や職業能力の開発などさまざまな相談に応じ、適切な助言や指導を行い、相談者のキャリア形成をサポートすることです。
相談を受けるなかで、個人情報や相談内容などプライベートな情報を知りうる立場にあるため、キャリアコンサルタントには守秘義務および信用失墜行為の禁止義務が課されていることも知っておきましょう。
さらに、最新の知識や技術を身に付ける必要があるため、キャリアコンサルタントは5年ごとに更新が必要です。
受験資格
キャリアコンサルタント国家試験を受けるには、次に示す3つの要件のうち、いずれか一つを満たしている必要があります。
- 厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した方。
- 労働者の職業の選択や職業生活設計など、いわゆるキャリア形成に関する相談に関し3年以上の経験を有する方。
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験または実技試験に合格した方。
詳しくは、厚生労働省のHP「キャリアコンサルタント試験の受験資格」の項を参考にしてください。
また、キャリアコンサルタントの上位資格として、キャリアコンサルティング技能士1級・2級も存在します。
こちらの資格については国家検定キャリアコンサルティング技能検定を受検する必要があります。
ここで紹介しているキャリアコンサルタントとは異なる受検資格が設けられていますので注意しましょう。
試験内容
試験は厚生労働大臣が登録した機関が実施し、学科試験と実技試験があります。実施機関は特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会と特定非営利活動法人日本キャリア開発協会(JCDA)の2機関です。
試験は年3回行われます。学科試験と実技試験(論述および面接)に分けて行われ、それぞれ個別での受験が可能となっています。
学科試験は四肢択一のマークシート方式で、試験時間は100分。合格基準は100点満点で70点以上の得点が必要です。
実技論述試験は記述式で、試験時間は50分。実技面接試験はロールプレイと口頭試問で試験時間は20分。合格基準は150点満点で90点以上の得点が必要です。
ただし、論述と面接の各分野の配点における満たすべき得点は、各実施機関で異なるため、実施機関の基準を確認してください。
キャリアコンサルタント試験の公式ウェブサイトでは、3回分の過去問題が公開されています。
キャリアコンサルタント試験過去問題・学習情報|キャリアコンサルティング協議会
キャリアコンサルタントの資格取得を目指している方は、受験資格を満たしているか確認してください。働きながら資格取得を目指す場合、厚生労働省が認定する講習を受けるのが一般的です。
キャリアコンサルタントについて、こちらで詳しく紹介しています。
(取材)国家資格キャリアコンサルタントとは|多様化する労働環境と人生100年時代のキャリア設計
代表的な民間のキャリア相談資格
キャリア相談関連の資格試験は、民間でも行われています。ここでは、代表的な民間のキャリア相談資格を2つ紹介します。
CDA資格
日本キャリア開発協会(以下、JCDA)が認定しているキャリアカウンセラー資格に、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格というものがあります。
この資格の認定には、以下の前提条件があります。
前提条件
- JCDAが認定するCDA養成カリキュラムを修了し、かつ、国家資格キャリアコンサルタント資格試験の学科試験および実技試験に合格した方。
- 上記1.以外の条件でキャリアコンサルタント国家資格を取得された方や、キャリアコンサルティング技能検定(1級、2級)に合格された方。または、平成28年(2016年)3月以前に標準レベルキャリア・コンサルタント資格を取得しJCDAにキャリア会員として登録されている方であり、JCDAが指定する講座を受講された方。
CDA認定条件
上記前提条件の1.または2.のどちらかの前提条件を満たし、「CDA会員」としてJCDAに入会すると「CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)」を名乗れます。
詳しいCDA認定条件については、JCDAのCDA公式サイト「CDA認定条件(詳細)」の項を参考にしてください。
参考:CDA資格について
GCDF資格
GCDF資格とは「Global Career Development Facilitator」の略で、日本をはじめ北米、ヨーロッパ、アジアなど、世界14地域(2024年4月現在)で採用されているグローバル資格です。
日本では2001年にGCDF-Japan資格が誕生し、特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会(CCA)が窓口となっています。
2024年4月1日からは、GCDF-Japan資格者が指定要件を満たすことで、GCDF-US資格を取得できるようになり、さらなる活躍が期待されます。
資格認定条件
GCDF-Japan資格の取得のためには、米国CCE, Inc.による審査を受ける必要があり、試験の合格等が認定審査申請の条件となります。この審査を通過することでGCDF-Japanキャリアカウンセラーとしての認定を受けることができます。
以下、資格認定審査の3つの条件です。
- GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムの終了
- 試験合格(学科・実技の両方)※CCA実力診断プログラム(ベーシック)、キャリアコンサルタント試験(国家資格)、キャリアコンサルティング技能検定(国家資格)のいずれか、合格科目を組み合わせての申請も可能。下記の図1を参照のこと。
- キャリア実務における必要経験年数の到達
代表的な民間の資格として、CDAとGCDFを紹介しましたが、いずれも前提条件を満たしていないと受験できない、あるいは資格認定されないなどの条件があります。
どの資格を目指すのかが決まったら、どのようにして前提条件をクリアするのか、しっかりと考えて対策を立てるといいでしょう。
参考:GCDF資格試験について
キャリア相談で活躍できるフィールド
キャリア関連の資格を取得したら、どのようなところで働けるのか、活躍できる職場はあるのかなどが気になる方も多いでしょう。
そこで、ここではキャリア関連の資格を取得したあとに活躍できるフィールドについて、いくつか紹介します。
人材派遣・紹介会社
人材派遣や紹介会社では、働く人を求めている企業と仕事を探している求職者のマッチングを行なうのが仕事です。
求職者にはどのような能力があるのか、どのようなキャリア形成を希望しているのかなどについてカウンセリングを行なったうえで、その人の強みや弱みを把握します。
それと同時に、企業側のニーズに合う求職者を探し、合う人材がいれば紹介します。おもな対象者は20代~40代の転職希望者であることが多いです。
一般的には紹介カウンセラー、派遣コーディネーターなどと呼ばれています。
企業の人事部など
人材派遣や紹介会社以外の企業においてキャリア相談関連の仕事をするには、人事部に所属して働くのが一般的です。
仕事内容としては社員のキャリアに関する課題や、メンタル面でのサポートをすることがおもなものとなります。
そのため、キャリアコンサルタントとしての役割よりも、カウンセラー(産業カウンセラー)としての役割が大きくなるといえるでしょう。
一般的にはキャリアカウンセラーと呼ばれることが多く、社員研修の企画を立てたり、実施したりすることもあります。また、人事採用に携わることもあります。
ハローワークなど公的就業支援機関
キャリア相談関連の資格を持つ方は、ハローワークやジョブカフェ、高齢者就職支援センターなどの行政機関で働く場合もあります。
ハローワークには就職・転職希望者が訪れるため、希望職種や勤務条件などのヒアリングをし、求人情報のなかから相談者の希望に合う仕事を紹介するのがおもな仕事です。
ほかには、知識や技術を身に付けるための訓練制度を相談者に紹介することもあります。
また、行政機関の場合は対象者の幅が広く、就職困難者といわれる高齢者や障害を持つ人などの相談にのる機会も多くなると思われます。
大学など教育機関
高校や大学・大学院、専門学校などの進路相談室や就職課で働くキャリアコンサルタントもいます。
教育機関におけるキャリア相談としては、学生の進学や就職などを中心とした進路相談がおもな仕事です。
対象者が学生であるため、一人ひとりの可能性を信じることや、自分らしく生きていけるようにサポートすることが求められます。
ほかには、働くことを含めた生き方や、キャリア教育に関する授業もしくはセミナーを開催したり、資料を作成したりという仕事も含まれることがあるでしょう。
就職カウンセラーや相談員と呼ばれることが多く、面接指導や応募書類作成支援なども含まれます。
独立・開業
キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーが独立する場合、さまざまな研修やセミナーでトレーナーを務めたり、企業と契約して社員のキャリアカウンセリングを行なったりすることが多いようです。
キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーとして知名度が高くなれば、キャリア形成やライフプランなどの講演やセミナーを行なうことも可能です。
ただし、資格取得後すぐにフリーランスとして独立するのは難しく、初めは企業や行政機関および教育機関などに所属する方が大半です。
そこでキャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーの経験を積んだのち、独立するほうがよいでしょう。
キャリア関連の資格を活かせる職場は、一般企業から行政機関、フリーランスまで幅広く存在します。資格取得後の進路を考えるうえで、ぜひご参考にしてください。
まとめ
キャリア相談に関する資格には、国家資格と民間資格があります。今回は国家資格として「キャリアコンサルタント」を、民間資格として「CDA資格認定」と「GCDF資格」を紹介しました。
それぞれの資格について受験資格や資格取得の要件が異なりますが、学科・筆記試験と実技・面接試験の合格をはじめ、キャリアに関する実務経験などが条件になってきます。
キャリア相談関連の有資格者が活躍できる場は広く、人材派遣・紹介会社をはじめ、企業の人事部、公的就業支援機関、教育機関など多岐にわたります。
どこに所属して経験を積むかという点については、自分がどのような分野に進みたいかによって変わるため、しっかり考えて決めましょう。