危険物取扱者の試験対策!仕事内容や取得メリット・試験概要もご紹介

消防法で定められている危険物を取り扱うには、「危険物取扱者資格」が必要です。資格を取得すれば就職や転職に有利になったり、収入が上がったりすることも考えられます。危険物取扱者は国家試験に合格しないと取得できませんが、どのような対策をとるべきかわからない方もいるでしょう。

この記事では、危険物取扱者試験の効果的な対策について解説します。資格を取得することでできる仕事内容や取得のメリットについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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危険物取扱者資格とは?

「危険物取扱者資格」と一言で表しても複数種類があるため、どれを受験すべきか迷う方もいるでしょう。そこで、危険物取扱者の資格の種類・特徴と、そのなかで最も人気なものの内容について簡単に説明します。

危険物取扱者資格は大きく分けて3種類

危険物取扱者とは、爆発や火災などを引き起こす可能性がある危険物を取り扱ったり、取り扱いの立会いをしたりする人のことです。これらの業務に携わる方は、危険物取扱者資格を保有する必要があります。

危険物取扱者資格は甲種、乙種、丙種の3種類に分けられます。

甲種すべての種類の危険物
乙種第1類  酸化性固体
第2類  可燃性固体
第3類  自然発火性物質及び禁水性物質
第4類  引火性液体
第5類  自己反応性物質
第6類  酸化性液体
丙種引火性液体

甲種は、消防法で定められているすべての危険物の取り扱いが認められる資格です。そのほか、保安監督や定期点検、立会い業務をすることもできます。3種類のなかで、最も高位な資格のため、大学で必要科目を履修したり、乙種の資格を複数持っていたりしなければ受験できません。

乙種は、第1類から第6類までの危険物を、個別に資格取得するものです。第1類だけ、第2類だけといったように必要な資格のみ受験・取得できます。取得した分類に関しては取り扱いが認められ、保安監督や定期点検、立ち合い業務も可能です。また、受験資格がなく、誰でも取得することができます

丙種は、特定の危険物のみを取り扱える資格です。例えばガソリン・灯油・軽油や重油などが扱えます。しかし、保安監督や定期点検、立会い業務などはできません。

危険物取扱者として実際に仕事を行うには、試験合格後に申請して都道府県知事から免状の交付を受けなくてはなりません。取得後は10年に1度写真の更新が必要です。また、人によっては保安講習を受講しなければなりません

危険物取扱者資格で最も人気なのは乙種第4類

このようにさまざまな種類がある危険物取扱者資格ですが、人気なのは「危険物乙4」や「乙4」とも呼ばれる「乙種第4類危険物取扱者」です。乙種は年間で約25~30万人の受験者がいますが、その約8割の約20~24万人は危険物乙4の受験者となっています。

消防法で定められた乙種第4類危険物は、ガソリンやアルコール類などの引火性液体を指します。他の種類に比べて身近な危険物のため、資格を取得しておくとさまざまな場面で重宝されるでしょう。

実際、危険物取扱者資格のなかでも、乙種第4類保持者に対する求人は圧倒的に多い傾向があります。どの資格を取るべきか迷う場合は、危険物乙4から取得するのがおすすめです。

危険物乙4を取得するメリット

危険物乙4を取得すると、いくつかメリットが得られます。ここからは、具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。

就職に有利になる

危険物乙4は危険物取扱者のなかでも身近な危険物を扱える資格です。乙種第4類に該当する危険物を扱う就職先は多くあるため、就職に有利になります。実際に危険物乙4の資格保持者向けに出される求人も多くありますよ。

また、危険物取扱者といえばガソリンスタンドでの仕事をイメージする人が多いですが、現在は製造業、建築業、運輸業など、活躍可能な職種が増えています。少しでも有利に就職したい方は、取得しておくのがおすすめです。

正社員登用の可能性が広がる

危険物乙4を取得していると、資格取得者にしか任せられない重要なポジションや業務を任せられることもあります。場合によっては取得をきっかけとして正社員に登用される可能性もあるでしょう。

もちろん職種にもよりますが、例えば石油会社や化学系メーカー、ガソリンスタンドなどでアルバイトやパートをしていた場合は、そのまま正社員になれる確率が上がります。

収入が上がる

ガソリンスタンドや自動車整備工場、設備管理など危険物を扱う可能性のある仕事に従事している場合、危険物乙4を取得すれば、収入がアップする可能性があります。

ガソリンスタンドなら、時給50~100円程度の収入アップが見込めるでしょう。設備管理やビルメンテナンスでは月3,000円~2万円程度、自動車整備工場では月3,000円~1万5,000円程度の収入アップが見込めます。現状これらの職種で正社員として働いているなら、昇格にも影響する資格です。

他の職種でも、資格取得により業務の幅が広がったり、重要なポジションを任せられたりすれば、その分収入が上がる可能性があるため、資格を取得する価値はあるでしょう。

危険物乙4の資格を活かせる仕事

続いて、危険物乙4の資格が活かせる仕事を紹介します。

ガソリンスタンド

危険物取扱者といえば、ガソリンスタンドでの仕事を想像する人も多いでしょう。ガソリンスタンドで扱う商品は、危険物乙種第4類にあてはまるものばかりです。そのため、正社員になるには危険物乙4の資格が必要なところも多く見られます。最近はセルフのガソリンスタンドも増えてきたため、危険物乙4の資格は不要と感じる方もいるかもしれません。

しかし、セルフの場合、危険物取扱者の資格保有者が常駐しなければ営業できない決まりになっており、営業には資格保有者が必要です。そのため、以前よりも危険物乙4の資格を持った人材の価値は高まっています。

化学系メーカー

化学系メーカーは、化学反応を利用しながら製品を作る仕事をしています。石油などの危険物を利用する場面もあるため、危険物乙4を持っていると重宝されます。資格を取得しておけば、就職・転職で有利になるので、もし化学系メーカーで働きたいと考えている方は、取得しておくべきです。

石油会社

石油は、消防法で定める第4類危険物にあたります。石油会社ではおもに石油の輸入、生成、生産、販売などを手掛けるなど、業務のほとんどで石油を取り扱います。

そのため、石油をはじめとした引火性液体の取り扱いができる危険物乙4の資格があると、石油を貯蔵・管理する構内作業が可能となり、重宝される人材になれるでしょう。就職・転職で有利に働くだけでなく、職責が増したりできる仕事が増えたりすることにより収入アップも見込めます。

ビル管理・メンテナンス会社

ビルの管理・メンテナンスでは、エレベーターが通常に動くか、空調に問題ないかなど、さまざまな設備点検を行います。なかでもボイラー設備や非常電源設備の点検は、危険物取扱者の資格がなければできないため、ビル管理・メンテナンス会社では、危険物取扱者資格を持っている人材を常に求めています。

タンクローリーの運転手

引火性液体を各種工場に運ぶタンクローリーの運転手も、危険物乙4の資格が必要です。運転だけなら大型自動車免許があれば可能ですが、ガソリンを運ぶとなると危険がともなうため、危険物取扱者の資格がなければ運転手として働けません。

タンクローリーのドライバーは専門職でもあるため、収入が安定します。転職・就職先として考えているのなら、危険物乙4を取得しておくのがおすすめです。

危険物乙4の試験概要

ここからは、危険物乙4の試験概要について解説します。試験地や受験料、試験内容などについて詳しく説明するので、試験を受ける予定がある方、受けようかどうか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

試験会場・試験日程

危険物乙4の試験は、各都道府県で最低年2回実施されています。居住地や勤務地の都道府県でなくても受験可能です。

ただし、日程や試験会場は各都道府県によって異なるため、事前に確認してください。日程や試験会場は、公式サイトで確認できます。

申込方法と受験料

危険物乙4の受験を希望する場合は「書面申請」または「電子申請」で申し込みます。書類申請の場合、受験地のセンターや支部から願書を取り寄せ、必要事項を記入するとともに、試験手数料支払証明書を貼付して、受付期間内に受験地のセンターや支部へ持参、もしくは郵送します。

危険物乙4なら受験願書と、受験料の振込受付証明書を準備し、「第4類以外の乙種危険物取扱者免状」や「火薬類免状」がある場合はコピーを一緒に提出してください。試験の一部免除が受けられます。

電子申請を希望する場合は、消防試験研究センターの電子申請ページで申し込めます。スマートフォンでの申請も可とされていますが、公式で動作確認されているOS、ブラウザは限られており、携帯電話会社の提供するメールアドレスやフリーメールアドレスでは各種通知メールを受信できない場合もあるため、気をつけてください。

危険物取扱者の受験料は種によって異なり、危険物乙4の受験料は4,600円です。

危険物取扱者の種類受験料
甲種6,600円
乙種 第1類~第6類4,600円
丙種3,700円
(2023年7月現在)

また、合格すると免状の作成のために別途2,900円と簡易書留代が必要です。

試験内容

危険物乙4の試験科目は「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び基礎的な化学」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」の3科目です。出題形式は五肢択一形式のマークシート方式で35問、試験時間は2時間となっています。なお、試験開始から35分経過すると途中退出が可能です。

科目(略称)問題数合格ライン試験時間
危険物に関する法令(法令)15問9問2時間
基礎的な物理学及び基礎的な化学(物化)10問6問
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(性消)10問6問
合計35問21問

なお、乙種は1~6類までありますが、どれか1つの類でも取得していると「危険物に関する法令(法令)」と「基礎的な物理学及び基礎的な化学(物化)」の試験が免除になります。つまり「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」の10問だけを解けば良いのです。試験時間も2時間から、たった35分に短縮されます

試験科目免除問題数試験時間
法令全部免除0問35分
物化全部免除0問
性消10問
出典:消防試験研究センター 危険物取扱者試験 試験科目及び問題数

合格基準と合格率

合格基準は、各試験科目の正答率がすべて60%以上であることです。免除を受けた科目を除き、どれか1つでも60%に満たないものがあれば不合格になるため、バランス良く勉強しなければなりません。

気になる合格率は毎年30~40%程度です。

年度合格率
令和4年度31.5%
令和3年度36.1%
令和2年度38.6%
令和元年度38.6%
平成30年度39.0%
出典:一般社団法人 消防試験研究センター 試験実施状況

合格率が低いため、試験の難易度が高いと思われがちですが、しっかり対策をとれば合格の可能性はあるでしょう。

ちなみに、他の乙種の合格率は70%前後となっています。危険物乙4だけ低い理由は、先ほど説明した試験科目の免除制度と受験人数にあります。

危険物取扱者の試験の中では最初に危険物乙4を受験する人が多いです。危険物乙4を取得後、必要があれば他の乙種の試験を免除制度を利用して受験します。他の乙種の試験は免除制度を利用すれば、1科目の勉強に注力できますが、最初に受験する危険物乙4は3科目の勉強をしなければなりません。

また、危険物乙4の受験者は年間約20~24万人に対し、他の乙種の受験者はそれぞれ約1万人です。受験者が多くなればなるほど、個人の学習意欲や勉強量に差が生じ、不合格者が増えます。

この2つの理由から、危険物乙4の合格率が他の乙種に比べて低くなっているのです。

危険物乙4対策!合格するのに効果的な勉強方法

ここからは、危険物乙4の試験対策として有効な方法を紹介します。

早めに勉強を始める

受験勉強は早めに始めることをおすすめします。危険物乙4の場合、合格するのに40~60時間は勉強が必要です。ただし、これはあくまで目安なので、勉強が苦手な方であれば、より多くの時間が必要になるでしょう。

また、社会人をはじめとした忙しい方々は、勉強時間を捻出するのも大変です。早めに対策を取りはじめれば、一日あたりの勉強時間を減らせます。仮に3ヵ月前から取り組んだ場合、1日2時間勉強をすれば60時間に到達可能!1日に無理なく勉強できる時間がどれくらいなのかを見極め、試験日から逆算してスケジュールを立てましょう。

物理と化学から勉強する

危険物取扱者の試験勉強の際には、先に物理と化学から取り組むのがおすすめです。なぜならこの2科目は、計算問題や複合問題が多いため、基礎が固まっていないと解けないからです。特に専攻が理系でなかった方は難しいと感じやすいため、この2科目から取り組むとよいでしょう。

危険物乙4で出題される物理・化学の基礎は、小中学校の理科の内容です。小中学校の教科書は、子供でも理解しやすいようにできているため、こちらを見直すところから勉強しはじめるのもおすすめです。見直し後、危険物乙4の専門テキスト・問題集に取り組むと理解が進みやすくなります。

また、特に重点的に勉強すべき項目は「燃焼と消火に関する基礎知識」です。多く出題されやすい傾向にあるので、しっかり対策しておきましょう。

危険物の特徴は暗記する

危険物取扱者乙種第4類の試験では、他の種別の危険物についての問題が必ず出されます。危険物取扱者試験用のテキストには、工夫された暗記方法が記載されていることが多いので、そちらを参考にしながら覚えるとよいでしょう。語呂合わせなどをうまく活用すると定着しやすいですよ。

また、「指定数量」については、特にしっかり覚えておいてください。第4類の指定数量は、計算が必要なものが出題されやすいので、対策しておいて損はありません。

法令は最後に勉強する

法令については、物理や化学、他種別の危険物の暗記などをひととおり勉強してから行うとよいでしょう。法令問題は暗記がメインだったり、他の内容との関連性がなかったりするため、覚えられない傾向にあります。そのため、最後の仕上げとして取り組むのがおすすめです。

他の科目よりも出題数が多いので、しっかり暗記して臨みましょう。すべてを暗記するのは大変なので、最低限、頻出問題だけは押さえておいてください。

過去問を繰り返し解く

危険物に限った話ではありませんが、試験対策として過去問を解くのは有効です。危険物取扱者の試験は年に何度も行われています。そのため、毎回まったく違った問題を作成するのは難しく、似通った問題が出やすい傾向があります。過去問を繰り返し解くうちに、出題傾向が見えてくるでしょう。

危険物取扱者の過去問は、一般財団法人消防試験研究センターのサイトから確認できるので、こちらを活用してみてください。

「これだけじゃ足りない!」という方は、たくさん過去問集も売られているので、購入してもいいかもしれません。おすすめはこちらです!

参考書や予想問題集を購入する

危険物取扱者乙種第4類は人気の資格で、毎回受験者が多いことから、さまざまな参考書や問題集が販売されています。書店などで一度手に取って中身をチェックし、最も取り組みやすいと思うものを選びましょう。

選ぶ際は、「最新の改訂が加えられているか」、「実際の試験での出題傾向を意識しているか」をチェックしてください。何冊も購入せず、1冊に絞って繰り返し解くことが大切です。おすすめの参考書はこちらです。

最近では、YouTubeにも危険物乙4に関する講習動画がアップされているので、節約して勉強したい!という人はそちらを探してみてもよいでしょう。

模擬試験に挑戦する

勉強した内容がどれだけ定着したか確かめるには、模擬試験に挑戦するのが有効です。模擬試験に挑戦すれば、実際の試験の雰囲気をつかめます。

おすすめは「危険物取扱者試験過去問題集[乙四]」「過去問ドットコム」の2つのサイトです。特に、「過去問ドットコム」は無料会員登録をすると学習履歴の保存ができ、間違えた問題だけを出題可能なのでとても便利!模擬試験だけでなく、過去問や予想問題もあるので重宝するサイトです。

まとめ

危険物取扱者の資格があれば、職種によっては就職が有利になったり、収入が上がったりする可能性があります。また、ガソリンスタンド勤務のように、危険物乙4の資格保有者の価値が高まっている仕事もあります。

危険物取扱者のなかでもメジャーとされる危険物乙4は、年齢や学歴に関係なく受験可能です。

合格率は低いですが、計画的に勉強すれば合格の可能性はあります。この記事で紹介した対策方法を参考にしながら、試験勉強に取り組んでみてください。

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