柔道整復師とはどのような仕事か、ご存知でしょうか。
柔道整復師は、骨折や脱臼の整復固定が必要な患者に対して処置を行なったり、捻挫・打撲・挫傷などの怪我に対して応急処置を行なったりする職業です。
医師以外でこうした処置を許されている日本で唯一の医療系国家資格が、柔道整復師です。
柔道整復師を目指している人のなかには、国家試験の内容や試験対策などが気になる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、柔道整復師を目指す初学者を対象に、柔道整復師国家試験の概要と合格率・難易度をはじめ、国家試験合格のための勉強方法や対策などを紹介します。
柔道整復師国家試験とは?合格率からわかる難易度は?
柔道整復師国家試験とは、どのように行なわれているのでしょうか。合格率や難易度と併せて解説します。
柔道整復師国家試験の概要
試験日程
年1回実施
試験会場
北海道・宮城県・東京都・石川県・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県および沖縄県
受験資格
大学に入学することのできる者であって、3年以上文部科学大臣が指定した学校*または都道府県知事が指定した養成施設*で知識および技能を修得した者(指定日までに修業した者または卒業する見込みの者を含む)
*学校・養成施設とは、柔道整復師養成施設として厚生労働省が認定した3年制以上の専門学校、および文部科学省が認定した柔道整復学科のある大学や3年以上の短期大学を指します。
試験科目
解剖学、生理学、運動学、病理学概論、衛生学・公衆衛生学、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテーション医学、柔道整復理論および関係法規
なお、視覚・聴覚・音声機能または言語機能に障害がある場合、障害の状態に応じて試験に関して必要な配慮がされることがあります。
例:視力にハンディのある者には、点字試験や試験時間延長の配慮があるなど
柔道整復師国家試験の合格率と難易度
柔道整復師国家試験の合格基準は、必修問題の全30問で8割、および一般問題の全200問で6割を得点することです。
必修問題と一般問題、双方の合格基準を満たしていなければ、合格にはなりません。
では、直近3年間の合格率はどれくらいなのでしょうか。
【直近3年間の合格率:%】
全体 | 新卒 | 既卒 | |
第27回(平成30年度) | 65.8 | 86.1 | 26.3 |
第28回(令和元年度) | 64.5 | 84.8 | 16.5 |
第29回(令和2年度) | 66.0 | 85.6 | 21.6 |
全体では約65%となっていますが、新卒と既卒で比較すると新卒が約85%であるのに対し、既卒は約16~26%と低くなっています。
この結果を見ると、卒業後に働きながら合格を目指すのは難しいものの、新卒で受験するのであれば比較的合格しやすいといえそうです。
ここで紹介したとおり、毎年1回実施される柔道整復師国家試験を受けるには、指定された養成施設で知識と技術を修得することが前提となっています。
試験科目も、医療系資格として必要な専門知識が求められるものであるため、決して簡単に覚えられるものではないでしょう。
しかし、直近の合格率を見てもわかるように、新卒であれば比較的合格しやすい試験でもあります。では、新卒で柔道整復師国家試験に合格するには、どのような勉強をすれば良いのでしょうか。
ケガをした方をサポートする職業で、柔道整復師と同じ国家資格には理学療法士があります。柔道整復師と理学療法士のどちらの資格を取得しようか迷う方も多いといわれています。
理学療法士については、こちらをご確認ください。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/7105/
柔道整復師試験に合格するための基本の勉強法
ここでは、柔道整復師国家試験に合格するために必要な、基本の勉強法について紹介します。
教科書を使って網羅的に学ぶ
教科書では、国家試験で出題される範囲のほとんどを学ぶことができます。国家試験では、幅広い範囲から内容を問われるため、全体像を把握するにはよいでしょう。また、学校や養成機関では、教科書を解説してくれるため、理解が進みやすいでしょう。
自習を進める際に、もし教科書以外の参考書や問題集を購入する場合は、最新の情報や内容が記載されたものかどうかを確認し、必ず最新版を選びましょう。
他の教科と関連付けて覚える
柔道整復師になるには、さまざまな専門知識の勉強をする必要があるため、科目ごとに予習・復習をしているという方も多いかもしれません。
しかし、柔道整復師試験の合格を目指すなら、他の科目と関連付けながら勉強することが大切です。例えば、解剖学の問題を解く際は生理学、生理学の問題を解く際は一般臨床学や病理学などと結び付けましょう。
そうすることで、より理解が深まり記憶にも残りやすくなります。
暗記方法を工夫する
柔道整復師の勉強は暗記することも多いため、効率的に暗記できるような工夫が必要です。
まず、教科書や参考書などの内容を暗記する際は、声に出して読みましょう。視覚だけで覚えるよりも、視覚と聴覚を利用したほうが、より効果的に覚えられます。
次に、教科書や参考書などにアンダーラインを引いたり、マーカーで線を引いたりしている方は、教科書ではなくノートの作成時に色ペンを使うようにしましょう。
教科書に色ペンで線を引く方法は、「覚えた気になっている」だけのことが多く、効率的とはいえません。ノートを作成する際に、情報の関連性に合わせて色を変えたほうが、より暗記しやすくなります。
なお、一度にすべてを暗記しようと思わず、「まずはこれだけ」と区切って暗記してみてください。当然ではありますが、暗記したことはその後繰り返し復習して、定着させましょう。
毎日の勉強時間を確保する
前述のとおり、柔道整復師になるには、養成施設(大学・専門学校)を卒業して国家試験の受験資格を得なければなりません。
そのためにも毎日の勉強時間を確保し、継続して勉強を続けることが重要になってきます。
柔道整復師の国家試験合格を目指す場合、1日あたりの勉強時間としては、学校の授業:3時間、自宅での勉強時間:平均2時間程度が必要です。学校の試験前には、授業以外に4時間程度の勉強をしている人も多くいます。
あくまでも目安の勉強時間ではありますが、通常は約2時間、試験前は4時間程度の自宅学習時間を確保しておくとよいでしょう。
なお、柔道整復師の養成施設である大学や専門学校では、卒業生の国家試験合格率という実績が重要になるため、勉強に対する指導は厳しいことが多いといわれています。
柔道整復師国家試験の対策はどうする?
柔道整復師の国家試験が行なわれるのは、年1回です。このチャンスを活かして合格するには、どのような対策をすれば良いのでしょうか。
ここでは、おすすめの国家試験対策を3つ紹介します。
過去問題集を解く
過去問題集を購入する際は、最新の情報・内容が記載されているものを選びましょう。
購入後は、ひととおり解いたうえで過去問題の分析をします。多く出題されている科目・自分が苦手とする科目などがわかれば、重点的に勉強する科目が把握できるので、効率良く勉強を進められます。
柔道整復師の国家試験では、特に解剖学・生理学・柔道整復理論から多く出題される傾向にあるため、まずはこれらの科目を優先的に勉強してもよいでしょう。
なお、過去問題集を解く際には、「問題を解いただけで終わりにしない」ということが重要です。
間違った問題は教科書に戻って確認する。間違った問題は正解するまで繰り返し解く。これを繰り返すことで、苦手な問題や科目をなくすようにしてください。
また、知らない用語やわからない用語があれば、その都度調べることも大事です。
過去問を解きながら、理解不足で間違った科目や分野があれば、教科書をもう一度読み返して復習しましょう。現状の実力把握だけではなく、復習のきっかけとしても利用することが、過去問を最大限に活用する勉強方法です。
多くの方が役に立ったと紹介している過去問題集シリーズが、こちらです。
柔道整復師国家試験を実施する柔道整復研修試験財団のウェブサイトでは、試験概要とともに過去問題を数年分公開しています。
https://www.zaijusei.com/introduction_1_shiken.html
スキマ時間を活用する
学校に通う一方でアルバイトなどをしている場合、まとまった勉強時間の確保が難しいことも考えられます。そのような場合は、通学する時間やアルバイトに向かう電車での移動時間など、スキマ時間を活用しましょう。
今は、柔道整復師の国家試験向け問題演習ができる、スマートフォンのアプリがあります。iPhone版とAndroid版の双方でアプリが出ており、そのなかには無料で使えるものもあるため、ぜひ有効活用してください。
たとえ一度に解ける問題が1問や2問だったとしても、毎日のスキマ時間を活用すれば、かなりの勉強時間となるでしょう。
柔道整復師の国家試験に合格するには、1問でも多く問題を解き、理解を深めることが大切です。ぜひ、スキマ時間をうまく使って勉強時間を確保してください。
学校の国家試験対策を活用する
柔道整復師を目指せる学校では、専門知識の修得だけではなく、国家試験対策にも力を入れています。
指導実績が豊富な学校では長年蓄積してきたデータがあるため、出題傾向を分析したり、模擬試験を実施したりと、国家試験合格に向けての丁寧な指導を行なえます。
在学中はさまざまなサポートを受けられるため、学校の国家試験対策を活用するのも合格を目指すうえでは大切です。
過去問題集を繰り返し解く・スキマ時間を活用する・学校の国家試験対策を活用する。この3点を意識して、柔道整復師国家試験の合格を目指しましょう。
まとめ
柔道整復師の国家試験は、年1回しか行なわれません。
新卒であれば約85%が合格している国家試験ですが、卒業後に働きながら受験した場合は約16~26%と合格率が低いため、新卒での一発合格を目標とすることをおすすめします。
基本的な勉強方法は、学校での授業内容をしっかりと理解し、教科書を読み込むことです。授業や教科書での勉強に加え、過去問題集・スキマ時間を使った勉強・学校独自の国家試験対策などもうまく活用しましょう。