放課後の子どもたちが安心して過ごせる「学童施設」では、多くの放課後学童指導員が活躍しています。子どもと関わる仕事がしたいと考えている人にとっては、ぜひ働いてみたいと思う職業でしょう。
放課後学童指導員になるには、特別な資格は必要ありません。しかし、資格を取得することにより、学童に従事する際の条件が優遇されやすい資格があることをご存じでしょうか。
ここでは、放課後学童指導員を目指す人が取得すべき「放課後児童支援員」の資格について解説します。資格の必要性や、取得方法についても説明するので、放課後学童指導員を目指している人はぜひ参考にしてください。
放課後学童指導員になるための対策はある?資格は必要?
学童施設で働く放課後学童指導員に対し、必須となる資格は特段設けられていません。しかし、新設された放課後児童支援員の資格を取得すれば、より専門性の高い指導員を目指せます。
ここでは、放課後学童指導員と放課後児童支援員について解説しますので、学童で働きたいと考えている方は参考にしてください。
資格がなくても「放課後学童指導員」にはなれる
学童や学童クラブとは、小学生に適切な遊びや生活の場を提供する保育事業です。対象となるのは、保護者が働いていたり病気療養中だったりして、放課後や長期休暇を一人で過ごす小学生です。学童や学童クラブで働く人は「学童指導員」と呼ばれ、多くの児童が安全に過ごせる環境を提供しています。
放課後学童指導員は教師とは異なり、資格がなくても放課後学童指導員としての勤務が可能です。そのため、施設ごとに設けられた採用条件にさえ合えば、誰でも放課後学童指導員として活躍できる職業といえるでしょう。
「放課後児童支援員」を目指すなら資格を取得する必要がある
放課後学童指導員とは別に、学童施設で働く「放課後児童支援員」をご存じでしょうか。
放課後児童支援員は、共働き世帯の増加による学童施設の利用者増加を受け、政府により2015年に新設された資格です。資格を取得するには研修を受ける必要があり、研修を受けるためには条件があります。
学童施設で働くことは資格がなくても可能です。しかし、学童指導員は今後もニーズが高いと見込まれる職業ですから、資格を取得して指導員のプロフェッショナルを目指してはいかがでしょうか。
放課後児童支援員の働き方を知りたい方におすすめしたいのが「放課後児童支援員手帳」です。手帳機能に加えて国が定めた基準や指針も掲載されています。放課後児童支援員のいわば必携の書で、手に取れば放課後児童支援員が活躍する姿を想像することができるでしょう。
「放課後学童指導員」と「放課後児童支援員」はどう違う?
学童施設という共通の職場でありながら、なぜ放課後学童指導員と放課後児童支援員に分類されているのでしょうか。
ここでは、放課後学童指導員と放課後児童支援員の違いについて解説します。
「放課後学童指導員」とは
放課後学童指導員の業務は、放課後の学童施設における児童の保育を行なうことです。保護者に代わり、安心して宿題や遊びを行なえるように見守ります。
児童が体調を崩したり、ケガをしたりなど、予期せぬ事態に見舞われた際には、迅速かつ適切な対処を行なう必要もあるでしょう。
2015年に放課後児童支援員の資格が新設されるまでは、学童施設に従事する全職員が学童指導員と呼ばれていました。
放課後児童支援員の新設を機に、資格保有者と無資格の職員を区別し、資格保有者は「放課後児童支援員」、無資格者は「学童指導員」あるいは「補助員」と呼ばれています。
「放課後児童支援員」とは
2015年に新設された放課後児童支援員は、認定資格研修を修了した人が取得できる資格です。資格を持っている人は、放課後学童指導員と混同しないように、資格の名称で呼ばれています。
これまでは、学童施設で働くために必須とされる資格は設けられておりませんでした。しかし、学童業務における品質を担保する目的により、放課後児童支援員の資格が設けられたのです。
厚生労働省が定める基準により、放課後児童クラブなどの学童施設では、放課後児童支援員を2名以上(最低でも1名は必ず)配置することが義務付けられています。
参考:厚生労働省「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」
このように、放課後学童指導員と放課後児童支援員は制度上区別されてはいますが、仕事内容についてはほとんど同じです。
放課後児童支援員の資格を取るメリット
放課後学童指導員と放課後児童支援員の仕事内容に大きな違いはありませんが、放課後児童支援員の資格を取得することにより、給料などの雇用条件や将来性に良い影響があります。
具体的に解説しますので、資格取得を検討する際の参考にしてください。
雇用条件が良くなる
正職員の割合は少ないものの、学童施設には一定のニーズがあることから、多くの施設が求人募集を行なっています。しかし、有資格者と補助員の時給には違いが見受けられるため、資格を取得しているほうが有利といえるでしょう。
なお、正職員としての採用条件が有資格者に限定されていたり、応募条件が有資格者に限定されていたりと、学童施設によって採用条件は異なります。
放課後児童支援員の新設により、厚生労働省では「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」の取り組みが始まりました。
学童施設によって導入状況に違いはありますが、資格手当・勤続年数・経験を考慮した昇給を受けられるようになるため、資格を持っているほうが従事する際の条件は良くなるでしょう。
今後も高い需要が期待できる
厚生労働省の調査によれば、放課後児童クラブの数と登録児童数は、年々増加傾向にあります。
参考:厚生労働省「令和2年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」放課後児童クラブ登録児童数等の状況
学童施設は増加していますが、待機児童は解消されていないため、今後も多くの学童施設が増設されるでしょう。
学童施設などに対する、放課後児童支援員配置が義務付けられていることから、学童施設の増加にともない、放課後児童支援員の需要も高まると考えられます。
キャリアアップも可能
放課後児童支援員に関連が深い資格として、以下の3つが挙げられます。
- 放課後児童育成支援師(R)
- 放課後児童専門育成支援師
- 放課後児童高度育成支援師
実践的な育成支援に理解を深めるのであれば「放課後児童育成支援師(R)」、育成支援への専門性を高めるためには「放課後児童専門育成支援師」がおすすめです。
「放課後児童高度育成支援師」は、実践と理論から導き出される高度な専門性を身につけることが求められます。
上記3つの資格は、放課後児童支援員の資格を取得している人あるいは取得見込者のみが受験可能です。スキルアップのみならず、強い責任感が必要となる立場へのキャリアアップにつながる可能性があるでしょう。
放課後児童支援員の資格を取る方法
放課後児童支援員になるには、所定の研修を受けることで資格を取得可能です。ただし、研修を受ける際には、所定の条件を満たす必要があります。
ここでは、研修を受ける際の条件や、研修内容について解説します。該当する条件がないか確認してみましょう。
研修を受けるために必要な条件
研修を受けるために満たすべき条件は、大きく分けて以下の3つです。
- 保育士・社会福祉士・教員免許のいずれかの資格を持っている
- 大学および大学院で関連分野の課程を修了している
- 高校を卒業し、2年以上にわたり児童福祉事業に従事している
社会福祉士について、こちらで紹介しています。
https://college.coeteco.jp/blog/archives/7545/
ここからは、上記を具体的に解説していきます。
教員免許について
教員免許には、幼稚園・小学校・中学校・高等学校あるいは中等教育学校が該当します。
大学および大学院での関連分野について
大学および大学院での関連分野としては、以下が挙げられます。
- 教育学
- 心理学
- 社会学
- 社会福祉学
- 芸術学
- 体育学
これらを専修する研究科や学科、あるいはこれらに相当する過程を修了し卒業していれば研修を受けられます。なお、外国の大学で学んだ場合も同様です。
高校卒業について
高校卒業に関しては、高校卒業相当の学歴が認められることが条件となります。
実務経験として認められるのは「児童福祉事業」「放課後児童健全育成事業に類似する事業」に従事した実績です。また、放課後児童健全育成事業に類似する事業に従事していた場合、市町村長に認められるケースが該当します。
児童福祉事業などの範囲は、自治体によって異なる可能性があるため、事前に確認するとよいでしょう。
おもな研修内容
全6科目ある研修内容を科目ごとに解説します。放課後児童支援員という資格への理解を深めましょう。
放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の理解
この科目では、放課後児童健全育成事業の目的や制度・法令順守の基本・子ども家庭福祉施策について学びます。
放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)における意義を理解し、利用者へのあらゆる配慮、子ども家庭福祉施策と連携した事業運営について理解を深める科目です。
子どもを理解するための基礎知識
この科目は、子どもの発達や生活・遊び・障害を持った子どもや家族・特に配慮が必要と判断される子どもなどについて学びます。
利用者それぞれの個性や、抱えてる事情に対応する知識を養う科目といえるでしょう。
放課後児童クラブにおける子どもの育成支援
この科目では、子どもの視点で考える育成支援、自主性や創造性を尊重する遊びへの関わり方、障害のある子どもを受け入れる際の留意点などについて学びます。
子どもにとって、適切な育成支援とは何なのかを考える科目となるでしょう。
放課後児童クラブにおける保護者・学校・地域との連携・協力
この科目では、保護者との連携や相談支援、学校や地域との連携における必要性について学びます。子どもだけでなく、保護者が抱える悩みに理解を深めたり、学校や地域との連携で考慮すべきことに理解を深めたりする科目です。
放課後児童クラブにおける安全・安心への対応
この科目は、子どもの特性を考慮した安全への配慮、緊急時における対応について学びます。
健康状態だけでなく、心身の状況を把握することも重要です。また、食物アレルギーなどによる救急対応では、迅速かつ適切な対応が求められるため、非常に重要な科目といえるでしょう。
放課後児童支援員として求められる役割・機能
この科目は、放課後児童支援員に必要な資質や技能、職場倫理の必要性などを学びます。
放課後児童支援員が担っている役割や、社会的責任について理解を深め、運営管理全体に理解を深めましょう。
学童保育に携わっているひろひろさんが、実際に研修を受けた感想を紹介しています。
まとめ
放課後学童指導員(補助員)として働くのであれば、今後も資格を取得することなく携われます。しかし、放課後児童支援員の資格を取得すれば、より専門的な知識や技能を習得し、活躍できる幅が広がります。
また、資格の有無は雇用条件にも影響するため、将来を見据えて考えれば早めに取得するのが賢明です。
学童施設のニーズに比例して学童施設が増設されれば、配置義務である放課後児童支援員の需要も高まることが予想されます。より質の高い業務の実現に向け、資格取得を実現しましょう。