(取材)家族のアレルギー対策の悩みが学びのきっかけに|おそうじメソッドで環境改善に取り組む

環境アレルギーアドバイザー 宮田高太郎氏

近年、地球環境や私たちのライフスタイルが変化するにつれて、アレルギーやシックハウス症候群など、環境由来の健康への影響が問題になっています。特にアレルギーに関しては、小さな子供から大人まで、さまざまな症状に悩まされている方が少なくありません。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎に悩むご家庭では、自宅の環境改善が大きな課題です。とはいえ、環境改善について具体的に何をすればいいのか、病院で教えてくれるところは少ないようです。そこで、アレルギー対策の環境改善のスペシャリストとして頼りになるのが「環境アレルギーアドバイザー」です。

今回は、環境アレルギーアドバイザーとして活躍されている宮田高太郎氏に、アレルギー対策に必要な環境要因の知識、効果的なおそうじメソッドなどについて、ご自身の経験も交えて教えていただきました。

子供のアトピーが教えてくれた環境改善の大切さ

コエテコカレッジ編集部(以下、編集部)環境アレルギーアドバイザーの勉強をしようと思ったきっかけを教えてください。

宮田高太郎(敬称略、以下、宮田)結論から先に言うと、自分の子供のためですね。長女がアトピー性皮膚炎になり、病院に行ってもなかなか症状が良くならず、セカンドオピニオンで10件ほど病院をまわりました。お医者さんも忙しいので、診察時間も短く、特に検査もしてもらえず、数分の問診で出される処方箋にイライラがつのり、つい言葉が荒くなってしまいました。

そうしたら、お医者さんに「治療をしているのに良くならないなら、あなたの家が汚いからだ!」と言われてショックでした。「アトピーはダニがアレルギーの原因だから掃除しなさい」「カーテンを全部捨てなさい」なども言われました。専門家の言葉だから信じていろいろやっていたら、私も妻も生活に疲弊してしまい、民間療法に手を出して娘のアトピーを悪化させてしまったんです。

編集部 アトピーで悩む人向けの民間療法はさまざまで、中には科学的根拠のないものまでありますよね。 

宮田 今では、とても後悔をしています。本当に症状がひどくなってしまったんですよ。私たち夫婦も追い詰められていて、もう頭がおかしくなりそうな時期もありました。でも、民間療法をやめて「標準治療を自分で学ぼう」と、最初に読んだのが日本皮膚科学会の「アトピー皮膚炎診療ガイドライン2018」です。

編集部 アトピー性皮膚炎の治療に携わる皮膚科医が参考にするガイドラインですね。

宮田 はい。PDFで70ページくらいあるのですが、それを読んでいくと、アトピーの治療方法は、①薬物療法②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア③悪化因子の検索と対策の3本柱でまとめられていました。

簡単に説明すると、薬物治療はお医者さんから出される薬、スキンケアは保湿などで肌を守ること、悪化因子の検索と対策は家のお掃除です。

悪化因子のお掃除のセクションはたった3行で「これじゃあ、お医者さんに聞いても、お掃除に関してはあのような答えにしからならない」と思いましたね。

ちょうどそのころ知ったのが、ダスキンの研究所が出しているDAP(ダスキン・アレルギー・コントロールプラン)。ホコリを減らせば人やアレルギーに対してどのような効果をもたらすのか、実証データに基づいた研究を進めるプロジェクトです。ダスキンの研究所に問い合わせて、お話をうかがう中で「環境アレルギーアドバイザー」という資格があることを教えていただきました。

正しい知識で、患者や家族の環境改善をサポートする専門家

編集部 環境アレルギーアドバイザーとは、どのような資格なのか教えてください。

宮田 いわゆる、アレルギーやシックハウス症候群など環境由来の健康問題に対して、正しい知識で患者やその家族など周囲の環境改善をサポートする専門家です。

編集部 資格を取得する上で、具体的にはどのような内容を学べるのでしょうか。

宮田 アレルギーや化学物質過敏症、シックハウス症候群など環境要因のある問題はもちろん、日常生活における環境影響(日用品、被服、食生活、住環境等)やアレルギーなどに関わる法令関係までを網羅しています。

私は資格を取得するのが目的ではなく、アトピーを軽減させるお掃除方法を知りたかったので、まずは「環境要因のある問題」について読み込みました。私自身は、ダスキンのFCに勤めているので、もともとお掃除のプロとして働いていました。しかし、環境アレルギーアドバイザーの公式テキストには、お掃除のプロでも知らない情報も多く、特にダニやホコリなどアレルギーに関わる部分はとても勉強になりましたね。

編集部 資格取得後には、どのような活躍の場があるのでしょうか。

宮田 公式サイトには、住環境に関わる不動産業界をはじめ、食品業界や美容業界、介護業界、小さな子供に関わる保育士や学校教諭などさまざまな活躍の場があると記載されています。

住環境や子供と関わる本業に加えて、環境アレルギーアドバイザーの知識を活用している方が多いのではないでしょうか。私の場合は、「おそうじ×環境アレルギーアドバイザー」でアレルギー対策に有効なおそうじメソッドをブログ「アトピーをお掃除で楽にするブログ」やセミナーで提供しています。

悩んでいた自分たちが知りたかった情報を発信

編集部 宮田さんの提供されている情報の特徴的なところは、感覚的ではなく科学的であるところです。ダニの残量などを計測して、ハウスダストを減らすための布団の干し方や掃除機のかけ方はもちろん、どれくらいの周期で何回と、具体的に提示しているところだと思います。

宮田 皮膚科医に「しっかり掃除しなさい」と言われても、何をどれくらい掃除すればいいのかわかりませんよね。1日中お掃除を毎日して、それでも子供のアトピーが良くならないと、真面目な人ほど落ち込んでしまいます。

私がお伝えしているお掃除でアトピーを楽にするステップはざっくり2つ、「がっつりお掃除・環境整備」と「日常のお掃除」です。がっつりお掃除といっても、布団を洗うだけなので安心してください。環境整備もお掃除やメンテナンスをしやすい住環境作りのために、いらないものを捨てたり収納方法を工夫したりするだけです。
がっつりお掃除が完了したら、日常のお掃除で部屋のキレイさを保ち、ハウスダストを増やさないお掃除をしていただきます。

編集部 ハウスダストを増やさないお掃除とはどのようなものでしょうか。

宮田 お布団を干す、お布団に掃除機をかける、寝具を洗う、リビングのホコリを取るの4点です。
具体的に言うと、お布団は毎日干してください、掃除機かけは週2回で、シーツの洗濯は週1回が基本です。「共働きや天気で、毎日布団を干すのは現実的ではない」方も、お布団を室内干しにしてエアコンをドライ運転にして出かけるのはできるんじゃないでしょうか。

それでも難しい方は、布団乾燥機を使えば寝具の湿気を飛ばせます。アレルゲン物質のダニは湿気を好むので、毎日肌に触れる寝具のお手入れは重要です。

意外と知られていないお掃除の大切さ

編集部 宮田さんが開催されているおそうじメソッドのセミナーでは、アレルギー対策のお掃除方法を具体的に学ぶことができるんですか。

宮田 はい。座学と実技を合わせて、アトピーに悩むお子さんやご家族の方が具体的にどういうお掃除をすればいいのかをお伝えしています。参加者は20代から70代と年齢は幅広く、ほとんどが女性で、ご自身の子供やお孫さんがアトピーで悩まれている方が多いです。

勉強熱心な方が多いのですが、アトピーを改善する具体的なお掃除方法を知らない方が大半なので、中には「まめにシーツを洗ったことがありませんでした」と話しかけられることもありました。

以前、ダスキンの塩素を除去する商品「シークリア」をセミナーで配ったところ、翌日に参加者の方から「アトピーの子供が『お母さん、お風呂がぴりぴりしないよ』と言うんです。お風呂がストレスになっていたとはじめて知りました」と電話がありました。私のセミナーがきっかけで、参加者の方やそのご家族がストレスを1つでも減らせるとうれしいです。

編集部 セミナーやブログ以外でも、アレルギー対策のおそうじメソッドを発信していらっしゃるんですか。

宮田 現在は、鹿児島県薩摩川内市のコミュニティFM「FMさつませんだい」で、レギュラー番組を持たせていただいています。番組名「わたしとキレイと時々おいしい」で、川内市内のおすすめランチ情報と季節のお掃除方法を発信しています。3月なら花粉や黄砂がとんでいるので、こういうお掃除をしましょうなど、アプリで全国どこでも聞けます。

みやた式おそうじメソッド(仮)を多くの人に届けたい

編集部 すでにセミナーやラジオなどで活躍されていますが、今後の展望について教えてください。

宮田 去年10月にも開催して今年4月にも、薬剤師の先生とコラボでおしゃれなカフェを貸し切ってセミナーをしようと計画中です。いろいろな地域の方とコラボをして、おそうじメソッドを広めていきたいですね。

先ほどお話した環境アレルギーアドバイザーの知識とお掃除のプロの組み合わせを「みやた式おそうじメソッド(仮)」として、毎週Zoomのウェビナー形式で無料セミナーをしています。まずは、気軽に参加してアレルギー対策の環境改善について学んでいただき、もっと詳しく知りたい方は認定コーチセミナーのようにステップアップしてお話しさせてもらう予定です。

編集部 オンラインセミナーの開催でより多くの方におそうじメソッドが広まりそうですね。最後に、今ご自身や子供のアトピーで悩まれている方、これからアレルギー対策のおそうじメソッドを学ぶ方へのメッセージをお願いします。

宮田 私が子供のアトピーで悩んでいたときは、病院でセカンドオピニオンをしてもらったり、民間療法に手を出したり、良いといわれる方法を試しては行き詰まっていました。しかし、環境アレルギーアドバイザーになった今は「早くこの知識に出会っていれば」と思います。

そして、つらい思いをしていたあのときの自分と妻に伝えたいことを発信するようになりました。具体的にアレルギー対策のお掃除は、何をどれくらいやればいいのか、科学的な実証を踏まえて1人でも多くの人を救いたいと思っています。
一緒におそうじメソッドを学んで、環境改善に取り組んでみませんか。

宮田高太郎(みやたこうたろう)

環境アレルギーアドバイザー。第1子のアトピー性皮膚炎をきっかけに、アレルギー反応を軽減させるお掃除の方法を学びはじめる。2020年はアレルギー対策のおそうじメソッドセミナーを全6回、延べ70人以上に啓発、科学的な実証を踏まえた家庭での掃除方法をブログやラジオなどで精力的に情報発信している。日本アレルギー学会一般会員。

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