税理士は、その名のとおり、税に関するプロフェッショナル。顧客から依頼を受け、税務書類の作成や税務手続きを行います。税理士の需要は高く、また、税に関する業務は社会情勢に関係なくいつでも発生するため、安定的な収入が見込める職種と言えるでしょう。今回は、そんな税理士の具体的な業務や資格の取り方、資格試験の概要、難易度などを紹介します。
税理士とは
税理士は国家資格であり、士業の中でも代表的といわれる8士業のひとつ。会計・税務に関するプロフェッショナルとして、事業や相続税等の税務相談にのったり、確定申告書の作成を手伝ったり、納税額の算出をしたりと、市民や企業の税務に関するパートナー的役割を請け負います。不正な税務行政とならないよう常に公正な立場で業務を遂行してくれる、まさに信頼のおける税務の相談相手となるのが税理士なのです。
税理士資格を取得するメリット
税務に関する業務を行うには、会計や税金に関する深い知識が必要となります。その知識の証明となるのが税理士資格です。税理士資格を取得し税理士になることで、以下のようなメリットが考えられます。
就職・転職に有利
国で認められた国家資格は就職や転職でも大きなアピールポイントとなります。税理士を目指すにはもちろん、経営コンサル業や金融業でも税の知識は強みになるので、転職・就職の幅がぐんと広がるでしょう。
高収入が望める
確定申告や帳簿付けなどは世の中の景気に関係なく発生します。そのため、そういった税務に関わる税理士はどんなときでも常に必要とされ、安定的な収入が見込めます。さらに、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、税理士の平均年収は718万8,000円。安定的に高収入が望める職種と言えるでしょう。
独立開業ができる
税務業務は税理士の独占業務であるため、独立開業も成功しやすいと言えます。実際に多くの税理士が個人で開業しており、開業税理士の3分の1は年収3,000万円以上を実現させています。
税理士資格の試験
税理士になるためには
税理士資格試験の概要を紹介する前に、まず税理士になるためのルートについて紹介しましょう。
税理士になるためには、以下の3つのルートがあります。
- 税理士試験に合格するかつ税または会計に関する実務経験2年以上積む
- 弁護士になる
- 公認会計士になる
つまり、弁護士、公認会計士として認められている人以外は、税理士試験に合格することが第一段階となります。
※一定の科目の修士・博士の学位を取得している人や定められた期間税務署に勤務した人などは試験が一部免除となる試験免除制度を利用することもできます。
上記条件を満たし、税理士登録をすることで税理士を名乗り活動することが可能となります。
税理士登録には税理士試験に合格するだけでなく、実務経験も必要となるため、税理士事務所で働きながら試験合格を目指す人も少なくないようです。
税理士試験の受験資格
弁護士・会計士に該当せず、免除該当者でもない人は、税理士試験に合格し税理士を目指すことになります。
ただ、税理士試験を受けるにも受験資格があります。税理士試験の受験資格は「学識」「資格」「職歴」の3つの項目で定められています。
<学識での受験資格>
・大学もしくは短大を卒業しており、法律学または経済学を1科目以上履修した者
・大学3年以上で、法律学または経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者
・定められた専修学校の専門課程を修了しており、法律学または経済学を1科目以上履修した者
・司法試験を合格した者
・平成18年度以降の公認会計士試験の短答式試験に合格した者
<資格での受験資格>
・日商簿記検定1級に合格している者
・昭和58年度以降の全経簿記検定上級に合格している者
<職歴での受験資格>
・法人または事業を営む個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
・銀行・信託会社・保険会社などで、資金の貸付・運用に関する事務に2年以上従事した者
・税理士・弁護士・公認会計士などの業務の補助事務に2年以上従事した者
試験内容
試験の科目は5科目で、うち、必修科目と選択科目があります。
・必修科目…簿記論、財務諸表論
・選択科目…所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税のうち3科目 ※所得税法または法人税法のいずれか1科目は選択必須
税理試験は科目合格制となっており、一度に5科目受験せず1科目ごとの受験も可能。各科目とも60点以上で合格となり、科目合格は期限なく生涯有効となります。実務を積みながら試験合格を目指す人は、じっくり科目合格から目指していくのもひとつの方法でしょう。
試験日程・会場
試験は毎年8月に実施され、科目別で3日間の試験日が組まれます。受験の申込受付は同年の4月~5月にかけて行われ、各国税局で申込書類が交付されます。この申込手続きを行わなければ受験はできませんので、申込受付期間や申込方法を国税庁の公式ホームページでしっかりと確認しておきましょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/qa/qa02.htm
試験会場は毎年12~14の都道府県に設置されますが、毎年同じ場所が会場になるとは限らないため、こちらも同じく国税庁のホームページで確認しておいたほうがよいでしょう。
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/zeirishi.htm
※国税庁ホームページの「新着情報」欄には、試験会場の追加など税理士試験に関する重要事項は追記されることがあるので、税理士試験の受験者や受験希望者は随時チェックしておくことをおすすめします。
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/index.htm#news
試験の難易度・合格率
税理士試験の各科目の合格率は15~20%ほどで推移しています。同じ士業である司法書士は3~4%、行政書士は10%ほどと言われているので、税理士試験の合格率だけ見るとそれほど難易度が高くないように思えるかもしれません。しかし、税理士試験は5科目の合格が必要であり、試験範囲は多岐にわたります。5科目合格するまでに5年~10年かかるケースも少なくありません。
税理士試験に合格するには
独学
税理士試験に合格するために必要な学習時間は、一般的に3,000時間ほどと言われています。毎日1時間の学習でおよそ8年、2時間の学習でも4年以上かかる計算になります。もちろん、毎日5時間6時間も勉強すれば2年かからず合格できる可能性もありますが、仕事をしたり育児をしたりしながら合格を目指す場合は、これほどの学習時間を毎日確保するのは現実的ではないでしょう。1科目ごと学習に集中し、科目受験で1科目ずつ潰していく方法もありますが、少しでも学習効率を高め、独学での早期合格を目指すには、テキストなど学習教材選びも重要と言えそうです。
こちらは、資格試験専門予備校として名高いTACから出版されている「みんなが欲しかった!」シリーズの税理士版。TACの合格メソッドがこれでわかります。
こちらは税理士YouTuberによる「人生を変える勉強法」まとめ。楽しみながら勉強のコツを掴みたい人は必読です。
通信・通学講座
独学に比べ費用はかかりますが、通信講座や通学講座を利用して合格を目指す方法もあります。大手の通信講座や予備校でも税理士資格合格のための講座を用意しており、TAC、スタンディング、クレアール、大原、LECなどが人気のようです。
講座は試験科目ごとに用意されているケースが多く、1科目10万~20万ほどが相場。ハローワークから20%相当額の費用が戻ってくる「教育訓練給付金」制度を利用すれば、相場よりも実質安く講座を受けることもできます。
通信・通学講座でそれほど費用に差は見られませんが、独学が不安で講座を利用する人は、直接講師に質問できて強制的に学習時間を確保できる通学講座のほうが学習効率を上げやすいかもしれません。
税理士試験に合格した人たちの勉強法
独学にしろ講座を利用するにしろ、初めて税理士試験に挑戦する人は不安を感じるでしょう。本当に自分の学習方法で合格できるのか迷ってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、税理士試験合格者たちの声を参考にしてみると、学習のコツや試験のイメージが掴める可能性があります。実際の合格者たちの声を見てみましょう。
簿記論はとにかく訓練あるのみ
税理士試験の必修科目でもある簿記論を科目受験合格しているKing_1234さん。簿記論について、合格は「訓練あるのみ」とツイートしています。かなり難しいようなので、繰り返しテキストを読み実践してみることが重要なのかもしれません。
試験では取捨選択も重要
働きながら税理士試験合格を果たした税理士試験@合格体験記のツイート。試験はどの問題に時間をかけるかの配分も大切とのこと。取捨選択を適切にできるようになるためにも、過去問などで試験のイメージを掴んでおきたいところですね。
まとめ
税理士資格は決して簡単にとれる資格ではありませんが、安定・独立・高収入を目指す人にとっては大いに挑戦する価値のある資格です。独立・開業すれば定年関係なく働くこともできるので、老後資金の不安もなくなりますね。将来の安定・余裕のある生活を手に入れるためにも、今から税理士資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。