学芸員とは|博物館等での仕事内容・給料や資格の取得方法について

近年「学芸員」という職種が話題になっており、「キュレーター」という名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。学芸員の就職先は博物館をはじめ、美術館・動物園・水族館などさまざまな施設が対象で、専門性を活かして文化財の価値を伝えたり広報を行ったりします。施設によって必要な知識が異なるのも学芸員の特徴の一つです。

この記事では学芸員の詳しい仕事内容や気になる給料、資格取得の方法などを解説していきます。

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学芸員とは

まずは学芸員の仕事内容と給料について解説していきます。

仕事内容

学芸員は文部科学省が認定する国家資格です。博物館での資料収集や保管、展示や広報といった幅広い業務によって文化の発展に務めています。博物館によっては芸術や歴史、産業や科学などさまざまな展示物を扱っているため、就職先に合わせた高い専門知識が求められます。

具体的な仕事内容としては展示品の運搬やイベントの企画、来館者への案内や論文の執筆・出版などが挙げられます。資料の研究結果を世間にわかりやすく伝えることによって、展示品の価値を広めたり人々の学習支援を行ったりするのが学芸員設置の目的です。

学芸員の就職先となる博物館などは目的や設置主体、文化庁への登録の有無によって3種類に区別されます。

  • 登録博物館
  • 博物館相当施設
  • 博物館類似施設

3種類のうち学芸員が必置となるのは地方公共団体や一般社団法人などが設置主体の「登録博物館」で、全国に約900館設置されています。登録博物館の例としては日本最古の博物館である東京国立博物館やJR東日本の記念事業として設立された埼玉県の鉄道博物館、沖縄屈指の人気スポット沖縄美ら海水族館などが挙げられます。また日本モンキーセンターは、動物園としては日本で唯一の登録博物館です。

博物館相当施設」も学芸員に相当する職員の必置が義務づけられており、こちらに該当する施設で働く学芸員もいるでしょう。「博物館類似施設」は全国に4,000館以上と3種類のなかで最も多い種別ですが、学芸員の設置については義務づけられていません。もともと学芸員資格に準ずる職員を設置していないという場合も多いようです。

また博物館といっても美術館や水族館、動物園、植物園、天文台など学芸員の活躍の場はさまざまです。学芸員のなかには研究活動だけでなく動物の飼育を両立している学芸員もおり、施設によって求められる業務の幅も異なります。

給料

学芸員の給料は勤務先によって異なります。平均年収は200~400万円程度で、非正規雇用の場合の時給帯は1,000~1,500円程度といわれています。一般職の平均年収に比べて同等もしくは低水準といえるでしょう。

地方公共団体が運営している公立博物館に採用された場合は公務員となり、各自治体の定める賃金体系に準じた年収とボーナスが得られます。私立の場合、博物館の規模や知名度によって給料が大きく異なる場合もあるようです。

学芸員を取得するメリット

学芸員として働くことで専門的知識を活かして文化の発展に寄与することができます。各分野における高い専門性が活かされるため、好きな分野の研究活動に打ち込みたいと考えている人にも向いています。

また国公立の博物館に勤めた場合は公務員に準じた労働形態で働くことができるため、給料や労働時間、休暇といった労働条件が安定しているのもメリットの一つです。

学芸員の受験資格・求められるスキル

学芸員になるには、大学の学士取得単位修得学芸員資格認定試験の合格など、文部科学省が定める基準を満たすことが条件です。また国公立の博物館で働く場合には公務員としての採用になるので、各自治体の公務員採用試験に合格することが必須条件です。各自治体とも公務員の学芸員採用枠は少数であることが多いため、公務員としての雇用は競争率が高いようです。

その他には以下のスキルが求められます。

専門分野の知識

歴史や美術など各施設で求められる専門知識が必要です。大学で専門分野の研究活動や学芸員実習をしていたという経歴を持つ人も多く、大学院で研究に打ち込みながら学芸員課程を卒業する学生もいます。一橋大学では大学院生限定で学芸員の資格取得プログラムを開講しています。

コミュニケーション能力

学芸員は博物館内にある展示品の案内や解説を行うため、老若男女さまざまな利用者に情報をわかりやすく伝えるコミュニケーション能力が必要です。博物館の教育機関としての役割を果たすためには必須スキルといえるでしょう。講演会やワークショップの運営で他のスタッフや外部講師と連携をとる場面もありあす。多くの作業をスムーズに進める必要ためにも、円滑なコミュニケーションが求められます。

英会話スキル

博物館には海外から訪れる方も多く、展示品を英語で説明する場面や海外の博物館と収蔵品をやり取りすることもあります。日常会話はもちろんビジネスシーンでも通用する程度の英語力を身に着けておくことで採用率アップが期待されるでしょう。就職先によっては語学力が必須の施設もあります。

学芸員資格の取得方法

学芸員資格を取得する方法は以下の3通りです。

  • 学士を取得+指定の科目を修得
  • 大学在学2年以上+「博物館に関する科目」を含む62単位+学芸員補経験3年
  • 学芸員資格認定試験に合格

以下では、それぞれについて詳しく解説していきます。

学士を取得+指定の科目を修得

「学士を取得+指定の科目を修得」の場合、文部科学省が指定する大学で単位を修得して学芸員資格を取得します。単位の取得は通信制大学を利用することも可能ですが、「博物館実習」の単位が取得できないため実習が可能な大学を確保しておく必要があるでしょう。

こちらの方は放送大学で単位を修得したそうです。放送大学では「博物館実習」以外の対応科目を履修することができます。ほとんどの学芸員資格取得方法には単位取得が求められるため、まずは自分の生活に合った大学選びから始めることが大切です。

大学在学2年以上+「博物館に関する科目」を含む62単位+学芸員補経験3年

こちらの条件では学士の資格は必要ありませんが、大学在学2年以上の経歴と「博物館に関する科目」を含む62単位の修得、「学芸員補」の経験が条件です。

学芸員補は博物館で学芸員の補佐を行う職種で、業務内容は展示や研究、ワークショップの企画など各施設の学芸員の仕事に準じます。学芸員になりたいけど資格を持っていないという人や、新人の学芸員が補佐を務めることもあるようです。

学芸員補として働くためには各施設の採用試験を合格する必要があります。学芸員補の求人数は少ないため、こちらの方法で資格取得を目指す人は学芸員補としての就職先を確保することが大切です。

学芸員資格認定試験に合格する

文部科学省が認定している「学芸員資格認定」は大学で学士を取得している方や学芸員補として働いた経験のある方などが対象で、「試験認定」または「審査認定」によって学芸員資格を取得します。

試験認定では博物館概論・博物館展示論・生涯学習概論といった必須8科目と、文化史・民俗学・自然科学史・物理などの選択科目に基づいて筆記試験を行います。さらに合格後には1年間の学芸員補経験を経て学芸員資格が認定されます。審査認定では、博物館に関する学識や業績を書類審査によって判断し、さらに意欲や態度などを面接で審査します。

また、学芸員資格認定試験を受ける場合には受験資格を満たす必要があります。以下のいずれかを満たしている方が受験対象者です。

  • 学士の学位を取得
  • 大学在学2年以上+「博物館に関する科目」を含む62単位+学芸員補経験3年
  • 教育職員普通免許を取得+教育職歴2年以上
  • 学芸員補経験4年以上
  • その他文部科学大臣が前述資格と同等以上と認めた場合

既に学士の取得や大学での単位修得経歴がある方、教職として働いたことがある方が対象になっています。

まとめ

学芸員の資格を取得することで、さまざまな分野の博物館で専門知識を極めながら働くことができます。研究や教育、広報など幅広いスキルが求められますが、世間の人々に文化の価値を伝えられるやり甲斐のある仕事でもあります。

受験方法はさまざまですが、いずれも大学の単位や学士の取得が必要になる場合がほとんどです。仕事をしながら資格を取得したいという方は、通信制大学のカリキュラムを活用するのも有効でしょう。採用数が少ないので情報収集も必要です。

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