近年、目の疾患を持つ人が増えており、視能訓練士への注目度が高まっています。
ただ、視能訓練士の資格取得に向けて、どのような試験対策が有効なのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、視能訓練士の資格概要や働くメリット、仕事内容を紹介します。併せて、視能訓練士の試験内容と、試験対策に有効な勉強法3選も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
視能訓練士とは「目の専門家」
まずは、視能訓練士が具体的にどのような資格なのか解説します。受験資格についても紹介しますので、視能訓練士になるにはどうすればいいか知りたい方は、参考にしてみてください。
視能訓練士は国家資格
そもそも視能訓練士とは、おもに眼科で視機能の検査や斜視・弱視に対する視能訓練を行なう目の専門家を指します。
1971年、視能訓練士法に基づいた国家資格が制定されました。視能訓練士として仕事に従事するためには、この国家資格を取得する必要があります。
この資格の創生期は、斜視・弱視の訓練をおもな業務としていましたが、現在では眼科一般分野の幅広い業務を担う存在となっています。
受験資格が必要
視能訓練士には受験資格が設けられているため、国家試験を受ける前に、まず受験資格を満たす必要があります。受験資格を取得する方法は、おもに3つです。
まず1つ目は、大学や短期大学、看護もしくは保育の養成校などで履修後、視能訓練士養成校で知識や技術を1年以上修得して、受験資格を取得する方法です。
なお、大学などの履修時は、必須科目と選択2科目が指定されているため、該当するか不安な場合は養成校へ問い合わせるとよいでしょう。
2つ目は、高校を卒業後、視能訓練士養成校で知識や技術を3年以上修得する方法です。はじめから視能訓練士として働くことを目標としているのであれば、3つの方法のなかでは最もスムーズな受験資格の取得方法でしょう。
3つ目は、海外で視能訓練士の学校を卒業、もしくは視能訓練士と同程度の免許を取得後、厚生労働大臣に認定されるという方法です。
このように、視能訓練士の受験資格を取得する方法は3つあるため、自分に適したルートを選べるでしょう。
視能訓練士として働く3つのメリット
視能訓練士として働くことには、3つのメリットがあります。それぞれのポイントを見ていきましょう。
将来性が高い
視能訓練士は将来性の高い職業の一つです。高齢化社会を迎えた日本では、加齢とともに目の疾患を発症する人が増えつつあります。
一方、若い世代もパソコンやスマートフォンの普及が影響しているのか、目の健康を損なっている人の割合が増加傾向にあるのです。文部科学省の発表によると、裸眼視力1.0未満の高等学校生の割合は、2010年度の55.64%に対して、2019年度は67.64%へ増加しています。
若者世代から高齢者世代まで幅広く、目の検査を行なう視能訓練士の需要は今後も増すことが予想されます。そのため将来性は高く、安定した雇用が見込めるでしょう。
年収や給料が今後上がることも期待できます。2020年の視能訓練士実態調査報告書によると、視能訓練士の平均年間所得は378.5万円です。10年前の2010年は352.9万円よりも、20万円以上アップしています。正規職員に限ってみると、2020年の平均年間所得は423.9万円でした。
ライフスタイルに合わせて働きやすい
視能訓練士は、日曜・祝日休みの勤務先が多い傾向にあり、仕事とプライベートを両立しやすいというメリットがあります。オンとオフのバランスをうまく取ることができ、自分のライフスタイルに合った働き方ができるでしょう。
また、視能訓練士の業務内容には力仕事がないため、女性が働きやすいという特徴もあります。日本視能訓練士協会の発表によると、2020年度の視能訓練士の男女比は、男性が14.1%、女性が85.7%です。
この数字からも、視能訓練士は女性の活躍しやすい仕事であることがわかります。
夜勤がなく残業が少なめ
視能訓練士は基本的に夜勤がなく、残業が少ない傾向にあることも、メリットの一つとして挙げられます。定時で帰宅できれば、プライベートの予定も立てやすくなるでしょう。
例えば、結婚して子供がいる場合も残業の多い職業と比べて時間管理がしやすくなります。
ただし、翌日の準備や院内研修などで業務時間が長引く場合があります。また、最新の医療技術・知識を身につけるために、院外研修や外部の勉強会へ参加する場合もあるでましょう。
視能訓練士の仕事内容とは
視能訓練士の仕事内容は、大きく4つに分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
視機能に関する検査
眼科で視機能に関する検査を実施し、医師の診断や治療方針の決定に必要なデータを提供することは、視能訓練士の大切な仕事です。視力検査の前には「屈折検査」を行ない、近視・遠視・乱視のどの項目に該当するのか、目の屈折度を計測します。
その他にも、ランドルト環を用いた「視力検査」や、色が正常に見えているか確認する「色覚検査」など、検査項目はさまざまです。「眼底検査」では、目の内部を検査することで、緑内障をはじめとした疾病の早期発見が可能となります。
健診・検診
目の疾患の早期発見や予防のために、病院や保健所、学校などでの集団検診を実施します。就学時健康診査や生活習慣病検診、3歳児健康診査など、対象となる年齢層に応じた検査を行ないます。
大人の検査では、日常生活に支障を来すケースもある眼疾患の早期発見と治療が目的です。それに対して子どもの場合は、弱視や斜視などを早期発見し、健全な発達を促す訓練を行なうことを目的としています。
斜視や弱視の視能訓練
斜視、弱視の訓練のおもな対象は、視覚の発達が完成するといわれる6歳ごろまでの子どもです。視能訓練士は医師の指示のもと、斜視や弱視の視能訓練のスケジュール作成や、管理・指導を行ないます。
この訓練では、屈折検査のデータに基づいて製作した眼鏡をかけたり、健全な目をアイパッチで隠したりして、健全な目の発達を促します。
ロービジョンケア
目の疾患あるいは外傷が原因で視機能が低下し、日常生活で不便を感じる人に対して行なう支援をロービジョンケアといいます。
拡大鏡や眼鏡の選定・使用訓練、さらに視覚障害を持つ人に対して支援機関を紹介するなど、支援の内容は多岐にわたります。医療的なケアだけではなく、社会的・心理的・福祉的な支援まで実施するため、視能訓練士として重要な仕事の一つといえるでしょう。
視能訓練士の試験対策!出題内容と合格率を把握しよう
視能訓練士の試験で出される問題や合格率について解説します。今後の試験対策として、ぜひ参考にしてみてください。
試験は年に1回実施される
視能訓練士の資格試験は年に1回、毎年2月に東京と大阪の2ヵ所で実施されます。国家資格を取得後は更新の必要がないため、視能訓練士の資格を一度取得すれば、資格保持者として生涯働けます。
また、視覚や音声機能などに障害のある受験希望者は、「国家試験の受験に伴う配慮事項申請書」を使用して、事前の申し出が可能です。申し出ることで、障害の具合に応じて受験時に配慮してくれるケースもあります。
受験手数料は1万5,800円です。受験申請にあたっては、受験願書・写真などの必要書類や、受験資格が証明できる書類を本部事務所に郵送します。転送が難しい場合は、臨時事務所に持参して提出する方法もあります。
※2021年12月時点の価格です。
5つの科目から出題
視能訓練士の筆記試験は、以下5つの科目から出されます。
- 基礎視能矯正学
- 基礎医学大要
- 視能検査学
- 視能障害学
- 視能訓練学
問題は150問あり、試験の解答は五肢択一式のマークシートで行ないます。全問題がマークシート式となったのは第36回の試験からで、以前よりも解答形式が簡素化されました。
試験時間は午前と午後でそれぞれ2時間実施され、一日を通して合計で4時間の試験を受けます。午前中は基礎視能矯正学、基礎医学大要の科目から75問が出題され、午後は残りの3科目から75問が出題されます。
合格基準と合格率
視能訓練士試験の合格基準は、169点満点に対して6割の正答率である、102点以上と規定されています。総点数の内訳は、129点満点の「一般問題」が1問1点の配分、40点満点の「臨床問題」が1問2点の配分です。
なお、2019年から2021年までの視能訓練士試験の合格率を、以下に示します。
2019年(第49回)
受験者数:834人
合格者数:819人
合格率:98.2%
2020年(第50回)
受験者数:837人
合格者数:804人
合格率:96.1%
2021年(第51回)
受験者数:850人
合格者数:774人
合格率:91.1%
上記内容からもわかるように、例年の合格率は90%台です。特に、2019年の第49回試験は98.2%と高い合格率となっています。
資格取得へ向けてしっかりと試験対策すれば、視能訓練士試験の合格は十分目指せるでしょう。
視能訓練士の試験対策に有効な勉強法3選
視能訓練士の試験対策として有効な勉強には、どのようなものがあるでしょうか。今回はおすすめの勉強法を3つ紹介します。
過去問を使って勉強する
視能訓練士試験の過去問を解くことで、試験の出題傾向を把握できます。試験範囲は5科目と広いものの、毎年の出題頻度が高い問題の目星をつけることは可能です。
過去問を使った学習で出題傾向を効率的に把握すれば、重要な試験対策となるでしょう。また、解答時間のペース配分をつかむために、過去問を解く際にかかった時間を計測しておくのもおすすめです。
視能訓練士国家試験問題と解説を図版とともに6年分まとめた過去問問題集はこちらです。
学習計画をしっかりと立てて勉強する
試験日から逆算した学習計画を立てて勉強を進める方法も、試験対策として有効です。その際、まずは1ヵ月単位の学習量を決めてから、1週間単位、1日単位でのノルマを割り当てるとよいでしょう。
余裕を持った計画を立てることで、モチベーションを保ちつつ、勉強を習慣化できます。視能訓練士の試験対策では、日々の学習を後回しにせず、コツコツと毎日継続することが大切です。
苦手な問題を絞り込みながら勉強する
試験勉強を進めるなかで、自分が苦手とする問題はだんだんと絞り込まれてきます。その際、あとから自分が見返しやすいよう、苦手な問題に目印をつけておくようにしましょう。
絞り込んだ問題をしっかりと復習することで、それまで苦手だった問題を克服でき、試験の点数アップへとつながります。一つでも多く正解するためにも、苦手な問題を絞り込む勉強法は試験対策として重要だといえます。
まとめ
今回は、眼科一般分野で幅広い業務を担う存在である、視能訓練士の特徴や試験対策のポイントを紹介しました。
社会全体のデジタル化が進み、年齢に関係なく目の健康を損なう人の増加が見込まれるなかで、目の専門家として活躍する視能訓練士の需要はますます高まるでしょう。
視能訓練士は国家資格でありながら、試験の合格率は例年90%台と高くなっています。
過去問を使った学習や、事前の学習計画をしっかりと立てて対策していけば、十分に合格を目指せる資格です。
視能訓練士の資格受験をお考えの方は、ぜひ今回の記事を参考にしながら試験対策に活かしてみてください。