スクールカウンセラーになるには資格は必要?仕事の内容や収入・将来性も解説!

心理学の知識や経験を活かし、教育現場で生徒教職員心のケアをするのがスクールカウンセラーの仕事です。

多様化する社会のなかで教育を取り巻く環境も変わってきており、スクールカウンセラーの需要はますます増えてきています。

この記事では、スクールカウンセラーとして働くために持っておきたい資格の種類や、スクールカウンセラーの仕事内容将来性を紹介します。

スクールカウンセラーとはどんな仕事なのか?

スクールカウンセラーと聞くと「生徒の悩みを聞く仕事」というイメージを持つ人は多くいることでしょう。実際には、カウンセリング以外の業務も幅広く行ないます。

スクールカウンセラーとは

スクールカウンセラーは小学校・中学校・高校などの教育機関に配属され、生徒・教職員・保護者心のケア精神的なサポートを行ないます。

いじめ不登校進路などに悩む子どもが相談しやすい環境を作り、保護者や教師と協力して問題解決に努めます。子どもと向かいあう機会が多いので、スクールカウンセラーには子どもの気持ちに寄り添い、子どもに接することが苦にならない人が向いています。

スクールカウンセラーの仕事内容

文部科学省では、スクールカウンセラーの職務内容を「児童生徒へのカウンセリング」「教職員に対する助言・援助」「保護者に対する助言・援助」と定めています。

業務の中心はカウンセリングコンサルテーションですが、協議(カンファレンス)研修・講話査定・診断(見立て)・調査予防的対応危機対応・危機管理など多岐に渡ります。

それぞれの業務内容は以下のとおりです。

カウンセリング
生徒のカウンセリングは担当教員を介して予約制で行う場合と、生徒が自主的に来訪する場合がある。相談の必要有無に関わらず、生徒に参加の意思がない場合の対処法や、授業時間に面接をする場合の学業との両立については学校と対応を決める。

コンサルテーション
カウンセリングよりも指示的な意味合いの強い面接相談。相手の話を聞くだけではなく、臨床心理学的の専門家として、コメントやアドバイスを能動的に行なう姿勢が必要。

協議(カンファレンス)
ある事柄について関係者がそれぞれの立場から報告し、解決に向けた対処法を話し合う。

研修・講話
不登校児や虐待が想定される児童など、子どもを取り巻く問題の理解や対応について、教職員や保護者に向けた研修や講演会で発表する。

査定・診断(見立て)・調査
おもに生徒を対象として、人格検査や発達検査を実施し、査定する。

予防的対応
学校内外で生徒の問題行動が起こることを未然に防ぐために、ストレスチェックやストレスマネージメントを行なう。

危機対応・危機管理
学校で災害や事故などがあった際の対応。出来事の規模によっては、スーパーバイザーへ早急に支援の要請を行なう。

臨床心理士で公認心理師でもある佐藤セイさんが、多様な相談が持ち込まれるスクールカウンセラーのやりがいを紹介しています。

スクールカウンセラーになるために資格は必要か?

教育の現場でスクールカウンセラーとして活躍するためには、どのような資格や知識が必要になるのでしょうか。

資格なしでもスクールカウンセラーになれる

「スクールカウンセラー」という資格はなく、スクールカウンセラーになるために必要な資格はありません。しかし、実際に無資格でカウンセラーとして働くことは、ほとんどないと考えてよいでしょう。

スクールカウンセラーは、学校内外で起こっている子どもの問題に、適切に対応する力が必要です。ときには、いじめや虐待など深刻なケースに対応しなくてはならず、その責任は非常に大きなものになります。

そのため、学校側は臨床心理士(R)などの資格の保有を条件とすることが少なくありません。無資格では、スクールカウンセラーとして勤務することが難しいため、関連した資格を取得するのが望ましいでしょう。

文科省のスクールカウンセラーの資格要件

文部科学省では、各都道府県にスクールカウンセラーやスクールカウンセラーに準ずる者を配置しています。

ここでは、文部科学省が求めるスクールカウンセラーの資格要件を紹介します。なお、私立学校は要件がそれぞれ異なるので、各学校の募集要項で確認してください。

スクールカウンセラー

以下、いずれかの条件を満たす人は、スクールカウンセラーとして仕事に就くことができます。

  • 臨床心理士(R)
  • 精神科医
  • 児童生徒の臨床心理の専門的な知識や経験を持ち、大学の常勤講師以上の立場である(あった)者

スクールカウンセラーに準ずる者

以下、いずれかの条件を満たす人は「スクールカウンセラーに準ずる者」とみなされ、教育機関で働くことができます。

  • 大学院修士課程を修了し、心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務で、1年以上の経験がある者
  • 大学や短大を卒業し、心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務で、5年以上の経験がある者
  • 心理臨床業務または児童生徒を対象とした相談業務で、1年以上の経験を持つ医師

参考:文部科学省「資料6『スクールカウンセラー』について

スクールカウンセラーになるためにとっておきたい資格

学校関係者の悩みや相談に適切に向き合うためにも、スクールカウンセラーになるうえで取っておきたい資格を紹介します。

臨床心理士(R)

心の専門家として、社会的な認知度も高いのが臨床心理士(R)です。

民間資格として人気の高い「臨床心理士(R)」

臨床心理士(R)は、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会による認定資格です。

臨床心理士(R)の資格を取るためには

臨床心理士指定大学院2年間修士課程を修了し、資格試験に合格するのが一般的な取得方法です。

資格試験は、医師免許取得者(心理臨床経験が必要)や臨床心理士養成に関する専門職大学院修了者なども受けられます。なお、資格取得後は5年ごとに更新が必要です。

参考:公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会

臨床心理士になるための資格試験の内容や試験対策について、こちらで紹介しています。

https://college.coeteco.jp/blog/archives/7086/

公認心理師

公認心理師は、2018年に第1回の試験が行なわれたばかりの新しい心理系資格です。

国家資格として注目を浴びている「公認心理師」

国内初の心理系国家資格である「公認心理師」は、心理に関する専門知識を持ったうえで、支援を要する人の心理状態の観察・分析や助言・指導などを行なうことのできる資格です。

業務内容は公認心理士とほぼ同じですが、医師との関係や資格取得条件は異なります。

また、公認心理師の資格を取得すると更新の必要はありません。

公認心理師の資格を取るためには

定められた受験資格を持つ人が公認心理師試験に合格し、登録を行なうことで公認心理師になることができます。試験を受けるには、学士過程心理学カリキュラムを修了後、大学院で指定された心理学科目の履修が必要です。

上記以外にも認められる受験資格があるので、公認心理師資格を検討している方は調べたうえで進学を決めるようにしましょう。

参考:一般財団法人 日本心理研修センター

精神科医

医師として、患者の心の病を診断・治療するのが精神科医です。

心の病気の治療を行なう「精神科医」

精神科医の役目は、患者の心の声に耳を傾け、病気の診断や治療法を探っていくことです。患者から信頼を得るためにも、精神科医には医学の知識だけではなく、高いコミュニケーション能力が必要とされます。

精神科医の資格を取るためには

精神科医になるには、国家試験に合格し医師免許を取らなければなりません。

一般的なルートとしては、医学部のある大学・医科大学で6年間医学を学び、医師国家試験に合格して医師免許を取得する流れが挙げられます。臨床研修医として2年間勤務したあと、精神科を専門として選ぶことで精神科の医師として働けるようになります。

大学教員

学長、副学長、教授、准教授、講師などとして、大学で働く人を大学教員といいます。おもな仕事内容は、専門分野の研究や学生への指導、大学の管理・運営です。

子どもの臨床心理について知識や経験のある「大学教員」

大学で臨床心理学の研究や実験をしたり、カウンセラーとして臨床現場を拠点にしながら患者のケアやサポートを行なったります。学会での発表や講演、執筆活動を行なうこともあります。

大学教員になるためには

大学教員になるには、大学、大学院の修士課程博士課程の順に進学するのが一般的な方法です。

大学教員の人数は限られているため、博士課程を修了しても助教や准教授への道が確保されているわけではありません。そのため、大学教員を目指す人にはそれなりの覚悟が必要だといえるでしょう。

その他、スクールカウンセラーを目指す人におすすめの資格

上記で紹介した資格は、大学や大学院からの専門的な学習が必要なため、取得は簡単ではありません。カウンセラーとして児童のサポートをしたいという方は、民間の資格を取ることから始めるのもよいでしょう。

スクールカウンセラーに関連する民間資格には「メンタル心理カウンセラー資格」「不登校訪問支援カウンセラー資格」「チャイルドカウンセラー資格」などがあります。

スクールカウンセラーの働き方と収入

それでは、スクールカウンセラーの働き方と収入を見ていきましょう。

非常勤として職場をかけもちすることが多い

スクールカウンセラーの多くは、決められた時間に非常勤として働いています。多くの自治体が、1年契約の非常勤職員で週8時間ほどの勤務を条件とするため、複数の学校を担当するスクールカウンセラーは少なくありません。

また、精神科医や大学教授がスクールカウンセラーを兼業している場合もあります。

スクールカウンセラーの時給

スクールカウンセラーは時給制で働くことが一般的です。少し古いデータになりますが、文部科学省によるスクールカウンセラーの時給データ(2006年度)を紹介します。

スクールカウンセラーの平均時給は?

スクールカウンセラーの平均時給は5,250円
(最高時給:7,260円、最低時給:3,770円)

スクールカウンセラーに準ずる者の平均時給は?

スクールカウンセラーに準ずる者の平均時給は 3,088円
(最高時給:3,500円、最低時給:1,400円)

また、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2020年)によるとスクールカウンセラーの平均年収は、496.8万円平均年齢41.5歳でした。なお、この金額は職業分類「カウンセラー(医療・福祉施設を除く)」の統計です。

参考:厚生労働省|職業情報提供サイト(日本版O-NET) スクールカウンセラー

スクールカウンセラーの将来性

スクールカウンセラーの将来性が気になる方もいるかもしれません。

そこで、将来性について詳しく解説します。

スクールカウンセラーのニーズは今後増えていく

いじめや家庭環境の問題など、生徒を取り巻く問題はより複雑化しており、スクールカウンセラーの必要性は高まっていくと考えられています。今後も、教育委員会や学校によるスクールカウンセラーの募集は継続的に行われ、求人の多い状態が続くでしょう。

スクールカウンセラーを配置する学校は増えてきている

中学校を中心に、スクールカウンセラーを配置する学校は全国で増え続けています。

1995年には全国で150校程度だったのが、10年後の2005年には9,500校以上の学校にスクールカウンセラーが配置されました。現在は、さらに多くの学校に配置されていると考えられます。

いじめや不登校の子どものサポートは欠かせない

2020年度の文部科学省の調査(※)によると、小・中学校の不登校生徒の数は19万人以上で、過去5年間不登校生徒の数と割合は増加していることがわかっています。

スクールカウンセラーの役割はますます大きくなり、国もサポート体制を充実させるために取り組みを行なっています。認定心理師の国家資格が生まれた背景も、こうしたスクールカウンセラーのニーズの増加によるものでしょう。

※参考:文部科学省|令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

雇用形態が不安定なので働き方を考える必要がある

スクールカウンセラーの需要は増えていますが、多くの場合が非常勤職員であることを考えると、安定した立場で働くのは難しいのが現状です。

本業として病院や大学で働きながら、スクールカウンセラーを兼任するという働き方や、正規雇用をしている私立学校を探すのも良いかもしれません。

まとめ

スクールカウンセラーの仕事は、カウンセラー業にとどまらず広範囲におよび、生徒や教師、保護者を支えるやりがいの大きな仕事です。

スクールカウンセラーになるには、資格が必要というわけではありませんが、臨床心理士(R)や公認心理師の資格を取っていると教育現場で活躍することができます。

スクールカウンセラーのニーズは今後も高まることが考えられるため、将来性はあるといえます。ただし、非正規雇用が一般的なため、柔軟な働き方が求められることを覚えておきましょう。

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