トリマーは、主に犬のブラッシングや毛玉とり、シャンプー、カット、爪切り、耳掃除などを行う専門職。
よく「ペットの美容師」と言われますが、健康管理も含めた手入れ全般(グルーミング)を手がけるため、カットのセンスや技術だけでなく、獣医学、看護学、栄養学、行動学などの幅広い知識が求められます。
近年のペットブームの影響でトリマーの活躍の場は全国的に増加しており、この先も一定の需要が見込まれている注目の仕事です。
トリマーの仕事に資格は必須ではなく、国家試験や公的資格も設けられていませんが、民間団体や専門学校が発行する独自の資格があります。トリマーになるには、その取得を目指すことが近道です。
トリマーの資格は獣医師や訓練士といった他のペット関連資格に比べて難易度が低く、年齢を問わずにチャレンジでき、手に職をつけられることも魅力。特に女性に人気が高く、多くの社会人や主婦が取得を目指して学んでいます。元サッカー日本女子代表でタレントの丸山桂里奈さんも取得を目指されているそうです!
ここでは、数あるトリマーの民間資格の中から、代表的な資格や取得方法などをご紹介します。
トリマーとは
主に犬のブラッシングや毛玉とり、シャンプー、カット、爪切り、耳掃除、健康状態のチェックなどの手入れ全般を担います。
主な勤務先はペットサロン、ペットショップ、ペットホテル、動物病院など。正社員だけでなくパート・アルバイトや派遣スタッフの求人もあり、副業として週末のみ勤務するといった働き方も可能です。
個人経営の職場が多いこともあり、平均年収は約284万円、月給換算では24万円、平均時給は約954円と、給与面は充実しているとはいえません。とはいえ、人気店では平均以上の給与が期待でき、賞与や特別手当のつく職場であれば300〜500万円前後の年収が得られる場合もあります。
また、実務経験を経てフリーランスのトリマーとなったり、独立開業したりして活躍するケースも珍しくありません。スキルを磨いて固定客を増やすことができれば、雇われていた頃を上回る収入を得ることも夢ではないでしょう。
実力がものをいう世界ではありますが、どのような形で働くにしても、トリマーとしての専門知識や技能を保証する資格の取得は大きな強み。就職・転職時のアピールや職場でのキャリアアップの材料として、力を発揮してくれるはずです。
なかにはトリマー資格と併せて、獣医師のサポートをする動物看護の資格を取得し、より高い評価を獲得している人もいます。これまでは民間資格のみでしたが、2019年6月に制定された愛玩動物看護師法により「愛玩動物看護師」という国家資格(第1回国家試験は2023年2月に実施)が誕生したことで、いっそう注目を集めています。今後はトリマーとのダブル取得を目指す人が増えるかもしれません。
トリマーに向いている人の特徴は?
大前提となるのは、動物が好きなこと。動物を飼育した経験があるとなおよいでしょう。なかでも主な相手となる犬が好きであることは重要なポイントで、小型犬から大型犬まで、犬種による得手不得手はないことが望ましいといえます。
また、トリマーはサービス業であるだけに、接客は必須。動物の気持ちに寄り添うだけでなく、飼い主の要望を把握し、信頼関係を築くためのコミュニケーション能力があることも大切です。
このほか、カットの仕上がりをイメージする力や、犬のカットの流行に敏感であることも求められるでしょう。
トリマー資格の取得方法
トリマーの民間資格には、主に資格の発行団体が指定する通学講座で取得するものと、通信講座でも取得できるものがあります。いずれも所定のカリキュラムを修了し、試験に合格することが必要です。
それぞれ取得方法に特徴があるので、よく検討して自分に合ったものを選びましょう。
通学講座で取得
トリマーの募集は専門学校などの養成機関を通じて行われることが多く、研修先にそのまま就職するケースも珍しくありません。そのため、プロを目指す場合は通学講座で資格取得を目指すのが一般的です。
受講期間は約1~2年と通信講座に比べて長い傾向にあり、学費は80~150万円ほど必要になります。
しかし、座学から実技までしっかりと学び、プロとして通用する知識と技術を身につけられることは大きなメリット。なかには夜間コースや半年ほどの短期集中コースを設けていたり、フリータイム制の導入や土日開講を実施しているところもあるため、社会人の資格取得も十分に可能です。
通信講座で取得
トリマー資格の取得講座は、趣味的な要素の強いものから、修了後の就職・転職・独立開業のサポートを提供しているものまでさまざまです。
受講期間は2ヵ月~10ヵ月ほど、受講料は5~40万円程度と挑戦しやすいため、仕事や家事・育児をこなしながら資格取得を目指す人を中心に人気を集めています。
実技は実物大の犬の人形を使った課題を通して身につけるのが基本で、通学講座に比べると物足りなさを感じますが、なかには本物の犬を相手にした実技研修を受けられる資格や講座もあります。特にプロを目指す人は資格・講座選びの参考にするとよいでしょう。
通学講座で取得する代表的な資格
JKC公認トリマー(ジャパンケネルクラブ)、サロントリマー検定(全国動物専門学校協会)、SAE公認トリマー(全日本動物専門教育協会)、ドッグ・グルーミング・スペシャリスト(日本動物衛生看護師協会)、I.C.Cグルーマーライセンス(※猫のトリマー資格/インターナショナル・キャット・クラブ)などが代表的で、このうち特に定評のあるのは以下の2つです。
JKC公認トリマー
https://www.jkc.or.jp/qualification/trimmer/about
ジャパンケネルクラブ(JKC)の認定資格。この資格の保持者のみ応募できる求人を出している企業も少なくないほど、業界では名の通った資格です。
技術や経験のレベルによってC級、B級、A級、教士、師範の5段階に分かれており、一律でC級からのスタートとなります(受験料は各級5,400円)。就職や転職に活かすのであれば、B級以上の取得を目指すのが望ましいでしょう。
JKC公認の養成機関に入学して会員となり、所定の課程を修了すると受験資格が得られます。試験は年1回、筆記と実技の試験が行われ、合格ラインはそれぞれ70点以上となっています。
独学での取得も可能とされていますが、2年以上の会員歴が必要となるうえ、実技も民間の通信講座を利用するなどして自力で身につけなければならないため、養成機関で資格取得を目指すのが一般的です。
サロントリマー検定
http://www.zendousen.jp/exam.html
全国動物専門学校協会(AAV)主催の検定試験。全犬種を対象とした一般ペットサロン向けの技術を証明するもので、サロントリマー3級、2級、1級の3段階に分かれており、3級からステップアップを目指します(検定料は8,000円から)。
AAV公認の養成機関で300時間以上の教育課程を履修すると、受験資格が得られます。試験は年2回の実施で、筆記試験と実技試験が課されます。どちらかの試験に落ちた場合、合格した試験は次回の受験では免除されます。
このほか、AAVでは2級、1級、S級からなるトリマー検定も実施していますが、サロントリマー検定の取得が一般的なようです。
通信講座で取得できる代表的な資格
JPLA公認トリマー(日本ペット技能検定協会)、JCSA認定ドッグトリマー(日本キャリア教育技能検定協会)、トリマーペットスタイリスト資格(日本能力開発推進協会)などが代表的で、なかでも以下の2つは人気があります。
JPLA公認トリマー
https://pet-bunka.net/trimmer/
日本ペット技能検定協会(JPLA)の認定資格。トリマー2級(グルーミング業務を果たせるレベル)、トリマー1級(リーダーとして活躍できるレベル)、トリマー教師(後進の指導や教師の育成も行えるレベル)の3段階に分かれています(検定料各8,500円)。
協会指定のカリキュラムを修了すると2級の受験資格を得られ、1級資格は2級の資格取得者のみ、教師資格は1級資格の取得後3年以上の実務経験がある人のみ受験可能となっています。2級と1級では筆記試験と実技試験、教師試験では実技試験と面接が課されます。
カリキュラムは専門学校のほかにヒューマンアカデミーが運営する「たのまな」(受講料は約10万円から)などの通信講座で受講でき、標準学習期間は半年ほど。通信講座の受講生は在宅受験も可能です。
たのまなやJPLAがカリキュラム修了者を対象に実施している実技研修(有料)に参加すれば、スキルアップも図れます。JPLAで後進の育成を担う先輩トリマーも、実技研修の大切さを力説しています。
より早くトリマーとしての技術を身につけるためには、数多くのワンちゃんと触れ合いながら実地で勉強し技術を習得する以外ありません。そのためには学校より何より、とにかく現場研修なのです。
https://www.pet-bunka.net/manabu/jitsugi.html
JCSA認定ドッグトリマー
日本キャリア教育技能検定協会(JCSA)の認定資格。「JCSA認定マスターライセンス ドッグトリマー」「JCSA認定ライセンス ドッグトリマー」など数種のトリマー資格があります。
マスターライセンスはJCSAの認定するドッグトリマー養成専門講座を修了し、在宅での認定試験で一定以上の成績を収めることで取得できます。ライセンスはC級、B級、A級の3段階で、取得には検定試験(各5,500円)に合格することが求められます。
日本ケンネルカレッジなどの通信講座(約16万円から)で受講可能で、標準学習期間は5カ月ほど。修了後、希望者は実技研修を受けることも可能です。
難易度
例えばJKC公認トリマーC級の合格率は、一般からの受験で約85%、養成機関からの受験で約95%となっており、養成機関のなかには100%の資格取得を誇るところもあります。
また、B級の合格率は一般約75%、養成機関約93%、A級は一般約30%、養成機関約80%と、いずれも養成機関からの合格率が高くなっています。
通学と通信、いずれの場合も資格の等級が上がるにつれ難易度は増しますが、全体的に資格試験の難易度はそれほど高くはありません。
まとめ
トリマーには、トリミングのセンスや技術、幅広い知識はもちろん、ペットへの気配りや飼い主さんとのコミュニケーション能力も求められます。ほんわかしたイメージとは裏腹に、体力勝負の一面もあります。
とはいえ、自分のトリミングサロンを開業することも夢ではなく、将来への希望は尽きません。動物、特に犬が好きな人にはチャレンジする価値がある仕事といえるでしょう。