語学検定はさまざまありますが、注目されているのが「ハングル」能力検定試験、通称ハン検です。ハン検は、日本語を母語とする人を対象としたハングル(韓国・朝鮮語の総称)の検定試験です。
この記事では「ハングル」検定についての情報をまとめました。
さらに、ハングル能力検定協会 鄭理事長を取材。おすすめの勉強法や「ハングル」検定のレベル、出題範囲についても詳しくお話を伺いました。ぜひ参考にしてください。
「ハングル」検定の基本情報
「ハングル」検定の日程は?
「ハングル」検定は年に2回実施されます。
- 6月 第1日曜日
- 11月 第2日曜日
「ハングル」検定の級と検定料
級 | 検定料 |
初級 5級 | 3,700円 |
4級 | 4,200円 |
中級 3級 | 5,300円 |
準2級 | 6,300円 |
上級 2級 | 7,000円 |
1級 | 10,000円 |
*併願は検定料が割引となります。
「ハングル」検定の受験資格は?
国籍・年齢・学歴等の制限はありません。
検定の試験会場は?
試験は全国で開催されています。各会場については、公式サイトをご確認ください。
「ハングル」検定の申し込み手順と流れ
①オンライン登録から手順に従い申込み、または郵送で申し込み |
②検定料の支払い ・クレジットカード/コンビニ支払い/振り込み/検定受付書店で払込等 ・オンラインでは支払い完了メールが届けば申込み完了 |
③郵送の場合、願書に必要事項を記入し、払込証を同封し郵送 |
④受験票が到着、顔写真を貼り試験会場へ |
試験終了後
- 成績通知表が発送される
- 無料の成績証明書付き
- 合格カードが必要な場合には郵送またはオンラインで申し込む
「ハングル」検定|5級/4級/3級/準2級/2級/1級のレベルを解説
「ハングル」検定|5級〜1級まで各レベルについて
「ハングル」検定5級のレベル
- 60回授業を40回受講した程度
- 身近なことについて伝え合うことができる
「ハングル」検定4級のレベル
- 60分授業を80回受講した程度
- 比較的使用頻度の高い約1,070語の単語や文型からなる文を理解することができる
「ハングル」検定3級のレベル
- 60分授業を160回受講した程度
- 日常的な場面で使われる基本的な韓国/朝鮮語を理解し、それらを用いて表現できる
「ハングル」検定準2級のレベル
- 60分授業を240回~300回受講した程度
- 数多くの慣用句に加えて、比較的容易なことわざや四字熟語などについても理解し、使用することができる
「ハングル」検定2級のレベル
- 説明書や契約書類も意味を把握でき、単語や言い回しから話し手の感情も理解できる。複雑な依頼や批判も適切な表現ができる
「ハングル」検定1級のレベル
- 要約や推論、論証や議論など、情報処理的にも高度なレベルが要求される処理を、ハングルを用いて行うことができる
- 南北の言葉の違いや頻度の高い方言なども理解することができる。連語や四字熟語、ことわざについても豊富な知識と運用力を持ち合わせており、豊かな表現が可能である
- 1級のみ、2次試験(面接形式)がある
*1級合格者は通訳案内士試験の外国語(韓国語)筆記試験の免除対象
公式サイトやテキストには、より詳しい解説が掲載されているので、要チェックです! また、この後のインタビューでハングル能力検定協会理事長が「各級のレベルや勉強法」に触れているので、そちらも参考にしてください。
【新設級 オンライン入門級の実施開始!】
2023年1月よりオンライン入門級が開設されました。5級へ向けて学習中の方、「ハングル」かじりたての方へオンラインで受けられる入門級です。年に2回、1月と7月頃の実施予定です。
詳しくは以下公式HPより
ハングル能力検定協会 理事長にインタビュー
お話を聞いた方:ハングル能力検定協会 理事長 鄭聖華さん
人気の高い語学検定の中でも注目される「ハングル」検定
Q:「ハングル」検定と受験者について
「ハングル」検定は1993年から実施され、2023年秋において総出願数は52万人を超えています。
当初は20代から30代の受験者が多かったですね。K-POP、韓ドラ、韓国料理や韓国コスメの人気が高まり、最近では10代の受験者数も大きく伸びています。
*ハングル能力検定協会の資料をもとに概算で作成
ハン検は幅広いレベルを網羅しています。過去には8歳のお子さまや、上は80代の方が生涯学習として学び、受験して下さっています。
仕事に活用される方はもちろん「大好きなK-POP歌手の声を聞き、その言葉を直接理解したい」とハングルを学び、ご自身のレベルを確認し学習の手引とするために受験される方も少なくありません。
「ハングル」検定は初心者から超上級まで幅広い入口がある
Q:「ハングル」検定の級とレベルについて
「ハングル」検定は、大きく分けると、5級4級が初級レベル、3級と準2級が中級レベル、そして2級が上級レベルで1級は超上級です。
出題される単語のレベルについて動物を例に解説してみましょう。たとえば猫や犬は身近で頻繁に会話に出てくる単語です。ですから初級レベルで出題される単語のひとつです。
では狐はどうでしょう? 狐や熊という単語は、韓国人なら幼児期から絵本などで知り、当たり前に覚えます。でも外国語として学ぶ場合、初級レベルの会話で狐がどうしても必要というわけではありません。ですからこうした単語は中級以上で出てきます。
上級レベルは大学を卒業したネイティブの方と対等に話せるレベルです。
さらに上級レベルの特徴として、検定の合格には日本語のボキャブラリーも必要な点があげられます。ハン検は翻訳の力も重視していますが、上級レベルでは日本ではあまり使わない四字熟語や慣用句などが多く出題されます。そうした言葉を適切な日本語に訳せるかどうかもポイントになります。
「ハングル」検定準2級以上なら履歴書で大きなアピールに
Q:ハン検を就活や転職でアピールするために必要なレベルとは
キャリアとして履歴書に記入するなら、準2級以上ですと大きな強みになるのではないでしょうか。
日本と韓国は地理的にも近く、ビジネスでもエンターテイメントでも多くの接点があり、そのためハングルを使った仕事も多岐にわたります。旅行業界や貿易関係はもちろんですが、たとえば二ヶ国語による司会業、医療現場で専門用語を解説できる通訳、裁判の立ち会いなどの専門分野での需要も増えてくるのではないでしょうか。
韓国語/朝鮮語の学習到達度を把握しモチベーションアップ!
Q:ハン検の活用法について
「ハングル」検定は、級の取得だけが目的ではありません。
ご自身が韓国語を学ぶ中で「自分はどれくらいのレベルか」をハン検を受けることで確認できます。
ハン検では合格でも不合格でも、聞取・書取それぞれの点数がわかります。たとえ合格できなくても「前回より書き取りの点数が上がった」など、学習成果が実感できるので学ぶモチベーションに繋がります。
「ハングル」検定と韓国語能力検定(TOPIK)の違いとは
Q:ハン検とTOPIKの違いは?
韓国語能力検定(TOPIK)は韓国政府が運営しています。韓国に入国し生活する上で不便なく話せることを証明するパスポートのようなものですね。要するに「韓国の国語の試験」です。そのためすべての設問/回答は韓国語です。
「ハングル」検定は、日本語を母語とする人に特化した検定です。ですから日本語への翻訳も上級者レベルの出題範囲に含まれています。日本語とハングル、双方向で翻訳できる力が必要で、TOPIKとの大きな違いとなっています。
TOPIKと「ハングル」検定の違いで、意外と知られていないのが検定の有効期限です。
TOPIKの有効期限は2年間です。ハン検は合格カードや成績証明書の再発行は受験から5年という期限があるものの、資格としては一生有効です。一生モノの資格なので、過去に受験して合格したら、いつでも履歴書に記入できます。
ハングル(韓国語・朝鮮語)は独学で学べる?検定に合格する?
Q:ハングルは独学でも学べるのか?
「ハングル」検定受験者のほぼ半数程度以上は独学です。
ハングルは熟語の音読みが日本語の漢字の音と似ています。初歩レベルであれば、語彙も覚えやすいですし、3級くらいまでなら学びやすいと思います。
レベルとしては準2級からハードルが上がります。韓国語独特の言い回しや表現は難易度が高いですね。さらに上級では、韓国語/朝鮮語、両方の正書法を読み解く設問もありますから、簡単ではありません。
とはいえ、わずか2年半で5級から1級まで取得した方もいらっしゃいます。この方は基本的には独学で始めて語学学校に2年通い、上級レベルではネイティブの先生に教わったそうです。
CHECK
ハングル能力検定協会は2022年に創立30周年を迎え、それを記念して制作した記念誌をデジタルブックで公開しています。記念誌には、1級合格者たちが合格までの道のりや効果的な勉強法などについて語る座談会のほか、1級2次試験の面接会場潜入レポートなど参考になる情報が満載です。
また、公式サイトには学習者・合格者の声や上級合格者へのインタビューを掲載。それぞれの勉強法や試験を受けた感想などを読むことができるので、こちらも要チェックです。
「ハングル」検定合格に向けておすすめの勉強法は3つ!
Q:ハン検合格をめざす方に理事長がおすすめする勉強法は?
- 好きなジャンルから入る
- 協会のテキストを利用しコツコツ学ぶ
- ハン検を受けて学習到達度を確認する
わたしが個人的に感じるのは、日本人の方は外国語の学び方が真面目で勤勉だなということ。たとえばハングルを学習しようと思ったら、まず初級のテキストを揃えて始めます。
一方で外国人が母国語以外を学ぶとき、初級レベルにはこだわりません。たとえば日本の歌が大好きでカラオケで日本の曲を歌いながら覚える人もいますね。日本の歌の中には難しい言葉が入っていることもありますが、好きなことですから難なく覚えてしまいます。
ですからハングルの入口として、K-POPのファンなら歌をたくさん聞いて耳で覚える、韓国料理が好きなら料理用語から覚えるのもおすすめです。
それは必ずしも初級レベルではないかもしれませんが、好きなことに対しては脳が開きますから、どんどん吸収できる。そうして韓国語を楽しく学ぶのも良い方法だと思います。
具体的にハン検合格の近道は、協会が発行しているテキストを使って学ぶことです。
検定公式の書籍
- トウミ 検定に出題される単語/語彙を網羅
- ペウギ 文法の解説や練習問題など基本となるテキスト
- 過去問題集 レベル別問題集(いわゆる過去問)
- 読む書く「ハン検」 過去問から205問を抜粋した中・上級者向けテキスト
たとえば5級ならトウミにハングルの語彙リスト約450語が掲載されており、そこから出題されるでのでコツコツ覚えましょう。協会が発行するテキストや過去問は検定に準拠しているので、独学の基本となります。
*公式テキストはAmazonで、公式テキストに対応した音声ペン、読む・書く「ハン検」対応別売りCDは協会オンラインショップ「ハン検ショップ」で購入できます。
当協会の検定は合格・不合格に関わらず成績表をお送りしています。もし合格には届かなかったとしても、苦手な部分が明確になるので力をいれて学習するポイントもつかめます。
好きなことから楽しく学ぶ。検定対策として準拠しているテキストを活用してコツコツ学ぶ。この2つでぜひ、ハングルを学んでいただけたらと思います。
CHECK
ハングル能力検定協会は、公式過去問題を使ってオンラインで学べる「ハン検学習ツール」を提供しています。
本番と同じ形式での模擬試験、聞きとり・筆記の分野別学習、問題別学習などのコンテンツを、各級30日間500円または1年間5,000円で利用できるお得なツールで、学習後には正答や日本語訳の確認も可能です。
スキマ時間に学んだり、苦手分野・問題を繰り返し学んだりと、自分の学習スケジュールに合わせて活用方法はいろいろ。
テキストを使った学習に加えて、試験対策に取り入れてみてはいかがでしょうか。
「ハングル」検定でより深く趣味を楽しむ!
Q:趣味から入るハングル学習について
1990年代には、ハングルを学ぶのはコアな層でした。
それが2002年の日韓ワールドカップから一気にハングルへの関心が高まりました。さらにヨン様ブームもあって、「ハングル」検定は2006年には過去最高の受験者数を記録しています。
今、日本では韓流ドラマやK-POP人気だけでなく、コスメやお菓子、ファッションも人気です。
感染症による影響で、オンラインのライブ配信が一気に増えました。ライブですから字幕がついていないことがほとんどで、「“推し”が何を話しているか理解したい。やり取りしたい!」と思い、ハングルを学び始めた方もいらっしゃいます。
パンデミックの影響が落ち着けば、再び、旅行も盛んになるでしょう(2022年の取材実施時点での情報)。なにしろ飛行機ですぐ、お隣の国ですから気軽に遊びに行けます。
交流が活発になることは、素晴らしいことです。ハングルを多くの方が学ぶことで、いろいろな未来が広がることを期待しています。
「ハングル」の意味と協会の理念と願い
Q:ハングルの表記と協会の願いについて
“ハングル”とは「大いなる文字」という意味で、朝鮮固有の音標文字です。“英語はアルファベットで書かれている”というように“韓国・朝鮮語はハングルで書かれている”というのが正しい表現です。 ですからわたし達は「ハングル語」とは言いません。それだと「英語」ではなく「アルファベット語」に近い意味になってしまうからです。
協会は
- ハングルの普及
- 日本語を母語とする方が韓国語/朝鮮語を外国語として習得する際に公平な評価を与える
- 南北の異なるハングル表記の統一に貢献したい
この3つの理念を掲げています。
こうした背景はありますが、あまり難しく考えず「好きなことからハングルを学んでみよう!」と気軽に学習をスタートして頂きたいですね。
相互理解のためには言葉の壁を取り払うのが一番の近道です。
そして習得した語学力をハン検で実証し、受験や就職、国際交流などで活用して頂きたいです。
韓国はすぐお隣の国、語学を学び、文化の交流が活発になることがわたし達の願いでもあります。
「ハングル」検定を受験しようと検討中の方へ
皆さまが今までの学習成果を遺憾なく発揮できるよう、会場等の準備をしっかり行い、環境を整えてお待ちしています。協会としては、皆さまのハングル能力を公正に評価し、学習者の実力アップの一助となる検定でありたいと願っています。
より身近な言語として、また可能性のある言語として、ハングルを楽しく学んでいただけたらと願っています。
ハングル能力検定協会 鄭理事長(談)
まとめ
語学検定は就活や転職にはもちろん、学びの指標としても活用できます。
コミュニケーションの基本となるのは「ことば」です。語学の習得にも検定は役立ちますし、レベルを上げれば就活や転職にも活用できます。
韓国語/朝鮮語を学び始めたら、ぜひ「ハングル」能力検定試験も受けてみませんか?